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まもむすゼーション!!

バーソロミュ

INDEX

  • あらすじ
  • %02 c=15d 第0期:ようこそ、図鑑世界(ゲーム)へ!
  • %02 c=15d 第1期:お姉ちゃんが出来ました
  • %02 c=15d 第2期:偵察!探検!調教!
  • %02 c=15d 第3期:現人神の決断
  • %02 c=15d 第4期:貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!
  • %02 c=15d 第5期:筆記は剣より強し
  • %02 c=15d 第6期:反撃は三倍返しで
  • %02 c=15d 第6期外伝:白きエミリア 黒きエミィ
  • %02 c=15d 第7期:井の中の蛙、海の広さを知る
  • %02 c=15d 幕間:眠り姫オーヴァードライブ 壱
  • %02 c=15d 第8期:興奮と驚愕と共に歩む日常
  • %02 c=15d 第9期:援軍
  • %02 c=15d 第10期:妹の心姉知らず
  • %02 c=15d 第11期:閣下は相当カッカしているようです
  • %02 c=15d 幕間:眠り姫オーヴァードライブ 弐
  • %02 c=15d 番外:まだ見ぬ指導者たちの肖像…(1)
  • %02 c=15d 番外:まだ見ぬ指導者たちの肖像…(2)
  • %02 c=15d 第12期:ハーピーたちの歌声が告げる
  • %02 c=15d 第13期:仁義なき姉妹喧嘩
  • %02 c=15d 13期外伝:みんな我慢してたんです
  • 幕間:眠り姫オーヴァードライブ 壱


    学院第2男子寮204号室。

    この部屋の住人の一人である鴻池智鶴が異次元で活躍している頃、
    もう一人の住人がこの部屋に戻ってきた。

    「くは〜っ、ただいま〜っと。なんだ、あいつはもう帰ってきてるのか。」

    彼は円谷 貫太郎(つぶらや かんたろう)。
    智鶴と同じ高等部3年生にして陸上部のエース。
    彼と智鶴は小学校以来の親友である。

    智鶴より30分遅れて帰ってきた彼は、これから一度着替えて
    夕飯の時間になるまで走り込みをするのが日課だ。
    何しろ寮が学院の敷地内にあるので、いったん身軽になってから
    陸上の練習に向かった方がいろいろと楽なのだという。

    「おーい鴻池〜?」

    呼べども返事がない。

    「おかしいな?いないのか?」

    彼は鞄を自分の部屋に放り投げると、智鶴の部屋に入る。
    なお、この寮の部屋は2LDという学生寮にあるまじき立派な構造で、
    共有スペースのほかにそれぞれ自分のプライベートルームを持てる。
    ただし食事は基本的に食堂で、トイレや浴場は共用だ。

    それはともかく、部屋に入った貫太郎が見たのは
    制服のままでベットにあおむけに寝ている智鶴の姿と、
    ゲーム画面が付いたままのデスクトップパソコンだった。

    「おいおい、寝てんのか。しかもパソコンつけっぱなしでよ。
    ったく子供じゃねえんだから……仕方ない、上に何かかけて…」

    チャッチャラチャーチャー♪チャッチャラチャーチャー♪
    チャッチャラチャーチャー♪チャッチャチャ〜〜♪

    「うおっ!?携帯か!?」

    何か毛布でもかけてあげようかとしたとき、智鶴の制服ズボンのポケットから、
    ワーグナーの『ワルキューレの行進』が大音量で流れる。
    ところが智鶴が一向に目を覚ます気配がないので、
    仕方なく貫太郎が電話を取ることにした。

    『もしもし、ちーちゃん?』

    電話してきたのはどうやら生徒会長のようだった。

    「えー、この電話は現在使わ……いやいや、この電話はあと5秒で爆発しま―」
    『その声は油屋ね。』
    「ばれたか。あと油屋言うな。」

    『油屋』は貫太郎のあだ名。よく油売ってるので油屋なのだとか。

    「いま鴻池はぐっすり昼寝中だぜ。要件なら俺が伝えておく。」
    『そう、だったらちーちゃんを起こして生徒会室まで戻ってくるように言ってもらえる?
    早めに終わらせちゃいたいことがあるからよろしくたのむわ。』
    「あいよーっ。」

    ピッ!

