連載小説
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第三章†ハルケギ村防衛戦†
ハルケギ村まではそれほど距離は離れていない。
馬を全力で走らせて20分っといったところだろう、
私は隊員たちを拠点の門に集合させ出動内容を説明、
現地にて作戦を練るため、私たちは今全力で森の中を馬などを走らせている。

隊の中で馬を使うのは私とサキサ、シウカとヴィアナの四人だけであり
下半身が馬のキリアナ、狼であるリゼッタ、羽を持つノーザは
馬に遅れを取らない俊敏力がある為、必要としない。
ついでに下半身がクモのヴィアナは
長時間の素早い動きと乗馬は得意としない為、シウカにしがみ付いている
かたちとなっている。

「ノーザ、空から村は見えるか!?」
「はい!ですが酷いものですよ!と私は思います、
村中に火矢が打ち込まれています」
「マスカーめ!村人を皆殺しにするつもりかっ!?」
「魔王側に対する見せしめにとしてはそれもあるだろうキリアナ、
だがおそらく連中、村を攻撃して民を追い詰めることによって、
魔王軍の行動を縛っているんだ。ノーザ、魔王軍の動きを見てくれ……
私のこの考えが正しければ、おそらく戦況は魔王軍の防戦一方だろう」
「え〜〜っと………、隊長の言うとおりです!と私は思います。
魔王軍のみんなが村人を守りながら苦戦を強いられています!」
「おのれなんと卑怯なっ!隊長!
このままマスカー軍に突撃し、奴らを一掃しよう!!」
「落ち着けサキサッ!お前の気持ちは理解できるがそれは許さんぞ。
一度魔王軍の防衛拠点に向かい本隊と合流。
そこで作戦を練り、行動を開始する。それまでの辛抱だ」
「だが隊長!奴らは今村に攻撃を集中している、
今なら背後から強襲できる!そうすれば迅速に戦いを……」
「もう一度言うぞサキサッ!!勝手な行動は私が許さん!
感情に流された突撃など、戦場では己の命を危険に晒す物に過ぎん」
「だがっ……「貴様は隊を殺す気かッ!?」……っ、……了解だ……!」
「それでいい、ほかの全員もわかったなッ!?」
『了解ッ!!』
「………よし、村が見えてきたぞ!」

地図に記された近道のルートもあったため
私たちは予想よりも早くハルケギ村に到着することができた。
村全体がマスカー軍に囲まれており、
魔王軍は村を中心に円陣で防衛体勢を取っている。
しかしその村もノーザが言ったとおり、村には火が放たれており
実際は敵軍と火による挟み撃ちを受けてしまっている。

「あれでは永くは持たん………急ぐぞッ!
これより戦闘区域を突破する!全員私について来い、遅れを取るなぁッ!!」
『オオォォッ!!』


咆哮と共に私たちは戦闘区域に突撃した。
マスカー軍は村の攻撃に集中していた為、
サキサの言ったとおり、背後からの強襲には成功した。
突然の背後からの攻撃に一部のマスカー軍は混乱を起こしていた。
しかし深追いはできない、私たちは無理に攻めようとせず
村にある防衛拠点を目指し、戦いに渦巻く人の波を斬って押し進んでいった。

『ありがたい、援軍だっ!!』

私たちの姿を確認した魔王軍の兵がそう叫び、
私は聞きたいことがあるので、その兵の元に向かった。
魔王軍の鎧を着ているが、どうやら人間兵のようだ。

「我らがシュザント、援護要請を受け参上した。防衛拠点は?」
「こちらですっ!」
「礼を言う、全員行くぞ!」

その人間兵に案内のもと、私たちは無事防衛拠点に辿り着くことができた。
しかしその拠点は村の中に築かれたもので、周囲は火の海であり
安全なものとは到底言えるものではなかった。

