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ある女戦士のクロニクル

ビビりなディタトーレ

INDEX

  • あらすじ
  • %02 c=15d 第1章『Precipitation And Awakening 』
  • %02 c=15d 第2章『Midnight Battle』
  • %02 c=15d 第3章『Separation And Departure』
  • %02 c=15d 第4章 『I Go Because・・・』
  • %02 c=15d 第5章『The Strange Walkers』
  • %02 c=15d 第6章『Road Under The Ground』
  • 第6章『Road Under The Ground』

    第6章『Road Under The Ground』
    栄暦1459年4月27日 午後5時35分
    人間界 エルメッド大陸 カンネバ砂漠北部
    リートス村 民宿

    「あいよ。じゃあ、確かに一泊分、代金もらったからね。ほら、これが鍵だ。何もないとこだが、ゆっくりしてってくれ」
    「ありがとう。ヴェリナ、部屋へ行くぞ」
    「ああ」
    国境を越えてから、さらに歩くこと7時間。
    ようやく最初の集落、リートス村についた。
    最初この村に入ったときは、あまりの過疎っぷりに空いた口が塞がらなかった。
    こんなところに宿屋があるだけでもすごいと思う。
    「・・・国境ひとつ超えただけで、世界って変わるものなんだな」
    変わってきたのは建物だけではない。
    自然の風景からも徐々に緑色が失われ、かわりに濃い茶色の大地と黒い石が目立ってきた。
    この村の周辺に至っては、地面から生える雑草と枯れたような色の細い木ぐらいしか植物がない。
    人が住むには、ここはあまりに辺鄙だろう。
    だが、では魔物が住めるかと聞かれれば、正直首を縦には降れない。
    魔物の種類に詳しいわけではないが、乾燥した場所を好む魔物が住むには、ここは湿り気が多い気がする。
    そもそも人間があまりいないんだし、精も取れない。
    だから誰も集まらないのだろう。

    しかし、そんな村の印象とは裏腹に、宿の部屋はかなり良かった。
    清潔そうな薄緑色のカーテン。
    地味すぎず、しかし華やかすぎるわけでもないシャンデリア。・・・ん?こういう宿にシャンデリアってついてるものか?
    そして何により目を引くのは、美しいバラが刺繍されている毛布のかけられた、ゆうに二人は一緒に寝られそうなベッ―――
    え?
    あれ?

    ・・・なんで、ベッドが一つしかないんだ?

    それをアルスに言うと。
    「・・・なるほどな。ヴェリナ、荷物はまだ置くな」
    「え?どうし―――」
    「いいからここにいろ。すぐ戻る」
    そう言い残して、アルスは下の階へと降りていった。
    取り残されたアタシは、ぼんやりとそこに立っているしかなかった。
    1分後。
    戻ってきたアルスは言った。
    「すまない、待たせたな」
    「それはいいんだけどさ、何してきたんだよ?」
    「部屋を変えてくれと言ってきた」
    「何で?何か問題でもあるのか?」
    そう言うと、アルスはこちらをじっと見てくる。
    いつもどおりフードで目は見えないが・・・
    なんとなく、ジトッとした感じだった。
    「・・・まあ、お前にとっちゃ問題ないというか、むしろ好都合なのかもしれないが」
    「ますます分からないよ。いったい――」
    「お前、もしかして本当に分かってないのか?」
    「だから何が?」
    そう言うと、アルスは唖然とした口調で言った。
    「世間をよく知っているとは思っていないが、これほどとは。・・・ヴェリナ、ここは連れ込み宿。つまり性交することを目的とする男女用の宿だぞ」
    「・・・え!?」
    アタシがそう答えたのは、こういうものの存在を知らなかったからではなく、アタシの知っているものとこの部屋とがあまりにかけ離れていたから。
    アタシが見たことがあるのは、バラックとさえ言えないような粗末な小屋。
    もちろんこんな立派な家具なんか無く、よく牧場の荷車にかぶせるような藁のシートがひいてあるだけ。
    なんでこんなこと知ってるのかって言うと、一時期そこの利用金回収役をしていたから。
    ・・・その時好奇心に負けて、ヤッてる所をほとんど見てたとは口が裂けても言えないが。

    「で、どうする?ここを出るのか?」
    「いや、それは無理だ。他に宿屋があるとも思えんしな」
    「野宿でいいじゃないか」
    「それができるなら最初から宿屋には入らない。ここは地面の状態が悪すぎてテントが張れないんだ」
    「じゃあ・・・」
    「ここで一泊、ということになるな」

    「さ、明日も早い。そろそろ寝よう」
    ああ、さっきから鼓動がうるさい・・・
    アタシだって、一応は女だ。
    好きな男と一緒の布団で寝る。
    このシチュエーションに、興奮しない訳がないわけで。
    サラマンダーの致命的な欠陥って、すべての感情がわかりやすく表に出てしまうことだよなぁ。
    可能な限り無表情を装っちゃいるが、顔が真っ赤になってるって時点で既にバレバレだろうし。
    こりゃさぞ尻尾も盛大に――ああ、やっぱり。
    音こそそれほど立ててはいないが、アタシの尻尾はメラメラと燃えている。
    ま、どうせ「好きだ」って言ってしまったんだし、今更隠すこともないんだろうが。

