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まもむすゼーション!!

バーソロミュ

INDEX

  • あらすじ
  • %02 c=15d 第0期:ようこそ、図鑑世界(ゲーム)へ!
  • %02 c=15d 第1期:お姉ちゃんが出来ました
  • %02 c=15d 第2期:偵察!探検!調教!
  • %02 c=15d 第3期:現人神の決断
  • %02 c=15d 第4期:貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!
  • %02 c=15d 第5期:筆記は剣より強し
  • %02 c=15d 第6期:反撃は三倍返しで
  • %02 c=15d 第6期外伝:白きエミリア 黒きエミィ
  • %02 c=15d 第7期:井の中の蛙、海の広さを知る
  • %02 c=15d 幕間:眠り姫オーヴァードライブ 壱
  • %02 c=15d 第8期:興奮と驚愕と共に歩む日常
  • %02 c=15d 第9期:援軍
  • %02 c=15d 第10期:妹の心姉知らず
  • %02 c=15d 第11期:閣下は相当カッカしているようです
  • %02 c=15d 幕間:眠り姫オーヴァードライブ 弐
  • %02 c=15d 番外:まだ見ぬ指導者たちの肖像…(1)
  • %02 c=15d 番外:まだ見ぬ指導者たちの肖像…(2)
  • %02 c=15d 第12期:ハーピーたちの歌声が告げる
  • %02 c=15d 第13期:仁義なき姉妹喧嘩
  • %02 c=15d 13期外伝:みんな我慢してたんです
  • 第7期:井の中の蛙、海の広さを知る


    今期の格言

    「『雑草』という名の草は存在しません。どの草にも名前はあるんです。
    そしてどの植物にも名前があって、それぞれ自分の好きな場所を選んで
    生を営んでいるんです。人間の一方的な考えで、これを切って掃除してはいけませんよ」

    ――ジパング・天皇の回顧録より





    「聖エロニア共和国陥落を祝って、乾杯!」
    『カンパーイ!!』

    カチャーン!


    ダークエルフ国では、敵の一つだった聖エロニア共和国を下したことを祝って、
    豪華な宴会が催されることになった。
    初戦を華々しい勝利で飾ったダークエルフたちは、
    どの町でも戦勝を祝い、この戦いを勝ち抜いた現人神、智鶴を褒め称える。

    「智鶴様万歳!ルーツィエ族長万歳!」
    「この戦いでようやく私も念願の愛奴隷を手に入れたわ……うれしい♪」
    「今ならどんな国が相手でも負ける気がしないさね!」

    そしてひときわ喜びが大きかったのはルーツィエとザリーチェ。
    首都クロケア・モルスにある宮殿で行われる先勝パーティーには
    リートゥスから取り寄せた魔界ワインをはじめ、
    テーブルには今までにない豪華な料理が用意されていた。
    ルーツィエの音頭で乾杯が叫ばれた直後、場にいるダークエルフたちは
    さっそく遠慮なく飲み食いを始める。
    その中で智鶴は………

    「あら智鶴君、ワイン飲まないのかしら?」
    「だって僕は未成年だし。まだお酒は飲めないかな。」

    ザリーチェが智鶴にワインを勧めるも、
    彼はまだ高校生…現実世界では未成年者の飲酒は固く禁じられている。
    それが普通だと思っている彼はワインに手を付けようとはしない。

    「ふふふ……ちーちゃん、飲まないなんてお姉ちゃんが許さないわよ♪」
    「そうですよ智鶴様!おいしいんですから!」
    「わぁ、ちょっ……ルーおねえちゃん!?それにエミィまで!?」

    だが、そうは問屋が卸さない。さっそくルーツィエとエミリアが智鶴に絡んでくる。
    ルーツィエはまだしも、エミリアはもともと自分が率いていた国を倒した記念の
    宴会を楽しむのはどうかとも思うが、もう中身は智鶴によって魔に染まってしまった彼女は、
    一口飲んだだけで酔いが回ったようで、赤ら顔で彼にせまる。

