今期の格言

戦争の90％までは後世の人々があきれるような原因で起こった。
残りの10％は当時の人々でさえあきれるような原因で起こった。

　ヤン・ウェンリー









リチャード・ライオンハートからのメッセージ
「鎧を固め、剣を研いでおくように！
熱く楽しいバトルが始まるのだからな！」


白きエミリアの宣戦布告に便乗したライオンハートからの宣戦布告は、
いつもよりさらにいい笑顔と共に、簡潔な言葉で智鶴たちに届いた。


「そんなむちゃくちゃな！いきなり二国と戦争なんて……！
もしかしてライオンハートはエルフと休戦したのかな!?」
「……外交画面を見るとヴァルハリアと翠緑はまだ戦争してるわ。」
「ということはあっちも進んで二正面作戦してるってことなのね…
何考えてるのかしら？無茶するわね。」
「ん〜…、どうやらライオンハートは聖エロニア共和国の
参戦要請を受諾したらしいね。しかも結構格安の条件で。」
『………………』

智鶴の言うとおり、リチャード・ライオンハートは白きエミリアから
希少資源をいくつか受け取っただけで参戦要請に応じたらしい。
両国間は非常に仲がいいとはいえ、一つ戦線を抱えているのも関わらず
もう一方にも戦争を仕掛けるとは………驚異の脳筋ＡＩのようだ。

攻撃・宗教志向、シド星の狂犬の遺志を受け継ぎし
『獅子心王』の名は伊達ではない。


「ねぇザリーチェさん、なんとかどちらかと講和出来ないかな？」
智鶴としては何としても二国同時相手は避けたい。
「暫くは無理ね……。相手はきっと数ターンの間交渉に応じないでしょうし、
交渉できてもまだ私達には最大の交渉材料の技術取引が出来ない……。」
「あーーーもうっ！これはイジメか何かなの!?
みんなでちーちゃんいじめて楽しいの!?」
「…ルーツィエだけには言われたくないと思うわよきっと。」


とにかく今は何としてでも都市を守り抜かなければならない。
幸い、敵の進路はほぼ新都市のアテラに限定されているから、
戦力の集中が出来る。

ただし、ここを突破されたら瞬く間に全てが終わってしまうということだ。


「ちーちゃん………」
「んっ」

不安でいっぱいの智鶴をルーツィエが正面から優しく包み込む。
毎夜毎夜智鶴の理性を消し飛ばす攻撃的な二つの丘が、
今はまるで母親のそれのように心地よかった。


「大丈夫、きっとちーちゃんなら勝てるから。」
「うん……」




次のターン……



早くも聖エロニア共和国のユニットスタックがアテラの右上のマスにやってきた。
（注：スタックとは一つのマスにユニットが複数いる状態のこと。）
内訳は剣士2体と戦士7体の計9ユニットだ。

「おや？思ったより少ないんじゃない？戦力的にほぼ互角だし。
これなら防御してても勝てそうだけど………そうだ、フレイヤさん。」
「どうかしましたか智鶴さん？」
「作戦変更だ。野戦で相手を倒そうと思う。」
「なんと！勝算はあるんですか？」
「大丈夫…無茶はしない。確かに籠城の方が確実だけど、
撃って出た方が都市の人たちに被害が及ばなくて済むからね。」
「なるほど、確かに！了解した、こちらから攻撃して敵の出鼻をくじいてやります！」


敵の戦力が少数だと判断した智鶴は、野戦で敵を撃破することに決めた。
一応建前としては都市の安全確保のためだが、

『ゲーム的』に言えばこちらから攻撃した方が経験値が多く手に入るからというのが理由だった。
経験値は稼げるときに積極的に稼いでおこう。後で役に立つ。もちろん死なない程度にね。


「続けーーーっ!!」
『おーっ！』

ワーワー


戦闘中……


「やりました智鶴さん！初戦は私達の完全勝利です！」
「やったぁ！すごいよみんな！」

結果、ダークエルフ達がエロニア軍を撃退した。
丘の上という地理に加えて、英雄フレイヤの活躍と先日ゴブリンとの戦闘で経験を積んだ
ダークハンターたちが主力の剣士を倒し、残った戦士たちも弓兵のカモでしかなかった。
エロニア第一波は実にあっけなく終わった。


「グッジョブちーちゃん！」
「うん、意外と何とかなるものだね。ところでさ、ヴァルハリアの軍は来てないの？」
「それがどうやらあの二人、軍の連携を全然してなかったみたいなの。
ユニットを動かすタイミングがてんでバラバラ。
ちょっとでも滅亡の心配をしたのが馬鹿馬鹿しいくらいよ。」
「ははは………」

