連載小説
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第四章†隊長として……†
ハルケギ村での戦いから二日が経った。

あの戦いの後、私たち第四部隊は
魔王軍と村人たちを引き連れシュザントの拠点へと帰還した。
ハルケギ村は焼き払われてしまったが、
キャスリン将軍が村の再建にジャイアントアントを手配しているらしい、
彼女たちの働きさえあれば、三日もすれば村は元通りになるだろう。

だがハルケギ村は、魔王領とマスカー領の国境線近くの村だ。
今回のようなマスカーの攻撃がまた起こる可能性がある。
当分の間は村に魔王軍の警戒守備がひかれるとのこと、まあ仕方ない。


村が再建するまでの間、
キャスリン将軍の村人たちをシュザントの拠点で養うことになったのだ。
村から一番近い拠点故になにかと都合がよりのだろう。
なんとかキャスリン将軍の助言もあってか、
カナリア公は人間嫌いを我慢して渋々それを承諾した。

そしてもうひとつ意外なことが、村の住人たちが拠点に避難した次の日
彼らは自ら自分たちの村に戻って再建を手伝いたいと言い始めたのだ。
将軍も言っていたが元々村人のほとんどが木こりで生計を立てている。
確かにそうしてやったほうが彼らにとってもよいのかもしれない。
直ちに私はカナリア公にこの事を相談したが、

「本人たちがそうしたいと言うのならそうさせるがいい。
汚らわしい人間が一人でもいないほうが私も助かるしな…………」

とのことだ。
ちなみにこの時の公の台詞は私に対しての皮肉を込められていたのだろうな。
私は村人たちに上からの許可を得たことを伝えると
彼らは大喜びで村に向かっていったのだった。
その道中を我ら第四部隊が護衛し、
村へと到着すると彼らはさっそく自分たちの故郷復旧に乗り出した。
どうやらうまくジャイアントアントたちと共同作業ができているようで
これなら予定よりも早く村は元通りになるだろうと
私は安心と確信を得て拠点へと戻っていった。


その後………つまり今日なのだが、
村の様子を見に行かせたノーザの話によると
魔王軍にとっては喜ばしいことに、
ハルケギ村で集団結婚が開かれる予定になったらしい。
当然、村の木こりたちとジャイアントアントによるもの、
これで彼らの村も以前以上の活気を取り戻すだろう…………。

そして今日は一通りの訓練も終わり、日も沈んで辺りは夜に暗闇に包まれる。
訓練を終えた後、基本この拠点の兵士たちは
訓練のあとの疲れから、すぐに食堂に向かって食事をとる。
だが私は少し違い、訓練が終わった後の日課として
訓練が終わった後の人気のない中庭で一人樽の上に座って
剣の手入れをすることにしている。どんな小さな訓練でも毎日欠かさず
自分の剣を手入れすることが隊長として大切なことだと私は思っている。 






          ≪シュザント:リゼッタ視点≫

「また剣の手入れしてる……」

私は食堂に向かう途中に隊長のほうを見ました。
あの人はいつも訓練が終わるとああやって一人で剣の手入れをするんですが
……………寂しくないんのかな……?

「……ねぇねぇみんな」

私はほかの食堂に向かおうとしているほかの隊員たちも呼び止めました。

「ん?どうかしたかリゼッタ」

サキサさんを初めとするほかのみんなも一斉に私のほうを見ました。
……………ちょっと怖いです:;

「あの………た、隊長のことなんですけど
隊長っていつ食事をとってるんですか?」

私は遠くから隊長のほうをちらりと見てそう言いました。
そんな私の質問にみんなが互いに互いの顔を見合わせました。
そして一番最初に口を開いたのはヴィアナさんだった。

「ん〜〜?言われてみればぁ………私も隊長さんが食事しているの
見たことないわねぇ〜〜……。ねぇシウカぁ、貴方知ってる?」
「いんや?アタイも隊長が飯食ってるとこなんて見たことねぇぞ?」

するとキリアナさんが顎に手を置きなにかを考え出した。

「確かに……我々が食事から戻った時にはもういないし……
しかしリゼッタ、突然なぜそんな質問を?」
「あ、いえ……その…、ちょっと言いにくいんですが……
隊長、寂しくないのかなぁ〜………なんて…」
『寂しい?』

みんなが声を揃えて復唱した。………うう、なんだか恥かしいです…

「………つまりリゼッタは隊長と一緒に食事がしたいの?と私は思います」
「べ、別にそういうわけじゃあっ……!」
「でもよぉ〜、ノーザの言ってる通りのようにも聞こえるぜぇアタイは」
「シ、シウカさんもからかわないでくださいッ!?」
「う〜〜〜ん、でも隊長が寂しいがってるなんて想像もできないわねぇ〜」
「うむ、隊長は厳密な方だからな」
「サキサも人のこと言えないと思うわよぉ〜?」
「ならみんなで隊長を食事に誘わないか?」
『えっ?』

