連載小説
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ドキッ☆亡者だらけのスイカ割り大会〜ポロリもあるよ〜
サンサンと輝く太陽、青い海。
真っ白な砂浜のビーチには、これまた真っ白な亡者の群れ。
俺はそのただ中で、素肌に黒緑の縞模様を塗られ、手足を縛られて突っ立っていた。

……………………
何を言っているかわからないと思うが……以下略)
俺の抗議は黙殺され、彼女たちはイベントを開始する。



「さぁお集まりの皆さまお待たせいたしました!
これより死者の国夏の特別企画、ドキッ☆亡者だらけのスイカ割り大会 〜ポロリもあるよ〜、を開催いたします」(C.V.中●譲治)
彼女の宣言に、ビーチに集まったアンデッド型魔物娘たちがうめき声にも似た歓声をあげた。
ゾンビがいる、スケルトンがいる、ゴーストが、落武者が、ドラゴンゾンビが。ウィル・オ・ウィスプだって、デュラハン、ヴァンパイア、リッチ、もちろんワイトも。そこにプラスでファントムとリビングドール。
みんな水着で、美しくとも日の光には似つかわしくない肌と姿をしている。
砂浜をみっしりと埋め尽くす亡者の群れ。この横を通るだけで肝試しになるだろう。

「うむ、まるで地獄のような歓声をありがとう。我らにとってこの環境。
ふはは、はなはだ似つかわしくない。この炎天下でーー今のそれはガチのうめき声かもしれないね。イくぞ亡者ども、防腐剤の貯蔵は十分か? 足りなければそこでホルマリンを補充してくるといい。ただしその状態で決して海には入らないように。環境汚染も甚だしい」
「それって……海に来た意味がないんじゃ」(C.V.門脇●似)
「そもそも塩水に使ったらアンデッドは浄化されてしまう可能性もなきにしもあらず」
「じゃあ何で海に来たの!? この企画考えたやつ出てこい!」
「誰だ、そんな常識知らずのシナリオを書いたやつは!」(白々しい黒幕ボイス。白いのに黒いとはこれいかに)

「実況はこの私、ファントムのエメラルドが」(実にイイ声)
「解説ならぬ、感想をリビングドールの弟子69号がお送りいたします」(甘ったるいロリボイス)
「ルールはいたって簡単。自らスイカに扮した領主を割ったものが勝者。まぁ、何か白いものがが絞り出されれば割れた、と判断しよう。なんなら赤いものだって構わないぞ? このビーチで二人っきりの甘い時間が賞品。
しかし、見れば見るほど滑稽なスイカスタイルだ。領主がそこまで体を張る方だったとは、わたしもトンと知らなかった。何、お前が勝手に塗った? はっはっは。何を言いがかりを。君が嬉々として扮したんじゃないか」
「領主さま…………塗られている間中抗議の声を上げていたけど」
「君まで何を言っているんだ。領主さまは君と交尾をしていただけだ」
「ちょ、ちょっとそれこそ言いがかりよエメラルド、私はその状況を余さずこの目に収めていただけなんだから。だから皆そんな怖い目で私を見ないで〜!」

「ふむ、確か君の目には映像記録用魔水晶が使われていたね。こっそり自分だけで楽しむに違いない! 親に隠れてエロ画像を嗜む中学生のように!」
「確か、とか人事みたいに言っているけど、それを埋め込んだのはあなたなんだからね! 私の性癖みたいに言わないでよ。うわわ。だから皆そんな怖い目で見ないで!」
「怖い目って、君の目を刳りぬきそうな目をしているだけではないか。そんな程度で私たちが死ぬことはない、というか、”すでに我らは死んでいる”(ケン死ロウボイス)」
「決め台詞みたいに言わないでッ!」

「ん? 駄弁ってないで始めろって? はっはっは、これは失礼した。これでは解説アンド主催者失格だ。腹を切ってお詫びをしよう。といっても私はすでに死んでいる。ふは、ふはははははは。
おおぅ、砂を投げかけるのはやめておくれ。って、熱ッ、あつぅッ!
誰だ! 塩をかけてきたのは。潮は吹くものであってかけるものではないだろう。
や、やめッ! というか、投げている君もダメージを食らっているに違いない。なんという捨て身の攻撃。私によほど恨みがあると見える。ふっはっは、甘露なり。
おぉ、このままではファントムの私がナメクジのように乾涸びてしまうではないか。
よぉうし、分かった。それでは始めよう」
そう言ってエメラルドは領主を筒の中に詰め込む。
筒から、黒と緑のしま模様に塗られた頭だけが飛び出しているさまは、まんまスイカのようだ。
領主の抗議は誰にも届かない。スイカの声など誰にも聞こえるわけがない。