    「…っと、われらが会長は相変わらずお忙しいことで。おーい鴻池〜!
    起きろ〜!お〜い!お客さ〜ん!終点ですよ〜!車庫にしまっちまうぜ〜!」

    智鶴を起こそうと容赦なく彼の体をシェイクする貫太郎。
    耳元で大声で叫んでみたり、頬をぎゅっとつねったりしてみる。
    ところが、何をやっても彼は寝息を立てるだけで一向に目覚める気配がない。

    「おかしいな……?全然おきねぇじゃんか。
    お前のせいでまた油屋油屋言われるのはごめんだぜ。
    お〜き〜ろ〜!め〜を〜さ〜ま〜せ〜!」

    うんともすんとも言わない。

    「………なんだろう、何かの病気か?と、とにかく会長に電話しておこう。
    ぴっぴっと…、もしもし〜会長〜、俺俺〜。」
    『オレオレという頓珍漢な名前の知り合いはいないわ油屋。ちーちゃんを出しなさい。』
    「油屋言うな。それよりさ、鴻池が一向に目を覚まさねぇんだ。」
    『目を覚まさない?』
    「いや、一応生きてるし息もしてるさ。でもよ…揺すれど叩けどちっとも反応がねえ。
    悪いがこっちに様子を見に来てくんないか?俺も心配でよ。」
    『そう……、わかったわ、今そっちに向かうから。』
    「おうよ。」

    ピッ!


    「ったく……、お〜い鴻池、本当にどうしちまったんだ〜………」

    一向に起きない智鶴に貫太郎もだんだん焦りを覚え始める。
    もしかしたら本当に何かの病気かもしれない。
    そうでなければ、これだけ色々やっても起きないのは明らかに異常だ。

    と、ここで彼はふとつけっぱなしのパソコンの画面を見た。
    智鶴がゲームを起動したときにはまだオープニング画面だったが、
    彼が意識を失って何も操作してないにもかかわらず
    なぜか画面内では自動的にゲームが進行していた。

    「…?何のゲームだこれ?もしかしてこの前こいつが買ったやつか?
    にしても複雑そうだなこのゲーム。俺はこういうゲームは好きになれないぜ。」

    今のところ彼はこのゲームに興味はないようだった……
     
     
     
     
     
    ……



    それから10分くらい…


    ピンポーン♪

    「失礼します。生徒会会計局長の風宮です。会長をお連れ致しました。」
    「あいよーっ。」

    玄関のチャイムが鳴り、執行部の来訪を告げると、
    円谷は足早に玄関に駆け寄って扉を開いた。
    寮則の規定で、来訪者は勝手に生徒の部屋のドアを開けてはいけない
    ことになっているので、必然的に彼が出迎えることになる。

    「おじゃまするわね。ちーちゃんの様子はどうかしら?」
    「失礼します。」
    「失礼いたします。」
    「失礼致しますわ。」
    「おっと、全員で来たのか。まあ上がってくれ、お茶は用意してないけどな。」
    「すぐ帰るんだから別にいいわよ。」

    生徒会執行部……智鶴を除く女子3人と男子1人が次々と部屋に入ってくる。
    メンバーは

    会長:神近 真織(かみちか まおり)3年女子
    副会長:九重 緋水(ここのえ ひみな)2年女子
    会計局長:風宮 更級津(かぜのみや しなつ)2年男子
    書記:相川 アイリ(あいかわ あいり)2年女子

