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かつどう15:謎の白い女の正体とは

ここはどこにでもある魔界

その四丁目にある淫夢通りにある一軒のアパート
そこに非公式の騎士団が結成されていた


その団名は…【アリス騎士団】





「にょら〜!」ぐるぐるぐるぐるぐる!

変な掛け声と共にルーレットを勢い良く回す団長
その勢いは凄まじく、ルーレットはまるで扇風機のようにグルグル回っています。
今日の団長さんはいつもより気合いが入っているのは、誰よりも早く上がりそうだからです。

前回は負け続けだった団長さんはリベンジにと双六をやってみると
順調に大きい数字を当てて、あっという間にゴール目前までやってきているのです。
進むマス分を超えた場合、戻るというルールは作っていないので、3以上が出れば団長さんはゴールとなり、一位になることができます。
しかし、勢いをつけすぎたルーレットは未だに止まる気配を見せず
皆はじっとルーレットが止まるのを息を呑んで見守っています。


ぐるぐるぐるぐるぐるる!


「…止まらないだお」
「あ、あぅ…目が…目が……」
「バルスなのです!わっはー♪」
「うぅ…ちょっと…気分が…」
「潮ちゃん、大丈夫?…ちょっと横になりましょ?」

回り続けるルーレットを見続けたレタスちゃんと潮ちゃんは自分達の目も回し、妖狐お姉さんにベッドへ運ばれてしまいました。
キッドちゃんは止まらないルーレットに少し飽きがきているようです。



・・・・・

・・・・

・・・

・・






ルーレットが回り続けて30分が経ちました。
団長さんはずっとルーレットが止まるのをじーっと見つめていましたが
他の皆は既に飽きてしまった状態です。
キッドちゃんは絵本を読み、ポテチちゃんは空を飛んでいます。
体調を崩したレタスちゃんと潮ちゃんはベッドで横になっていたせいか
そのまま寝てしまい、今は二人で抱き合いながらすやすやと寝ています。
妖狐お姉さんは二人が寝たをを見届けると台所へ向かって何かをしているようです。

30分も回り続けたルーレットの勢いは目で追えるほどに弱く、もうすぐで進むマスがきまりそうです。
「わはー!もうすぐで止まりそうなのです」
「…んぉ?やっととまるのかお?」

ルーレットが止まりかけているのを見たポテチちゃんの声に反応してキッドちゃんが絵本を置き、双六の方へと目をやると青白い光が溢れました。

「まぶしいんだお!」
「うお、まぶしっ!」





ガチャーン!

「……にゃーーーー!!!!!!??!!!」




光が収まって双六の方へ目を向けるとルーレットが踏み潰されていました…
その犯人は団長でもなく、ポテチちゃんでもなく、キッドちゃんでもない…ここに居る皆が知らない人物でした。

真っ黒な生地に所々にあしらわれた色とりどりの小さな宝石が輝く素敵なドレスを着こみ
リャナンシーが創作したのではないかと思う程に綺麗て美しい銀細工のような羽と尻尾
そして垂れた耳のように生える角を持った女の子がルーレットを踏みつぶしていました。


「ふっふん♪脱出だいせーこう♪…ってここどこ?」
「お前だれだお?」

突然現れた彼女にキッドちゃんが質問をします。
辺りをキョロキョロと見渡していた女の子はキッドちゃんに目を向けると
新しいおもちゃを貰ったようにキラキラと笑顔を咲かせました。

「おぉー!バフォメットだ、バフォメット!バフォいバフォい!」
「な、なななんなんだお!?」

たじろぐキッドちゃんを気にも止めず、彼女は色々な角度からキッドちゃんの周囲をあちこち回っています。





「団長さん大丈…え…と…これはいったい…」

団長の悲鳴を聞いて何事かと顔を覗かせた妖狐おねえさんは驚きました。
とても落ち込んでいる団長とはしゃぐ見知らぬ女の子、それに振り回されているキッドちゃんが居たのです。



「おぉ〜!稲荷だ稲荷!モフいモフい!」

女の子は妖狐お姉さんを見るやいなや妖狐お姉さんに向かって走り尻尾に抱きつきました。

「ひゃぅっ!?ちょ、ちょっと…私は妖狐なんだけど…」
「もふ〜もふ〜」

女の子は妖狐お姉さんの訴えも気にせず、モフモフした尻尾に顔を埋めています。
これには妖狐お姉さんも困ります、ここは叱るべきなのでしょうが
無邪気にモフっている姿に怒る気が起きません。

「うにょらめ…ふしゃあああぁぁぁ!