「将軍!シュザントより援軍が来ました!」
「知っている、君は消火活動にあたってくれ」
「ハッ!」

私たちを案内してくれた兵士はそのまま村のほうにへと走り去っていく。
そして私を先頭に、第四部隊全員がその将軍であるデュラハンに敬礼をした。

「援護要請を受けシュザントより参上しました
第四部隊隊長 ザーン・シトロテアです!」
「救護要請を受けてくれて誠に感謝するわ。
私は現在この場を持って魔王軍の指揮をとっている キャスリン です」

デュラハンの「キャスリン」将軍は自己紹介をし敬礼で返す。
だが彼女は私の事を少し珍しそうな顔で見ていた。

「へぇ〜……、人間の隊長とは珍しいわね…」

将軍のその言葉に、私の後ろにいる隊員の何人かがムッとしたようだ。
しかしこの価値観は仕方がないことだろう
元来より魔物を率いているのは優れたより強力な魔物というのが主流だ。
人間が軍の一個隊隊長を務めるなど珍しいことだろう。
実際私が知る限り、シュザントで人間の隊長を務めているのは私ぐらいだ。

「人間ではなにかご不満でも……?」
「………いいえ、些細な事ね。御免なさい、もしかして気に障った?」
「いや、珍しいというのは事実でしょう、気にしておりません」
「貴方はそうでも、後ろにいる隊員さんたちはそうでもなさそうね?」
「気にしないでください。それで………戦況は?」

不機嫌そうな顔をしているらしい隊員たちをよそに
私は中央の机に歩み寄り、置かれている戦況図を眺めた。

「見ての通り最悪よ、村の火災も全然に治まってくれないし
敵も村を囲んで、長槍でちまちまと距離をとって攻撃してるわ……」
「明らかにこちらを疲労を狙っていますね。消火活動のほうは?」
「魔女部隊が水魔法で頑張ってくれているんだけど………
この村…、住人の大半が木こりで生計を立てているのよ。
だから丸太がそこらじゅうに置いてあるせいで
燃え移る炎の勢いが強いのなんのって状態なのよ」
「まさか連中、それを知ってこの村に火を……?」
「恐らくそうでしょうね、なんたってあいつら、
私たちが村に駆けつけた瞬間に火矢をそこらじゅうに打ち込んだもの
おかげで村人も私たちもこの通り、火中のなかを拠点としているわけよ」

ちらりと後ろを見てみると、やはりサキサが顔の表情に怒りを露にしていた。
サキサはリザードマンとしての生まれながらの誇りがあるためか、
このような無関係な民を苦しめるやりかたを非常に嫌うのだ。
するととうの本人が自分の意見を投げかけてきた。

「隊長!それならば一刻の猶予もないぞ!
ただちに迎え撃つべきですっ!」
「馬鹿ねぇ〜サキサァ〜、
それができないから魔王軍が苦戦しているんじゃなぁ〜〜い
さっき隊長さんに注意されたばかりでしょお〜〜?」
「うっ………だ、だがっ!」
「ヴィアナの言うとおりだサキサ。
今この戦場で私たちがやるべきことはチャンスを作ることだ、
そのチャンスを作りさえすれば、お前が望む戦いもできるだろう」
「問題はそのチャンスをどうやって作るかよね ザーン隊長?
やつらがそうやすやすとチャンスを作らせてくれると思う?」
「それはもっともでしょう将軍。そこで考えたんですが、
まずは村人たちを村から逃がすことを優先としませんか?」

私は戦況図に記されている私たちがいるこの村を指差した。

「私もそうしたいのはやまやまなんだけど………、なにか作戦でもあるの?
四方八方敵に囲まれているのよ?無理に村人を連れて戦場を突き進んだら
かっこうの的にされるのはまず間違いないわ」
「現在の兵力差はどれぐらいで?」
「我々が200、マスカーが150ってくらいね。
でも状況が状況だから、はっきり言って50程度の兵力差じゃあ
心もとないわね」
「……………………………………」

私は顎を手に乗せ、作戦思考を張り巡らせるのだった。

「………ノーザ」
「え?あ、はい!」
「戦場にいるハーピー種をできるだけかき集めろ。
リゼッタ、キリアナ、ノーザを援護してやれ。
ある程度集まったらその者たちを連れてここに戻って来い」
「「「はっ!」」」

