君の胸は。
その時、城内に電撃走る……。
窓の外には稲妻が走り、雷光によって室内が明滅している。
「フ、ふふふふ。ついにヤりました。やってしまいました……」
そこにいたのは、胸を見事に実らせたワイト。魅惑の果実が弾けるように揺れる。
玲瓏な美貌は凄絶に。両手の隙間から、淫らに蕩けた笑みが覗いている。
稲光の度に、見事な肢体が闇の中に浮かび上がる。彼女の下には、精を注いでグッタリとした領主の姿。
彼女は自らの膣で肉棒をもう一度締め付けた。グゥ、というくぐもった声と共に、領主の肉棒から最後の一滴が吐き出される。
彼女はピクリと体を震わせて、それを膣から吸収する。そうして彼の腰の上から退く。
彼女は領主の様子を見てクスリと笑う。
「お薬で戻すのは、まだ後にしておきましょう。こんなチャンス。そうそうありません」
そう言ってクローゼットを開ける。中には豪奢でありながら、可憐な花のようにーーではなく、静謐な夜のように美しい衣装がいくつも収められていた。領主の妻、不死者の女王ワイトであるモーリーの衣装。そのうちの青いドレスを手に取る。
昼空に星が瞬けば、かくあるだろうという……青地の布には細かな宝石の煌きが散りばめられている。
「ついにこの時が来ましたね……」
不死者の女王にふさわしい衣装に包まれて、傲慢なまでに主張する胸を一層張る。感慨深そうな言葉と共に、彼女は廊下に足を踏み出した。
◆
「あれ、モーリー様。どうかされたのですか? ……!!?」
廊下で出会ったデュラハンが、彼女の胸を見て絶句している。それは死者が蘇ろうが、天地がひっくり返ろうが、主神と魔王が百合百合になろうが……。
起こりえないはずの奇跡。あり得ないこと。ーーー否、あり得てはいけないこと。
アイデンティティの崩壊とも言えるソレ。膨らんだどころか、そのまま破裂してしまいそうなほど見事な大きさの胸、おっぱい。
彼女のひんぬーをネタにすることで、何度無駄な精液が流されたことかーー。
(注:嘘です。流された精液は、その都度スタッフが美味しくいただきました。)
「モーリー様の胸がでっかくなっちゃたーー!?」
デュラハンの叫びが、城内にこだまする。
その声を聞きつけて、ドヤドヤと集まってくる部下のスケルトンたち。
「どしたんすか〜? 今、あり得ない言葉が聞こえた気がしたんすけど〜。デッカくなるのはウチらの態度だけっすよ」
「ついに、おかしくなった? 首の接続不良か。油刺さないと……」
「ファイヤーの準備はミーに任せてネ〜」
「態度がデカい自覚があるなら自重しろ!
「私の首に油なんて刺そうとするんじゃない!
「そして、堂々と私を殺す計画を立てるんじゃない!」
デュラハンが律儀に三段突きをかます。
「「「ご苦労様です!」」」
「お前らのお守りは私の業務に含まれていないッ!」
ハァハァ、と肩で息をするデュラハンに、クスクスという笑い声が届く。
「お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
デュラハンは彼女に頭を下げる。チョーカーのおかげで頭は落ちない。
「いいえ、いつも通り仲が良くて、いいことです」
「ですが、そのーー」
「お前のオッパイはまな板だったはずだ。そんなことをデュラハンに言えるはずはなくーー」
「オイぃぃ! 勝手に私にナレーションをつけるんじゃない。そんな本当のことを言ってしまえば、私が殺されてしまう」
「大丈夫っす。体は私たちが守ります」
「頭も守ってくれ!?」
そのやり取りに、やはりクスクスという笑い声が届く。
おかしい。デュラハンは訝しがる。まさか胸が大きくなって、器まで大きくなったとでもいうのか……。不死者の女王は、そんなデュラハンの頭を取って抱きしめる。
「も、モーリー様?」
デュラハンは、目を白黒させる。
「どうですか? 本物でしょう。誰かの胸をもいでくっつけていることなんてありませんよ」
恐ろしい物言いだが、以前、バストアップのためにスケルトンたちの肋骨を狩って回るという、肋骨大戦争を引き起こしたモーリーならばやりかねない。その時は、数本集めて歪な形になった胸を見て、モーリーはソッとスケルトンたちに肋骨を返したのであった。
「確かに。継ぎ目もありませんし……」
間近で彼女の胸を見たデュラハンが感心したように言う。本当に魔法のようだ。今まで、どんな魔法ですらそのまな板を膨らませることが出来なかったと言うのに……。今になって、奇跡が起こったのか。それとも、これが愛の力なのか。
彼女の豊かな胸に頭を包み込まれたデュラハンは、いくら美しかろうとも熱を宿さないワイトである彼女から、まるでポカポカと包み込まれるような暖かさを感じた。
体全体を包み込むような、神々しささえある圧倒的な抱擁感。全てを投げ出して、身を委ねたくなるような。
これがーー、バブみーーー。
「って、アツゥ!? 熱い!?」
デュラハンが首を何とかよじって自らの体を見る。燃えている。文字通り燃えている。
スケルトンたちが、デュラハンの体に油をぶっかけて、火をつけていた。
三人の骨がデュラハンの体を囲んで、キャンプファイヤーよろしくマイムマイムを踊っている。
「貴様ラァぁぁ! 熱い熱い、あつぅいいいいいい!」
「城の中で、火を、使わない」
現れたリッチが、魔法で作り出した水で消火した。
「城の中で、火を使ったの、誰?」
スケルトンたちが、デュラハンの体を指差す。
「そっか……」
リッチが悲しそうな声を出す。
「違うぞ。断じて違う。私がそんなことするわけ……」
「じゃあ、存分に、燃え上がってもらおうか」
リッチが取り出したスイッチを押す。
