ここはどこにでもある魔界
その三丁目にある三毛猫通りにある物置小屋
そこに非公式の騎士団が結成されていた
その団名は…【アリス騎士団】
「これはこまりました!」
「穴が空いちゃってるんだお…」
「雨漏りしちゃうですぅ…」
「雨が降ったら大変です…」
「穴あきなのです!」
とある事件により町はかなりの被害を被ってしまった魔界の町
殆どはジャイアントアントの活躍によって復旧されつつあるものの
拠点である物置小屋も天井に大穴が開く被害を受けていた
復旧されつつある建物でこの物置小屋は修理対象になっていない
持ち主が修理の申請をしていないのだろう、かといって勝手に修理をお願いする事はできない
それ以前に修理代をどうするか…という問題にも直面してしまう
「うーん…こまりました!」
空は晴れてはいるものの、もし雨が降れば絵本や画用紙が濡れてしまう
それだけじゃない、お宝の一つである感謝状も雨に打たれて汚れてしまうだろう
天井に布を覆ったとしても雨漏りは免れないが浸水は防げる…のだが
そもそも大穴をかぶせる布が見つかるかどうかも問題だ
このまま大穴をどうするかの問題が解決できない場合…最悪の選択肢を選ぶしかないだろう
4人がどうするかアレコレ悩んでいると、そこに近づく人影が在った
その者は金色に輝く髪と尻尾を持っていた
揺れる髪はまるで風に揺れる麦畑の麦のように美しく揺らいでいた
「お待たせしました、団長〜」
「よーこおねーさんおそいです、あとでおしおきです!」
「一大事なのになにしてたんだお!」
「妖狐お姉さん、こんにちはですぅ」
「こんにちはです」
「当方、新しいお仕置きを考えたのです♪」
「ええ、知っています…なのでちょっとお出かけしていたんです♪」
と、妖狐お姉さんは何かを企んでいる様な口ぶりで話してきています
「なにかいいあんがあるんですか?」
「もったいぶらないで教えて欲しいんだお!」
「ふふふ♪それは…」
「それは?ですぅ」
「な、なんだろう…」
「焦らしプレイなのです、わはー!」
「じゃーん♪これは何でしょう?」
妖狐お姉さんが取り出したのは金属の輪
その輪には一本の棒が出ていて、凹凸の形状がついていた
「はい、かぎです」
「これがどうしたんだお?」
「よく分からないですぅ…」
「え、えーっと…もしかして…」
「手錠の鍵なのです!わはー!」
「手錠じゃないですよぉ…なんと!新しい拠点の鍵なんです!」
「あたらしいきょてん?」
「新しい拠点だお!?」
「え?へ?ええっと…?」
「お部屋…借りたんですか?」
「潮ちゃん正解♪ちょうど安い物件があったので借りてきちゃいました♪」
「おぉ〜〜〜〜!」
「立派な部屋なんだお!?」
「ええええ!!!」
「わはーい!!!」
「あの…良いですか?」
「ええ、ええ勿論♪流石に拠点が物置小屋のままっていうのも味気ないですし
前々から新しい拠点場所を考えていたんですよ♪」
「はい!じゃ〜さっそこそこにいきましょう!!」
「分かりました、それじゃ行きましょう♪」
「楽しみだお!」
「う、うわぁ…ドキドキするですぅ♪」
「わはーぃ♪」
「あ…荷物…どうするんです?」
「それは大丈夫ですよ潮ちゃん♪お友達が持ってきてくれるので♪」
ありちゅ達は妖狐お姉さんに連れられて新しい拠点に移動するのでした
妖狐お姉さん達の姿が見えなくなると
どこからともなく大勢の人が集まってきた
人間の他にアマゾネスらしき女性も混ざっている…
見物客が集まっているような雰囲気ではなく
まるで何か威厳のある集会のようでした
「おーし!姉御のご命令だ、さっさと運んじまうぞ!」
「「「「「「「「「「YES WE CAN!」」」」」」」」」」