三人は敬礼をし、すぐさま戦場へと駆け出していった。

「へぇ………なにかいい作戦でも思いついたのザーン隊長?」
「とりあえずは………に過ぎませんよ将軍、
この炎が我々を追い詰める為の敵の策略だというならば………
次は私たちがこの炎を利用してやるとしましょう
少々危険な橋渡りですがね……………」








           ≪マスカー軍:???視点≫

シャリシャリッ と音を鳴らせながら、俺は自軍の拠点で林檎を齧っていた。
てゆーかこれで6個めだ!まったくいつまで待たせるんだが………

「おい!まだ村は落とせないのかよッ!?」
「も、申し訳ございません バンドー隊長!!
魔物どもが予想以上に粘りまして………………」
「チッ!役に立たねぇなぁまったくっ!!」

能無しの部下の言葉に舌打ちをしながら俺は林檎の芯まで噛み砕いた。
おっと、自己紹介がまだだったな!俺の名前は 「ゼム・バンドー」
偉大なる反魔物絶対国家、マスカーに仕えるイケメンのナイスガイ。
ついでに歳は21だ。この若さで軍の隊長格、どうだ凄いだろッ!?
村に火を放つアイディア、あれ俺が考えたんだぜッ!?
そしてそんな凄い俺の使命は魔物どもを根絶やしにしてやることだ。
世の中魔物に味方する馬鹿ばかりだが俺は違う!

俺はあいつらの恐ろしさを知っている、
奴ら魔王の交代により、やたら可愛い女に化けようになったが
やることは全然変わっちゃいねぇ!
奴らは俺たち人間からなにもかも奪っていくんだ!

俺のおふくろは魔物によって親父を奪われ………
女手ひとつで俺を育ててくれた。
おふくろはいつも悲しい顔で俺に親父や魔物について語ってくれたよ………
そしてそんなおふくろも俺が17の時に過労が原因で死んだ。
やつらに殺されたんだっ!!
俺は奴らに復讐する為に教団に入り、死ぬ物狂いで体を鍛え、
今となってはマスカーで隊長兼指揮官を務める程まで昇進した。

だがいくら俺が優れすぎていても肝心な部下どもがこれじゃあなぁ〜〜……。
なんか外から敵の援軍が来たみたいだけど、どうせ大したことないだろ

「伝令!敵の動きに変化あり、問題発生です!!」
「あンっ?一体どうしたってんだよ!?」
「敵が兵力を一箇所に集め、我が軍の包囲網を突破しようとしています!」
「なんだとっ!?てめぇら、なんだって敵が一箇所に
集中するようなそんな暇を与えたんだッ!?」

俺は愛用の戦斧をその兵士の喉元に突きつけた。

「ひぃっ!? す、すみません隊長……!
や、奴ら……あろうことかあの火の海であるはずの
村を通って行ったんですっ!!
そ、そのせいで我々では追う事もできず村を迂回して…
あ!そ、それから…【どしゅっ】………」

俺はこれ以上その耳障りな声を聞きたくないため、
その兵士の首を撥ね飛ばした。

「じゃあなにか……?魔物にはできる火の海渡りを
お前たちは怖くてできませんでしたとでもっていうことか?
そんな根性なしはこのマスカーにはいらねぇんだよっ!この梨野郎ッ!!」

役立たずの亡骸を自分の嫌いな果物に例えて罵倒を浴びせ、
俺はすぐさま馬に乗り、拠点を守備していた兵士たちを呼び集めた。

「早急に事態を立て直すぞッ!!
兵力を一箇所に集めてるって事は、
やつら間違いなく村人を逃がそうとしているんだ!
敵が反撃行動を移す前に一斉に仕掛けるぞッ!
村人を引き連れた状態なら、十分すぎるぐらい勝機はあるぜ!
そんじゃあ行くぞオラァッ!!!」