    「ほら、観念して飲みなさいったら♪」
    「あうあうあう……。」

    結局断りきれなかった智鶴は、グラスを片手に意を決すると
    グラスを傾け、ワインを一気に飲み干した。
    自分がアルコールに強いかどうかも分からぬまま飲んだワインは、
    いざ飲んでみるととても口当たりがよくまったりとした味がする。
    思ったほど悪くない。いや、むしろ……

    「おいしい……。」
    「でしょう♪この世界ではまだなかなか取れない魔界産の果物を使った、
    上等なお酒なんだから、まずいわけがないじゃない。」
    「智鶴様〜!今度はエミィが口移しで飲ませてあげます〜!」
    「その次はお姉ちゃんに口移しで飲ませてほしいな♪」
    「うん、いいよ!みんなで一緒に飲み明かそう!」
    『いやっほーうぃ!!』

    「あらあら、意外と上戸のようね。」

    智鶴のテンションが上がったことで、場の勢いがさらに盛り上がり、
    全員飲めや歌えやの大騒ぎとなっていった。

    「よーし!久々に私の自慢の歌声を披露しちゃおっかな!」
    「いよっ!族長!待ってました!」
    「私鍵盤を演奏しますね!」
    「だったらわたくしがクラリネットを!」

    ルーツィエは歌が得意で、直属の部下たちもその場で演奏を始める。
    さすが創造志向の指導者だけあって、文化的な特技を持っている彼女。
    初対面だと結構意外に思うかもしれない。

    「ルーおねえちゃん!僕も歌うよ!」
    「エミィも〜!」

    こうして、初めはとても賑やかに進んでいった宴会だったが、
    時がたって誰もが酔いしれてきたころになると、場の雰囲気が徐々に変化してくる。
    まず、夫もちの者たちは宴会のさなかであるにもかかわらず次々と離席し始める。
    彼女たちはすでに体からこみあげてくる熱い性欲に支配され始め、
    ふらふらとした足取りで人目のつかないところにいくと、
    そこで交わり始めてしまった。

    それもそのはず、今回の宴会で出されたワインは『陶酔の果実』という
    特殊な果物を抽出したもので、飲んでいくうちに
    その名の通り陶酔するように情欲に支配されてしまう。
    そうとも知らずに多量に飲酒してしまった智鶴は……

    「んん〜…おっぱいふかふか〜♪」
    「あんっ♪智鶴様ぁ……っ!智鶴様がわたしのおっぱいを…♪」
    「あ〜!あなたずるい〜!私も智鶴様におっぱいもんでもらうんだもん!」
    「私も……一度でいいから智鶴様と…キスしてみたかったんですぅ…♪」
    「……あら、智鶴君。ユニットにまで手を出しちゃって、エッチなんだから♪」

    いつもは性的な行為に抵抗を示す智鶴が、こともあろうか
    同じ宴会場で飲んでいたダークエルフ軍最精鋭のユニットに、
    子供のような笑顔で思いっきり抱き着いて、甘えはじめていた。
    そうやら彼は陶酔の果実の免疫がほとんどなかったせいで、
    その影響をもろに受けて、一時的に性格が幼児退行しているようだ。

    「ちーちゃん…ようやく素直になってくれてお姉ちゃん嬉しいわ♪」
    「エミィも〜!エミィも〜!ちゅっちゅしてください〜♪」

    で、名もなきダークエルフたちと睦み合う智鶴を見たルーツィエもエミリアも、
    嫉妬して怒り狂うどころか、むしろ彼女たちもその場に混ざりはじめた。

    「あなたたちの部隊は今まで一番よく頑張ってきたわね。
    その功績を認めて、ちーちゃんに初めてを捧げさせてあげるわ♪」
    「族長……!いいんですか…!」
    「ね、ちーちゃんもいいよね♪」
    「うん!」
    「智鶴様に……エッチしてもらえるなんて♪はぁ…まるで夢のようです♪」
    「ずっと前から…好きでした♪んっ…ちゅっ、ちゅぷっ……♪」