デデ〜ン♪ デュラハン、OUT〜。
壁をすり抜けて現れるゴーストたち。彼女たちはデュラハンの体だけを担ぐと、廊下の奥へと連れて行く。
「違う。待て、待ってくれぇ。私を燃やしたのはそいつらだ。何故、私が罰を受けなくてはいけないのだ」
これから、デュラハンの体はウィル・オ・ウィスプの檻に放り込まれて、彼女の焔で盛大に燃やされるのだろう。
「部下の不始末は上司の責任」
「グぅッ」
正論、か? ホワイト、か? デュラハンが、うなだれる(首だけで)。
「「「グッ」」」
「お前ら、イイ顔で親指を立て、ヒゥッ! ……やぁ、そんな大きなモノ、お尻のアナにぃ………って!? 長い長い長い。え、マジで、まだ入れるの? そして、それ全部一気に引き抜くの? 無理無理無理無理」
「無駄」「無駄」「無駄」「無駄ァ」(リッチ+スケルトン3)
「オラオラオラオラ、お前ら、フザ、ゲッ!? おごォォォォォォ!」
デュラハンの頭が、大きな胸に包まれながら無様なアヘ顔を晒す。ヒクヒクと痙攣しながら、舌を垂らして、ヨダレも鼻水も垂らしていた。
……………。
「んじゃ、ウチらはこれで」
「ほどほどにしなさいね」
「うん。そっちも」
ピー(自主規制)な表情を浮かべる頭部を受け取ったスケルトンたちが、二人に見送られて去って行く。
ここでようやくリッチが彼女に声をかける。
「で、モーリー様、その胸はどういうこと? もしかして、もいだ?」
「失礼ですね。本物ですよ。正真正銘100%私の胸です」
豊かな胸が、リッチの前でグニュウ、と持ち上げられる。リッチの目がすわっている。
「…………。裏切り者。なら、私がもいであげる」
「え? ひゃぅん」
元から虚ろな目をさらに虚ろにしたリッチが、忌々しくたゆたゆと主張しているオッパイを鷲掴む。
ローブからは、リッチの胸が覗いる。かつてのモーリーほどではないと言え、彼女の胸も平坦であった。
「スッゾ、オラー」
ナムサン。あくまでも熱を宿さない口調でリッチは揉み続ける。
「これは、どういった状況かな? フム、モーリー様の胸が膨らんでいるとは……一体何本の肋骨を集めればそんなことになるのかね?」
そこに、イイ声のファントムが黒幕ボイスで現れた。
「いやいや。今回私は黒幕ではないよ」
「誰に、話しているの?」
(天の声)黒幕じゃないもんねー。
「ねー(CV.中田譲治)」
「だから、誰と話しているの……」
「フフフ。ヒ・ミ・ツ、さ♡」
(天の声)実はね。カクカクジカジカ。
「ほう。そんなことになっていたとは。どうして私に教えてくれなかったのかね? ほほう! 了解した。私は今回はキャストの一人と言う事か。それならば、私は君の三文芝居に付き合おうではないか。せいぜい私をうまく踊らせてくれ。はっはっは。はっはっはっは」
一人で納得して、イイ声で笑いながら去って行くファントム。その顔には悟道の、愉悦の笑みが張り付いていた。
ファントムの後ろ姿を見送る二人。気勢を削がれたリッチは、目の前の御オッパイ様を見て涙ぐみながら言う。
「そっか。もう、モーリー様は、手の届かない、ところに、行って、しまったんだね……」
「………お亡くなりになったように、言わないでくれませんか?」
実際、もうお亡くなりになっていることは確かだが(ワイトだし)。
そこでリッチに、御おっぱい様からのありがたいご神託(オラクル)が授けられる。
「………もしかしたら、アレをやっていたからかも知れません。(ゴニョゴニョ)」
「え……、そんなこと、するの……。というか、そんなこと、してたんだ……。……………………。頑張ったね」
何を言われたのかは分からないが、リッチが生暖かい目を向けていた。
「じゃあ、ちょっと、用事が、あるので、失礼します」
リッチがお辞儀をして去って行った。
◆
不死者の女王が廊下を優雅に歩いて行く。その仕草の一つ一つに気品が感じられ、出会う魔物娘たち皆がその豊かに実った胸に驚き、祝辞の言葉を述べてくれる。
彼女は得意げな表情一つせず、当然のこととしてその賛辞を受け取る。
歩くたびにモインモイン揺れる、神聖おっぱい様に誰もが手を合わせて拝む。
テッテレ〜♪ 神聖オッパイ様の神聖レベルが上がった。
そして、順調にレベルアップを繰り返していた彼女はーー。とうとう彼女に出会う。
「え!? 何で、胸の大きい、わた、……し?」
そこにいたのはモーリー。そっくりな顔をした不死者の女王がお互いに見つめ合う。違うのは胸の大きさ。豊満な胸か、平坦な胸か。
「…………鏡?」「………鏡!?」
一ヶ所、絶対的に、絶望的に、異なる箇所があるのだが。絶壁の断崖を登りきった図太さで、平坦な方のモーリーがポツリと呟く。
平坦なモーリーが左手をあげる。
豊満なモーリーが右手をあげる。
平坦なモーリーが左足をあげる。
豊満なモーリーが右足をあげる。
平坦なモーリーが左向きに回って、手を叩か、ない。
豊満なモーリーが右向きに回って、手を叩か……、ないっ(セーフ)。
右手。右足。左ターン。右ポケットをゴソゴソ。バイブを取り出す。
左手。左足。右ターン。左ポケットをゴソゴソ。バイブを取り出す。(ビックリ)
平坦なモーリーが、バイブを自分の胸の上に持って行く。パッと手を離す。
豊満なモーリーが、バイブを自分の胸の上に持って行く。パッと手を離す。
ストーン。たわわチャレンジ失敗。…………。
モイン。たわわチャレンジ成功。……………。
「………ふ、ふふふふ。誰ですか、あなたーー! 三点リーダを一回増やしたところで、バイブが落ちたことは誤魔化せません。というか、服が違います!」