大勢の兵士を引き連れて俺は戦場へと向かった。
村の炎は一応よく燃えているようだが、
村はすでにもぬけのから、変わりに村から少しはなれたところで
戦闘が繰り広げられていた。しかもどうやら押されているみてぇだ!
俺はすぐに俺はすぐにその場へと駆け出した。

「なにやってんだよお前らみっともねぇっ!!」
「バ、バンドー隊長!?」
「バ、バンドー隊長!?……じゃねぇよテメェッ!!
魔物なんかになに苦戦してんだよ!?」
「で、ですが敵が予想以上に手ごわく……」
「馬鹿かお前!?奴らは村人を引き連れてんだろ?
だったそいつら狙ってやつらの動きを封じるんだよッ!!」
「ですが隊長!そ、その…非常に申し訳にくいのですが……
む、村人がどこにもいませんっ!!」
「…………………………はっ?」

俺はすぐさま戦場を見回す!
…………………………いねぇっ!?どこにもいねぇっ!!?

「馬鹿なッ!?村人はどこに行ったんだよッ!?
なんでこのことを俺に伝えなかったッ!!?」
「つ、伝えるも何も! 伝令はちゃんと送りましたよっ!?」

…………ああなるほど、俺はその伝令を聞く前に
そいつの首を撥ね飛ばしてしまったわけだぁ〜、はっはっはっ。

「チクショオォッ!!なんだってこんなことに…………」
「お前の浅はかさがこの結果を招いたのだ」「ぐあァッ!?」
「なにっ!?」

するといきなりさっきまで俺と話していた兵士が切り倒され、
黒い服を着た茶髪男が現れやがったっ!!?

「て、てめぇらっ 村人をどこに隠したっ!?
まさかあの火の海に見捨ててきたのか!?」

俺は咄嗟にそいつに向けて戦斧で攻撃したが、
そいつはやたらと細長い剣で俺の攻撃を受け止めやがった!こんニャロッ!!

「そろそろ頃合か」
「ああンッ!?一体何言ってんだてめぇっ!」

俺は力一杯戦斧を振り下ろしたが、そいつは馬を後ろに退けかわしやがった。

「キリアナ、今だッ!」
「了解ッ!!」

そいつが近くにいた馬女に何かを命令する。
するとその馬女は上空に向けて矢を飛ばし始めた。
どこ狙ってやがる!?

「バ、バンドー隊長! あ、あそこをッ!!」

俺は部下が指差した空の方角を見た、
そこは村の真上、つまり火から昇った煙の中だ。

「嘘……だろ……!?」

俺は目を疑った。だってそうだろう?
その煙のなかから無数のハーピーたちが現れたうえ
そいつらの足には大勢の村人が担がれていたんだから…………。


「作戦はうまくいったか……」
「さ、作戦だとっ!?」

先程の男がそう呟き、俺は過剰なまでに反応する。

「てめぇら自分たちを囮に、
村人どもをハーピーを使って逃がすつもりだったのかっ!?」
「そういうことだ、そのためには我々の戦力を一箇所に集めた際、
隙を見て煙の中にハーピーたちで村人を隠した」
「煙のなかにって………、そんなことをすりゃあ煙を大量に吸い込んで…」

「ご心配なく、私たちトコの魔女部隊が加護の魔術で煙を防いでいるわよ」

「!?」

するとさらに甲冑を着込んだ女、デュラハンまでもが現れやがった。
めちゃくちゃ美人だが騙されはしねぇっ!