なにはともあれ、相手の連携に隙があったおかげで
予想していたよりも苦戦することはなさそうだった。


一旦戦争から離れて、同ターンに第3都市を首都から東にある海岸沿いに建設。
新都市は『レパント』と名付けられ、ダークエルフ初の港町となる。
今はまだ大きな発展は見込めないが、いずれは有数の軍港になる予定だ。

第四都市の建設場所も模索しており、
候補地として都市国家エリエールの近辺にある丘陵地帯が挙げられている。
研究開発も順調に進み、『エーテルの知識』を研究することで、
ルーツィエの得意分野の一つである魔法を早めに生かそうとしている。

軍隊も整えなければならないので、ターンごとに指示がかなり忙しい。



数ターン経過……



「智鶴様！族長！ヴァルハリア軍が国境を越えました！その数およそ12ユニット！」
「さすがはリチャード・ライオンハート……それなりの規模を持ってきたみたいだ。
今回は無理せずに籠城しよう。こっちにも弓兵が増えたと言っても相手の方が多い。」

遅れてきたライオンハート率いるヴァルハリア教国軍。
聖エロニア共和国と違いこちらは軍の半数以上が剣士で構成されており、
さらに『攻撃志向』の効果でユニットが若干強くなっている。


「どちらが強いか、ここではっきりさせようじゃないか！」

むっちゃいい笑顔のライオンハートが、兵士たちに攻撃命令を下す。
それを合図に自慢の12ユニットが一斉にアテラに突撃を開始した。

「魔物たちをたおせ！」
「獅子心王の軍隊の強さを思い知れ！」

「きたぞ！弓兵構え！」
「魔物だからってなめてかかると痛い目見るわよ！」

ワーワー



次々に猛攻を仕掛けるヴァルハリア教国軍だったが、
丘の上に建つ都市にはさすがに攻めあぐね、大きな被害を被った。
一方でダークエルフ達は負傷者が出たものの、幸い戦闘不能者は出なかった。
彼女たちはまたしても大勝利をおさめる。
その上敵の剣士1ユニットを籠絡することに成功した。


「勇敢なる者よ！見事な戦いであった！」
「あ、うん。ありがとう……じゃなくて、二度とくんな。」

意外と素直に負けを認めたリチャード・ライオンハート。
彼は武人としては一流の人物なのかもしれない。
（指導者としてはアレだが）

だがこれで終わりだとは思えない。
いずれまたすぐに軍備を整えて攻めてくるに違いない。
いつまでも二国間と争って得をするのはリートゥスを含む第三者だ。
漁夫の利を狙われてはかなわない。


「はぁ、ようやく一息つけるよ。」
「よく頑張ったわ智鶴君。指導者としては上出来よ。
後はこれからどんな戦略で行くかね……、考えはあるのかしら？」
「うん、今後は当初の計画通りまず聖エロニア共和国を下そうと思う。
でもそれには最終的に魔法の力が必要になる………。」

実は、エルフ族は攻城兵器を作ることが出来ないため、
都市攻略を非常に苦手としている。
そこで、魔法を攻城兵器の代わりとして運用しようというのだ。
しかし……魔法を主戦力にするにはまだまだ時間がかかるので、
それまではどうにか工夫しなければならないかもしれない。


「ちーちゃーん！ちーちゃーん！偵察中の猟兵が新しい国を見つけたわ！」
「えっと、どれどれ……？」


―――――《他文明発見》―――――


・ローレアープ山脈連邦
指導者：フィア・ギュール　女性　種族：ドワーフ　属性：中立
志向：勤労/防衛　固有志向：地形改善速度 30%
外交態度：用心している
国教：特になし


・ゴルカス鉱山国
指導者：ワーラ・ゴルカス　女性　種族：人間　属性：中立
志向：勤労/拡張　固有志向：緊急生産時の不満発生ターン半減
外交態度：用心している
国教：特になし


この二国は現在戦争中らしい。


フィア・ギュールからのメッセージ
「あら、ダークエルフ………私達に危害は加えない？本当に？
私達は今日々を生きるのに精いっぱいなの、だからあんまり構ってられない。
だから………私達のことはそっとしておいてほしい……」

ワーラ・ゴルカスからのメッセージ
「私たちゴルカス鉱山国の鉱石資源はいかが？安くしておくよ！
……っと、ダークエルフさんか。もしよかったら仲の悪いドワーフを
我々に奴隷として譲ってくれないかな？色々使い道があるんだ。」