「まさか両方のポケットにバイブが常備されているとは思ってもいませんでしたが……。モーリー様、お早いお帰りで」
「……貴女の所為だったのですね。帰ってきてから、会う方会う方。私の胸を見て、ああ、やっぱりか、と可哀想なものを見る目を向けてきて。気を落とさないように、と慰められて……。この恨みハラさでオクベキカ。(ダッ!)」
「もうはらしていますよね(ダダッ!)」
平坦なモーリーが豊満なモーリーを追いかける。豊満なモーリーは死屍累々と転がる魔物娘たちを横目で見た。
平坦の逆鱗に触れて、ズギュゥゥゥン(吸精)された魔物娘たちだ。ナムサン。彼女たちのフォローは領主に託すしか無い。
豊満なモーリーが走ると、神聖オッパイ様が揺れる揺れる。
ゆやーん、ゆよーん。ゆや、ゆよーん。
平坦なモーリーが走ると、御おっぱい様が揺れない。
ペタッ。ペタペタッ。どこかのお家から餅つきの音が聞こえる。
だってお正月だもの。天の声(みつお風に)
「胸、置いてけ。なあ。本当の私だ!! 本当の私だろう!? なあ、本当の私だろう、おまえ」
平坦なモーリーが鬼気迫る表情で、豊満なモーリーを追いかける。
「ノインノイン。違います。錯乱しないでください。私は元ゾンビのイロムです。目出度く今日のセックスでワイトにクラスチェンジしたのです」
「胸の揺れる音で否定しないでください! クラスチェンジって、え〜! それならどうして私と同じ顔になっているのですか!?」
「多分、領主さまの好みがこの顔だったから?」
「……ポッ。……じゃなくて、それならどうして、貴女の胸はそんなバインバインなのですか!」
「素質?」
「ーーーブチッ。なら、胸じゃなくて、首置いてけ。首ィィィィ! その体、私がイタダクッ!」
「そんな首のすげ替えなんて、デュラハンではあるまいし……」
「はっはっは。楽しそうなことになっているでは無いかね(イイ声)」
追いかけっこ(という名のハンティング)をしている二人に、ファントムがリビングドールを腕に乗せて並走する。
「誰それ、かい? 気分だよ気分。はっはっは。あのシーンを思い出さないかい?」
「えー!? エメラルド、何で私が巻き込まれているの〜!?(CV.門脇舞以)」
「エメラルド! イロムを捕まえなさい!」
「はっはっは。私がこの状況で貴女の命令を聞くとでも?(愉悦!)」
「チィッ!」
モーリーが忌々しげな舌打ちをする。
バンッ。イロムが一つの扉を開けた。
そこで目にしたものに、全員が目を丸くして足を止める。
「空前絶後のぉ、超絶怒涛の貧乳魔物娘。巨乳を愛し、巨乳に愛されたかった女。
「まな板、ナイムネ、貧乳。……胸フェチ半分への提供者。
「そう、我こそはぁ、アンデッド、リッ、チ。イェーイ、僕はドヤ顔で……じゃない。ルサンチマーン。
「現在バスト75。目指すサイズは84。
「7584(なごやし)。二度と、行きたく無い、都市。ナンバー・ワン。名古屋市、と覚えてください。
「成長途中の、この胸。揉んで大きくするなら、今が、チャンスですよ。領主さま。……よし。
『え!?』
リッチが無表情で、サンシャインしていた。
常夜の国でサンシャイン(陽光)とは、これいかに。
飛び込んできた全員が気まずそうな顔をしている。
リッチは固まっている。反応がない、屍のようだ。あぁ、屍だった。
聡明なリッチは乱入者を見て、平坦なモーリーと豊満なモーリーを見比べて、理解する。
「ア〜バ〜ダ〜ケダブラ〜!」
リッチの口から死の呪文が紡がれる。
残念、効果は無いようだ。だって、みんなすでに死んでるんだもん。
リビングドールも、リビングと言っても人形だ。効かないことにしておいてあげて欲しい(懇願)。
ダダッ。イロムとエメラルドが逃げ出す。エメラルドはリビングドールを抱えたまま。
「「逃すかぁ(!)」」
リッチとモーリーが追いかける。
「しっかり撮れたかね?(愉悦部募集中)」
エメラルドが腕の中のリビングドールに尋ねる。
「もしかして、このために私を連れてきたの!? 確かに、撮っちゃたけど、私の目に仕込まれた記録用水晶で撮っちゃったけど〜!?(巻き込まれそうなボイス)」
「目、置いてけ。なあ、目だけでいいから、置いてけッ!」
リッチの声に、とうとう熱がこもる。
まるで、陽が差し込んだかのように。サンシャイーン! イェェェェェェェ〜〜イ!
モーリーとリッチから逃げるイロムたちの前に、女武者とドラゴンのアンデッドが現れる。
「ちょうどいいところに。二人とも、そいつらを捕まえなさい!」
モーリーの声で、彼女たちはイロムたちを捕まえようと身構える。
「委細、承知」
女武者はジバング刀を抜き放って斬りかかる。殿中とも言える場所で女武者の刀が煌く。
キィィィィン!
エメラルドがそのポン刀をポン酒の瓶で受け止める。
それを見た女武者は、エメラルドと……握手を交わした。
「委細、承知」
「これは後で君の部屋に届けよう。私のコレクションの一品だ」
たたたーっ、と彼女たちの横を素通りしていく、イロムとエメラルド。
「買収されてんじゃないわよッ!」
「私が仕えるのは、領主さまと酒だ。禁酒令を敷く、モーリーさまなど主君ではないです!」
「ガウガウ〜(右に同じ)」
「こいつら……、言い切ったわね。貴女たちが、城の酒を全部開けるから悪いのでしょう。そもそもそれが死因のくせに」
「死んでも懲りないとはこのことだ(ドヤ顔)」
「ガウッ!(ドヤ顔)」
「「もう一変死んでこいッ!」」
彼女たちを残して、イロムとエメラルドは逃げる。
そして、領主の部屋に逃げ込む。
もう復活していた領主は、豊満なモーリーを目にして……。
涙を流して跪いたっ!