「ハーピーたちはあのまま村人を引き連れて、
私たちがいるこことは反対側の森に向かって脱出する手筈よ」
「チィイッ!!だったら………、第二・第三部隊ッ!!
直ちにあのハーピーどもを追って撃ち落せっ!
そして村人どもを捕らえて人質にするんだっ!!
時間もねぇっ!村を突っ切って行けッ!
行けネェような腰抜けはこの場で俺がぶち殺すッ!!」

俺の脅迫まがいな命令を聞き入れ、数十人の兵士が馬を走らせ
ハーピーたちが飛んでいった方向へと村を通って走っていった。

「ほう、君は行かなくていいの?
逃げ出せるチャンスだったのに…………」
「黙れよこの首なし女がッ!
奴らが人質を手に入れるまで、俺が一人でも多くてめぇらを
血祭りにあげてやるだけだぁっ!!」
「ふふっ、若いのに威勢はいいわね………
ザーン隊長、悪いがこの男は私に相手をさせて頂戴」
「了解した」

黒服の男はそれだけを言うと、デュラハンから離れ
別の戦闘に参加しに行った。
だが今俺が気にしなきゃああんらねぇ相手はこの目の前の首なし女だっ。
既にその手には剣が抜かれている。

「自己紹介がまだだったわね。私は魔王軍のデュラハン キャスリン。
この戦場では将軍を務めさせてもらっているわ」
「ほぉ〜う、てっきりさっきの奴が将軍かと思ったぜ。
だがまあ丁度いい、俺の名はゼム・バンドー!
この戦場きってのマスカーの隊長指揮官、
そして……てめぇをこの世から滅ぼす英雄様の名だ!」
「ふふふっ、私を滅ぼすなんて大きく出たわね……
でも………、調子に乗らないことね人間風情がッ!!」
「言ってろ、そしてぶっ殺すッ!!」

俺たちは互いに馬を駆け出させ、互いの武器を強く打ちつけ合った。







          ≪シュザント:ヴィアナ視点≫

「ここら辺ねぇ〜、ノーザ降ろして頂戴」
「わかったわ と私は思います」
「相変わらずメンドくさい喋り方ねぇ〜〜あなたって」
「…………ほっといて、と私は思います」

私とノーザは隊長の命令で、魔王軍のハーピーたちに村人を運ばせ、
そのなかに私たちも紛れ込むことにして今私たちだけが森で降りたの。
理由は簡単♪
追撃に来るであろうマスカー軍に罠をかける為よ。そのための私♪
森で罠を仕掛けることに関してはアラクネはプロ中のプロ、
でも私は仮にも軍人、私は私なりの独自のやり方があるのよ。

「ノーザ、悪いけど罠を仕掛けるから、邪魔にならないよう
あの木に隠れて見張ってて頂戴、敵が来たら教えてね♪
なるべきたくさん罠を作っておくから♪」

ノーザは黙ったまま頷いて、私が指定してくれた木に素直に隠れて行ったわ。
本当に賢い娘♪ いつか食べちゃいたいくらい…………♪
あら、興奮してる場合じゃないわね。
私は大急ぎで木の根元から根元に結びつけて、
馬の足が引っかかるように糸を張り巡らした。
そして馬から転倒したら身動きがとれないように、地面に無数の糸を
張り巡らしたわ、これで完璧♪

「ヴィアナ、来たっ! と私は思います」
「グッドタイミング♪」

私はすぐに近くの木に身を潜めて、追撃部隊が罠に掛かる瞬間を待つ…
馬の蹄の音と話し声がどんどん近づいてくる…………。




しっかし、バンドー隊長には困ったもんだよなぁ〜。

まったくだ、あの若さからなのか……あの方はいささか無鉄砲がすぎる。

しかもしんどい事はいつも人任せだぜ、
自分だけ戦場で暴れたいだけ暴れられたんじゃあ俺たちの身がもたないぜぇ?
少しは俺達部下のことも考えてほしいよ、だからって文句言ったらあの人
すぐに暴力振るうし、はぁ〜…あの人の部下になったの失敗だったぜ……。

いや、そうでもないさ。マスカーの上級クラスには
バンドー隊長以上に乱暴で荒っぽい人も多い、そう考えればまだマシだろう
それに、あの方は性格はアレでも武将としての実力は高いし
魔物どもに対する憎しみも強い。
これからの時代を切り開いていく偉大なるマスカーには
ああいった方が必要なのだろう……。

しっかしなぁ〜〜………。

 ブヒィィィィンッ! 

