連載小説
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・・・下着はどうするんだ
「さあ、もっと飲めタツキ。」
「ありがとう、バハムート。そして左腕を離せ。」
「・・・おかわり自由。」
「ありがとうスピア。そして右腕を離せ。」
「じゃじゃーん!ミミックケーキ!」
「凄いなミサ。そしてこっちに来るな。」
 だれか私と代わりたい人。時給980円で交代してやろう。仕事内容はいきなり「歓迎会だ!」といって飲み始め、酔ってやたらに体を密着させてくる魔物の相手。私は隅のほうでチビチビとファインエール(ノンアルコール飲料)で、表面上付き合っていただけなのだが、「主役が何をしている!」という一喝で何故か急遽作られた舞台に座らされ、現在に至る。
「じーっ」
 そして私を騙した子(ドッペルゲンガーのヤミナというらしい。)は後ろの柱から人のことを穴が開くぐらい見てきている。べつに騙したことはもう気にしていないが。
『ウソだな。』
『そうだ!ウソだ!』
 なんかもう、何を信じればいいんだか判らない。なんで私の天使と悪魔は仲がいいんだろう。私の価値観がおかしいのか?
「おい、タツキ。この私の注いだ酒が飲めんのか?」
「酒じゃないぞコレ。そして左腕を離せ。」
「・・・おかわりとって来る。」
「そうしてくれ。」
 フフフ、右腕開放!
「お、おええぇぇ・・・。」
「何やってるんだ!?ココで吐くなよ!?」
「わ、私は酒に弱いのだ・・・!」
「誇って言うな!」
 なんて奴だ。ココでリバースされたら大変だ。
「ほら、コレで口押さえておけ。」
 まあ、ビニール袋を口に当てておけば大丈夫だろう。・・・しかし、思っていたより魔物が多いな。さっきは絵の具を持った小さい子にパシられるし、グールツインズに絡まれるし、etc。
「・・・外に行ってくるか。」
 ここは城の二階だが、いかんせん熱気が凄い。涼しい夜風にあたろう。
「何処に行くつもり?」
 夢の二階のベランダへと向かおうとすると声がかけられた。
「ここは熱気が凄い故、夜風にあたりに行くのだ。えーっと・・・。」
 誰だっけこの人。
「名前ぐらい覚えなさい。ダークエルフのマリアよ。」
 面白いぐらいにかみ合わない名前だ。ダークなのにマリア
『・・・どうした?』
 いや、私の天使を考えるとあながち間違いではないな、うん。
「本当はご一緒して、あんな事やこんな事をしたいけど・・・。」
 チラッと外を見るマリア。外に何かあるのか?
「今回は遠慮しておくわ。」
 そういうとグラスの酒を一気に飲み干し、新たな酒を求めフラフラと行ってしまった。

 外にでてみると思った以上に広く、月に照らされた森がなんともいえない魅力を放っていた。
「夜風が気持ちいいわね。」
「ん?」
 すでに先客がいたようだ。もっとも今からあそこに戻る気はないが。あの尖った耳と、ダークエルフと異なる白い肌。エルフか。
「料理はどうだった?ニンゲン。」
「なかなかに、美味だった。エルフ。」
 エルフ、と呼ぶと眉をピクリと動かした。もともとそちらが先にニンゲンと呼んだのだから、そう返されて不機嫌になってもこちらに非はない。しかも私はちゃんと歓迎会(という名の酒盛り)が始まって直ぐに「東雲龍紀だ。17歳で男。神楽坂学い「「「男おぉ!?」」」」んで生徒会長を―男で反応するな!」といった感じに、しっかり名前を名乗っている。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
 ・・・気まずい。何か話題を・・・そうだ!名前を聞こう。初対面なのだから別に話題としてもおかしくないしな。