「神聖オッパイ様こそこの世の至高。神聖にして唯一不可侵であるオッパイ様こそ神であり、神が使わした……」
ブツブツと信仰告白を始める領主を前にして、エメラルドは愉悦の笑みを深め、イロムは勝ち誇った顔をする。
その様子をリビングドールが冷めた目で見つめている。ジィィィ、っと。
そこに遅れて、モーリーとリッチが到着する。
それを見て、イロムとエメラルドは部屋の奥に避難した。
目を閉じて祈り続ける領主の前に、モーリーが立つ。
彼女の耳には、彼の神聖オッパイ様への祈りの文句がしっかりと届いている。熱を宿さないはずの彼女の体から、熱風が吹き始める。
モーリーがチョンチョン、と領主の肩を叩く。
領主はまるで、洗礼を受ける信仰者のような顔をして、目を開く。
………………。
「キェェェェ。マナイタ!? マナイタ、ナンデ!?」
領主にMRS(マナイタ・リターン・ショック)が発症した。
「ドーモ、領主=サン。ならば、死ね。コラァァァ!」
”キリエ・エレイソン(救われぬ魂に憐れみを)”
モーリーの洗礼鉄拳で、領主の魂が浄化される。そのまま、領主は窓ガラスを割って、外に落ちていく。
ここは、常夜の国。魔界だ。死ぬことはないだろう。………多分。
「良し。脱出口が開いたぞ。カメラを頼む(イイ声)」
「ちょっと、今はっきり私のことをカメラって言ったわよね!?(ロリボイス)」
イロムはエメラルドから、リビングドール(AI搭載カメラ)を受け取って窓から飛び出す。
「『重力軽減』、『衝撃緩和』ーー。着地は任せたカメラー」
「ちょっと!? 立場逆じゃないの!? あなたもカメラなんて言わないで。キャアアアアアア! 落ちる〜〜〜〜!」
「「待てぇぇ!」」
咆哮するモーリーとリッチの前に、エメラルドが立ちはだかる。
「行かせんよ。せっかくあそこまで実ったのだ。……命を懸けろ。あるいはこの身に届くかも知れん(ラスボイス)」
「「懸ける命なんて元から無いわ、ボケェェェ!」」
「はっはっは、はっはっはっは。グフッ」
流石のファントムでも、絶招を極めた八極拳を披露する事はなく、ワイトの吸精に倒れた。
モーリーとリッチが窓から外を見る。
ーーー二人はその光景に目を見張った。
ゾンビたちが自分の体をクッションにして、二人を助けようとしていた。
ゾンビたちが一番集まっている場所は、おそらく領主が落ちた場所なのだろう。
彼女たちへのお年(金)玉と言ったところか。
次のお年(乳)玉である神聖オッパイ様の御姿に、ゾンビたちが跪いて拝んでいる。
「その者、青き衣を、まといて。腐海に降りたたんーーー」
「馬鹿なことを言っていないで、私たちも追いかけるわよ」
モーリーがそのまま窓から飛び降りる。
すると、エグソダスの如く、一糸乱れずゾンビの海がパカっと開いた。
「は?」
グシャッ。肉と骨の潰れる嫌な音がする。
そもさん! 何故、ゾンビたちはモーリーがを避けたのか?
説破! だって、全く拾うタマが(金玉も乳も)、無かったのだから。
仕方ないね。モーリーだもの。天の声
眼下で蠢く腐った海に潜った彼女たちを捉えるのは難しそうだ。
リッチはため息をつくと、最強のガーディアンを召喚する。
取り出したスイッチを押す。ポチッとな。
「イロム、OUT〜。イロム、ウィル・オ・ウィスプ〜」
「は?」
素っ頓狂な声と共に、檻に捕まったイロムがリビングドールを抱えたまま、腐った海からサルベージされていく。
もちろん、檻はウィル・オ・ウィスプに繋がっている。
「ちょっと待ってください。なんか色々な法則を無視していませんか?」
「これが、サイヤ人の王子、すら恐れた、ギャグ・ワールド」
「あらあら、オイタをし過ぎてしまったようね♡」
檻の中にはピー(自主規制)な姿になった、デュラハンの体という先客がいた。
それを見て、リビングドールが震えだす。
「待って、待って。ヤダヤダヤダ。私巻き込まれただけーー!」
「……、その子は、いい。コッチに、渡して」
「あら、そうなのね。残念、またね♡」
目の下にくっきりとクマをつくったウィル・オ・ウィスプがニコリと笑う。
絶対に次はないはずだ。リッチに引き渡されたリビングドールは、ひとまず胸を撫で下ろす。
「ありがとう」
リビングドールはリッチにお礼を言う。
しかし、残念、そうは問屋が卸さない。
「何? その見るからに危なそうな工具……。もしかして!?」
リビングドールがガタガタと震えだす。
「ご想像、の、通り。今から、解体する」
「ナンデ何でナンデ〜〜!? 目だけじゃないの!?」
「エメラルドが、カメラを、仕込んだのは、目だけ、とは限らない。巧妙に、体内に、隠して、いても、おかしくない」
嫌な信頼だ。エメラルドがターミネーターの如く、親指を立てたまま沈んでいる。起きてるんじゃないのか、コイツ?
(いやいや、起きているわけがないだろう?)
(天の声)えっ!? 窓に、窓にぃぃぃ!