    こうして、すっかり出来上がった智鶴とルーツィエ、それにエミリアと
    ダークエルフ1ユニット達はもつれ合うようにベットへと向かってしまう。

    「まあ、結局こうなるわけね。
    お酒なんかよりも愛する人の味のほうがよっぽどおいしいもの。」

    そしてただ一人宴会場に残ったのはザリーチェだけとなった。
    彼女もかなり飲んだはずなのに平然としているところを見ると、
    どうやら相当酒に強い体質のようだ。
    どんちゃん騒ぎが終わり、あたりに瓶や皿が乱舞している景色の中で、
    彼女が余韻に浸るようにくつろいでいたところに、
    一人の女性が宴会場に入ってきた。ヴァル=フレイヤだ。
    どうやら彼女はいったん都市国家エリエールに戻って戦果報告をしてきたらしい。

    「あらおかえりフレイヤさん。残念ながら宴会はもう終わっちゃったわよ。」
    「いえ、私もエリエールで宴に出席してきたのでかまいません。
    しかし……これはまた盛大に散らかしましたね。片づけ大変じゃないですか?」
    「いいのよ、今日くらいはめ外しても。また明日からは仕事がいっぱいあるんだから。
    それよりもフレイヤさんもこのワイン一杯どう?おいしいわよ。」
    「そ…それはちょっと……。あ、それよりもザリーチェさん。
    実はこのところ少々気になる情報が手に入りまして。」
    「何かしらね。急を要することかしら?」
    「リートゥス海神連合から新大陸の発見の報が……。」
    「そう……。フレイヤさん、何か思うところはあるのかしら。」
    「…私たちダークエルフ国は、聖エロニア共和国領を手中におさめましたが、
    新大陸が発見されたことで世界はさらに広がりました。
    この大陸だけでも、とても広く感じるのに……世界を手中に収めるには
    果たしてどれだけの年月と労力が必要となるのかと。」
    「そうね、この世界を征服すると言うのなら、それは途方もない事業になる。
    しかし……智鶴君の頑張りによっては、無駄な血を流さずとも
    世界の勝利者となることは、十分可能だと思うわ。そう…
    それだけ世界が智鶴君に優しいのならば。」

    ザリーチェの目は、どこか遠くを見つめていた。
    彼女は数少ない『この世界のすべて』を知るもの。
    しかし、彼女はまだ派手に動くわけにはいかなかった。


    で、そのころ指導者の智鶴はと言えば……


    「んああぁっ!!やっと……私を抱いてくれた…♪」
    「ふあっ……はっ♪この腰使い…っ!たまりません……♪」
    「ふふふ、ちーちゃんは私がずっと鍛えたからね♪
    かき回されただけで何も考えられなくなっちゃうわよ。」
    「は……早くぅ…私にも下さいっ!」
    「イくっ!!イっちゃいますぅ♪智鶴様の優しい指でイっちゃううぅぅぅっ!」
    「はぁっ、はぁっ……好きだよみんな!みんな愛してる!」
    「うれしい…です♪あっ、あはぁっ♪」

    夜通しで乱交していましたとさ。











    そして次の日の朝。

    「や…やっちゃったぁ………」

    夜が明けて陽がのぼり、深緑の森を朝日が照らす頃、
    クイーンサイズのベッドの上で目を覚ました智鶴が見たのは、
    全裸のまま眠るダークエルフが『四人』とダークエンジェルが一人……
    額に手を当てて昨日のことを思い起こすと、
    恋人が二人もいながら、一般兵にまで手を出してしまった罪悪感が
    ひしひしと募り、自己嫌悪に陥ってしまいそうになる。

    そもそも元いた現実世界では重婚は法律で禁止されている以前に、
    女性の人権を大きく損なう反道徳的な行為として、
    批判の的にされてもおかしくはないのだ。
    それが常識の彼は、どれだけ気まずい思いをしたことか。


    「う〜にゅ……智鶴様…?おはよぉございますぅ……。」
    「えっ!?あ、えっと…おはよう。」

    ダークエルフ兵の一人が目を覚ました。
    枕元で横になっていた彼女はゆっくり体を起こすと、
    智鶴の背中から腕を回して背後から彼をぎゅっと抱きしめた。

    「智鶴様……昨日は、優しくしていただいて、とても嬉しかった…」
    「そ、そんな……僕はただお酒のせいで迷惑を……えっと…」

    と、ここであることに思い至る。

    「そうだ、君の名前、聞いてなかったね。」
    「名前ですか?私には名前はありません。ダークエルフの一兵卒ですから。」
    「名前がない……それはちょっとかわいそうだね。」

