連載小説
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間章 ある村の結末
〜ある村の結末〜

 結論だけから言えば、村は救われたのだろう。
私たちが村に戻った時、そこにはまぐわったまま眠りこける村の男たちとオークの集団があった。そこにはもちろん私のお兄ちゃんの姿もあって、憎たらしいことにオークの娘と幸せそうに抱き合っていた。この何とも言えない惨状は間違いなくあの勇者様が作り出した状況であって、確かに誰一人外傷なく眠り、無事村は守られたと言えるだろう。どうにも腑に落ちないが。

 さて、無事襲撃してきたオーク共を縛り上げることができた私たちだが、その処遇に関しては様々な意見が挙げられた。特に女性陣からは縛り首にしてしまえやら、教団に引き渡してしまえやら過激な意見が多かった。確かに、夫や息子、恋人などをどこの馬の骨かわからぬ者、しかも魔物なんぞに犯されたら憎いだろう。しかし、それと同じくらいの開放してやろうという意見も挙げられていた。これは主に男性、特に伴侶や恋人の居ない独身男性(お兄ちゃんを含む)からの意見であった。

 彼女らは危害を加えてはきたが決して殺そうとはせず、怪我もさせないよう注意していた。そんな彼女らを打ち首にするなど人として如何なるものか?

 実害?を被った彼らが言うのだ。女たちは黙るしかなく、結果としてオーク達にはこの村には近づかないという条約を取り付け、この事件は終わるはずだったのだ。

 その一月後、村の独身男性(お兄ちゃんを含む)の数人が「生涯の伴侶が見つかった」と言う置手紙を残して消えるまでは。一体誰と?そんなことは少し考えればわかることだった。

 そう、つまり私のお兄ちゃんはあの薄汚い豚に横から掻っ攫われたのだ。

まるで心が半分奪われたようであった。彼は、お兄ちゃんは私の物になるはずだったのに。

何日も涙を流した。
涙を流した何倍もの時間を山の中を彷徨い、お兄ちゃんを探した。

そして精魂尽き果て、諦めと絶望が心を埋め尽くしたとき、私の前に天使が舞い降りた。

ああ、きっとこれは神のお導きなのだろう


私が『勇者』に選ばれようとは



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「汝我らが主神に忠誠を誓い、この世界に平和をもたらす為にその身を捧げることを誓うか」

「はい、誓います」

「汝その剣は魔を滅ぼす為、この世の闇を払う為に、我らが主神の悲願のために振るうと誓うか」

「はい、誓います」

「我らが神は汝の誓いを聞き入れた。さあ新たなる勇者よ、この剣を受け取り汝が名を持って神に宣誓せよ」


「私、勇者ライラは今ここに宣誓します」

「我が剣は神のため、我が力は神のため」

「我が全てを持って今世の闇を払うことを」

「今、ここに誓います」


そう、全てはお兄ちゃんを救うために
14/11/15 02:26更新 / kiri
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■作者メッセージ
基本的に『勇者』が出てこない話は間章にいれる予定です

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