「あら、これは………」

先ず反応したのはザリーチェ。
この二国を発見したことで、何か思う所があったのだろう。

「何の因果か皮肉なものねぇ…この二国が隣接しちゃうなんて。」
「どうかしたのザリーチェさん？」
「そうね、智鶴君は私達の世界の歴史を知らないんだっけ。
ゴルカス鉱山国……あの国は力でドワーフ族の国を征服して、
彼女たちを『本当の意味の』奴隷として酷使する、最悪な国家……
そしてフィア・ギュールはゴルカス鉱山国で反乱を起こした扇動者。
この二国の争いは現魔王時代でも数少ない悲痛な歴史の一つなの。」
「むぅ、ゲームの世界なのに何か今回の配置って結構悪意あるわよね。
私達のお隣さんもよりによってイクシーだし。」


実際、このゲームでは指導者の位置は例外を除いてすべてランダムであり、
必ずしも因縁がある国同士が隣り合うとは限らない。
いや、むしろ隣り合うことの方が珍しいのだが……

ちなみにワーラにとってフィアは
ドワーフの反乱の時に父親を殺した憎き仇であり、
フィアもゴルカス鉱山国を目の敵にしている。
そんな国同士が隣り合えば、ただで済むとは思えない。


「せめてこの世界ではフィアちゃんにも幸せになってほしかったけど……」
「そっか…この世界の歴史か〜………そういえば考えたこともなかった。」


そもそもルーツィエとイクシーとの間にどのような確執があるのか、
ヴァルハリアのリチャード・ライオンハートはどのような偉業を成し遂げたのか、
出てきている国々はどのような歴史を持っているのか、
考えれば考えるほど興味が溢れてくる智鶴だった。

「智鶴君もこの世界のことをもっと詳しく知りたいかしら？」
「うん！是非とも！これから出会う国々のことを知っておけば、
色々な面で有利になると思うんだ！」
「そうね………、だったらまず『筆記』の技術が手に入ったらね。
そうしたら私がペディアっぽいのを作ってあげるわ。」
「『筆記』かぁ……うーん、そろそろ『エーテルの知識』の研究おわるけど…」


次のターン、『エーテルの知識』研究完了！
これで念願の魔法軍団への第一歩を踏み出したことになる！


「ちーちゃん！早速『魔術ギルド』を建てて術使いの生産に―」
「やっはー智鶴君！元気してましたかー？」
「わっ、ルミナさん!?これまたいきなりのご訪問ですね！」

またしても現れたリートゥスのルミナ。こんな森の中までご苦労なことだ。

「さっそく私が持ってる『筆記』の技術と『エーテルの知識』を交換しない？」
「う、うん！もちろん喜んで！ちょうど『筆記』が欲しかった所なんだ！」
「ふふっ、交渉成立ね！」
「あらあらルミナさんももしかしてちーちゃんにメロメロになっちゃった？」
「私には夫がいますけど、智鶴君は何だか子供みたいで放っておけないんです♪
これからも私達とずっと仲良くしてくださいね♪」


なんと実にいいタイミングでリートゥス海神連合と技術交換が出来た。
『筆記』の技術によってこれから他の文明と技術取引が出来るようになるぞ！
（注：このゲームの設定では技術取引の解禁が『交易』から『筆記』になっている）


「じゃあ次は『四代元素』の研究をするとして……ザリーチェさん？」
「ええ、約束は守るわ。ちゃっちゃと仕上げてくるから待っててね。」

ザリーチェは早速羽ペンを持って何かの作業に当たり始めた。
ここまで勤勉に働くダークエンジェルというのはなかなかないのでは？



技術交換が出来るようになったので、早速他国と技術取引をする。
リートゥスから『漁業』と『地図』、
ローレアープから『採鉱』
トメニアから『畜産』と『青銅器』、
翠緑から『深き森への道』
研究する余裕のなかった技術を次々に交換して、
遅れていた技術力差を一気に取り戻すことに成功。
ただ、ゴルカスは技術交換に応じず、ローレアープもけっこう渋ってきた。

これで今までできなかった海の活用や鉱山の建設に動物の飼育、
さらにはダークハンターより一歩上の白兵ユニットの剣士の生産に、
エルフ種にとって重要な宗教『緑葉の同胞』を広めることもできる。


「筆記って本当に凄いわね！これで私達の国力が一気に上がるわ！
それにちーちゃんの交渉手腕もなかなかのものね！
可愛いだけじゃなくてハイスペックなんてもう反則じゃない♪」
「あはは、このくらいは当たり前だよ。
むしろ僕はこの文明に文章を書く技術がないことにびっくりだけどね（汗」
そこはゲームなので仕方がない。
「そうそう！わたしもちーちゃんを見習って日記付けてみたの♪見てみる？」
「お姉ちゃんが日記？じゃあちょっとだけ………」