    当たり前だが、ゲームの中で生産したユニットにいちいち名前が付けられることはない。
    偉人や英雄など歴史にその名を残し、重要な役割を担う者たちは
    名前がついている者も多いが、画面外で操作しているプレイヤーにとって、
    効果が同じならばそれほど気にすることはないだろう。
    消しゴムや鉛筆に名前を付ける人がほとんどいないのと同じことだ。

    しかし、今智鶴はゲームの中にいてこうして駒に過ぎなかった
    『ユニット』と肌を重ね、すっかり愛着を持ってしまっている。
    名前で呼べないのはいささかさみしい。

    「…エテ。エテなんてどうかな、君の名前!」
    「智鶴様!?も…もしかして、私に名前を……?」
    「うん。やっぱだめかな?」
    「嬉しい……智鶴様に名前を付けていただけるなんて…。
    エテ…私の名前、もっとその名で呼んでください……。」
    「うん、これからもよろしくね、エテ。」
    「はぁぁぅ、感激です♪」

    「智鶴様ぁ、一人だけなんて嫌ですよ。」
    「わ、私も名前が欲しいです!」
    「ごめんごめん!起きちゃったんだ…大丈夫、君たちにも名前を付けてあげる。」

    二人の会話につられて目が覚めた二人にも智鶴は名前を付ける。
    片方にはイユ、もう一方にはクーと命名した。
    これにより一番初めに生産され、数々の経験を積んだこの5レベルの剣士ユニットは
    表示名にエテ/イユ/クーと書かれ、ほかの部隊とはっきり区別されることになった。

    これ以降智鶴は、頑張って強くなったユニットには名前を付けることにした。





    ………
     
     
     
     
     
     
     
    さて、ここから先はまたゲームを進めてみよう。
    だがその前に状況確認を行おう。


    ザリーチェ:
    じゃあここからは私が今の状況をちゃっちゃと話すわね。
    まず、今私たちがいる大陸からは、北方の平原地帯にいた聖エロニア共和国が
    私たちに併合されたことで滅亡した……。これれで私たちのいる大陸には

    ・ダークエルフ……7都市
    ・翠緑の護り手……4都市
    ・リートゥス海神連合……6都市
    ・トメニア王国……7都市
    ・ヴァルハリア教国……8都市
    ・ローレアープ山脈連邦……3都市
    ・ゴルカス鉱山国……5都市

    の七勢力がいることになるわね。

    私たちダークエルフの宿敵、エルフ勢力の翠緑の護り手たちは
    ヴァルハリアのリチャードライオンハートの攻撃を受けて衰退したけど、
    後半は防御の高さを生かして致命傷を免れたみたい。
    エルフたちは内政力が高いから、すぐに盛り返す可能性もあるわ。

    リートゥス海神連合は大陸には二都市しか配置してないけど、
    「海洋志向」のおかげで早くも外洋に進出した彼女たちは
    海上の離島に次々と都市を作って、海上経済を構築してるわね。
    今のところ彼女たちは私たちの最友好国だけど、気になるのはその軍事力の低さ。
    いざというときには私たちが守ってあげなければならないかもしれないわ。
    隣国のトメニア王国の動向も気になるところね。

    その隣国のトメニア王国。最近空気なこの国だけど、内政力はなかなかのものよ。
    このところずっと平和だったから、十分な国力ももってると思うの…
    隣接してはいないとはいえ注意しないとね。

    この大陸の最大勢力になった、ライオンハート率いるヴァルハリア教国は
    今のところ最も危険な勢力の一つだと思うわ。
    エルフとの戦争で国力を大幅に伸ばした彼らは、次の獲物を虎視眈々と狙ってるみたい…
    まったくをもって迷惑な勢力ね…。こちらに来ては欲しくないけど、
    かといってまた別のところを攻めてこれ以上大きくなるのも困るしね。
    幸い内政が放置気味なのがせめてもの救いかしら。