キリアナさんの言葉に私たちは一斉に彼女のほうを向く。
ケンタウロスの為、みんながみんなで彼女を見上げるかたちになります。

「みんなでなにを不思議そうな顔をしているんだ。
確かにリゼッタが言っていることはもっともじゃないか、
隊長がどう思っているにしろ、私たちは同じ第四部隊で彼は私たちの隊長だ
確かに……初めて隊長と会ったころは色々あったが………、
今の私は隊長の事を信頼している、みんなだってそれは同じだろう?
ならみんなで彼を食事に誘って隊長の親睦を深める機会を作らないか?」
「ふむ、さすがだキリアナ、それでこそ我が盟友だ!」
「盟友は関係ない、と私は思います。
………ですが、キリアナさんが言い分ももっともだと私は思います」
「そうねぇ〜〜、確かに隊長さんの
好きな食べ物とか嫌いな食べ物とか気になるしぃ〜、私も賛成♪」
「ヴィアナが賛成ならアタイも賛成!」

みんなの意思がひとつに纏まっていく、それはそれでいいんだけど
………なんだかおいしい所をキリアナさんに取られたようで少し複雑……
ですが隊長と一緒に食事ができるのなら
そんなことも些細なことのように感じます。

「それはそうと、誰が隊長を誘うんだよ?」
「それは当然、言いだしっぺのリゼッタよねぇ〜?」
「ええぇっ!?私がですかッ!!?」
「当然だ、はじめにこの話題を作ったのはお前だぞ?」
「うう、サキサさんまでそんなこと言う〜〜………」
「自分で言ってことには責任を持つべきだと私は思います」
「こらノーザ、それにみんな。リゼッタ一人に対して可哀相だろ?」
「ううぅ〜〜、キリアナさぁ〜ん……」
「しかしだリゼッタ、みんなの言うことも一理ある。頼めるか?」
「ええぇぇーーーーーーッ!?
キリアナさんが行ってくれるんじゃないんですかぁっ!?」
「いや私は………その……男性を…それも隊長を食事に誘うなど……
は、恥ずかしくてとても……」
「……………………なんか納得いきません……」

私はみんなに相談したことを少し後悔しました。







         ≪主人公:ザーン隊長視点≫

ふむ…………、やはり剣の手入れをしている時が一番落ち着く。
日頃、訓練で騒がしいこの中庭も夜になればこんなにも静かなのがまたいい。
私は日頃騒がしいところが静かになるときの光景といのが
なかなか気に入っている。               
なに?変わっている?……言うな、自分でもわかっているんだ。
                       「あ、あの……隊長…」
しかし、第四部隊の隊長となってもうすぐ一ヶ月になるな…………
ふっ、今となっては赴任したばかりのあのころが懐かしい……。
信じられないかもしれないが、私が第四部隊隊長に付属したばかりの頃は
色々と問題が絶えなかったのだよ。                  
                       「た、隊長………?」  なにがあったのかって?う〜む、悪いがそれはまだ言えないな、
………いやいや、別にじらしているわけじゃない。
ただ、作者がまだ考えて…「隊長ォッ!!!!!」(キィイイーーーーンッ)

「……………………リゼッタ…、耳元で叫ぶな……」

私は脳の激しい振動に苦しみ、悶絶した。おお痛……。

「さっきから何回も呼んでるんですよ!?なのに隊長無視するし……、
それに今、言ってはいけないこと言おうとしませんでしたッ!!?」
「いや、別にそんなつもりは…………そ、それはそうとなにか用か?」
「なにか話逸らされたみたいで腑に落ちませんがまあいいです。
隊長、もしよければなんですが………………」

すると突然リゼッタが私から顔を逸らした。

「よろしければ………なんだ?」
「え、えっと……よろしければ…」(うわっ…、これ本当に恥ずかしい……)

心なしか顔が赤い。熱でもあるのか?

「た、隊長!」
「だからなんだ?」
「私と!………あ、ちがっ……えっと、私たちと一緒に食事しませんか!?」
「食事?」
「は、はい!そうです、食事です!第四部隊のみんなと!」

やたら みんなと! を強調してくるリゼッタだったが、
別に断る理由はない。それに考えてみれば隊の皆と食事する機会など
これまでに一度もなかったかもしれない。

「わかった、みんなを待たせては悪いし さっそく行くとしよう」




私はリゼッタの誘いの元、今こうしてシュザント拠点の食堂にやってきた。
シュザントは結成されて間もない組織故に人員は少ないが、
日を追うごとにその人数も増えていくと予想されているため、
食堂などといったの共同部屋は無駄に広く作られてある。
そのため、それなりの人はいるのに席ががらがらという始末。
まあ性欲処理のための特別食堂もあるにはあるのだが………