「…なにやってんだ、おめぇら」
「うお!?アニキ!怪我のほうは良いですか?」
「ああ…平気だ、所で何してんだよ?」
「へい!姉御に言われて荷物を運ぶ所ですぜ!」
「お嬢にか?……絵本に玩具…なんだこりゃ?」
「なんでもアリス騎士団って子供のたまり場に入ったようで…」
「……なに考えてるんだお嬢は…」
―魔界四丁目:淫夢通り―
「ここが新しい拠点ですよ♪」
「「「おぉ〜」」」
「凄く…ぼろいのです」
「ポ、ポテチちゃん、そんなこと言ったら妖狐お姉さんに悪いですよ…」
新しい拠点に目を光らせるありちゅ団長とキッドちゃんにレタスちゃん
ポテチちゃんは何処かのネタ?らしいことを口走りながらワクワクしています
見た目は少しぼろい3階建ての建物、ここの1階にある空き部屋が新しい活動拠点になるのでした
部屋の中に入ると前に住んでいた人が置いていったモノがある
ベッドに冷蔵庫…そしてテーブル
「わーい、これぴょんぴょんできます!」
「ぼよんぼよんだおおおお!!」
スプリングベッドの上で飛び跳ねるありちゅ団長とキッドちゃん
振動のせいかベッド自体が老朽しているのかギシギシと音が出ています
「お絵かきにぴったりですぅ♪」
「ここならカードゲームとかできそうです♪」
レタスちゃんと潮ちゃんは背丈の低いテーブルの近くに座り何が出来るか色々と話しているようです
「氷魔石が残ってるのでジュースが冷やせるのです」
「おおぉ〜!」
「冷たいジュース飲めるお!」
「今度もってくるですぅ♪」
「ぼくは…お菓子もってきます」
『パパカパーン、拠点のレベルが上がった!
冷蔵庫、ベッド、テーブルが追加されました。
▽』
新しい拠点に大はしゃぎのみんなでした
「ちょっとトイレに行ってきますね♪」
「「「「はーい!」」」」
そういって妖狐お姉さんは部屋から出て行きました
「…久しぶりね、怪我はもう良いの?」
「へいっ、お嬢にはご迷惑をおかけしやした…」
「そう…でも本調子じゃないんでしょ?貴方はいつも無茶してるんだし…」
「やっぱバレバレですかい?」
「当たり前よ…何年一緒に居ると思ってるの?」
「はっはっは…そうでした、荷物の方は入り口に置いてありやす」
「分かったわ…ありがとう、サブ」
「いえいえ、礼には及びませんぜ…ところで…なぜこのようなことをしてるんですかい?」
「ん…子供が…好きだから、かな…本当なら自分の子供が良いんだけれど…お父さんがそれを許さないと思うし…」
「そうっすね…おやっさんは過保護すぎやすから」
「うん…はぁ……子供欲しいなぁ…」
「お嬢ならきっと良い人が見つかりやすよ、その時は俺も助力ながら手伝いやすぜ!」
「ふふ…ありがとう♪」
「い、いえ…っとそうそう、今日からお嬢のお供をしやすんで…っといっても邪魔はしやせんからご安心くだせぇ」
「ん…分かった、でも無理したらダメよ?この間だって死に掛けたんだし…」
「分かっておりやす…」
「それじゃ、私は行くわね…そろそろ戻らないと怪しまれるから」
「へいっ!」
「ただいま戻りました、団長♪」
「おねーさん、トイレありました!」
そういって入り口の隣にある扉を開くありちゅ団長
そこにはトイレとバスルームがあった
「あ、あら…あったんですか…あははは…あ、そうそう!荷物が着たので皆さんで運びましょう♪」
「はい、はこびましょう」
「終わったら絵本読んで欲しいんだお!」
「運ぶですぅ♪」
「はーい、運びますです」
「当方も頑張るのです!」
こうして新しい拠点でアリス騎士団は活動を再開するのでした
『パパカパーン
トイレ、バスルームが追加されました。
▽』
―つつく―