「服を、切り、刻まれたく、なければ、大人しく、脱いで」
「ぅう。わかったよ〜」
観念したリビングドールが服を脱いでいく。リッチの前に、艶かしい球体関節人形の素肌が晒される。
「……。綺麗過ぎて、やり過ぎるかも」
「やさしくしてね!?」
再びガタガタと震えだすリビングドール。
リッチは早速ドリルを手に取ると、歯医者のようなチュィイイイイという音を立てている。
そのドリルが体に触れる前だというのに、リビングドールはすでに泡を吹き、白目になって気絶している。その方が彼女のためだろう。
窓の外では、ご来光ならぬ、神聖オッパイ様のご開帳が行われている。
有難や有難や。
いつの間にやら、領主もモーリーも手を合わせて拝んでいる。
もはや収集のつかなくなった混沌の腐海がそこにはあった。
◆
テレビから流れるその映像を肴にして、私たちはコタツに入って日本酒を煽る。
ファントムのエメラルドがうっすらと笑いながら、私に声をかける。
「これぞいつもの我らが常夜の国である。はっはっは。これが君の世界の酒か。まぁ、我らの酒には劣るが……。どうだ? 肴によっては存外、化けるものだろう(お猪口を煽りながら、イイ声で)」
「ほう。これは……、変わるものだな。稲荷さん熱燗もう一本お願い。それ飲んだら交代するから」
「はーい。そんなこと別にいいのに……」
そこで、ベルが鳴る。
「……あ、仕事だ。あー、あー。……テステス」
(天の声)
ーーーテッテレーン♪
神聖オッパイ様は乳神様にランクアップした。
テレビには、神々しいワイトの乳神様が映っている。
「良い年になりそうだ」
エメラルドはそう言って、しみじみと頷いたのだった。
窓の外には稲妻が走り、雷光によって室内が明滅している。
「フ、ふふふふ。ついにヤりました。やってしまいました……」
そこにいたのは、胸を見事に実らせたワイト。魅惑の果実が弾けるように揺れる。
玲瓏な美貌は凄絶に。両手の隙間から、淫らに蕩けた笑みが覗いている。
稲光の度に、見事な肢体が闇の中に浮かび上がる。彼女の下には、精を注いでグッタリとした領主の姿。
彼女は自らの膣で肉棒をもう一度締め付けた。グゥ、というくぐもった声と共に、領主の肉棒から最後の一滴が吐き出される。
彼女はピクリと体を震わせて、それを膣から吸収する。そうして彼の腰の上から退く。
彼女は領主の様子を見てクスリと笑う。
「お薬で戻すのは、まだ後にしておきましょう。こんなチャンス。そうそうありません」
そう言ってクローゼットを開ける。中には豪奢でありながら、可憐な花のようにーーではなく、静謐な夜のように美しい衣装がいくつも収められていた。領主の妻、不死者の女王ワイトであるモーリーの衣装。そのうちの青いドレスを手に取る。
昼空に星が瞬けば、かくあるだろうという……青地の布には細かな宝石の煌きが散りばめられている。
「ついにこの時が来ましたね……」
不死者の女王にふさわしい衣装に包まれて、傲慢なまでに主張する胸を一層張る。感慨深そうな言葉と共に、彼女は廊下に足を踏み出した。
◆
「あれ、モーリー様。どうかされたのですか? ……!!?」
廊下で出会ったデュラハンが、彼女の胸を見て絶句している。それは死者が蘇ろうが、天地がひっくり返ろうが、主神と魔王が百合百合になろうが……。
起こりえないはずの奇跡。あり得ないこと。ーーー否、あり得てはいけないこと。
アイデンティティの崩壊とも言えるソレ。膨らんだどころか、そのまま破裂してしまいそうなほど見事な大きさの胸、おっぱい。
彼女のひんぬーをネタにすることで、何度無駄な精液が流されたことかーー。
(注:嘘です。流された精液は、その都度スタッフが美味しくいただきました。)
「モーリー様の胸がでっかくなっちゃたーー!?」
デュラハンの叫びが、城内にこだまする。
その声を聞きつけて、ドヤドヤと集まってくる部下のスケルトンたち。
「どしたんすか〜? 今、あり得ない言葉が聞こえた気がしたんすけど〜。デッカくなるのはウチらの態度だけっすよ」
「ついに、おかしくなった? 首の接続不良か。油刺さないと……」
「ファイヤーの準備はミーに任せてネ〜」
「態度がデカい自覚があるなら自重しろ!
「私の首に油なんて刺そうとするんじゃない!
「そして、堂々と私を殺す計画を立てるんじゃない!」
デュラハンが律儀に三段突きをかます。
「「「ご苦労様です!」」」
「お前らのお守りは私の業務に含まれていないッ!」
ハァハァ、と肩で息をするデュラハンに、クスクスという笑い声が届く。
「お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
デュラハンは彼女に頭を下げる。チョーカーのおかげで頭は落ちない。
「いいえ、いつも通り仲が良くて、いいことです」
「ですが、そのーー」
「お前のオッパイはまな板だったはずだ。そんなことをデュラハンに言えるはずはなくーー」
「オイぃぃ! 勝手に私にナレーションをつけるんじゃない。そんな本当のことを言ってしまえば、私が殺されてしまう」
「大丈夫っす。体は私たちが守ります」
「頭も守ってくれ!?」
そのやり取りに、やはりクスクスという笑い声が届く。
おかしい。デュラハンは訝しがる。まさか胸が大きくなって、器まで大きくなったとでもいうのか……。不死者の女王は、そんなデュラハンの頭を取って抱きしめる。
「も、モーリー様?」
デュラハンは、目を白黒させる。
「どうですか? 本物でしょう。誰かの胸をもいでくっつけていることなんてありませんよ」
恐ろしい物言いだが、以前、バストアップのためにスケルトンたちの肋骨を狩って回るという、肋骨大戦争を引き起こしたモーリーならばやりかねない。その時は、数本集めて歪な形になった胸を見て、モーリーはソッとスケルトンたちに肋骨を返したのであった。
「確かに。継ぎ目もありませんし……」
間近で彼女の胸を見たデュラハンが感心したように言う。本当に魔法のようだ。今まで、どんな魔法ですらそのまな板を膨らませることが出来なかったと言うのに……。今になって、奇跡が起こったのか。それとも、これが愛の力なのか。