突如、少し気の抜けた怒号が辺りに響き渡りました。
放出されるような魔力は汗ばんだ体のように肌に絡みつき
様子を見ていたキッドちゃんの顔が凍りつきました。

その発信源となっているのは団長さんです。

「だ、団長さん、お、おちついて…ね?」
「や!」
「あわわわ…団長が切れたんだお!」

「…ひっ!」
「…あ、あうぅ…あぅ!」


ベッドの方から声が聞こえ、妖狐お姉さんがそっちの方を見ると
青ざめた顔で抱き合っているレタスちゃんと潮ちゃんの姿がありました。
異様な事態に気づいて目を覚ましたのでしょう、二人は団長さんの姿を見て怯えてしまっています。

「ど、どうすれば…」
「もふり〜♪」
「わ、わっちは何も悪くないんだお!」

妖狐お姉さんの尻尾をモフモフし続ける女の子とダンボールに隠れるキッドちゃん
ベッドの上で抱き合って怯えるレタスちゃん達にゆっくりと歩み寄る団長と
この混沌とした状況を収集するためにはどうしたら良いのか
妖狐お姉さんが考えていると、どこからか甘く焼けた匂いが漂ってきます。


「(゚д,゚)ウマー」


こんな事態にもマイペースを崩さないポテチちゃんは
妖狐お姉さんがおやつにと用意をしていたドーナツを勝手につまみ食いしているようでした。

「それだ!」

その姿を見て妖狐お姉さんはひらめきました。

「はい、ストーップ!おやつにしましょう!」
「ふぅ〜!…おやつ?」
「はい、おやつです♪今日は面白いおやつを用意したんですよ♪
 団長さん、おやつにしませんか?ね?」
「う〜…」

おやつに反応した団長さんの姿を見て手応えを感じた妖狐お姉さんは
おやつの時間にすることを促します。

「ほら、ポテチちゃん見て下さいよ、あんなに美味しそうに食べてますよ?」
「…ぅ〜…はい…おやつにします…」
「それじゃあ、キッドちゃん達もおやつにしましょう♪」

「おやつだお!?」
「う…うん、おやつ…そうしよう…うん」
「こ、こわかった…ですぅ…」
「わたしもおやつ食べたい!」
「ええ、一緒に食べましょうか」
「わーい!」




「…はぁ…良かった…」

渋々納得するように同意する団長さんを見て事態の収拾がつくのを感じ
妖狐お姉さんは胸を撫で下ろしました。









妖狐お姉さんは皆におやつとジュースを出しました。
今日はミスドーナツのリャナンシードーナツというを買ってあります。
そのドーナツは丸くて平らな普通のドーナツなのですが
チョコ筆というチョコレートでドーナッツに絵を描く小道具が付いているのです。
遊び心を擽られるおやつに皆は目を輝かせ、落ち込んでいた団長さんも夢中になって絵を描いています。

「できたお!」
「おぉー!すごい!」
「う〜にゅぅ…」
「あの、これって解答キッド?」
「そうだお!」
「わぁ…すごいですぅ」
「わはー☆どんなクイズも答えてみせる!」
「ばっちゃんの名にかけてだお!」

一番先に完成させたのはキッドちゃん、ドーナツに描いたのはキッドちゃんのお気に入りのキャラクター解答キッドです。
ポテチちゃんとキッドちゃんは何やら意気投合に名台詞を合わせていますが…解答キッドとは関係がありません。



「はい、できました!」
「わっちもだお!」
「私もできたー!」
「ぼ、僕もです!」
「わはーい!」
「わたしも完成ですぅ♪」

「みなさんお疲れ様♪ジュースのおかわり持って来ましたよ」
「わーい!」
「ちょうど喉が乾いてたんだお!」
「にゅふー!」

どうやら皆、絵描きが終わったようです。ジュースのおかわりを取りに戻った妖狐お姉さんは皆の絵を覗きました。
潮ちゃんが描いたのは可愛いお魚さん、レタスちゃんはお花畑。
ポテチちゃんは……た、太陽のようです。
団長さんは兎と鼠と帽子をかぶった子に猫さんが描いてあります。
そしてドレスを着た女の子は左側が少し途切れたハートのマークです。
その隙間を埋めるように小さな☆も描かれています。

「えんぶれむみたいでかっこいいです!」
「本当にかっこいいんだお!」
「凄く上手ですね…でも、このマークどこかで…」

ぐぅ……

妖狐お姉さんが何かを思い出そうとしているとドレスを着た女の子から可愛らしい音が聞こえてきました。
先ほどまで絵を描く事に集中して忘れていたのでしょう、恥ずかしそうに顔を赤らめながらお腹を抑えています。

ぐうぅ〜!

