我 異界の勇者がこの世界に一言申す!
「勇者よ、よくぞ魔王を打ち倒してくれた。おかげでこの世界にも平和がもたらされた。全ての人類を代表し礼を言おう」 「うむ、ありがたきお言葉感謝いたす」 一礼をすると同時に周りから拍手と歓声が巻き起こる。この城の玉座の前、そこはまるで城の人間全員が詰め込まれたような惨状になっていた。たった一人の人間、『勇者』である我を見るためだけに彼らはここに集まったのだ。 ふと見渡すと幾百もの視線が我を貫いていた。そこに宿る感情は感謝感激喜び期待、そして決して少なくない恐怖や嫉妬。まったく何とも居心地の悪いものである。 そう、我は『勇者』であり、この世界に平和をもたらした者でもある。残虐なる魔物と、万のソレを率いて人を滅ぼさんとする『魔王』。それらに対してたった一人で立ち向かい、勝利した。そう、この世界は平和になったのだ。それはつまり我の『勇者』としての役割の終わりを示す。 「して勇者よ。そなたには侯爵の位およびに我が騎士団の……」 「お言葉だが、王よ」 予想道理の話が出たので咄嗟に遮る。彼としては何としてでも我をここに留めたいのだろうが知ったことではない。我のこの世界での役目はもう終わったのだ。 「我はこの世界を離れようと思う」 「ふむ……この国ではなくこの世界か」 「うむ、我のこの世界での役目は魔王を討つこと。そしてそれは果たされた。そして魔王無き今、我の力は一つの国家が持つには手に余るもの。ゆえに我は新たなる魔王を討つため世界を渡ろうと思う」 「そうか……そなたは根からの勇者なのだな」 そう呟く王の目に宿るのは悲しみ、落胆そしてわずかな安堵。周りを見ても似たような物だ。強いて言えば安堵と喜びの割合が大きいが。 「何時……旅立つつもりだ?」 「今、ここから」 剣を床に突き刺し、唱える。 『操界 探査 開通 固定 拡大 設置 待機』 真語を繋げ、術を紡ぐ。おそらく我一人しか使えないであろう操界魔法。 「なんと気の早いことよ……勇者よ!よくぞ世界に平和をもたらした!そして新たなる世界を救うため、いざ!旅立つがいい!」 苦笑交じりに王が叫ぶ。最後まで愉快な奴であった。彼が居ればこの世界は安心だろう。 「さらばだ王よ!この世界よ!我勇者、いざ旅立たん!」 『解放 行使 次元転送』 最後の真語を唱え、我はこの世界から旅立った。 ------------------- 初投稿です コンセプトとしては「普通の魔物しか見たことのない勇者が魔物娘を見たらどうなるの?」です 魔法に関してや勇者について、細かい世界観などにいろいろと独自設定が入りますが生暖かい目で見つめてもらえるとうれしいです。 エロは読むのは好きですが書くのはこっぱずかしいです |
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