挫折の証 WEDDING CAKE
私は、自分が悪人だとは思わない。 親には孝行しているし、仕事も真面目にやってる。安息日には教会で祈りを捧げている。 でも。でも一度だけ、一度だけ悪いことをしてみたいと思っている。 教団の掟だとかに関わりなく、見た人がみんな口をそろえて『なんて悪いことを!』と言うような悪事をだ。 言っておくが、私は自分が悪人だとは思っていない。 事実、これまで悪事を犯したことが無いからだ。 だがそれでは、法を犯したり主神の怒りに触れるのが怖くて、悪いことをしていないだけに見えるではないか。 人間は自由意志を持っている。人は自ら選ぶことができるのだ。 だが、まるで家畜のように、痛い目に合うのが嫌だから道徳に従っていては、選んだとは言えないのではないのだろうか。 だから私は、あえて悪事を犯し、善と悪の両方を見たうえでどちらに進むのか選びたいと考えている。 され、それではどんな悪事を犯そうか? 盗み?チンケすぎる。 もっと大きく、極悪で最悪なものでないと。 そう、殺しとか。丁度私は、人ひとりを完璧に、痕跡も残さず消し去る方法を一つ知っている。 適当な子供を捕まえて、生きたまま消し去ってやってもいい。 子供とその両親を恐怖させ、悲しませるためならば手間は惜しまない。 だが、違う。私は単に悪いことをしたいだけなんだ。 私は子供が苦しむ様を喜んで見たいという変態ではないし、私の悪事が広まるかと言うとそういう訳でもない。 もっと大きくて悪いことをしたい。 そうだ、暗殺だ。 教団の枢機卿やどこかの国の国王を暗殺すれば、多くの人が私の悪事を知るだろう。 だが残念なことに、そういった身分の連中は武装した護衛を引き連れているから、簡単には接触できない。 もっと有名でありながら、護衛を引き連れていない簡単な標的を考えなければ。 そうやって思いついたのが、魔王の娘、デルエラだ。 私はデルエラをヤることにした。 接近の方法ならある。私の父は極端に魔物を恐れており、魔除けや誰からも気が付かれなくなる護符を山ほど持っている。 効果はどれも実証済みだから、デルエラにも容易く近づけるはずだ。 だが、もしかしたら今この瞬間にも、デルエラは窓の外から私のこのメモ書きを覗き込んでいるかもしれない。 いや、そんなことをする理由は無い。私はデルエラの標的となるようなオンナノコではないし、私のことを好いている女性もいない。 ただの、善良な信徒に過ぎない。 それに、デルエラには私を監視するよりも重要な仕事がいくつもあるはずだ。 教団の期待を一身に背負い、心に闇を抱えた勇者の願望をかなえるため、彼女の想い人を浚いに行っているかもしれない。 もしかしたら、生まれゆえに素直になりきれない誰か重荷からを解放するため、直々に魔力を注入しているのかもしれない。 あるいは、街を魔力で犯すための下準備で、魔力を含んだ食物を選んでいるかもしれない。 いやきっと、夜空に翼を広げて、つまらない重圧に心を押しつぶされそうになっているオンナノコを助けようとしているんだ。 生まれだとか、退魔士としての矜持とか、教団の掟だとか、主神への形ばかりの信仰心みたいな、つまらない物に囚われた彼女に魔力を注ぎ込んで、素直にしてあげる。 意志の力で肉欲を強引に抑え込もうとするならば、ちょっとだけいじってあげるんだ。 そして彼女が自分の本心と向かい合ったところで、デルエラはひそかに思いを寄せていた男と引き合わせてあげるんだ。 魔物になり、デルエラに心の枷を外されたオンナノコは、自分の本心を吐露するんだ。 そして男と本心で通じ合え、二人は結ばれる。 でもデルエラはそこで立ち去るんだよ。覗き見をする趣味は無いし、後はお若い二人に任せて…という訳だ。 二人の姿が見えなくなる所へ行き、月の光の下で彼女は振り返るんだ。 今日もまた一人を救済し、一組のカップルを作り上げたことに、達成感と喜びを胸に、その美しい顔に僅かな笑みを浮かべる。 その瞬間、街の中か森の一角かは分からないけど、彼女は自分以外の誰かの気配を感じるんだ。 でも、彼女が反応するより先に、護符の力で姿を隠していた僕は後ろからズドンと彼女を襲う。 魔物は人間より力が強いけど、不意打ちなら敵わないはず。 後ろからの一撃に、彼女は仰け反るばかりだ。 だが、まだチンコを挿入しただけに過ぎない。 後ろから彼女の乳房を揉み、首筋を吸って、彼女も気持ちよくしてやらねば。 勿論反撃されて、私は幾度も射精させられることになるだろう。 だが、諦めることなく、屈することなくデルエラとヤり続ければ、活路は見いだせる。 彼女の心が折れるまで、デルエラが堕ちるまで、ヤり続けるんだ。 彼女が屈してしまった後は、もう問題ない。 このメモ書きを処分してしまえば、計画的だったという証拠も残らない。 デルエラをヤるという大悪事を犯した上で、私は善の道を進むことを選ぶんだ。 そして、両親が生きてる限り親孝行をして、身体が動く限りまじめに働きながら、いつか死ぬまで家族を大切にして暮らすんだ。 デルエラと二人で。 |
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