「それでは開始しよう。命をかけろ、さすればその身は彼にとどくやもしれん。いや、我らにはすでに命はなかったな。我らは情念のみで動く亡者の群れ、この白昼のビーチを死者の体で存分に汚そうではないか。
はっはっは、発射」
(領主)「クシャミみたいにやるンじゃ、ねぇええええええええええ!」
「打ち上げ成功。領主、見事なロフテッド軌道だ」
パチ、パチ、パチ、とリビングドールが手を叩いていた。

「さーぁ、まず走り出したのは我らが死者の国の女王、ワイトのモーリーさまだ。何をトチ狂って挑戦したのか、彼女はホタテの貝殻を水着にしている。彼女の胸の大きさはホタテにジャストフィット。そこからはみ出すなんてとんでも無い。まるでピタリと閉じた貝の口。この暑さ、鉄板のような胸でホタテを焼くつもりなのか。残念、中身がない。揺れない、揺れないぞぉ。
それとは対照的に、昨年ゾンビからワイトへと成長、モーリーさまそっくりの容姿になった乳神さまの胸は揺れる揺れる。隣に並ぶモーリーさまが憐れすぎて涙が出そうだ。
ふっはっは、あ、あははははははははは!」
「笑いすぎて涙が出るって、馬鹿にしすぎでしょ! というか……」
「おぉーっと、モーリーさま、先頭を走っていたはずなのに急にUターン。鬼の形相です。これはヤバイ。一体誰が彼女の逆鱗にふれたのかーッ。走る走る。しかし揺れない、揺れない! 跳んだ! ドロップキーック! ぐっふぁああああ! 重心のぶれないいい蹴りだ! 重心がぶれる要素が無いからなのか。ご、ゴフッ。真夏の砂浜に顔を踏みにじるのはやめてくれ」
「そんな状態で実況をやめないーーこれが……プロなの!?」

「思わぬアクシンデントがありましたが」(愉悦ボイス)
「自業自得でしょ」
「モーリーさま再び走り出す! しかし領主に向かってすでにウィル・オ・ウィスプが飛び立っている。太陽の下で見る、アブナイ水着の爆乳ウィル・オ・ウィスプとは、なんというミスマッチ。しかしそのグラマラスボディはすごい迫力だ」
「あのスリングで結んでいる水着、彼女の体型だから着れるのね……」
リビングドールが自らの可愛らしいフリルの水着の上から、それなりにふくらんでいる胸を触る。
「なんという子だ。モーリーさまみたいなまな板には着れない、とは。モーリーさま、ここに叛逆者がいるぞ」
「ぎゃあああああ、何を言っているの!? 私はそんなこと一言もいっていないじゃない! 私を巻き込むのはやめて」
「ん?」「無視しないでよ」
「ウィル・オ・ウィスプを追いかける小さな影。あれは何だ? ボールか、違う。首だ。デュラハンの体ならぬ、頭をはった追撃だー!」

(デュラハン)「わ、私の頭を粗末に扱うなー!」
ウィル・オ・ウィスプに向けてデュラハン(頭だけ)が飛んでいく。
(スケルトンA)「大丈夫さ。デュラハン、新しい顔よ」
「私の頭はビーチボールで代用できない!」
(スケルトンB)「大丈夫、重さは変わらなかった」
「私の頭がスカスカだと言いたいのか!?」
(スケルトンC)「さすがにそんな失礼なことは言わない」
(A)「ほれ」
「重ッ! このビーチボール重ッ!」
(ABC)「ちょうど人の頭ぐらいの重ささ、と僕はキメ顔でそう言った」
「私の頭は空にあるから、お前たちの顔は見えないんだよ!」

