幻想物語
気持ちのいい晴天だった。 町への入り口である門前で、ラッドは通行税の徴収に目を回していた。流通の関係でこの町へ入ろうとする者は非常に多く、昼休憩もままならない日々なのだ。 「はい、次の方」 集団の旅人達から値下げ交渉をされたが、それを難なくいなして並んでいた次の人物に目を向ける。そしてきっちり一分は固まった。 そこに立っていたのはどこか気品のある若い女性だった。それだけならまだよかったのだが、そこに美人という枕詞がつくと話は変わってくる。 空色の髪に綺麗な青い瞳、色白の肌とまるで雪国で生まれたかのような容姿で、その体つきも文句なしに均整が取れている。つまりは、すれ違った誰もが振り返るような美女だということだ。 「どうぞ」 そんな美女がそっと手を差し出してきたので、ラッドは戸惑う。それが通行税であることは、その女性が続けた言葉によってようやく分かった。 「通行税です。ご確認下さい」 「あ、ああ……」 手に落とされた貨幣を確認すると、税金ぴったりの額だ。 「確かに」 「では」 優しい笑みを残し、彼女は門の先へ歩いていく。 その後ろ姿をぼんやりと見送っていると、背後から催促の怒声が聞こえてきて、慌てて仕事を再開する。 代金を受け取り、釣りを渡したところでラッドは再び門の先へと視線を向ける。 しかし、もう彼女の姿を見つけることはできなかった。 |
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