今度は団長さん達から可愛らしい音が聞こえました。
絵を描くことに集中して忘れていたのでしょう、思い出したかのようにおやつはまだかと、お腹の虫が叫んでいます。


「あ、あはは…お腹すいちゃった…」
「はい、すきました!」
「ぼくも…」
「そろそろ食べたいんだお」
「わたしも…ペコペコですぅ…」
「あ…そうね、それじゃあ他のドーナツも持ってくるので先に食べててください♪」

「はーい!」
「わかったお!」
「いっただきまーす!」
「わはー☆ミスぅ〜ドーナッツ!」
「いただきますぅ〜♪」









「わるいまじょさんめ〜ていやー!」
「マジョマジョビームだお!ビビビビ!」
「ありちゅばりや〜!きんきん!」
「お姫様ビーム!ビビビビ!」
「ぐあ〜やられたんだお〜〜〜!」


それぞれの力作が描かれたおやつを食べた団長さん達、今ではドレスを着た女の子とすっかり仲良くなり
おやつを食べ終わると一緒にお姫様と騎士ごっこをして遊んでいます。
ドレスを着た女の子をお姫様役に、団長さんが騎士、ポテチちゃんが王様を演じ
キッドちゃんは悪い魔女を、レタスちゃんと潮ちゃんは悪の戦闘員を行いました。
妖狐お姉さんは何故か木の役をさせられていましたが…
悪の戦闘員は既に倒されていて、今は騎士とお姫様が悪い魔女を退治している所です。







そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ、外から入ってくる日差しは赤みを帯びる程になってきました。
ドレスを着た女の子はそろそろ帰ると皆に告げると、床から魔方陣が浮かび上がりました。

「今日は本当にに楽しかった♪」
「もう帰っちゃうんだお?」
「うん、そろそろ帰らないとミクミクに怒られるし…」
「なんだか寂しいですぅ…」
「また会いたいです」
「わはー♪」

「またこっそり抜け…じゃなかった、時間できたら遊びに来るからね♪」
「はい、またあそびましょう」

ドレスを着た女の子は団長さんと握手を交わすと魔方陣の方へと向かいました。

「ばいばいです」
「楽しかったんだお!」
「わはー♪今度は新しい遊びをするのです♪」
「また来てくださいですぅ♪」
「またです」
「気をつけて帰ってくださいね〜」
「うん、バイバイ♪」

女の子は団長達に見送られながら魔方陣の中へと消えて行きました。
女の子が消えた後、魔方陣もすぅ〜っと消え辺りには静寂に包まれます。

「あ!」

そんな寂しい空気もすぐにかき消されました。
何かを思い出したように声をあげる団長を皆が見つめます。


「どうしたんだお?」
「なまえ…きくのわすれてました!」
「「「あっ!」」」
「わはー♪謎の白い女の正体とは」


こうしてちょっぴり謎を残した女の子、また会える日を楽しみにしながら
騎士団の皆は残りの時間を楽しく過ごしました。







                                        ―つづく―







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―おまけコーナー―

美「は〜い、皆さんお久しぶりです。妖狐お姉さんですよ」
あ「はい、おひさしぶりです」
キ「久々なんだお!」
潮&レ「すやすや…」
美「潮ちゃんとレタスちゃんはまた寝ちゃってますね…」
キ「今日はよく寝てるんだお」
美「そうですね、今日はこのまま寝かせておいておきましょうか、起こすのも悪いですし」
あ「はい、そうしましょう」

美「では早速お便りコーナーの時間…あれ?ポテチちゃんは?」
あ「いません!」
キ「そういえば…さっきから居ないんだお」
美「うーん…トイレでしょうか?少し待ってみます?」
あ「つづけます!」
キ「これ以上遅くなったら帰りが暗いんだお」
美「そうですね、それじゃあポテチちゃんにも悪いけれどやりましょうか」

美「ありゃりゃりゃ、30ピースは多かったか…ごめんね〜 ネームレスさん より」
あ「おいしかった!」
キ「団長はいつ食べたんだお?」
美「団長さんの分はちゃんとお家の方に届けましたよ♪」
キ「なるほどだお!」
あ「ねむれさん!ありがとうございます!」
美「ネームレスさんですよ団長さん…」
あ「はい!ねむれさん!」
キ「ぷぷぷ、ちゃんと言えてないんだお!」
あ「むぅ〜!」

美「…あ、あはは…あ、ありがとうございます!それでは次に!」

美「ありちゅちゃん、メテオを使えるって……何者w 星村空理さん より」
キ「わっちも気になるんだお!」
あ「にゃ?」
美「偶然ですよね、偶然!」
キ「偶然って言えるような魔法じゃないんだお!あれは高密度の魔力の重ねがけと錬成した技術…」
あ「むずかしいのはわかんないです」
美「そうですね、難しいお話は置いておいて、次のお便りにいきましょうか」
キ「待つんだお!わっちの話を聞いて欲しいんだお!」
美「ほら…時間も時間ですし、今度にしましょう?」
キ「むぅ…じゃあ今度にするお!」
あ「おねーさんおねーさん」
美「はい?なんでしょうか?」
あ「めておってなーに?」
美「え、えっと…また今度ということで!」