    ローレアープ山脈連邦は相変わらず動向がよくわからないわね。
    立地が荒地だらけの不毛の地でだいぶ良く頑張ってるし、
    『ニルホーン条約』っていう巨大なサイクロプスを3体召喚する遺産を
    作ってるみたいなんだけど……有効活用できてないみたいだし。
    そうね、どこか臆病で防衛意識過剰なようね。

    対するゴルカス鉱山国も、不毛な立地の中で積極的に拡張してるみたい。
    ローレアープ山脈連邦と戦争していて、何度も交戦してるらしいけど
    どうも千日手になってて厭戦が深刻な問題になってるみたいね。
    外交も秩序よりだし、仲良くできそうにないかも。


    当面は隣国のエルフとライオンハートへの対策が課題かしらね。
    エロニアとの戦争で遅れた内政を取り戻さないと。




    ……
     
     
     
     
    「よーし!久々の内政タイムだ!頑張っちゃうよ!」

    戦争をあまり好まない智鶴は、ようやく平和になったことで内政に注力することにした。
    元エロニア共和国出身の労働者もそこそこ確保できたし、
    やることはたくさんある。いい意味で忙しくなるだろう。

    「じゃあルーお姉ちゃん、まずは国教を無宗教から『緑葉の同胞』に変更するよ。
    そしてそのあとに、経済体制を『大自然の守護者』に決定だ。」
    「えー…お姉ちゃんは『ちーちゃん教』がいいな〜」
    「そ、そんな宗教ないからね!」
    「いいもん。土着信仰として地道に布教するんだから。」
    「エミィも手伝うよー!」
    「いやいやいや…それにエミィは今まで信じてた神様はどうするの……」
    「今までのエミィは間違っていました!智鶴様こそ、
    この世界の人々を救うことができる唯一の人だと信じています…!
    智鶴様は…エミィのご主人様で、憧れで………大好きな人で…とってもお徳用なのです♪」
    「お徳用って……僕は洗剤か何かなの…?」

    すっかり変わってしまったエミリアにいまだに困惑しっぱなしの智鶴だった。

    進行はエロニア共和国を併合した次のターンから。
    まずは国教を変更し、無宗教から『緑葉の同胞』というエルフにとって重要な宗教を
    国教に据えることにする。これは、森林を最大限に活用できるエルフ種ならではの
    効果が山ほどあり、固有の社会体制『大自然の守護者』は内政問題を一気に解決できる。
    ほかにも国教を制定することで司祭ユニットが作れるようにもなり、
    回復魔法や司祭が持つ魔法を行使することも可能となる。
    魔法が強いこの国には欠かせない存在だろう。その宗教固有のユニットや、
    場合によっては英雄も生産できるが、英雄はすでにエルフたちにとられているようだ。

    「この後しばらくは国教は緑葉でよさそうね。お姉ちゃんも悪くないと思うわ。
    でも、いつかはもっといい宗教に乗り換えたいところね。」
    「そうかな?僕はもうずっとこのままでいいと思うんだけど。」
    「ふふふ…もしこの後また戦争がおこったときにね♪」

    そういってルーツィエは意味深な笑みを見せた。

    「次に研究は魔法を優先させよう。ある程度魔法の研究を終えたら、今度は騎兵の研究だね。」
    「私たちダークエルフには弓騎兵の固有ユニットもあるしね。」

    ダークエルフの固有ユニットの一つ『フュルドウェル』は、
    馬の代わりに鹿に騎乗する変わったユニットで、森林戦闘に強いほか
    なんと初めから『特別奇襲』という強力な昇進(能力)を持っている。使わない手はない。

    「じゃあルーお姉ちゃんは森林都市の開発をお願い。」
    「わかったわ。これからは信奉者(シスターや僧侶みたいなもの)も増やしていくわね。」
    「エミィは、元エロニア領の再整備を進めてくれるかな。」
    「はい!頑張ります!」

    二人は任務遂行のためにさっそく飛び出していった。
    頑張ったら頑張った分だけ、夜には智鶴にも頑張ってもらうと約束してしまったため
    二人とも大張り切りだ。現金なものである。