    誰もが一癖も二癖もあるマイペース人間たちであり、
    同時に歴代生徒会執行簿の中でも最高の質と名高い精鋭でもある。
    その者たちが一堂にそろって足並み乱さず入ってくると、
    普通の人にとってはなかなか威圧感ある光景になる。
    面の皮が厚い貫太郎には特に問題はないが。


    「ほう、これは。」
    「ぐっすりお休みなっていらっしゃいますね評議長。」
    「だろう?揺すっても叩いてもこの通り反応なしだ。」

    まず副会長と会計局長がしきりにさすってみるもやはり効果がない。
    表情一つ変えずに安らかな寝息を立てるのみである。

    「生きてはいるみたいね。具合も悪くなさそうだし、安心したわ。
    それにしても……眠りが深すぎるわね。ん〜……」

    真織会長も智鶴の頬っぺたを何度もビンタしながら、
    尋常じゃない眠りの深さに首をかしげていた。

    「ほーら、起きなさ〜い、起きなさい。往復ビンタくらわすわよ。」
    「もう食らわしてんじゃん……あと、会長の往復ビンタはシャレにならんから
    あんまり強くやりすぎないでやってやれよ?」
    「起きない悪い子にはお仕置きよ。それともあなたが食らいたいのかしら?」
    「あのなぁ……。」
    「ふぅん、まあいいわ。とにかく異常事態だってことはわかったわ。
    学院病院で一度検査を受けさせて――」
    「神近会長、ちょっと気になるものが。」

    真織と貫太郎が真面目なのか不真面目なのかよくわからない会話をしているところに、
    書記のアイリが現在進行中で動いているパソコンに目を付けた。
    あれから貫太郎は何となくパソコンをつけっぱなしにしていたが、
    彼が触れていないにもかかわらずゲームはどんどん進行しているようだった。

    「シヴィライゼーション(Civilyzation)じゃない。」
    「存じていらっしゃるのですか神近会長。」
    「ええ、母親が結構はまっててね。この国じゃあまり知名度ないから
    みんな知らないと思っていたんだけど。ちーちゃんがやってるなんて珍しいわね。」

    一目見て、会長はこのゲームがなんなのかを見抜く。
    どうやら彼女もプレイ経験があるようだ。
    付近で見ていた副会長を横にどけると、マウスを手に取って動かそうとする。

    「あら?マウスでの指示ができないじゃない。」
    「だろう、俺もそれ何度か試してみたんだが何が何だかさっぱりでよう。」
    「変ね…私が操作しなくても勝手にゲームが進んでるわ。」
    「これって、そういうゲームじゃないんですか?」
    「見てるだけで進むゲームなんてありゃしないわよ。」

    とはいえ真織が引っ掛かりを感じたのはそれだけではなかった。
    彼女はこのゲームをそこそこ長い間やっている方なのだが、
    画面に映る様々なもの……ユニットや文明、技術などが
    どれもこれも原作にはない初めて見るものだったのだ。

    (何かのModかしら……こんなファンタジー世界みたいなの、初めて見るわ。)

    ちなみにMod(Modification)とは、グラフィックエンジンなどの基本システムを用いて、
    本編とは別のシナリオやグラフィック、モデル、システムのゲームを追加したもので、
    その気になれば個人でも気軽に別ゲームを作ることだってできてしまう。
    例えばSFものだったり、一つの時代を中心としたストラトジーや、
    ゲームシステムの一部をより細分化したりなど活用方法はさまざまある。
    仮に今画面内で進行しているこれもModだとすれば、今までにない
    大がかりなModだろうと予想される。

    「興味深いわ………見てみなさい、プレイヤーの欄にちーちゃんの名前があるのわかるかしら。」
    「これ、ですかね。たしかに『智鶴』と……横の数字は得点でしょうか。」
    「だいたい真ん中あたりなんだな。いいのか悪いのか微妙なところだぜ。」
    「私が思うに…ちーちゃんの意識はもしかしたらゲームの中にあるんじゃ……」
    『ええっ!?』

