連載小説
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最近、おまえもバカになり始めてきたな。
「痛っ!」
「あ、すまん。」
 私、バハムートは夜眠れずに城を回っていると、マリア部屋から物音が聞こえた。
「こういうことをするのは、初めて?」
「ああ、如何せんそういうこととは無縁だったからな。」
 この声は・・・タツキ!?マリアの部屋で何をしている!?
「うん!いいわぁ・・・いい感じよ・・・。」
「クッ・・・!」
 ・・・決して覗きではない。うん、監視だ監視。
「ハァ、ハァ、うぅ!。」
「変な声を上げるな。黙っていろ。」
 な、な、な・・・!
「おいいぃぃ!何をしている!」
「あら、バハムート。」
「?、マッサージだが?」
 ・・・あれ?
「ほら、書庫を私の部屋にくれただろう?そのときにマリアが本の整理を手伝ってくれたから、ほんのお礼のつもりだったんだが、どうした?」
「まさか、イヤラシイことと、勘違いしたの?」
「まさか、バハムートがそんな―」
「部屋に戻れええぇぇ!」
 心でも図星だったとは知られるわけにはいかない。

―どうしたんだ?バハムートの奴。あんな大声出して。夜中なんだから迷惑だろうに。
「ん?」
 私の部屋の前に誰かいるな。あれは・・・。
「・・・・・・!」
 ・・・スピアだ。何をやってるんだ?
「・・・・・・。(きょろきょろ)。」
 何を企んでいるのかは知らないが、少し見張ってみるか。
「・・・・・・。」
 ノックしてる。中に誰もいないけどな。
「・・・タツキ。」
 続けてノックするスピア。今更だが、デュラハンというランクの高いスピアが、何故私を気に入ったのだろうか。
「・・・寝てる?」
 起きてる。そして、お前の後ろにいる。
『ストーカーか?』
 朝早いんだからもう寝ろ悪魔。
『呼んだか?』
 なんだ、天使が起きていたのか。
「・・・チャンス。」
 何が!?え、何しに来たのあの子!?もし部屋で寝てたらかなりやばかったんじゃ・・・?
「・・・お邪魔します。」
 まあ、ちゃんと挨拶するところは礼儀正しいな。どっかの角の生えた幼女はいきなり、『タツキ!勝負じゃ!』と理不尽にゲームに巻き込んでくる。
「・・・・・・。」
 ・・・まあ、寝ている相手(実際はいないが)の部屋に無理やり入るなんて、少しおかしい気がする。さて、私も部屋に入って観察を―
「・・・・・・ムフゥ・・・。」
 ・・・は?
「・・・クンクン・・・はふぅ。」
 おいいぃぃ!何やってるんだよ!え?まさかニオう!?毎日干してるのに!?そんなバカな!
「・・・いい匂い・・・。」
 よかった。一安心―じゃない!夜中に部屋に来て、やることがそれか!そもそも、私が居たらどうするつもりだったんだ!?
「・・・(もぞもぞ)。」
 あ・・・布団に入ってしまった・・・。いや、仮にもスピアは女だ。きっと人肌が恋しくなったんだろう。しょうがないから、ナイトウォークにいくか。