    「智鶴君、ちょっといいかしら?」
    「どうしたのザリーチェさん。」

    ルーツィエとエミリアが退出するのと入れ替えに入ってきたザリーチェ。

    「ちょっといいお知らせがあるわ。都市画面を開いてみなさい。」
    「えっと……あれ?なにか見慣れないものが建てられるみたいなんだけど。」

    首都で生産できるものの一覧に『大図書館』なる建物があった。
    これは……いわゆる『世界遺産』と呼ばれる建物で、世界で一つしか建てられないものだ。
    世界遺産は多数存在し、効果も様々。中にはかなり強力な効果を持つものもある。
    その中でもこの大図書館は、なかなか有用な効果を持っているのである。

    「運がいいわね、もうすでにどこかの国にとられちゃったかと思ってたのに。
    これからは偉大な賢者がたくさん必要になるはずだから、ぜひ建てておきたいわね。」
    「う、うん!早く建てちゃおう!元エロニア領から資源の『大理石』も取れるし!
    ダークエルフ的にちょっとまずいかもしれないけど、伐採で生産速度加速だ!」

    智鶴は思い切って、首都で大図書館の建造に着手した。
    今までほかの国がなぜ見逃していたかはわからないが、先を越されてもおかしくはない。
    あらゆる手段を用いて、急いで生産を始める。

    まず大図書館建造の前提として、通常の建物…図書館を3都市に建てる必要がある。
    研究力を優先的に高めてきた智鶴はいつの間にか条件を満たしていたようだ。
    さらに資源の『大理石』があれば建設スピードが半減する。
    その上で、彼は首都周辺の森林伐採を開始する。ダークエルフにとっては
    あまり好ましくないことだが、森を伐採することで都市の生産力を一時的にブーストできる。
    まあ…しばらくすれば再び生えてくるのでそこまで気にしなくてもいいが。
    伐採による生産ブーストはどの国でも有効なので、使い時を考えて木を切りまくろう。

    「ふぅ……やることがいっぱいあって目が回りそうだ。」

    都市が今までの二倍に増えたことで、智鶴の操作量も二倍になったのだから
    疲れないわけがない……その上、今後はもっと増えることが予想される。
    しかし彼は腐っても元の世界では生徒会役員をやっていたのだ。
    すぐに慣れてくるだろう。

    「ちょっと!誰が腐ってるって!?」

    解説にツッコミいれても無駄です☆

    「くううぅぅ………おぼえてろよー!」



    数ターン経過…




    「ごめんくださーい♪」
    「こんにちはルミナさん、今回はどんな御用ですか?」

    すっかりお得意様になったリートゥス海神連合が取引を持ちかけてきた。

    「実は私たち結構お金が入用になりまして、地図を買っていただきたいんです。」
    「地図を…?う〜ん……」

    どうやらルミナは地図…つまりリートゥスが探索した視界を50ゴールドで売るというのだ。
    出せない金額ではないが、少々不利な取引だと思われる。
    もっとも……この程度の不利な取引はまだましな方なのだが。

    「わかりました、地図を買いましょう。」
    「本当ですか!ありがとうございます!助かりました!
    大海原を探検出来る勢力は世界でも私たちしかいませんので、結構貴重ですよ♪」
    「ははは〜」

    結局友好のために取引を成立させた。多少断ったくらいでは友好にひびは入らないが、
    逆に今以上に仲良くするには多少不利な取引でも我慢したいところ。

    さて、早速もらった地図を広げてみた智鶴。
    そこで彼は驚愕の事実を知った。




    「……………ひろい!」


    今までは自分たちがいる大陸しか目に入っていなかったが、
    それでもこの世界はなかなか広いなと思っていた。
    しかし…地図が手に入ったことで自分たちはまだ井の中の蛙だと思い知らされた。

    ダークエルフ領はこの大陸の東端に縦長の形をしているが、
    その東側の海を越えてすぐのところにもう一つの大陸があることが判明した。
    しかもこの東の大陸とは、旧エロニア領のさらに東北…北極圏に近い地域と
    千島列島のようにいくつもの小さな島で結ばれているらしい。
    ダークエルフ文明はまだ船で外洋には出られないので海向こうは探索できない
    と思っていたが、この島々の縁をたどっていけば新大陸に行ける可能性もある。