彼女の豊かな胸に頭を包み込まれたデュラハンは、いくら美しかろうとも熱を宿さないワイトである彼女から、まるでポカポカと包み込まれるような暖かさを感じた。
体全体を包み込むような、神々しささえある圧倒的な抱擁感。全てを投げ出して、身を委ねたくなるような。
これがーー、バブみーーー。
「って、アツゥ!? 熱い!?」
デュラハンが首を何とかよじって自らの体を見る。燃えている。文字通り燃えている。
スケルトンたちが、デュラハンの体に油をぶっかけて、火をつけていた。
三人の骨がデュラハンの体を囲んで、キャンプファイヤーよろしくマイムマイムを踊っている。
「貴様ラァぁぁ! 熱い熱い、あつぅいいいいいい!」
「城の中で、火を、使わない」
現れたリッチが、魔法で作り出した水で消火した。
「城の中で、火を使ったの、誰?」
スケルトンたちが、デュラハンの体を指差す。
「そっか……」
リッチが悲しそうな声を出す。
「違うぞ。断じて違う。私がそんなことするわけ……」
「じゃあ、存分に、燃え上がってもらおうか」
リッチが取り出したスイッチを押す。
デデ〜ン♪ デュラハン、OUT〜。
壁をすり抜けて現れるゴーストたち。彼女たちはデュラハンの体だけを担ぐと、廊下の奥へと連れて行く。
「違う。待て、待ってくれぇ。私を燃やしたのはそいつらだ。何故、私が罰を受けなくてはいけないのだ」
これから、デュラハンの体はウィル・オ・ウィスプの檻に放り込まれて、彼女の焔で盛大に燃やされるのだろう。
「部下の不始末は上司の責任」
「グぅッ」
正論、か? ホワイト、か? デュラハンが、うなだれる(首だけで)。
「「「グッ」」」
「お前ら、イイ顔で親指を立て、ヒゥッ! ……やぁ、そんな大きなモノ、お尻のアナにぃ………って!? 長い長い長い。え、マジで、まだ入れるの? そして、それ全部一気に引き抜くの? 無理無理無理無理」
「無駄」「無駄」「無駄」「無駄ァ」(リッチ+スケルトン3)
「オラオラオラオラ、お前ら、フザ、ゲッ!? おごォォォォォォ!」
デュラハンの頭が、大きな胸に包まれながら無様なアヘ顔を晒す。ヒクヒクと痙攣しながら、舌を垂らして、ヨダレも鼻水も垂らしていた。
……………。
「んじゃ、ウチらはこれで」
「ほどほどにしなさいね」
「うん。そっちも」
ピー(自主規制)な表情を浮かべる頭部を受け取ったスケルトンたちが、二人に見送られて去って行く。
ここでようやくリッチが彼女に声をかける。
「で、モーリー様、その胸はどういうこと? もしかして、もいだ?」
「失礼ですね。本物ですよ。正真正銘100%私の胸です」
豊かな胸が、リッチの前でグニュウ、と持ち上げられる。リッチの目がすわっている。
「…………。裏切り者。なら、私がもいであげる」
「え? ひゃぅん」
元から虚ろな目をさらに虚ろにしたリッチが、忌々しくたゆたゆと主張しているオッパイを鷲掴む。
ローブからは、リッチの胸が覗いる。かつてのモーリーほどではないと言え、彼女の胸も平坦であった。
「スッゾ、オラー」
ナムサン。あくまでも熱を宿さない口調でリッチは揉み続ける。
「これは、どういった状況かな? フム、モーリー様の胸が膨らんでいるとは……一体何本の肋骨を集めればそんなことになるのかね?」
そこに、イイ声のファントムが黒幕ボイスで現れた。
「いやいや。今回私は黒幕ではないよ」
「誰に、話しているの?」
(天の声)黒幕じゃないもんねー。
「ねー(CV.中田譲治)」
「だから、誰と話しているの……」
「フフフ。ヒ・ミ・ツ、さ♡」
(天の声)実はね。カクカクジカジカ。
「ほう。そんなことになっていたとは。どうして私に教えてくれなかったのかね? ほほう! 了解した。私は今回はキャストの一人と言う事か。それならば、私は君の三文芝居に付き合おうではないか。せいぜい私をうまく踊らせてくれ。はっはっは。はっはっはっは」
一人で納得して、イイ声で笑いながら去って行くファントム。その顔には悟道の、愉悦の笑みが張り付いていた。
ファントムの後ろ姿を見送る二人。気勢を削がれたリッチは、目の前の御オッパイ様を見て涙ぐみながら言う。
「そっか。もう、モーリー様は、手の届かない、ところに、行って、しまったんだね……」
「………お亡くなりになったように、言わないでくれませんか?」
実際、もうお亡くなりになっていることは確かだが(ワイトだし)。
そこでリッチに、御おっぱい様からのありがたいご神託(オラクル)が授けられる。
「………もしかしたら、アレをやっていたからかも知れません。(ゴニョゴニョ)」
「え……、そんなこと、するの……。というか、そんなこと、してたんだ……。……………………。頑張ったね」
何を言われたのかは分からないが、リッチが生暖かい目を向けていた。
「じゃあ、ちょっと、用事が、あるので、失礼します」
リッチがお辞儀をして去って行った。
◆
不死者の女王が廊下を優雅に歩いて行く。その仕草の一つ一つに気品が感じられ、出会う魔物娘たち皆がその豊かに実った胸に驚き、祝辞の言葉を述べてくれる。
彼女は得意げな表情一つせず、当然のこととしてその賛辞を受け取る。
歩くたびにモインモイン揺れる、神聖おっぱい様に誰もが手を合わせて拝む。
テッテレ〜♪ 神聖オッパイ様の神聖レベルが上がった。
そして、順調にレベルアップを繰り返していた彼女はーー。とうとう彼女に出会う。
「え!? 何で、胸の大きい、わた、……し?」
そこにいたのはモーリー。そっくりな顔をした不死者の女王がお互いに見つめ合う。違うのは胸の大きさ。豊満な胸か、平坦な胸か。
「…………鏡?」「………鏡!?」
一ヶ所、絶対的に、絶望的に、異なる箇所があるのだが。絶壁の断崖を登りきった図太さで、平坦な方のモーリーがポツリと呟く。
平坦なモーリーが左手をあげる。
豊満なモーリーが右手をあげる。
平坦なモーリーが左足をあげる。
豊満なモーリーが右足をあげる。
平坦なモーリーが左向きに回って、手を叩か、ない。
豊満なモーリーが右向きに回って、手を叩か……、ないっ(セーフ)。
右手。右足。左ターン。右ポケットをゴソゴソ。バイブを取り出す。