―ふう。なんだかんだでこの間ミリアムと話したところに来てしまった。確かここでリバースしそうになったんだっけ。
「―部屋に戻れと言ったはずだが?」
「うん?」
上から声を掛けられ。見上げてみる。
「・・・何をしている?」
 城のつたに絡められたバハムートが居た。
「う、うるさい!私にもいろいろと事情があるのだ!」
 できればその事情は一生判りたくない。
『チャンスだぜ、襲っちゃえよ。』
 いやいや、返り討ちにされるのがオチだろう。悪魔。
『そうだ。襲ったら、ゴレオが―』
「まだ引きずるのか!?」
この天使のしつこさにはびっくりだ!
「おい、助けに来るという選択肢は無いのか?」
 そんな壁に絡まった奴をどう助けろと?
「いいから助けろ!」
 うーん。私のイメージではドラゴンはプライドが高そうだが・・・まあ、助けない理由にはならないな。
「・・・それより、何故部屋に戻らなかった?」
「部屋に戻ったら、ベッドがスピアに占領された。」
「なんだと!?」
 ま、普通怒るよな、寝床が取られるなんて。
「・・・おい、コレをきったら落ちるから、飛ぶ準備をしておいてくれ。」
「あ、ああ。」
 腰に絡まったつたを切るだけだ。・・・しかし、ドラゴンといってもずいぶん肌の露出が多いいな。
「いくぞ。」
 手刀で、つたを切る。これで良いだろう―
「おい、何処へ連れて行く気だ?」
 そのままホールドされてしまった。・・・なにぃ!
「私のお気に入りの場所だ。」
 そのままぐんぐん進み、丘のようなところに着いた。
「・・・私は、辛いことや不安があると必ずここに来る。」
 そんなに、つたに絡められたことが嫌だったのだろうか。いや、それを見られたこと?
「タツキ!」
「ん?」
 なんだ?今度は何を言う気だ?
『『告白だろう?』』
 そんなバカな。そもそも私はバハムートに気に入られるようなことをしたつもりは無い。
「何をされたら、お前は嬉しいと感じる?」
 ほらね。
『いやいや!鈍いだろ!もう少し神経使え!』
 鈍いとは失礼な。私は人の心の機微がわかるのだよ。
『いやいや、明らかにウソだろう。』
 バカな。『好きです。』と私の執行する生徒会への支持表明にもちゃんと、感謝してきているし。
「私には答えたくないのか・・・?」
 そうだそうだ。えーっとなんだっけ?嬉しいと感じること、か。まあ、一番はやっぱり―
『最近、おまえもバカになり始めてきたな。』
 うるさいぞ、悪魔。
「私は、キミが傍に居てくれたら嬉しいぞ。」
 フフフ、完璧!
『『お前はバカか!?』』
 なにが?
「そ、そうか!全く人の癖に大層なことを、うむうむ、そうか、私が必要か。」
 おいおい、なにか、曲解してるぞこのドラゴン。キミに限らず、せっかく知り合った仲間と傍に居るのは本当に楽しい。そういう意味では、誰も欠けてほしくは無い。あ、シルヴィアはどうでもいいか。
『まだ、バフォ様のことを根に持ってるのか・・・。』
 しかし、何故このタイミングでそんなことを?
「こんばんは。シノノメクン」
 デジャブ!
「いえ、はじめましての方が適切ですね。私は『教団特殊異端査問会』のリエルです。」
 あの円盤と、翼。ミリアムから貰った本に載っていた、エンジェルだな。・・・天使?
「しねええぇぇ!!」
「うわっ!」
「な!」
 オノレ天使め!絶対に叩きのめしてやる。・・・そう。
「今までの恨み、はらさでおくべきかああぁぁ!」
「おいタツキ!どうしたのだ!?」
 バハムートが何かいっているが知ったことか!何がなんでもここで倒す!
「く、すでに魔物に洗脳されているのですか・・・!」
「いや、タツキが勝手にキレただけだ!」
 必ず・・・天使を屠るっ!
『・・・とばっちりだな。』
『お前のせいだろ、天使。』
 まあまあ、落ち着け。相手は天使だ。下手に突っ込めばやられるのは眼に見えている。
「私に手を挙げたことがどういうことか、判っているのですか?」
 鋭くにらんでくる天使。だが、ここで引くわけにはいかない。
「タツキ。そいつは私が―」
「手を出すなバハムート。」
 コレばっかりは譲ることは出来ない。今までの数々の侮辱・・・!
「・・・いいでしょう。私の、『矯正手錠』(コントロール・シグマ)で、アナタを正しき道へ連れ戻します!」

―マズイな。
 どういうわけかは知らないが、あのエンジェルはタツキの逆鱗に触れてしまったようだ。だが、あのエンジェルは何をしたのだろうか。そしてあの魔道武具。タツキでもてこずるかもしれない。
「・・・・・・!」
「くっ・・・!」
 ・・・相変わらず近接格闘では強いな。エンジェルも下手に手出しせず、避けるのが精一杯のようだ。左手から繰り出される裏拳。直後、ランスのように繰り出される、鋭いハイキック。そのまま、震脚へと繋げる一連の動き。並みのものではない。
「そこです!」
 マズイ。エンジェルが遠隔操作で、『矯正手錠』(コントロール・シグマ)をタツキに―
「・・・はぁ!」
「なっ・・・!」
 だが、あたかも見えていたかのように、手刀でうまい具合に叩き落すタツキ。バフォメットがSランクに認めるのも頷ける。そして、反応されたショックで動きが鈍っているエンジェルに、タツキは渾身の掌底を鳩尾に叩き込み―
「か・・・は・・・!」
 そのまま、苦悶の表情を浮かべ、エンジェルは気絶した。
「フフフフフ・・・。」
 ・・・しかし、最近はずいぶん、頻繁に教団による干渉が起きている。七年前の新教主が掲げた、『魔物撲滅宣言』は本当だったのだろう。そういう意味では、下手な魔物より遥かに強いタツキは、貴重な戦力だ。

―「フフフフフ・・・。」
 やった・・・。ついにやった・・・!遂に・・・
「天使を・・・倒したああぁぁ!」
 キャラ崩壊?知ったことか。私は今この瞬間が嬉しくてたまらない!遂に、遂に憎むべき天使を―
『夜中に騒ぐなよ。』
『寝ている人と、交尾している連中に失礼だろ。』

 ・・・・・・。

 ・・・・・・あれ?
11/04/29 17:00更新 / ああああ
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■作者メッセージ
更新が遅れ気味に・・・!
マイペースに更新すれば良いかもしれませんが、物忘れが激しい自分は、しばらくすると、いい感じだった構成を忘れてしまうので、気をつけねば・・・。
 また、もっとバトルの描写をうまく書きたいところです。

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