―「なかなかに、美味だった。エルフ。」
 ・・・何このニンゲン。ちょっと目立ってるからって調子に乗ってるの?私にはミリアムって言う名前があるのに。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
 ・・・気まずい。別に話してやることなんかないけど気まずすぎる。向こうも同じことを考えているのか気になるけど、様子を伺ったら私は負ける気がする。
「名前は何と言うのだ?」
 やっと話しかけてきた。さっきの歓迎会(仮)ではバハムートに「とびっきり可愛い服を作ってくれ!」と言われ(脅しに近かったけど)、デザインを考えていたら彼女・・・じゃないわね。男って言っていたから。とにかく、自己紹介を聞きそびれてしまったわ。このまま気まずいのも何だし、もう一度名前を・・・。
「おい、聞こえなかったのか?」
「ふえええぇぇ!?」
 なんで目の前にいるのよ!なに!?ジパングにいるという戦闘種族『ニンジャ』なの!?本当に意味がわかんない!ニンゲンってみんなこうなの!?

―・・・そこまで驚く必要はないだろう。地味にショックだ。
「ちょっと、どこ行くのよ!」
「いや、私はこの沈黙に耐えれなくなったから、場所を移そうと思っているだけだ。」
 決して大声で叫ばれたことがトラウマになったわけではない。
「・・・ミリアムよ。」
「ん?」
 何のことだ?
「私の名前!そっちが先に聞いてきたんでしょ!」
 なんだ!?何で今度はキレてるんだ!?
「あ、ああ、そうか。私は東雲龍紀だ。」
 よし、相手の心境の変化はわからないが、第一関門突破!名前さえ聞けばいつでも気軽に話しかけられる。
『叫ばれて終わりさ。』
 バカな天使め。今私がキサマのその発言を撤回させてやろう。
「ミリアム。」
 さあ、言葉のキャッチボールを・・・
「・・・・・・。」←酒を一気飲み中。
 ・・・間が悪かっただけだ。
「ちゃつき〜。」(タツキ〜。)
 ちゃ、ちゃつき!?
「ああうおえーむでおうあんて、あえあえういう・・・う、うええぇぇ・・・。」(ファーストネームで呼ぶなんて、慣れなれすぎる・・・うええぇぇ・・・。)
 何ていったんだ?それより、酒に弱すぎるだろう、ここの魔物。
「うええぇぇ・・・。いおいあううい・・・。」(うええぇぇ・・・。気持ち悪い・・・。)
 ・・・しょうがない。部屋まで送って背中でもさすってやるか。