「隊長、なにボーっとしてんだよ。早く座ろうぜ!」
「あ、ああ、そうだな」

シウカに急かされ近場の席につく。
そんな私を中心にみんなが席に付いた。

「いやぁ〜腹減ったぁ!そんじゃあ何食おうっかなぁ〜……」
「こらシウカっ、こういう場合は普通先に隊長が選んでからだっ!」
「え〜〜〜〜!?別にいいじゃねぇかぁ、今日の訓練も終わったんだしぃ〜」
「シウカの言う通りだサキサ、食事の時までそこまで気を張らなくていい」


………………………………と、
少し前に私はそう言った筈なんだが………、
なぜ私がディナーセットを注文した後に全員が一斉に注文するのだ………。
しかも同じディナーセット……タチの悪い有名人のおっかけかお前ら!?


「ねぇ隊長さぁん♪
隊長さんっていつも訓練の後に剣の手入れしてるけど
夕食はいつ食べるのぉ?」

食事中にディアナが質問をしてきた。

「剣の手入れをした後に、自室でその日の訓練内容や結果を
レポートにまとめ上げて、総隊長に提出しにいった後だ」

本当は食事の後に要点を少し纏めるだけでいいのだが、
私自身の性格もあり、やるべきことはキチンと先にやることとしている。
だが余りに几帳面すぎるとカナリア公に煙たがれるのが玉に瑕だ。

「え、それってだいぶ時間がかかるんじゃ………と私は思います」
「お前たちの隊長になってから続けていることだ、別に大したことではない」
「だからって水臭いぞ隊長!言ってくれれば私たちでも
食事を運ぶなり、色々と手伝ってやったのに!」
「そうですよ隊長、大体そのなんでも一人でやろうとするところは
隊長のいけないところだと思います!」(そういう所も素敵ですけど///)
「私もリゼッタに同意です隊長。私たちがそんなに頼りありませんか?」
「おいおいキリアナ、私はなにもそこまでは言ってはいないぞ?」
「まっ、どっちにしろ隊員にそういう印象与えるってのも
隊長としていろいろあれなんじゃねぇのぉ〜〜?」

うっ……、 シウカの発言に私は押し黙ってしまう。
だが確かにそうだ、隊長としてそれでは問題だな…………
私は食事の手を止め、思考を張り巡らす。
考えて見れば私は彼女たちの戦闘能力は把握していても、
考え方や性格はもちろん、プライベートまでは把握しきれていない。
はてさてどうするべきか………。



…………そうだ、私が考えた三つの提案を君に選んでもらうとしよう。
私と共にこの世界を体験する君にも十分その権利がある。
さあ、選んでくれ。我が隊員たちのために……………



一、『山林地帯でキャンプ』(軍事演習)
    軍の所有する特別訓練地区。そこで隊員たちと鍛え、数日を過ごせ!
    こういった場所を好むのは「リゼッタ」と「ノーザ」だろう。

二、『草原地帯での護衛』(護衛任務)
    最近盗賊が頻繁に出没するらしく、旅商業団体を街まで護衛せよ!
    このようなところは「サキサ」と「キリアナ」の独壇場だ。 

三、『洞窟探検』(調査任務)
    最近発見されたとある洞窟。なかの構造を調べよ!
    ここでは「ヴィアナ」と「シウカ」が頼りになるだろう。











12/05/04 02:42更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
少し時間がかかってしまいましたな。

内容や魔物娘の口調を考える際、色々な作品を見てきたのですが
ganota Mk2様の名作「悪の侵攻戦隊!出撃!?」を参考に
今回は読者のみなさまの感想と意見を元に次話を考えたいと思います。
これ本人やファンに怒られないかなぁ〜、って内心結構どきどきしてます…。

軍記ものはなかなか難しく、それに加えエロ展開も考えなきゃいけないから
結構大変ですwww でも面白いというのもあります!だから頑張れる!!


それで会話の際に誰が誰なのかややっこしいと感じる方がいると思うので
隊長に対しての隊員たちの口調を軽くまとめてみました↓

ワーウルフのリゼッタ。
敬語で礼儀正しい喋りをする。少しお茶目なところがある

ブラックハーピーのノーザ
敬語で語尾に だと思います が特徴。

リザードマンのサキサ
敬語を使わないが、熱血漢のような喋り方をする。

ケンタウロスのキリアナ
敬語を扱い礼儀も正しいが、どこか発言が男前。

アラクネのヴィアナ
誘惑する喋り方。♪をよく使い、語尾もよく伸ばす。隊長をさんづけで呼ぶ。

ミノタウロスのシウカ
乱暴な喋り方。アタイを一人称とし、サクラ大戦でいうカンナ的なもの。

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