滑谷煙之介『触手』
これはある村の市長、ーーーーが誰にでもしゃべる話である。 彼はもう三十を過ぎている筈である。が、一見したところはいかにも少女じみた身体をした若々しい変態である。 彼の半生の経験はーーいや、そんなことはどうでもいい。 彼はただにこにこと椅子に座り、時折奇妙に少し膨らんだお腹を撫でながら、僕を相手に長々としゃべり続けた。 僕は彼の話をできるだけ正確に写したつもりである。 だがもし不足があると感じたのならば、東京都市外〇〇村の市長を訪ねてみるとよい。 少女じみた彼はまず丁寧に頭を下げ、どこか淫猥なソファを指さすであろう。 それから妖艶な微笑みを浮かべ、静かにこの話を繰り返すであろう。 最後に、ーー僕はこの話が終わったときの彼の顔色を覚えている。 彼は最後に身を起こすが早いか、たちまち腕につかみかかりながら、誰にでもこう囁きかけるであろう。 「興奮してますよね、この変態! あなたも淫乱で、欲深い、猥褻な、気持ちいいことしか考えない、それだけが大事な、えっちな動物になりたいんでしょう? 彼女らの下に案内しますよ、歓迎します!」 |
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