連載小説
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親魔物領にてー3
「見つかったかー?」
「見つかんなーい。本当にいるのかなー?」
「さあな。いなけりゃそのまま帰るだけだ。少なくとも宿は確保してもらえたんだから」

俺たちは今、さっきの街の外の平原を歩いている。目指しているのはこの先にある森なのだが……何で俺たちがそこを目指しているのか、それを語るには少し時間を巻き戻す必要がある。



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「魔獣討伐?」
「そ。魔獣。本当はこの辺のギルドの人たちが出した正式な依頼を受けて行くのが当たり前なんだけど、腕自慢が力試しにこぞって依頼をもぎ取っちまったから、あんたらの分が無かったんだろうな。ま、それはいいんだけど」
「この辺で魔物と違う化け物が出現するようになったんよ。で、ウチラもそのあおりを受けてここで足止めくらっとるっちゅうわけ。でも、ええ加減余所で仕入れた品物(しなもん)も底を尽きてきたんやわ」

ここでニーナに耳打ちして質問する。

(えっと、魔物って全部お前みたいな女の子の姿になったんじゃないのか?)
(うん。魔物は間違いなくそのはずだよ)
「一応聞こえてるんやで〜。ウチラ耳ええからな」
「そーだぞー。それに行ったろ、魔獣だって」
「違いはあるのか?」
「そりゃもちろん。詳しいことはわからんが、根本的に魔物とは違うッポイぞ」
「おぉ。もしかしたらドレイクと同じで別世界から来た生き物かもね」
「下手すると俺の兄弟の可能性もあるよなー」
「兄弟いるんだ」
「まあな。同じ親に造られた『兄弟』がな……」
「挨拶してみたいなー」
「しなくていいぞ。どうせ話を聞きゃしないだろうし」
「ふぅん」
「話、続けていいか?」
「「あ、どうぞどうぞ」」
「……で、俺達としてもできる限り早く討伐も終わってほしいし、人手が多ければ多いほど早く終わりそうだからな。報酬はギルドから出る奴よりは少なくなるけど、無いよりゃましな額は出すし、宿も俺達と同じ部屋になるけどシェアしてあげられるぜ」

そこで旦那は話を切った。どうやら俺たち二人がどうするか考える時間をくれているみたいだ。

「どーする?正直、受けた方がいいと思うよ。選択肢はほぼないと思う」
「だよな。腕っぷしなら」
「ワイバーンと怪人がいれば全く問題ない!!」
「……だな」
「決まったかい?」
「あぁ、決めた。その依頼、受けさせてくれ」
「はいよ。楓、簡単な契約書を用意して」
「まっせ。ほい、お二人さん。よぉ読んでここにサインしてや。ちゅーても、騙すようなことは書いてるつもりはあらへんけどね」

そう言って差し出された契約書には簡単にいうとこんなことが書いてあった。

依頼内容:魔獣討伐
期間:五日間
報酬:金貨十枚、宿屋の提供
但し、依頼に失敗した場合、宿屋の代金を一部支払ってもらう。

何気に依頼失敗した時のリスクが怖い。が、まあいい。

「これ、魔獣がデマだったときはどうなるんだ?」
「そんときゃあ……」
「ウチラにケンカ売った罪をデマ流した奴に嫌っちゅうほど……」
「「思い知ってもらうだけよ」」

この夫婦すげえ怖い。いや、マジで怖い。


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そんなわけで、今俺たちは魔獣が出たという森の方に進んでいるわけだ。ようやく見えてきたが、成程、デマが流れてもおかしくはないぐらいに不気味で暗い森ではあるな。見ていたら確かに魔獣とか見えてくる気もする。

「暗いね〜」
「まあな。それじゃ、入って調査にするか」
「ほいさっさ。くらいくて怖いから抱き着いていい?」
「ウソだろ」
「ウソです」

なんかいまいち緊張感が無いけど、大丈夫だろうか……ん?

「どしたの?」
「なんか、いる」
「そりゃ、森の中だって魔物娘がいるんだし、なんかいるで……しょ……」
「何だこりゃ……兄弟…?いや、こんな奴はいなかっ……」

俺達の目の前には、森の中から現れた、とてつもない大きさのがででんと存在していた。

「ニーナ。質問だけど、この世界の兎はみんなこの大きさなのか?」
「んなわけないじゃん。何これぇ……確かにこれは、魔獣だよ……ん?あれ、おかしいな」

ニーナが怪訝そうな顔をする。が、それを尋ねる前に兎が襲い掛かってきた。

「GRWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「兎って爪と牙があったっけー!!?」
「無いと思うーっ!」
「だよなーっ!」

それ以前に兎には声帯が無いからあんな咆哮を上げられないはずなんだが……

「GRWAOOOOOOOOOOOOOOO!!」
「クソ!喰らえ!<狩りの爪>!」

爪を振るう。シンプルな動作。それだけで大地が割れる。そして、衝撃は兎を貫く。

「GRWAUUUUAAAAAAAAAA!!」

兎は苦悶の叫びをあげるが、血は出ない。峰うち、と言いたいところだが、これもおれの欠陥のうちの一つだ。俺は自分と同等の知性を持つものを殺せない。つまり人間を殺せない。同時に、魂を感じた存在を傷つけることができない。まあ、痛みを与えることで気絶させたり、衝撃でショック死させたりすることもできるから、一応人間じゃなければ殺すことはできるのだ。どっちにしたって生物として上位の存在として造られたにしては欠陥品であることに変わりない。

「おぉ?もっと本気だしなよー」
「俺は生き物殺せないんだよー」
「まじっすか。うん……じゃあ、弱らせて−トドメは私がさすね」
「すまん、頼む」

情けないが、ショック死させるのはとても手間だ。弱るのは弱るから、トドメを他人に任せれば基本的に余計な苦しみを相手に与えなくて済むのだ。

「<狩りの爪>ェ!」
「GRRRRRRRRR!!」

もう一発爪の衝撃を食らわせる。今度は力を込めてガードしたのか、苦悶の叫びをあげることはない。が、苦しそうだ。

「ニーナ!頼む!」
「はいさ!大人しくしてなよ!」

ニーナはそのまま兎の急所を狙って直線的に飛んでいく。足の爪がそのまま兎に突き刺さる。

「む……肉が厚いな。ごめんね、ちょっと苦しいかも!」
「WGRWAAAAAAAAAAAAA……」

兎が苦しみの声を上げる。だが、その声はか弱い。もうすぐだな。

と思っていたところ、だ。

「WROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!」

同じように、ありえないぐらい大きくなっている蛇が襲い掛かってきた。……蛇?蛇!?
13/11/19 12:33更新 / しんぷとむ
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