(エメラルド)「残念。私も見たかったが、彼女たちは後ろを向いていて見ることが出来ない」
(弟子69号)「あの子たちカメラ(わたし)映りをちゃんと計算してるのよね」
「そうこう言いつつデュラハンの頭がウィル・オ・ウィスプに追いついたー」

ーーガチャン。
(ウィル・オ・ウィスプ)「あらあら。頭だけ捕まえてしまったわ」
ウリウリ。檻の中にとらえたデュラハンの頭を彼女は足で弄ぶ。
「や、やめろ……」
「あらあら、あの時のことを思い出しているのね。いい顔をしているわ。ふふ。そうね。あなたで遊ぶのもいいかもしれない」
「や、やめろだー! ……あッ、あっ…………ン、」

「おおっと、まさか、頭を相手に足だけで、あんな快楽を……おぉ、あれはああすればいいのか……デュラハンの頭がどんどん官能にとろけて……ふむ、参考になります。
とは言ってもファントムの私には足はないのだがね。残念、モーリーさまがパイズリ出来ないのと同じ理論だ。実に論理的帰結ではないか。ふっはっはっは。ゴフッ!」
「エメラルドにスケルトンの頭が激突しました。投げたのは言うまでもありませんね。はい。…………確かにスケルトン、ドヤ顔ね」
「み、見たい! 後で記録映像の開示を要求する」
「断ってもあなたは見るじゃない」

「お、やっと領主が落ちてきた。高さを稼ぎすぎたようだな……さすがロフテッド軌道、迎撃しにくいぞ。しかし、ウィル・オ・ウィスプが抱きとめてくれると思っていたのだが、このままでは領主が砂浜に激突大破することになってしまう。さぁ大変だ」
「ちょっとー! 私たちの大事な領主さまでしょ!? ここで死んじゃったら、アンデッドの魔物娘になれたとしても、男としては復活できないんじゃない!?」
「確かにそうだ。それは大変だ。大問題だ。しかし、私としては領主と百合百合展開もきらいじゃないのだがね?」
「やだ、私は男の領主さまに可愛がってもらいたい」
カシャ。
「はい、照れ顔いただきましたー」「ちょっとぉ!?」
カシャカシャ「ふはは、自らはその目で記録するだけだと思っていたかい」カシャー。「そうは問屋がおろさない。ファインダーを覗く時、被写体もまた汝を見ているのだ」
「というか、領主さまそのまま落ちてきているけど!? その下、ゾンビの海なんですけど!?」

愚者(ぐしゃ)ぁああッ!
「ほっほーう。これは実況することがはばかられるような有様。だが、私はあえてタブーを犯そう。
潰されたゾンビの肉片が飛び散っている。なまじ腐っているぶん大惨事だ。まるで肉が生ごみのようだ。真っ赤にミキサーされた血と骨と肉。おやおや、骨も折れているとはーー衝撃のほどがうかがわれる。
真っ白い砂浜に突如として花開いた真っ赤な花火。恥肉にまみれてマン開です。ナニが、とは言わないがね。
その中でうごめくただ一人。
そのもの黒緑の塗料をまといて真紅の園におりたたん……。
おや、これは腐海だ腐った肉の海だ。はからずも被ってしまったじゃないか」
「あの名作とこの大惨事を被らせるなんて不快だわ。……なによ(テレ顔)」
カシャー。
「だから写真撮るのはやめなさいって!」

「さぁさぁ、弟子69号は撮影NGのようだ。彼女は撮る方がお好みなのだろう。皆さん、ぜひハメどらせてあげよう」
「(ノーコメント)」
「おや? なんと! 領主の手足を縛っていた紐が、落下の衝撃で外れているじゃないか。あーっ、彼はそのまま海に逃げ込んだ! 全身黒緑の変態男はどこへ逃げるというのか」
「あなたが塗ったくせにひどいいいようね……」
「おっ、さすがモーリーさま。いの一番に海に飛び込んだ。そのまま海水で浄化されてしまえ」
「あなた……実はモーリーさまのこと嫌いでしょ」
「いやいや、我らが麗しの女王を嫌うものなどどこにいるのだい? そんな不心得者は私が八つ裂きにしてやろう。私はあれだよ、好きな子ほどちょっかいをかけたくなるというやつだ。彼女の憤怒の表情、怒りすぎて固まった無表情、しかし何よりいいのは絶望に打ちひしがれた表情である(愉悦)。酒の味とは肴によっては存分に化けるものだ」
「ロクな死に方しねぇぞテメェ」
「はっはっは、確かにロクな死に方はしなかった。友人から預かった金をソシャゲガチャで溶かした逃亡先でーー転んで頭を打ったのさ」
「逃げたことと関係ねぇ!」
「戯言だがね」「(絶句)」