左手。左足。右ターン。左ポケットをゴソゴソ。バイブを取り出す。(ビックリ)
平坦なモーリーが、バイブを自分の胸の上に持って行く。パッと手を離す。
豊満なモーリーが、バイブを自分の胸の上に持って行く。パッと手を離す。
ストーン。たわわチャレンジ失敗。…………。
モイン。たわわチャレンジ成功。……………。
「………ふ、ふふふふ。誰ですか、あなたーー! 三点リーダを一回増やしたところで、バイブが落ちたことは誤魔化せません。というか、服が違います!」
「まさか両方のポケットにバイブが常備されているとは思ってもいませんでしたが……。モーリー様、お早いお帰りで」
「……貴女の所為だったのですね。帰ってきてから、会う方会う方。私の胸を見て、ああ、やっぱりか、と可哀想なものを見る目を向けてきて。気を落とさないように、と慰められて……。この恨みハラさでオクベキカ。(ダッ!)」
「もうはらしていますよね(ダダッ!)」
平坦なモーリーが豊満なモーリーを追いかける。豊満なモーリーは死屍累々と転がる魔物娘たちを横目で見た。
平坦の逆鱗に触れて、ズギュゥゥゥン(吸精)された魔物娘たちだ。ナムサン。彼女たちのフォローは領主に託すしか無い。
豊満なモーリーが走ると、神聖オッパイ様が揺れる揺れる。
ゆやーん、ゆよーん。ゆや、ゆよーん。
平坦なモーリーが走ると、御おっぱい様が揺れない。
ペタッ。ペタペタッ。どこかのお家から餅つきの音が聞こえる。
だってお正月だもの。天の声(みつお風に)
「胸、置いてけ。なあ。本当の私だ!! 本当の私だろう!? なあ、本当の私だろう、おまえ」
平坦なモーリーが鬼気迫る表情で、豊満なモーリーを追いかける。
「ノインノイン。違います。錯乱しないでください。私は元ゾンビのイロムです。目出度く今日のセックスでワイトにクラスチェンジしたのです」
「胸の揺れる音で否定しないでください! クラスチェンジって、え〜! それならどうして私と同じ顔になっているのですか!?」
「多分、領主さまの好みがこの顔だったから?」
「……ポッ。……じゃなくて、それならどうして、貴女の胸はそんなバインバインなのですか!」
「素質?」
「ーーーブチッ。なら、胸じゃなくて、首置いてけ。首ィィィィ! その体、私がイタダクッ!」
「そんな首のすげ替えなんて、デュラハンではあるまいし……」
「はっはっは。楽しそうなことになっているでは無いかね(イイ声)」
追いかけっこ(という名のハンティング)をしている二人に、ファントムがリビングドールを腕に乗せて並走する。
「誰それ、かい? 気分だよ気分。はっはっは。あのシーンを思い出さないかい?」
「えー!? エメラルド、何で私が巻き込まれているの〜!?(CV.門脇舞以)」
「エメラルド! イロムを捕まえなさい!」
「はっはっは。私がこの状況で貴女の命令を聞くとでも?(愉悦!)」
「チィッ!」
モーリーが忌々しげな舌打ちをする。
バンッ。イロムが一つの扉を開けた。
そこで目にしたものに、全員が目を丸くして足を止める。
「空前絶後のぉ、超絶怒涛の貧乳魔物娘。巨乳を愛し、巨乳に愛されたかった女。
「まな板、ナイムネ、貧乳。……胸フェチ半分への提供者。
「そう、我こそはぁ、アンデッド、リッ、チ。イェーイ、僕はドヤ顔で……じゃない。ルサンチマーン。
「現在バスト75。目指すサイズは84。
「7584(なごやし)。二度と、行きたく無い、都市。ナンバー・ワン。名古屋市、と覚えてください。
「成長途中の、この胸。揉んで大きくするなら、今が、チャンスですよ。領主さま。……よし。
『え!?』
リッチが無表情で、サンシャインしていた。
常夜の国でサンシャイン(陽光)とは、これいかに。
飛び込んできた全員が気まずそうな顔をしている。
リッチは固まっている。反応がない、屍のようだ。あぁ、屍だった。
聡明なリッチは乱入者を見て、平坦なモーリーと豊満なモーリーを見比べて、理解する。
「ア〜バ〜ダ〜ケダブラ〜!」
リッチの口から死の呪文が紡がれる。
残念、効果は無いようだ。だって、みんなすでに死んでるんだもん。
リビングドールも、リビングと言っても人形だ。効かないことにしておいてあげて欲しい(懇願)。
ダダッ。イロムとエメラルドが逃げ出す。エメラルドはリビングドールを抱えたまま。
「「逃すかぁ(!)」」
リッチとモーリーが追いかける。
「しっかり撮れたかね?(愉悦部募集中)」
エメラルドが腕の中のリビングドールに尋ねる。
「もしかして、このために私を連れてきたの!? 確かに、撮っちゃたけど、私の目に仕込まれた記録用水晶で撮っちゃったけど〜!?(巻き込まれそうなボイス)」
「目、置いてけ。なあ、目だけでいいから、置いてけッ!」
リッチの声に、とうとう熱がこもる。
まるで、陽が差し込んだかのように。サンシャイーン! イェェェェェェェ〜〜イ!
モーリーとリッチから逃げるイロムたちの前に、女武者とドラゴンのアンデッドが現れる。
「ちょうどいいところに。二人とも、そいつらを捕まえなさい!」
モーリーの声で、彼女たちはイロムたちを捕まえようと身構える。
「委細、承知」
女武者はジバング刀を抜き放って斬りかかる。殿中とも言える場所で女武者の刀が煌く。
キィィィィン!
エメラルドがそのポン刀をポン酒の瓶で受け止める。
それを見た女武者は、エメラルドと……握手を交わした。
「委細、承知」
「これは後で君の部屋に届けよう。私のコレクションの一品だ」
たたたーっ、と彼女たちの横を素通りしていく、イロムとエメラルド。
「買収されてんじゃないわよッ!」
「私が仕えるのは、領主さまと酒だ。禁酒令を敷く、モーリーさまなど主君ではないです!」
「ガウガウ〜(右に同じ)」
「こいつら……、言い切ったわね。貴女たちが、城の酒を全部開けるから悪いのでしょう。そもそもそれが死因のくせに」
「死んでも懲りないとはこのことだ(ドヤ顔)」
「ガウッ!(ドヤ顔)」
「「もう一変死んでこいッ!」」
彼女たちを残して、イロムとエメラルドは逃げる。
そして、領主の部屋に逃げ込む。
もう復活していた領主は、豊満なモーリーを目にして……。
涙を流して跪いたっ!
