連載小説
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不穏なうわさ
依頼を出されてから三日後。俺たちは行商屋夫婦の荷馬車に乗って次の町へと向かっていた。

「ホンマに大丈夫なんやろね?討伐がでけへんから運試しでごまかそうっちゅうわけやあらへんやろね?」
「大丈夫だよ。作戦がある。それにできなかったとしたら死ぬのは一緒だ」
「……楓、いざって時の転移結晶は用意できてるか?」
「……二人分。ばっちりや」

問答無用で見捨てるつもりらしい。まあ、俺もニーナも飛べるから問題はないが……

「しっかし、この三日間でまた目撃例が増えたみたいやね」
「あぁ、今度は馬だってさ」
「馬……ねぇ。なんだかどんな動物でも魔獣の種類として出てきそうだな」
「魔獣って結局なんで出てきてるのかな?」
「さぁ?ウチラもそんな話、聞いたこと……あ」
「どうした、楓。魔獣がもう出てきたのか?」
「いやいや。なんか、どっかの国がなんかの動物実験しとるっちゅう話、聞いたことあったような…なかったような…」

と、『行商屋狸』の奥さんが記憶を掘り起こしていると……

「BRWHHHHHHHHEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAN!!!」

「来たで!お二人さん!宿貸したったぶん、しっかり働いてや!」
「「了解!」」

先ほど話に出てきた馬の魔獣が出てきた。立派な黒毛が艶やかでよい……言ってる場合じゃないな。

「ドレイク!来るよ!」
「わかってるよ!『狩りの爪』ぇ!!」

爪を振り上げて魔獣…を直接狙うのではなく、その足元の地面を大きく切り裂いた。

「BRWHHHHHEEEEAAAAAAAAAAAAAAAANNN!?」

狙いどおり魔獣はそのクレバスに足を引っ掛けて派手に転んだ。

「ほぉ、これが作戦っちゅーわけやね」
「そうだ。バカ正直にこいつを攻撃する必要は……無い!」

連続で地面にクレバスを作る。馬が跳んで越えないよう、かなり間隔はランダムにつくっていく。

「えらく派手にやるもんだな。本当に、その爪といい、翼といい……あ、もしかして別世界から来た人か?」
「あぁ。勇者として呼ばれて、見た目がアウトだから二分でリストラ喰らった」
「あ〜……まあ、どっちかというと魔物だもんな。男だから魔物じゃないけど」
「私も最初はびっくりしたんだよねー……そういえばまだ一週間も経ってないんだよね、出会ってから」
「だな……っと、まいたかな?」

半ば作業で腕を振るっていたら魔獣の姿が無い。どうやらまくことができたようだ。よかった……

「おぉ……依頼は成功やね。お疲れさん」
「まあ、一応次の街までが依頼内容だし、ここからは空飛んで見張りながら進むぜ」
「成程な。それなら二人で交代しながらしたらいいんじゃないか?この荷台は自由に休憩地点にしていいぞ」
「ありがとー」

とりあえず、俺から空を飛ぶことにした。
…………上空から確認した感じだと、魔獣の姿は一つもないな……ん?

「……なんだあれ?」

大きな山……いや、瓦礫か?よくわからないものが落ちている。かなり遠くの方だし俺たちが向かっている街とは違う方向だし……気にしなくてはいいか。

………うぅむ。かなり長い間飛んで確認しているが……かなり大きいみたいだな。俺がもといた世界で言うなら首都にあったドームぐらいに大きいな。近くには大きな街もある……やっぱり少し気になるな。一旦降りてニーナに相談してみるか。

「お、降りてきた。大丈夫そうだった?」
「あぁ。魔獣の姿は全く見られなかったんだが、少し気になる物があってな」
「何々?セックス中のカップルでも見つけたの?今時そんなの珍しくないし、興奮したなら私がしてあげるよ!っていうかいまからしようよ!ねぇ!!!
「お前に相談しようとした俺が本気でバカだった」
「どないしたん?魔獣よりヤバそうなん見つけたん?」
「あ、いや、やばいって言うよりはなんだあれって感じのもの」
「ほぅ。聞かせてくれよ」

かくかくしかじか。

「ハァ……瓦礫…ねぇ。誰かがいらんようになった資材とか捨てたんやろか?まあ、そういうのはいつか動物とかの住処になるからええんやけどね。それにしてもその瓦礫は大きすぎるなぁ」
「それに、あの辺りって街か何かなかったっけ?」
「それは確かにあったっちゃああったと思うで……あ」
「どうした?」
「いや、全く関係あらへんけど変な噂があったなぁって思い出して……」
「変な……あ、あの都市伝説か?」
「都市伝説?」
「あー。私も知ってる。えっと、ベストバター犬だっけ?」
「近いけどちゃうで。ラストベジタリアンや」
「ラストバタリオンだよ。別名、最後の大隊」
「ラスト……バタリオン……なんだそれ」
「あぁ、都市伝説の域を出ない噂なんだけどな……現魔王より何代か前の魔王がいた時代に、人類を脅かしていた魔王とはまた別の一大勢力……名前は忘れたけど、大きな帝国があってな。その帝国が滅びた時に世界中にその残党が散らばって、今もなおその残党の意志を持った連中が世界中に潜伏しているって言う話だ」
「都市伝説あるある、陰謀説だな」
「せやね。せやからウチも気にしてへんかってんけど、なんかフッて思い出してん」

……今の話を聞いてなおのことやりたいことができた。

「ニーナ。で、なんだけどさ」
「ん?あ、もしかしてセッ「あの瓦礫の近くの街に行ってみないか?」ほへ?」
「ほぉ。今の話を聞いて男の子心でも刺激されたんか?」
「まあそれに近い。どっちかというと野次馬魂だな。もちろん、あんた達をきちんと送り届けてから飛んでいくから」
「いや、まあそれは心配してないが……」
「で、ニーナ。どうだ?行ってみないか?」
「ほぇ……」
「いやならいいんだが……」

俺はニーナの返事を待つ。ニーナはしばらくポケーッとした後、元気よく答えた。

「いいよ!イこ!」
「なんかイントネーションおかしくね?」

とりあえず、次の目的地が決まった。
14/02/02 13:40更新 / しんぷとむ
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■作者メッセージ
提督業楽しいです(^q^)

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