    真織の突拍子もない考えに貫太郎と副会長と書記が、
    信じられないものを見たかのように驚きの声を上げる。

    「はっはっは……またまたそんな三文小説みたいな…」

    悪かったな三文小説で…

    「でももしそれが真実だとしたら………ふふふ、面白そうね。」

    寝ている智鶴の様子を見ているアイリ書記以外のメンツは、
    真織の言葉を聞いてからしきりにゲーム画面に食いつき始めた。
    現在画面内では今まさにライオンハートがいい笑顔で智鶴に宣戦布告したところ。
    パパパパウワードドン!のラッパの音とともにわらわらと動くユニット。
    その動きは本当にプレイヤーが動かしているかのようだった。

    「―――とりあえず、現時点では事を荒立てるのはやめたほうがよさそうね。
    しばらく様子見といったところかしら。幸い明日から連休だし、時間はたっぷりあるわ。」
    「そう…だな。今のところ眠ってるだけだし。よし、俺もしばらく付き合うか。」
    「油屋、あなたはそろそろ大会が近いんだから、練習に精を出しなさい。
    理由を付けてサボるのは会長である私が許さないわよ。」
    「ヒデェ!ダチを心配するのは親友として当然だろ!あと油屋いうな。」
    「まあまあ先輩方。」

    温厚な緋水副会長が先輩二人の口げんかを早々に収める。

    「ですが会長、いま『面白そう』と言いませんでした?」
    「気のせいよ。」

    そういいながら、真織の目はやはりどこか愉快そうに笑っているような気がした。

    12/10/30 16:35 バーソロミュ   

    ■作者メッセージ

    設定……月読学院

    四方を山に囲まれた盆地に位置する巨大な学園都市を持つ私立学校。
    その始まりは、とある巨大財閥が衰退しきった地方自治体を動かして、
    新たに学園都市にするという前代未聞の経緯を持つ。
    月読学院の特色は『将来のこの国の文化を担う人材の本格的な育成』であり、
    この学校に通う生徒たちは、将来何かしらの専門職になることを期待されている。
    そのために、時には学業よりも専門分野の修業が優先され、
    夢の実現のためには学院も学生のサポートを惜しむことはない。
    結果、この学院の卒業生たちの多くがその道の達人となり、
    その業績が月読学院の知名度を押し上げることとなった。

    生徒たちが目指す分野は様々で、それは将来世界的な活躍を目指す
    陸上や水泳、サッカー選手から文楽や歌舞伎、書道などの文化人、
    さらには一流の料理人やエリート軍人を目指す者もいる。
    その中で、本作の主人公である鴻池智鶴は格式高い神社の生まれであり、
    神職を継ぐために学業と並行して、神事の修業をしていたりする。
    友人も、一流のアスリートを目指す円谷貫太郎をはじめ、
    エンジニア、画家、噺家、パティシエなど一筋縄ではいかない職業がそろう。
    必ずしも、親たちからきめられた道を歩む必要はなく、
    本人の強い希望があれば別分野を学んだり、普通の大学に進学することもできるが、
    そういった学生は現在ほとんど見られない。

    学園都市の敷地内には高等部・中等部・小学部・幼稚舎が併設されていて、
    万単位の学生を収容できるほか、居住性の高い寮も完備されていたり、
    住宅地や繁華街、農場なども存在するほか、神社や寺院、劇場もあるなど
    今でもどこか元あった都市の面影が強く残っているのも粋である。
    公共交通は循環路面電車とステップバスがあり、繁華街には
    山向こうの首都まで続く鉄道が走っている駅もあり、
    最新鋭の超特急、リニア特急も走っているのがポイントである。
    ただし、その地形故空港や港は存在しない。

    学園都市は、上空から見ると非常にきれいな八角形をしている。
    その綿密に計算され、地形を最大限に活用した学園都市の形は
    「何かしらの不思議な力を湧き起こしているのではないか」と噂され、
    オカルトマニアの間で話のネタにされることも多いのだという。