    「ヴェリナ、起きろ」
    体を揺すられて、アタシは深い眠りから目が覚めた。
    ・・・うわ、自分でもわかる。今朝の調子は最悪だ。
    寝不足。
    昨夜は余りにも、眠れない理由が多すぎた。
    まあ、一部はアルスのせいなんだが。
    二人ともそれほど大柄ってわけでもないから、ベッドには普通に二人とも入った。
    最初アルスは「オレはソファででも寝るさ」と言ってベッドで寝ようとしなかった。だが、アタシがどうにか説き伏せて一緒に寝させた。
    まあ、そのせいでアルスの体温がモロに伝わってきて、なかなかドキドキが止まらなかったんだけど。
    しかし、それは理由の一つでしかない。もっと大きな原因は別にある。
    それは、昨晩見た夢だ。
    良い夢では、もちろんない。
    だが、悪夢とも違う。
    変な夢だった。とにかく。
    あれから6年が経った今でも、夢の内容は鮮明に思い出せる。
    ただ、それを分かりやすく文章に書けとなると、アタシの文才じゃかなりきつい。
    だから、わかりやすさ云々は別にして、とりあえず見たものをありのまま書こうと思う。

    アタシは、半透明の大きなピラミッド型のカゴのようなものの中にいる。
    そのカゴはピラミッドの白い辺だけでできている。要は面の部分がスカスカなのだ。
    地面さえない。なのに、落ちるなんてことはない。
    落ちようとするアタシの体を、見えない無数の力が押し返している感じ。
    その浮遊感はアタシにちょっとした不安を与えたが、それに慣れるとなかなか快適な空間だった。
    あたしが10歩歩くと、それに合わせてピラミッドも10歩分動く。
    つまり、絶対ピラミッドからは出られない。
    立っているのも疲れたアタシは、その場に膝を抱えるように座る。
    尻と足の裏に、またあの支える感触を感じる。
    で、多分夢の主題はここから。
    座るあたしの頭上に、突然白い文字が不規則に浮かび上がってくる。
    それはあるところで切り離され、二つに分かれている。
    右半分は、アタシのよく知っている言語。
    左半分は、アタシの全く知らない言語だった。

    wake-起きる
    walk-歩く
    carrot-人参
    use-使う
    greet-挨拶する

    こんなのが、数え切れないほどわらわら出てきた。
    おそらく、右の単語の意味と左の単語の意味が対応してるんだろう。
    だが、これをアタシにどうしろというのだ。
    皆目見当もつかずただ呆然と見ていると、文字列がゆっくりと光の粉になり、アタシの方に降ってきた。
    それはゆっくりと時間をかけて、アタシの額の中央あたりに染み込んでいく。
    痛みは感じない。
    感じたのは、猛烈なかゆみ。
    額から頭の内側全体へと広がっていく。
    その感覚がとても不快で、ただこの感覚に耐えることしかできなくなる。
    そして、ついに耐え切れなくなったアタシは、悲鳴を上げ――
    そこで、アルスに叩き起されたのだった。

    宿の料金は昨日払ったので、アタシたちは宿の主人に挨拶して外に出た。
    起床してから多少時間が経ったためか、倦怠感は多少消えていた。
    そのまま南――つまり砂漠の広がっている方向へと歩き出す。
    食料や水は既にブリジカ領から出る前に揃えた。20日分もあれば、次の集落までは十分だろう。
    時折コンパス(アルスの物)を確認しつつ進む。
    もはや道なんかない。ただの荒野をひたすら南へ。

    陽もすっかり高くなり、あの村からもずっと遠くまで離れた頃。
    「・・・この辺だな」
    唐突にアルスがつぶやき、足を止めた。
    「この辺だなって・・・何がだ?」
    前後左右、どこを見渡しても荒野。
    何もないように見える。
    「少し離れてろ」
    アタシはアルスの指示に従い、アルスから10m位離れ、様子を伺う。
    アルスは、二言三言何かつぶやいた。
    すると。
    なんの前触れも無く、突然アルスの足元の地面がアリ地獄のように凹み始めた。
    10cmほど地面を掘ったところで、地面の下から地表とは異なる色をした土が顔を出す。
    そこで土は凹むのをやめ、かわりに円形に広がり始めた。
    そして、円の直径が2mほどの大きさになったとき、土は広がるのもやめた。
    地表の下から出てきたのは、見たこともない灰色の土。
    いや、しかし、これは土ではないんじゃないか?
    表面は不自然なほど滑らかで、荒地よりはるかに歩きやすい。
    そのうえかなり固くしまっている。踏んでもちっとも凹まない。
    極めつけは、その土のほぼ中央部に引かれた、消えかけた一本の黄色い直線。
    「アルス。これってもしかして・・・」
    「ああ。人の手によるものだ」
    アルスは、いつもどおりの平坦な声で言う。
    そのまま一歩踏み出すと、円は南に一歩分だけ大きくなった。
    おそらく、アルスからの魔力がそうさせているんだろう。
    「さ、行くぞ」
    アルスはアタシに声をかけ、そのままスタスタと歩き始めてしまった。
    慌ててあたしも後を追う。
    足に慣れると、この道は今まで歩いたどの道よりも歩きやすい感じがした。
    「この道って、土に埋もれてたってことは相当古いものなんだろ?」
    「ああ。かなりな」
    だけど、なんか変なんだよなあ・・・
    アタシはこういうのに詳しいわけじゃないけど、この道を作るのに使った技術はかなり高度なものだったんじゃないかと思う。多分、今より進んでたんじゃないか?
    長い年月の間に失われてしまった技術なんだろうか。そう思った。
    それで、何気なくアルスに聞いたんだ。
    「なあ、この道っていつ頃作られたんだ?」
    その質問に対して、アルスはすぐには答えなかった。
    目線を右の地平線の向こう側にやり、しばらく地平線を見つめてから、ふ、とため息をついた。
    そして、言った。

    「1500年ほど、前だ」

    12/01/27 23:31 ビビりなディタトーレ   

    ■作者メッセージ
    よし、どうにか1月中に投稿できた・・・

    ご意見・感想などなど、書き込んでいただけたら幸いです。
    01/27
    デザインの設定をミスってました。
    読んでくださっている皆様、申し訳ありませんでした。