「さーてモーリーさま泳ぐ泳ぐ、そのホタテ水着を着ていることもあって、まるで人魚のように速い。はっはっは、それは当然か。何せ水の抵抗はなきに等しい流線型。流木の方がよほど抵抗がある。んン? モーリーさま、再びUターン、速い速い。領主なんて目にない。こっちに向かって泳いで、走ってーー、このお腹から持っていかれる感覚はーー」
「ジャーマンスープレックス!」
「背中に当たる感触はホタテの硬さしか感じなかったが、首が変な方向に曲がってしまった。ん? 埋める向きが逆じゃあないかい。それでは息が出来ないし、見ることもできない。はっはー、きっと外から見れば、私は犬神家よろしく、足だけが地面から突き出して見えているのだろう。
あ、私には足はなかった。何に見えるだろうか」
「ソフトクリームみたいかも」
「ほう、いいことを言うね。いいことついでに掘り起こしてはくれないだろうか、69号(シックスナイン)」
「しばらくそうしてなさい」

「あ、領主さま空を飛んできたドラゴンゾンビに捕まった。あー、絞られてる。うん、多分スイカ割れたでイイんじゃないかな」
「おお、なんと呆気ない幕切れ。そして主催者はその光景を見ることができなかった。なんて悲しい結果だろう」
「自業自得よ」
「まあいい。後で君の記録映像で見せてもらえばいいことだ」
「…………」

「そういえば、結局ポロリはなかったようだけど……」
「はっは、何を言っているんだ。初めっから領主さまが全裸でポロリだったではないか。誰が女がポロリをすると言った? 誰が亡者がポロリとすると言った?
ーー残念、だが男だ」
「どこが残念なの?」
「そうだな。確かに私たちの業界ではご褒美だ」
「でもエメラルド、あなた一体誰に話しかけているの?」
「ふっ、主催者だけがしっている視聴者ならぬ、読者がいるのさ」
「そんなものいるわけないじゃない」
「……否定できないところが悲しいな。だが、ここまで読んでくれたあなたがいると信じよう! 私という演出家は、あなたのためにいた!」
「時々、というか、あなたの事はいつもよく分からないわ」
「時代が私においついてないだけさ。で、そろそろ掘り起こしてもらいたいものだが」
「お疲れ〜」
「な、なにぃ? いつの間に放置プレイなどという高度なプレイを覚えたのだい69号。私はそんな淫らな子に設定した覚えはないぞ?」

「うーむ、本当に静かになってしまった。ドラゴンゾンビは領主と交わっているはずだが……私はいつまでこうしているハメになるのだろうか」
といいつつ、彼女は霊体密度を薄めて砂浜をすり抜けて出て来た。
「ファントムである私を埋めておくことなど出来るものか。私を閉じ込めたければこの砂の三倍の塩を持ってこい!」
「塩ならそこにいっぱいあるわよ」
「なん……だ、と?」
彼女が振り向けば、そこにはワイトのモーリーがいた。

ズギュゥウウウン❤
エメラルドは吸精されてしなびてしまう。
動けない彼女をモーリーは引きずっていく。

「私だって、まだまだ成長するんだからー!」
エメラルドはモーリーの怨嗟の声とともに海に向かって投げ入れられる。
その勢いでモーリーのホタテ水着が取れてしまう。
ポロリ。
平坦な胸の頂点には真珠のような乳首がある。
それを見た領主は、ホロリとしていた。
17/08/06 11:25更新 / ルピナス
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■作者メッセージ
一足早いスイカ割り。自分でもこのノリはよくわからないよ。

このシリーズのギャグ編はなぜかこんなノリになるようになりました。
私のせいではありません。全てはエメラルドのせいです。

別の勢力同士で対抗でスイカ割り大会……、書きたいなぁ、書けるかなぁ……。

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