連載小説
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・・・何故キミはここにいるんだ?
 早朝。砂漠は気温の高低差が激しいため、朝はとても寒い。私、東雲龍紀もさすがに寝るときまで『黒き帳』を着ているわけにも行かないしな。
「さぶ・・・。」
 まだ朝日が昇る前で、あたりは薄暗い。夜明け前のこの静寂が、私は一番好きな時間だ。
「・・・タツキ・・・。」
 ・・・夜這いを仕掛けてきた、スピアがいなければ。・・・たびたび思うが、何でデュラハンほどの高等な魔物が、私ごときに好意を寄せているのだろうか。
「・・・さて。」
 私が寝た後、クェーラから聞いた遺跡の位置のメモを見返す。そう遠くない位置だ。義妹を遺跡内部に連れて行くわけにはいかないし、ここは、スピアとの二人で行くのがいいだろう。
「・・・ムニャ・・・。」
 気持ちよさそうな寝顔だ。もう少し寝かせてあげよう。
「・・・はう・・・。」
 少し頭をなでると眉尻が下がる。デュラハンはお堅いイメージがあったが、やはり個体差は大きいのだろう。
「―さて。」
 少し外に出て、ストレッチするとしよう。

ガチャ ←部屋のドアを開けた音

「はぁ〜い。」←謎の女性

バタン。ガチャ!←ドアを閉め、施錠した音

『ちょっと!開けなさいよ!』
 外からバンバン叩いてくる女性。私いの眼の錯覚でなければ、彼女は『ギルタブリル』だ。
「・・・どうしたの?」
 スピアの目が覚めてしまった。とりあいず、現状の説明だ。
「部屋の前に『ギルタブリル』がいる。以上。」
 うん、単純にして明快。実にわかりやすい説明だ。
「・・・敵?」
「さあ?」
 バンバンと叩く音はしなくなったものの、気配はある。困ったものだ―

―あまりの寒さに目が覚めちゃったわ。横を見ると、クロ、そしてタツキの義妹の・・・なんていったかしら。昨日名前を聞いたんだけど・・・ああ、東雲朱里(あかり)だったわね。・・・スピアはどこに行ったのかしら?

 バンバン!

 ・・・煩いわね、朝から。一体誰なのかしら―
「・・・・・・。」
 タツキの部屋の前にはギルタブリルがいた。ちょうどいいわ。寝起きに騒がれた八つ当たりと、ギルタブリルの毒の採取。同時にやっちゃいましょう。
「ちょっと。」
「なに?今忙しいんだけど?」
「私の連れに何か用かしら?それに―」
 相手に気づかれないように、『時渡りの古傷』ではない、私の真の獲物を構える。
「―朝早くから迷惑なのよ。」
「ガアアァァッ・・・!」
 相手のギルタブリルの右肩、腹部、左足の一本に私の獲物である、五寸釘が命中した。
「おまえ・・・一体何を・・・!」
「ああ、それ、抜かないほうがいいわよ?だって―」
 もったいぶって間を空ける。私の真の『魔道武具』の効果は―
「―私の『精の楔(ソウルイーター)』を抜いたら、一発で精がなくなるわよ?」
 精がなくなると言うことは、つまり魔物である私たちには、死に等しい状態だ。もっとも、抜かなくても激しい痛みと共に、精が少しづつ抜けていくのだけど。
「ダークエルフめ・・・!」
 ・・・本当に単細胞ばっかよね。タツキみたいに落ち着いて戦える奴っていないのかしら。そう考えながら、相手の尻尾に、五本もの『精の楔』を打ち込む。
「アアアアアァァァァ!!」
 すさまじい悲鳴を上げてのた打ち回るギルタブリル。いいわあ、悲鳴。これだけで濡れてきちゃう。まあ、一本でも激痛を伴うのに、五本も、しかも一点集中じゃそうなるわね。
「さて・・・と。」
 いい悲鳴を聞かせてもらったし、これで八つ当たり分はもういいわ。あとは、毒を少々頂くだけね。
「フフフフフ・・・。」
「ひ・・・ヒイイィィ!」
 あらあら、可愛い悲鳴上げちゃって。まあ、相手が悪かったわね。これでも私は城の五強に入るから(あとは、バハムート、シルヴィア、カプリ、スピアね)、ほぼ、最悪の相手といっていいわ。・・・まあ、城の子達は、『四強』って勘違いしてるけど。
「た、助けてください・・・。」
 もう、どうしようかしら。あのギルタブリルに『助けて』なんて懇願されちゃうなんて・・・。ウフ、もっと虐めたくなっちゃう。
「そうねえ・・・、あと、十本打ち込んだら、逃がしてあげる。」
「む、無理です・・・助けてください・・・私が悪かったです・・・。」
 あら、涙目になっちゃって。もうちょっと嬲って―
「そろそろ、やめたらどうだ?」
「・・・やり過ぎ。」
「あら、タツキ、スピア。新婚初夜はどうだったのかしら?」
 ヤッたのかしら。気になるわあ。
「ヒ、ヒイイィィ・・・!」
 慌てて逃げ出すギルタブリル。まあ、襲う相手の仲間だってわかったんだから、逃げないほうがおかしいわね。でも―
「逃がす気はないわよ?」
「キャアアアアアアアアァァ!!」
 あ、気絶しちゃった。・・・もう、しょうがないわね。
「・・・さすがの私でも、良心の呵責を感じるぞ・・・。」
「・・・外道。」
 あらら、ひどい言われよう。まあ、慣れているから気にはならないわ。
「さて・・・と。」
 この釘は、使用者が抜けば、精がなくなることはない。ついでに毒も貰っておきましょう。