―・・・というわけで彼女の部屋に来たが、凄く綺麗で、アロマの香りが充満している。
「うええぇぇ・・・。」
 ・・・住民が健康状態がよければ文句なし。
「大丈夫か?」
 さすがにこれだけ酔っていたら心配になってしまう。
「今日はもう寝たほうがいいだろう。」
「・・・ヒック・・・しょうする。」
 やっとまともに喋れるようになったか。コレで問題ないな―
「着替えさせて。」
 ・・・自分でやれよといいそうになったが、酔っている相手だ。少し優しく対応しよう。
「あー、そういうのはだな、人に頼るものではない。ましてや私は男だ。(ここ重要。)キミだって嫌だろう?」
 うん、優しく諭す。コレで問題ないはず。
「着替えさせて!」
 状況が悪化。
「お願いお願い。一生のお願い。」
 たかが着替えで一生をふいにするつもりか?
「駄目だ。」
「う、うええぇぇ・・・。」
 何故そこで泣くんだ!?意味がわからない!
「ぐすっ、うぅ、着替えさせて・・・。」
 先程の鋭い眼とは違い、瞳を潤わせての上目遣い。これが噂の幼児退行か。
「・・・下着はどうするんだ。」
 コレを聞けば、好感度は下がるが、確実に開放されると―
「もちりょん着替えさせて!」
「・・・・・・。」
『ラッキースケベだな。』
『いいじゃないか。誰かに見られているわけでもないし。』
 駄目だろう!リアルな話、『エロあり』のタグをつけてないし。
『思春期のくせに本当にプラトニックだな。』
 お前らが興味を持ちすぎなんだ。
「ふく、とってくりゅ〜。」
 とてとてとて、という擬音語が似合いそうな足取りでクローゼットに向かうミリアム。
「きがえさせて〜。」
 トロンとした眼でニコニコしているミリアム。・・・マズイ、逃げ道がなくなった。
「は〜や〜く〜。」
 ・・・覚悟を決めるか。
「・・・ほら、ばんざいしてくれ。上着を取るから。」
「ばんざ〜い。」
 いちいち、復唱する気か?まあいい。上着を取って・・・?
「?どうしたの?」
 ・・・着痩せって、本当にあるんだな。何と言うか・・・以外にボンッだった。
『チャンスだぜ、押し倒しちゃえよ。』
 キサマは悪魔!(一瞬天使と間違えた・・・。)そんなこと出来るか!
『そうだ!』
 ・・・あれ?味方してくれるのか天使?
『そんなことしたら、ゴレオが悲しむ!』
 頭の中で「シノノメクン!」と叫んで追いかけてきた、ブリーフのおじさんが蘇った。
「おええぇぇ・・・!」
 気持ち悪!天使キサマ、まさかの変化球で攻めてくるとは・・・!
「だ、だいじょうぶ?」
 酔いながらも気遣ってくれるミリアム。最初からこうならよかったのだが。
『ま、待つのじゃ!シルヴィア!』
 なんだ?
『お前では相手にならん。いい加減に開放しろ。』
『チェスで勝ったからといって、何が誇れるのじゃ!』
 隣の部屋で何を騒いでるんだ?ミリアムも寝てしまったし、布団をかけてちょっと行ってみるか。
『ま、まだじゃ!オセロで勝負じゃ!』
『昨日やって、私の圧勝だっただろ。』
 ・・・何をしているんだ?
『盗撮か?』
『やれやれ、コレだから思春期の子供は・・・。』
 天使に悪魔め。おっといかん、今は我慢だ。ガマンガマン・・・。
『もう一回・・・!』
『!、フフフ、そこのドアに隠れている新入り君に遊んでもらえ。』
 ヤバイ。あの子供(おそらく)を擦り付けられる!
「こやつにか?」
 目の前に角を生やし、巨大な鎌をもった少女が現れた。
「ああ。そうだ。」
 ―その日私は、この少女・・・バフォメットのカプリコーンに一晩中遊びにつき合わされたのだった。

―あれ?いつの間にか寝てたみたいね。・・・布団なんていつ掛けたかしら・・・?パジャマにもなってるし。
「起きたか?」
「ふえ?」
 頭がいまいち働かない・・・。今の声は―
「シ、シルヴィア様!?」
 今朝からずっとカプリコーン様・・・もといバフォ様とチェスをしていたはず。
「新入り君にカプリの奴を押し付けてきたからな。」
 ククク、と笑うシルヴィア様。・・・新入り?
「忘れたのか?酔って幼児退行した、面倒極まりないお前を見捨てず、部屋に運んで着替えさせ、さらに布団まで掛けていった男だよ。」
 もっとも、私が見ても女にしか見えないがな、と付けたし、再びクククと笑うシルヴィア様。
「・・・血をお吸いになられたんですか?」
 ヴァンパイアであるシルヴィア様の眼に、あの男はどう映ったのか気になる。
「まだだ。・・・だが。」
 フッとわらい、どこか遠くを見ている。
「吸ってみたくはある。」
 こちらに笑いかけるシルヴィア様。・・・まあ、思っていたより優しかったけど、だからといって、私の名前を呼ばずに『エルフ』と呼んだことは許せない。
「そう怖い顔するなよ。」
 そういって部屋を出て行こうとするシルヴィア様。
「もう行くんですか?」
「ああ、これから一人で月見酒だ。」
 ・・・私はどうしよう。もう着替えてしまっているし、寝よう。そうして灯りを消すと、まだ、シルヴィア様がいることがわかる。
「今だから言うが、あの少年、なかなかに頼もしいかもしれないぞ。」
「えっ?」
 どういうことか聞く前に、シルヴィア様の気配はなくなっていた。
11/04/27 00:34更新 / ああああ
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■作者メッセージ
今回、ようやくドタバタに一区切りが付けれました。ここから先はしばらく、龍紀が城の魔物娘達に馴染んでいく日常を描きたいな〜と、思っています。

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