連載小説
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幻想物語
 気持ちのいい晴天だった。
 町への入り口である門前で、ラッドは通行税の徴収に目を回していた。流通の関係でこの町へ入ろうとする者は非常に多く、昼休憩もままならない日々なのだ。
「はい、次の方」
 集団の旅人達から値下げ交渉をされたが、それを難なくいなして並んでいた次の人物に目を向ける。そしてきっちり一分は固まった。
 そこに立っていたのはどこか気品のある若い女性だった。それだけならまだよかったのだが、そこに美人という枕詞がつくと話は変わってくる。
 空色の髪に綺麗な青い瞳、色白の肌とまるで雪国で生まれたかのような容姿で、その体つきも文句なしに均整が取れている。つまりは、すれ違った誰もが振り返るような美女だということだ。
「どうぞ」
 そんな美女がそっと手を差し出してきたので、ラッドは戸惑う。それが通行税であることは、その女性が続けた言葉によってようやく分かった。
「通行税です。ご確認下さい」
「あ、ああ……」
 手に落とされた貨幣を確認すると、税金ぴったりの額だ。
「確かに」
「では」
 優しい笑みを残し、彼女は門の先へ歩いていく。
 その後ろ姿をぼんやりと見送っていると、背後から催促の怒声が聞こえてきて、慌てて仕事を再開する。
 代金を受け取り、釣りを渡したところでラッドは再び門の先へと視線を向ける。
 しかし、もう彼女の姿を見つけることはできなかった。
第一章13/04/01 23:57
第二章14/06/07 16:40
第三章13/09/06 20:47
第四章13/05/27 23:30
第五章13/08/30 21:11
第六章13/07/23 00:04
第七章13/08/21 10:07
第八章14/02/20 19:55
第九章14/03/18 22:30
第十章16/07/16 12:48

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