―・・・なんて奴だ。目の前で、気絶したギルタブリルから毒を抜くマリアを見て思ったこと。きっとあいつは真のドSだな。
「?、どうしたの?」
「別に・・・。」
 正直、ここまでとは思わなかったが。
「・・・ふみゅ・・・。おはよう、おにぃちゃん・・・。」
「ふぁー・・・。朝から何・・・?」
 ・・・あの悲鳴でおきないとは・・・。

―「ここが、遺跡か。」
 その後、簡単な食事を済ませ、早々に町を出発。すぐ傍に、噂となっている遺跡についた。ちなみに義妹とクロは宿に残している。マリアも残しておくつもりだったが、今朝の件で戦力になると判断し、同行してもらっている。
「遺跡内部は思ったより快適ね。」
「・・・違いが判らない。」
「確かにな。」
 私とスピアは、体温管理が万全だが、マリアからするとむしろ涼しいくらいだという。
「・・・ところで、何故私が先頭なのだ・・・?」
 そう、本来一番後ろにいるべき人間の私が先頭。おかしいのではないだろうか。
「・・・ふぁいと。」
「がんばれー。」
「なんだ、そのやる気のない部員の応援みたいな感じ。」
 まったく、人を何だと―

ガチャ ←何かのスイッチの音

ヒュン ←突如開いた穴に落下する音(私)

ガシャアアン!! ←金網に落ちた音

「何故だ!何故私だけ!?」
 何ということだ!私だけピンポイントとは!
「・・・おろかな盗掘者共め・・・。」
 気づかなかったが、目の前には凛とした姿の、褐色肌の女がいた。確かこいつは―
「―アヌビス・・・!」
 マズイ。もっとも会いたくなかった相手に初っ端から当たるとは。逃げるが吉か・・・。
「フン、このリングに逃げ場などない。」
 周りを見ると、確かに壁に覆われている。下には凄まじいまでの量のガラガラヘビ。っというより。
「・・・何故キミはここにいるんだ?」
 普通罠に引っかかった盗掘者(私たちは断じて違うが)に対し、壁の上―10mほど上から、声をかけるべきじゃ・・・?
「う、煩い。黙れ。空気が穢れる。どの道、ここから逃げることは不可能だ。・・・観念するんだな。」
「そっくりそのままそのセリフをかえそう。」
 よく見ると金網にはところどころ錆が出来ており、少しの衝撃で破壊してしまいそうだ。
「・・・いざ、尋常に勝負。」
「・・・・・・。」
 正直に言おう。今までで、一番の危機だ。脱出するために壁を登ることは出来るが、そのためには目の前のアヌビスに背を向けねばならない。そんな隙をアヌビスがくれるわけもない。だからといって、そのまま勝負すれば、ある程度の勝負は出来るが、あまり足場に負荷をかけすぎると、今度は錆びた罠が崩壊。アヌビスもろともガラガラヘビ地獄いきだ。
「フン・・・ビビッているのか?」
 ・・・まあ、ビビッていることを否定はしないが、目の前のアヌビスもまた、体が小刻みに震えている。
「―覚悟!」
 大きく天秤のようなものがついた杖を振りかざしてくるアヌビス。左足の足の裏で、杖を受け止める。
「なあ、勝負はここをでてからにしないか?キミだって、蛇にかまれて終わりたくないだろう?」
「ぬかせ、私は、蛇など怖くない!」
 ・・・しょうがないか。
「・・・やれやれ、そうまで言うなら、ギブアップというまで、相手をしよう。その結果、キミもろとも蛇の大群に落ちても、キミが選んだ未来だ。」
「の、の、の、望むところだ!」
 ―こうして、絶体絶命のリングで、アヌビスとの死闘は始まった。
11/05/05 00:54更新 / ああああ
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■作者メッセージ
 個人的にアヌビスは一位、二位に位置するほど好きな魔物娘です。あの褐色肌に漆黒の髪。さらにはモフモフの手。・・・最高です。

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