連載小説
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親魔物領にてー4
結論から言うと、俺たちは逃走を選んだ。いくらなんでも訳が分からない。魔獣は一頭だけではなかったのか。いや、確かに一頭とは聞いてないが、あんなのが何体もいるのだろうか?

ともあれ、情報を集めなければ倒したと思うたびに新しい一頭が出てきそうな気がする。一時撤退をして街で情報を集めることにしよう。

「あ〜やっぱり複数いたのか……」
「ま、予想はできたことやね」

行商人の夫婦にそのことを報告するともともと知っていたかのような口ぶりだった。

「知ってたのかよ……」
「うんにゃ?違う。腕利きが何人も行ってるのに何日も解決してないってことはそういうことだろうな、と予想してただけだ」
「教えてくれてもいいだろ」
「あんな、そーゆーのも含めての依頼やで。世の中甘くみとったらアカンよ」

変なところで厳しい依頼主だった。まあ、いいか。

「さて、うちらが聞いとったんはでかい虎っちゅー話やったし……もっとおるかしれんね、魔獣」
「まぢかよ……」
「マヂやで。どういう存在か、っちゅうのは予想もつかんし、ウチラも知らんけど。その辺りはギルドの人らやったら知ってるかもしれへんね」
「ギルドか……行ってみるか、ニーナ」
「おぉー!」

ということで、この街のギルドの事務所に到着。見た感じ酒場といったところか。中には人魔混同でいろいろな人がいた。

「さて、誰が魔獣について知ってるんだ?バーテンとか?」
「知らなーい」

さて困った。誰に話しかけたものか……と入り口付近で立ち往生していると。

「ほら、邪魔だからどいてくれ。店に入れない」
「お腹……減ったのだぁ」

歴戦の戦士然とした筋骨隆々の男と、エメラルドグリーンの美しい羽をはやした鳥人間の少女が後ろから声をかけてきた。いや、文句を言ってきた、が正しいか。

「すまん。ちょっと考え事をしていた」

素直にどく。非はこっちにあるからな。それに、ぐでぇっとした様子の少女を見ると、早く飯を食わせてあげないといけない気がする。

「ねぇねぇ」
「あん?」

いきなりニーナが脇腹をつついてきた。甲殻があるから堅いだろうに、なんだろう。

「あの二人、多分ここの依頼を受けたハンターの一人なんじゃないかな」
「あー……確かに」

よく観察してみると、今入ってきた二人にはここ最近でできただろう傷がちらほら見える。もしかするともしかするかもしれない。

「あのー……」
「ん?さっきのか。どうした、オレに何か用か?」
「このメニューの中で一番ボリュームの大きいお肉ちょーらい。お腹減って仕方ないのだぁ」
「いや、用っていうか確認したいことなんだけど」
「あぁ」
「お姉さんいっぱい注文するね。お腹減ってるの?」
「そうなのだ。さっきまですごい戦いだったのだー」
「もしかして魔獣討伐の依頼を受けたのか?」
「あぁ、そうだ。よくわかったな。同業者か?」
「いや、まあ、別ルートから依頼を受けてさ。聞きたいことっていうか情報交換しないか?」
「ほう、なるほどな。いいだろう。と、その前に……ドミニカ。少し注文しすぎだ。食費で破産したらどうするつもりだ」
「だいじょーぶなのだぁ。最悪そこの男から情報料としてふんだくればいいのだー」
「そういうのは本人の前では言わないことだ。それに、その方法はしないことはわかってるだろ」
「わかってるのだー」
「だったら言うなよ」

どこのパーティも案外、空を飛ぶ相棒には苦労するのかもしれない。

「さて、まずはあんたのほうから情報をもらおうか。こっちの既に知っている情報なら、こっちからの情報は無しだ」
「えぇーそんな「ま、そんなところだな」」
「ちょ、ドレイク。それでいいの?」
「こっちのほうが情報は少ないんだ。普通はそういうものだろ?」
「ぶぅー」
「食費を払ってくれるなら考えてやってもいいのd」
「ドミニカ。お仕置きがほしいか?」
「ふひゅぃう!?そ、それは勘弁なのだ。怖いのだ」

ドミニカと呼ばれた鳥少女は頭を抱えてテーブルに突っ伏して黙った。

「俺達からの情報は、俺たちが確認した魔獣についてだ」
「ほう、虎か?ウサギか。はたまた蝙蝠か?」
「蛇だ。身の丈は……そうだな。この店を三周半するぐらいの大きさだ。色は白。毒を持っている様子はなかった。目の色が赤いのが特徴だ」
「む……また増えたのか」
「増えた?」
「あぁ。そうだ。増えている。最初は虎だけだったんだよ」
「お次は狼。そして蝙蝠、蜥蜴、昨日ぐらいには兎。二、三日に一種類ぐらい魔獣の種類が増えているのだ。私たちが聞いたのはお前たちぜの蛇を含めてこれで六種類目なのだ」
「そのせいで最初はバンバンハントしているつもりだったのが全員披露してしまっていてな。この騒ぎがいつになったら落ち着くのやら」
「そ、そんな……」

非常にまずい。数日に一種類増えるということは、もたもたしていると依頼を失敗してしまう可能性が高まっていくということだ。宿代を払えないからこの依頼を受けたのに……

「どうする?ドレイク。これは、ちょっちまずいかも」
「……だな。どうやって全滅させるべきか……」
「……?あんたらの依頼はどういう内容だ?流石に殲滅なんて依頼、ギルドでも出してないぞ」
「あ、いや。ある商人からの依頼でさ……」

とりあえず軽く依頼内容をしゃべる。そして、ハンターの男は頷き、言った。

「それなら、こういう風に言ってみてはどうだろうか」

なるほど。その手があったか……

13/12/26 16:16更新 / しんぷとむ
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■作者メッセージ
カップル一つ一つにお話があり、冒険があるので、今回出てきたカップルの話も連載か読みきりで書きたいと思ってマフ。っていうか、全員分書きたい。

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