「神聖オッパイ様こそこの世の至高。神聖にして唯一不可侵であるオッパイ様こそ神であり、神が使わした……」
ブツブツと信仰告白を始める領主を前にして、エメラルドは愉悦の笑みを深め、イロムは勝ち誇った顔をする。
その様子をリビングドールが冷めた目で見つめている。ジィィィ、っと。
そこに遅れて、モーリーとリッチが到着する。
それを見て、イロムとエメラルドは部屋の奥に避難した。
目を閉じて祈り続ける領主の前に、モーリーが立つ。
彼女の耳には、彼の神聖オッパイ様への祈りの文句がしっかりと届いている。熱を宿さないはずの彼女の体から、熱風が吹き始める。
モーリーがチョンチョン、と領主の肩を叩く。
領主はまるで、洗礼を受ける信仰者のような顔をして、目を開く。
………………。
「キェェェェ。マナイタ!? マナイタ、ナンデ!?」
領主にMRS(マナイタ・リターン・ショック)が発症した。
「ドーモ、領主=サン。ならば、死ね。コラァァァ!」
”キリエ・エレイソン(救われぬ魂に憐れみを)”
モーリーの洗礼鉄拳で、領主の魂が浄化される。そのまま、領主は窓ガラスを割って、外に落ちていく。
ここは、常夜の国。魔界だ。死ぬことはないだろう。………多分。
「良し。脱出口が開いたぞ。カメラを頼む(イイ声)」
「ちょっと、今はっきり私のことをカメラって言ったわよね!?(ロリボイス)」
イロムはエメラルドから、リビングドール(AI搭載カメラ)を受け取って窓から飛び出す。
「『重力軽減』、『衝撃緩和』ーー。着地は任せたカメラー」
「ちょっと!? 立場逆じゃないの!? あなたもカメラなんて言わないで。キャアアアアアア! 落ちる〜〜〜〜!」
「「待てぇぇ!」」
咆哮するモーリーとリッチの前に、エメラルドが立ちはだかる。
「行かせんよ。せっかくあそこまで実ったのだ。……命を懸けろ。あるいはこの身に届くかも知れん(ラスボイス)」
「「懸ける命なんて元から無いわ、ボケェェェ!」」
「はっはっは、はっはっはっは。グフッ」
流石のファントムでも、絶招を極めた八極拳を披露する事はなく、ワイトの吸精に倒れた。
モーリーとリッチが窓から外を見る。
ーーー二人はその光景に目を見張った。
ゾンビたちが自分の体をクッションにして、二人を助けようとしていた。
ゾンビたちが一番集まっている場所は、おそらく領主が落ちた場所なのだろう。
彼女たちへのお年(金)玉と言ったところか。
次のお年(乳)玉である神聖オッパイ様の御姿に、ゾンビたちが跪いて拝んでいる。
「その者、青き衣を、まといて。腐海に降りたたんーーー」
「馬鹿なことを言っていないで、私たちも追いかけるわよ」
モーリーがそのまま窓から飛び降りる。
すると、エグソダスの如く、一糸乱れずゾンビの海がパカっと開いた。
「は?」
グシャッ。肉と骨の潰れる嫌な音がする。
そもさん! 何故、ゾンビたちはモーリーがを避けたのか?
説破! だって、全く拾うタマが(金玉も乳も)、無かったのだから。
仕方ないね。モーリーだもの。天の声
眼下で蠢く腐った海に潜った彼女たちを捉えるのは難しそうだ。
リッチはため息をつくと、最強のガーディアンを召喚する。
取り出したスイッチを押す。ポチッとな。
「イロム、OUT〜。イロム、ウィル・オ・ウィスプ〜」
「は?」
素っ頓狂な声と共に、檻に捕まったイロムがリビングドールを抱えたまま、腐った海からサルベージされていく。
もちろん、檻はウィル・オ・ウィスプに繋がっている。
「ちょっと待ってください。なんか色々な法則を無視していませんか?」
「これが、サイヤ人の王子、すら恐れた、ギャグ・ワールド」
「あらあら、オイタをし過ぎてしまったようね♡」
檻の中にはピー(自主規制)な姿になった、デュラハンの体という先客がいた。
それを見て、リビングドールが震えだす。
「待って、待って。ヤダヤダヤダ。私巻き込まれただけーー!」
「……、その子は、いい。コッチに、渡して」
「あら、そうなのね。残念、またね♡」
目の下にくっきりとクマをつくったウィル・オ・ウィスプがニコリと笑う。
絶対に次はないはずだ。リッチに引き渡されたリビングドールは、ひとまず胸を撫で下ろす。
「ありがとう」
リビングドールはリッチにお礼を言う。
しかし、残念、そうは問屋が卸さない。
「何? その見るからに危なそうな工具……。もしかして!?」
リビングドールがガタガタと震えだす。
「ご想像、の、通り。今から、解体する」
「ナンデ何でナンデ〜〜!? 目だけじゃないの!?」
「エメラルドが、カメラを、仕込んだのは、目だけ、とは限らない。巧妙に、体内に、隠して、いても、おかしくない」
嫌な信頼だ。エメラルドがターミネーターの如く、親指を立てたまま沈んでいる。起きてるんじゃないのか、コイツ?
(いやいや、起きているわけがないだろう?)
(天の声)えっ!? 窓に、窓にぃぃぃ!
「服を、切り、刻まれたく、なければ、大人しく、脱いで」
「ぅう。わかったよ〜」
観念したリビングドールが服を脱いでいく。リッチの前に、艶かしい球体関節人形の素肌が晒される。
「……。綺麗過ぎて、やり過ぎるかも」
「やさしくしてね!?」
再びガタガタと震えだすリビングドール。
リッチは早速ドリルを手に取ると、歯医者のようなチュィイイイイという音を立てている。
そのドリルが体に触れる前だというのに、リビングドールはすでに泡を吹き、白目になって気絶している。その方が彼女のためだろう。
窓の外では、ご来光ならぬ、神聖オッパイ様のご開帳が行われている。
有難や有難や。
いつの間にやら、領主もモーリーも手を合わせて拝んでいる。
もはや収集のつかなくなった混沌の腐海がそこにはあった。
◆
テレビから流れるその映像を肴にして、私たちはコタツに入って日本酒を煽る。
ファントムのエメラルドがうっすらと笑いながら、私に声をかける。
「これぞいつもの我らが常夜の国である。はっはっは。これが君の世界の酒か。まぁ、我らの酒には劣るが……。どうだ? 肴によっては存外、化けるものだろう(お猪口を煽りながら、イイ声で)」
「ほう。これは……、変わるものだな。稲荷さん熱燗もう一本お願い。それ飲んだら交代するから」
「はーい。そんなこと別にいいのに……」
そこで、ベルが鳴る。
「……あ、仕事だ。あー、あー。……テステス」
(天の声)
ーーーテッテレーン♪
神聖オッパイ様は乳神様にランクアップした。
テレビには、神々しいワイトの乳神様が映っている。
「良い年になりそうだ」
エメラルドはそう言って、しみじみと頷いたのだった。
17/01/07 10:54更新 / ルピナス
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