ルーツィエの日記

91期…天気：凪
　私とちーちゃんの記念すべき初めての愛の日記♪
一番初めの記録の記念になるようにいつもよりも激しくちーちゃんを犯しちゃった♪
でもちーちゃんも私の期待にこたえてくれて、いっぱいいっぱい愛してくれたよ♪
私もちーちゃんもお互いの身体なしではいられない、エッチ狂いの変態さん♪
毎日これだとさすがの私もそろそろ孕んじゃうかな♪
これからどんどんうまっていく二人の愛の記録、たのしみ♪

今期の組合せ：キス責め→正面座位→もう一度正面座位→騎乗位→おそうじフェラ



「―――――――――――！！！！」
「どう♪まだ一ページしか書いてないけど。」
「う、うん…まあ、いいんじゃないかな？
でもはずかしいから、僕以外には誰にも見せないでね……」
「ふふふ、ちーちゃんったらそんなに私を一人占めしたいのね♪」

はたして故意犯(この場合『確信犯』はあやまり)なのか素なのかは定かではないが、
こんなのを他人に見られた日には恥ずかしさで、全身が火葬のゾンビのごとく火を吹くだろう。
とりあえず日記の付け方が間違っていることは指摘しないでおく。



次のターン…


システムからメッセージが表示される。

この世界のどこかに『蛮族女王オルティナ』が出現しました!!


「え？蛮族女王って？」
「あら、復活したのねオルちゃん。あの子はオーガの中でも屈指の力を持つ蛮族の英雄よ。」
「蛮族に英雄なんているんだ………知らなかった。」

蛮族女王オルティナ………通称『オルたん』は、序盤に出る割には高い戦闘力を持つ
蛮族の英雄で、どの国にも属さず、目の前にいる男という男を犯しまくる恐怖の存在だ！
軍備を怠っている都市にこの子が現れたらあっという間に破壊されてしまうだろう。
しかも英雄なので、時がたつにつれてどんどん強くなっていく。
今回は幸いダークエルフ領の近辺には姿を見せていないようだ。

ちなみに倒せば彼女が持つ『オルティナの斧』を手に入れて、
自軍ユニットに装備させて強化することも可能だ。
余裕があるなら狙ってもいいかもしれない。


「もしかしたらこの後もっと強い娘が出てくるかもしれないわよ♪」
「あまり近くに出てほしくないなぁ。」

ザリーチェの言うこの後出てくる可能性がある蛮族英雄は、
オルたんなんかより遥かに強いので要注意だ。



数ターン後…



「首都から南の丘陵地帯に第四都市『エヴァルトリーネ』を建設したよ。
『採鉱』が手に入った今なら、この辺の土地を有効活用できるはず。」
「それはいいんだけどちーちゃん、ライオンハートに技術を差し出して講和なんて……」
「ごめん、お姉ちゃん。ダークエルフ達にとっては人間に頭を下げるなんて
屈辱かもしれないけど、今は戦線を一つに絞るべきだと思うんだ。」
「……そうね、ちーちゃんがそれが正しいと思うなら私も異議はないわ。
まずは白きエミリアとの決着………それまで勝負は預けておくわよライオンハート！」


ライオンハートには技術を無償提供して講和を持ちかける。
すると彼は

「いいだろう、そっちも一対二では本気出せまい！
私とそなたが当面の敵を片付けたあと、再び相まみえようではないか！」

「講和出来たのはいいけど、また戦争する気満々なのはなんとかならないかな？」

どこまでも無節操なライオンハートであった。


ダークエルフとヴァルハリア教国が講和しました


土下座外交とは言え、戦線を一つに絞れる意義は大きい。
アテラには現在エロニアの第二波が近付いているが、
ヴァルハリアからの圧力が無くなったことで攻勢に移れそうだ。
相手の内訳は剣士6体、斥候2体。かなり無理をして編成してきた様子。
だが、こちらは今やダークハンターからアップグレードした剣士が4体と弓兵5体がいる。

「フレイヤ隊長！全軍出撃準備が整いました！」
「よし、みんな良く聞け！専守防衛は終わりだ、これから我々は反撃に移る！
敵軍団を国境付近で撃破し、返す刀で敵の都市を攻撃するぞ！」
『おーっ！』


アテラにはもしもの時に備え剣士1体と弓兵1体を残して、
フレイヤを先頭にしたダークエルフ軍主力は北上してエロニア軍を国境付近で攻撃する。

「よしよし……殆ど無傷で敵を倒せたようだね。
じゃあ次は、白きエミリアさん……君が攻撃される番だよ♪」

何なく第二波を撃破したダークエルフ軍は
智鶴の指示で、部隊は初めて国境を越え敵地に進撃を開始した。
ここからダークエルフ達の快進撃が始まる。