白金の生徒会長
「ふむ・・・。」 始めまして諸君。私は神楽坂学院で生徒会長を務めている、東雲龍紀(しののめ たつき)。17歳男で日本人とイギリス人のクォーターだ。四分の一しかないイギリス人の血が濃くでている影響で髪は白金色で(故に『白金の生徒会長』と呼ばれている。)、髪は腰に届くぐらいにしている。切りに行くのが面倒だとか決してそんな理由ではなく、生徒会の激務と常に戦っているからだ。顔は・・・まぁ、凛々しいには凛々しいのだが、いかんせん凄く女っぽい。一年のときに文化祭でやった女装喫茶で私しか指名されなかったと言えばどれほどの物か分かってもらえるだろう。唯一の私のコンプレックスといっていい。 さて、自己紹介はここまでにするとして、先程、修学旅行に来ていた我々はトイレ休憩を入れたのだが、近くにあった通称「対の鏡」と呼ばれるもので身だしなみを整えていたら、鏡の中に引っ張り込まれてしまい、現在に至るのだが・・・。 「どうしたものかな・・・」 幸いにも生徒会長の腕章と、生徒会長に代々継承されてきた特殊な専用の制服の「黒き帳」を着ていたから何とかなると思うが・・・。ちなみにこの「黒き帳」はとある鍛冶屋が無二の親友であった初代生徒会長に送ったものであるという。鍛冶屋が服を作る事自体が変だが、そこは気にしてはいけない気がする。また、初代生徒会長は戦争によって学校が軍の工場にされそうになったときに、生徒会役員の5人(会長を含める)とともに軍に反発。徹底抗戦の末、軍を力づくで退けたという。「黒き帳」を着ている以上、ダメージを負うことは皆無だったらしい。まあ、私は幼少の頃より護身術として古今東西様々な格闘技を覚えさせられているが故に、まず近接戦なら負けない。つまり、外敵による心配はないということだ。 要するに今必要なのは現状の把握。可能なら元の場所に戻ることだ。とりあいず部屋を確認してみるか。 @埃かぶった本棚たち 長年使われていないのであろう。中を見てみたが、ところどころ文字が刷れてしまっている。だが、この世界の文字を理解できているという発見があった。 A埃かぶった机と椅子 こちらも長年使われていないのであろう。しかしなかなか頑丈に出来ているな。踵落しをしても壊れなかった。 B異常なほど綺麗な宝箱 とても手入れが行き届いている宝箱。赤く塗られた木の部分や鉄の囲みには汚れや錆が全くない。この宝箱そのものに価値があるようだ。 「・・・・・・」 宝箱を真っ先に開けたいところだったが、あまりにも不自然なので少し様子見をしている。第一にこの宝箱の綺麗さは本当に異常だ。物凄いこだわりが伺える。それだけでなく、宝箱の周囲には全く埃がないのだ。さっきワックスかけましたといわれても、納得してしまうほどには。とりあいず、何か使えるものはないか― ガタッ! 「・・・・・・」 動いた? いや、バカなよく考えろ。この部屋にはまず窓がない。故に風によって動くなどありえない。つまり、中に小動物が入っていると考えるのが妥当だ。 「何が入ってるんだ?」 『開けるな!』 あ、私の中の悪魔。・・・この私が悪魔の言うことを信じると思うのか?愚かしい。 『開けるときは慎重にな!』 うむうむ、そうだろう、私の中の天使よ。 『バカか、耳を澄ましてみろ』 やれやれ困ったやつだ、いくら自分の分身でも― 「さあさあさあさあ、Let's open!」 ・・・・・・ 「『なにぃ!?』」 は、箱が喋っただと!?そんなバカな!中に入っているのは人間!? 『ま、まぁ、落ち着け』 お前も落ち着け天使。しかし、中に人が入っていて、しかも開けてくることを勧めてくる・・・ダメだ。いくら学校の勉強が出来ようが全く理由が分からない。ここは誘い出すのが賢明か。 「さて、別の部屋に行くかな。」 むこうは理由は分からないが開けてほしがっている。ならばあえて無視をすれば焦ってでてくるだろう。あるいは諦めるか― 「ぐす・・・ぅぇぇぇぇ」 『耐えろ!耐えるんだ!東雲龍紀!』 わかっている悪魔!この程度で私は「あけてよぅ・・・ぅぇぇぇぇ」負けない! 『もし、誘拐されて囚われている子だったらどうする?人が来たことに気づき、早く出たいと思っているのではないか!?』 くっ、確かに天使の言うとおり・・・あれ?私はいつの間に悪魔派の人間になったんだ?この構図何かおかしくないか? 『それは警察の仕事だ!一介の生徒会長ごときで手に負えるものじゃない!』 「・・・・・・なんだと?」 『だから、一介の生徒会長で手に負えることじゃないと―』 「Open!」 『何故に!?』 黙れ悪魔!この私、東雲龍紀を舐めるな!神楽坂学院生徒会会則第五十四条にも『汝、救済スベキヲ選ブナカレ』とある!つまり、誰であろうが、生徒会長の手に負えなかろうが私には救済という成すべき使命がある! 「大丈夫か!キミ―」 「ばばーん!お前も蝋人形にしてやろうか!?」 ・・・・・・ ・・・・・・ お前の言う通りにすればよかったよ、私の中の悪魔。 |
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