美「次のお便りでーす」

美「「ありちゅ」がまさかの本名(の一部)だったり……団長さん、思ったより底が知れねぇ! 高機動型ヤドカリさん より」
キ「ありちゅって名前だったのかお!?」
美「そうですねぇ…お兄さんに聞いたらアリチュレーテって素敵な名前のようです♪…ってキッドちゃん一緒に居たじゃないですか」
キ「それどころじゃなくて忘れてたんだお」
美「あ〜…そうですね…」

美「たまこちゃん、これあげるからありちゅちゃんのお兄さんに近づかないでね・・・(鼻血のあと) Pさん より」
た「はいにゃ〜♪」
あ「にゃーーー!!どろぼーねこーーーーーーー!!!」
た「あ”…しまったにゃ、魚の匂いにつられて…さらばにゃー!」
あ「まてええええええ!!!」
パシッ
美「だ、団長さん落ち着いて落ち着いて!今はお便りコーナーの時間ですから!」
あ「ぐぬぬぅぅ!!!う〜〜!!」

美「次に行きましょ、ね?ね?」

美「そのメテオさえ受け止めてこそ、温かくアリス騎士団を支える紳士なのでs 佐藤 敏夫さん より」
キ「なんか途中で焦げてなくなってるんだお」
美「そうですねぇ…続きが何を書いてあるのかわかりませんが応援してくれてるみたいですね」
あ「はい、がんばります!」
キ「わっちも頑張るんだお!」
美「妖狐お姉さんもがんばりますね♪」

美「次です」

美「こんな絵日記が描きたかった! ΔUさん より」
キ「描けばいいと思うだお!」
あ「かきましょう!」
美「お絵かきは楽しいですからねぇ、もし差し支えないなら描いては如何でしょう?」
あ「はい、たのしーです!」

美「次に行きますね」

美「コメは初めてですが楽しく読ませていただいています♪
  ポテチちゃんまさか、久遠の闇を歩いてきたのか!? 伽夜さん より」
あ「はい、はじめまして」
キ「初めましてなんだお!これからも活躍するから期待してるんだお!」
美「初めまして〜♪ポテチちゃんはちょっと居ないのでコメントしづらいのですが多分違うかとおもいます」
キ「ぐお〜!静まれ我がサードアイズ…ってやつだお?」
美「それはもっと違うような…」
あ「ぐおー!しずめごぉるでんあいず!」
美「団長さん…それ違いますよ…」

美「次のおはがき行きますね」

美「ヤンデレな団長可愛いなw ainさん より」
あ「やんでれなってだれですか?」
美「いえ…やんでれな じゃなくて…いえ、誰でしょうね?」
キ「あの時はガチで怖かったんだお」
美「キッドちゃん…ガチって知ってるんですか?」
キ「知らんけど使ってみたかったんだお!」
美「は、はぁ…」



美「お便りはこれでおしまいですね」
あ「はい、おつかれさまでした!」
キ「お疲れだお〜」
美「潮ちゃんとレタスちゃんは私が責任持って送りますので先に団長サンとキッドちゃんを送りますね」
あ「はい、おねがいしまし」
キ「わっちは1人で帰れるんだお」
美「でも外はもう暗いから危ないですよ」
キ「大丈夫だお!それよりも1人で帰れない団長さんを送ってあげるといいんだお」
あ「むっ…ありちゅもひとりでかえれるもん!」
キ「途中でおねーさんこわいーとか言いそうな気がするんだお」
あ「だいじょーぶです!ぷん!」
美「あ、団長さん待っ…」
バタン!
美「あぁ…もうキッドちゃんってば!」
キ「う…ごめんだお…ちょっと調子にのったお…」
美「明日、ちゃーんと誤ってくださいね?」
キ「わかったお…」
美「それじゃ一緒に行きましょうか?」
キ「わかったお」





あ「う"ぁ"ぁ"ん"!お"ね"え"さ"あ"あ"ん"」




数分後、泣きながら戻ってくる団長さんの姿があったとさ…






どもども…ロッテンことRottenWingsです
すいません…一年程更新が止まってしまって…
いわゆるスランプ状態になって楽しくSSを書けなくなっておりました
大事ですよね楽しく書くのは…更新は遅めになりますが必ず完結させるのでご心配なく…



12/06/12 00:23 ロッテン

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