連載小説
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いやいや、私は男だぞ?
「だから、私はミミックなの!ミミックの―」
「あーはいはい。」
 あの後散々悪魔に怒られたさ。『何で開けたんだ!』って。自分の分身にだぞ?久しぶりに死にたくなった。後、天使が『悪魔に怒られてやんの、ザマァwww』とかほざいていたので、いつか殺す。そのときまで私は死ねない。
「いい加減箱から出たらどうだ?」
 役作りに気合が入りすぎだろ。しかもミミックとか。こんな電波さんに目をつけられるとは・・・。
「私はミミックなんだってば!」
 というよりこの自称ミミック、さっきっから、『私はミミック』ばかりいって何で名前を名乗らないんだ?名前がないのか?いや、名前がミミックなのかもしれない。ただ、ゲームによる先入観から『種族として』の名前と認識していたがじつは『個人の名前として』ミミックと名乗っているのかもしれない。だとしたら私はなんて失礼なことをしてしまったのだろう。
『いや、それはないだろう』
え?そうなのか?私の中の天使?・・・キサマアアァァ!先程の恨み晴らしてくれる!
「ふええ!?いきなり暴れだした!?」
「死ね天使いいぃぃ!キサマアアァァ!」
『落ち着けミミック氏が驚愕の表情で見てきている。』
くっ・・・命拾いしたな、天使め。次に会ったときがキサマの命日だ。
「あの、大丈夫?」
「心配ない。次に会ったら確実に仕留めるからな。心配は無用だミミック氏」
「いや、ミミックが名前じゃないんだけど・・・」
 さて、ミミック氏の話を聴いた上で現状を確認しよう。まず、此処が何処だか、ということだが、彼女曰く『廃城の書庫』らしい。そして何故私がここに来たかについては、おそらく「対の鏡」との様々な波長が会ってしまったらしい。簡潔に言えば鏡に魅入られたということだ。全然嬉しくないが。問題は鏡を通した行き来は一方通行であり、こちら側から帰ることは現在不可能らしい。もっともこんな電波さんと一緒に居る気はないから、とりあいず外に出て、今夜泊まる場所を探すのが懸命だな。
「さて、方針は決まった。」
「ん?」
 不思議そうにこちらを見てくる電波さん。もといミミック氏。とりあいず状況を教えてくれたという点では(ウソでないことを願いつつ)お礼を言うことが大切だな。
「いろいろと、状況の整理に力を貸してくれて感謝する。私はこの後ここをでて、今日泊まるところを探すつもりだが、キミはどうする?」
「どうするって何が?」
「ここに居るわけにはいかないだろう。食料面でも、衛生的にも、治安的にも。」
 いくら電波さんでもここに独りで居るのは危険だろう。私が来る前何処にいたかは知らないが。
「治安の面なら大丈夫!ここはニンゲンが居なくなってから、ドラゴンの『バハムート』さんが住んでるから。ここに来る人は真っ直ぐにバハムートさんのところに行っちゃうしね」
 どらごんのばはむーとさん・・・
 ドラゴンのバハムートさん!?よりにもよって最強を誇るドラゴンの名を名乗るやつがここに!?っていうかまだほかに人が居たのか!?しかもコイツ(ミミック氏)以上の電波さんだぞコレは!自分からドラゴンと名乗るなど―
「ここかードラゴン!?」
「ほらほら出ておいでー」
「ヒャハハハハハ!ビビッてんじゃねぇの?」
「ウッソーマジださーい」
・・・・・・何だこいつら?格好からして剣士、格闘家、シーフ、魔法使いといったとこか?私には関係ないが。
「お、キミ達かわいいね、お兄さんとエッチしない?」
「ご指名だぞミミック氏」
「おめーもだよ!ハハハハハ!」
 いやいや、私は男だぞ?残念ながら(全く残念でないが)BでLな世界に興味はない。そういうのはゲイバーにでもいってやってこい。
『・・・女と間違われているんじゃないのか?』
 ・・・・・・なるほどな。長ランを着ているだけでスカートは履いてないし、その誤解はもっともだ。よく気がついた悪魔。
「・・・つまりだ」
「あぁ?」
 こいつらは私の数少ない・・・二つしかない地雷を踏んだということか。いや、天使のこともあるから三つか。
「バハムートさんは今居ないよ!」
「そんなのあたし達にはどうだっていいんだよ!」
「最近の魔物娘は可愛いからな、マニアの貴族に売れば大もうけだぜ」
 ・・・・・・いや悪魔、正直に言おう、私は今自分の地雷が踏まれたこと以上に、私はムカついている。
「キミ達」
「なに?キミからヤッちゃう?」
 始める前にコレだけは聞いておこう。後がいろいろ大変だからな。
「何故そのようなことをするのだ?」
「金だよ金!金に決まってんだろ?」
「そうか」
 うん、天使の前にこいつら死刑決定。私が今決めた。この判決は天使だろうが悪魔だろうが覆せない。こいつらは魔物娘(?)を売るといった。己が私利私欲のために。

このミミック氏とは会って一時間程度だが、だからといって、
「許される―わけがないッ」
 最初の一歩で戦士とシーフとの間合いをつめ、拳を天高くに掲げる。
「がはあ!」
「ぐわあ!」
 後ろの壁に叩きつけられて二人は完全にダウン。
「な、テメェ・・・!」
「や、ヤバくない?」
「ニンゲンさん・・・?」
「ミミック氏」
「は、はい!」
 きっとこういったことに慣れていないのだろう。体を小刻みに震えさせている。なお更許しがたいな、この連中。だからこそこの一言を届けなくてはな、いまこの時だけでも。
「キミは私が守ろう、全身全霊、全てを懸けて」
 はっきり言ってこいつらは弱い。だが、精神的恐怖を負ってしまった彼女を安心させるにはコレぐらい言ったほうが良いだろう。
「・・・・・・ハイッ!」
 見ていないから判らないが、きっと彼女は笑ってくれているだろう。
「テメェ、調子コいてんじゃ―」
「―遅い」
 相手が突っ込んでくるのにタイミングを合わせて、右側の肩に蹴りを入れる。これは習得した『サバット』や『ムエタイ』など、足を主体に戦う格闘技のカウンターとして独自で作った技だ。
「―残るはキミ一人だ」
「ヒッ」
 そう、後はこの魔術師気取りの女に一撃加えるだけで勝負はつく。簡単なものだ。

―だが、

ガラガラガラ!

「!?天井が!」
「ひいい!!」
「バハムートさん!」
強靭なウロコに守られた腕や脚。大気を切り裂くが如き翼。そう、
「ドラ・・・ゴン・・・!?」
『擬人化してるな』
 もう二度とでてくるな私の中の天使。お前は何がしたいんだ。私の中のテンションが駄々下がりではないか。
「失せろ」
「・・・・・・!」
 魔術師の女は叫ぶ間もなく腕の一振りで跡形もなく消え去った。
「次はお前だ・・・我が巣に忍び込んだこと、存分に後悔させてやろう。」
 『キャラかぶってるな』
「だから出てくんな天使がアアァァ!!」
「バハムートさん、彼が私を助けてくれたんです。」
「・・・・・・いきなり天使とか言うあの男がか?」
「はい。」
 その日私はこの世界に『ダークエンジェル』というものがいることを知った。
11/04/22 07:36更新 / ああああ
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■作者メッセージ
処女作の第二話…いや、これが第一話?
どちらにせよまだまだ不慣れなので色々とガンバってみます。

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