    そしてもう一つ………今度はリートゥス海神連合の勢力圏は
    ダークエルフたちの領土の南にある首都を中心に、南海上の島々に点在しているらしいのだが、
    それよりさらに南に、さらなる大陸を発見していた。
    しかもこの大陸……大きさが、自分たちのいる大陸よりはるかに大きいようだ。

    「この世界の頂点に立つ……果たして僕にそんなことができるのかな…」

    この世界の大きさに思わずため息をつく。
    この大陸で生き抜くだけでも結構大変なのに、これ以上強大な敵が出てきたら?
    そう考えると不安になるが、同時になぜか心の中のわくわくが止まらない。



    バターンッ!

    「ちーちゃーん!いるー?」

    いきなり大きな音が聞こえて、驚いた彼は瞬時に振り向く。

    「うわぁ、ルーおねえちゃん!?の、ノックしてよ!びっくりするじゃないか!」
    「ごめんわざと。ちーちゃんの驚く顔が見たかったから♪」
    「もう…ひどいよお姉ちゃん…」
    「ふふふ、相変わらずかわいい反応♪」

    突然入ってきたルーツィエに抗議するが、
    その波ダメな表情はむしろ彼女に逆効果かもしれない。

    「でもこれからもっと驚くかもしれないわ。」
    「え……もっと驚くことって?」
    「いいわよ〜、入ってきなさい。」

    「どもどもです〜。」

    彼女が扉の外に向けて手招きをすると、それに応じて一人の女性が部屋の中に入ってきた。
    しかし彼女は一目見ただけで只者ではなかった。

    まず、その下半身。一言でいえば『蟻』の体を持つ下半身。
    青光りする胴に6本の節足。身長は小柄で、智鶴よりも圧倒的に低い。
    働き者なのだろうか、かなり精悍な顔立ちで、健康的な肌の色をしている。

    そう、彼女は『ジャイアントアント』……巨大蟻の魔物である。

    「はわぁ………ず、図鑑には目を通したけど…亜人型以外の魔物って初めて見るかな。」

    正確には、シー・ビショップのルミナも半人なのだが、
    ジャイアントアントのような本格的な姿の魔物は、実物では初めてだ。
    智鶴は驚くどころか興味津々にジャイアントアントの体を眺める。

    「あらちーちゃん、この子気に入っちゃった?」
    「い…いや、そういうわけじゃ……」
    「はじめまして〜、智鶴さんですね〜。私は、東の海を越えた大陸にあります
    ジャイアントアントの王国『ビートル共和国』より来ました〜。」
    「東の大陸から……!」


    こうしてダークエルフたちは、早くも新大陸の文明と接触することとなった。

    12/10/26 22:18 バーソロミュ   

    ■作者メッセージ

    システム解説その7…世界遺産


    世界遺産……それは歴史の中で建てられた偉大な建造物である。
    現実世界でいえばピラミッドやストーンヘンジ、コロッセオ、エッフェルなど
    長い年月をかけて作られた有名な建物があるが、
    図鑑世界にだって素晴らしい建物はごまんとある。
    それは神様を祭る巨大な神殿だったり、大規模な魔術装置だったり、
    中には特別な力を持った道具なんかもあったりする。

    たいていの場合、世界遺産はとても強力な建物だろう。
    効果は建物によってまちまちだが、建てて損するものはあまりない。
    しかしながら、コストは普通に立てる建物の3倍から10倍近くかかるものもあり、
    無計画に建てまくるのはやめた方がいい。
    また、世界遺産は世界でたった一つしか建てられない。
    ほかの文明がすでに立ててしまった場合はもちろん、
    建設途中でほかの文明が完成させてしまうと建設が中断してしまうぞ。

    まもむすゼーションには全部で30以上の世界遺産が出てくる。
    今回の話に出てきた大図書館をはじめ、『竜骨の宮殿』『ニルホーン条約』
    そして『魔物図鑑』も世界遺産の一つになっているのだ。
    ここですべてを説明することはできないが、
    今後話が進めば今以上に強力な遺産が次々出てくるぞ。
    楽しみにしていてほしい。