うわ、なんだっ!? 

わぁぁぁぁあっ!!?

 ドッシーンッ!




かかったぁ〜〜♪

「はぁ〜〜い、間抜けなマスカーのみなさん御機嫌よう♪」
「ア、アラクネっ!?くそ、してやられたっ!」
「落ち着けッ!弓を持っている者は攻撃しろっ!!」
「いやん、おいたしちゃあだ〜め♪」

私には普通のアラクネとは違い、軍人として特殊な武器を使うの。
それがこの鉄でできた杭のような形をしたクナイ。
針のように小さすぎもせず、杭のように大きすぎもせず、
ジパングの忍が使うような指に挟んで投げられる優れもの。
私は弓を構えようとした兵士たちの手にこのクナイを投げ刺したわ。

『ぐああああっ!!』

もうっ、大の男が情けない声を出さないのっ!
それに比べてザーン隊長ってやっぱり素敵よね〜♪

拠点で彼が考えたこの作戦がこんなにうまくいくなんてさすが私たちの隊長♪
でも彼ったらすっごい真面目で、私やほかの隊員たちが誘っても
平然と落ち着いたようすで流すのよぉ〜。これってすごいと思わない?
私はそんな隊長さんをとても気に入っているの♪
ううん、わたしだけじゃない。きっとほかの隊員だってみんな同じ筈、
だから負けてられないわね、
いつか隊長さんと素敵な夜を過ごす。それが私の今の目標ね♪
やだぁ……、いつの間にかちょっと濡れちゃってる………
マスカーの兵隊さんたちとするのは嫌だしぃ〜〜、
仕方ないわね、戻ったらシウカに相手してもーらおっ♪







          ≪主人公:ザーン隊長視点≫


戦場の旗色は確実にこちら側にある。
私は馬を走らせ、苦戦している兵士を援護して回り
その勢いで少しずつ敵の数を減らしていった。
村人を追った部隊もヴィアナたちがいるから問題ないだろう。

しかし今この戦場で一番気がかりなのは、
現在キャスリン将軍と交戦中のあのバンドーという男だ。
一度武器を交えただけだが、かなりの実力だということはわかる。
私はキャスリン将軍の剣の腕を知らない為、非常に心配ではある。
しかし今はほかの敵兵を退け、キャスリン将軍の戦闘を邪魔させないように
するのが私の精一杯の仕事だろう…………。



「オラァッ!」
「くっ……!?」

バンドーは力づくでキャスリン将軍の剣を戦斧で弾き返す。
勢いとパワーならむこうが上手か………?
だが技量ならキャスリン将軍が上手のようだ、
弾かれた瞬間に素早く反撃をし、バンドーの肩を斬りつけている。

「いっつ……!?」
「ふふっ…………」

………………?
心なしか、バンドーと戦っているときの将軍が
妙に楽しんでいるようにみえる。

「どうするバンドー隊長?戦況はそちらの圧倒的不利のようね……」
「…けっ、言ってろ。すぐにでも俺の部下たちが
村人どもを連れて現れる、そうなりゃあてめぇらは終わりだっ!」

なんともめでたい男だと、私が思った次の瞬間だった。
いつの間にか夕焼けになっている空に
保護色で見えにくいが、無数の火の玉がこちらに飛来しているのを
私の視界に捉えたのは………。

「…………はっ!?伏せろぉっ!!」

私ができる限りの大声で叫ぶと、その声に反応して
反射神経が優れた魔物の何人かは一斉に身を屈め始めた。
だがその次は、戦場に無数の火球が着弾したという現実だった。

「うぉぉおぅっ!!?」
「きゃあぁっ!?」
『ウワァァァァァッ!!? キャアアアァァァッ!!?』

バンドー、キャスリン将軍を初め 両軍の兵士が
その無数に降り注ぐ火球に混乱を起こした。
だが私はその火球を見てとある結論に辿り着いた。

「これは………魔術による攻撃かっ!?」

そしてその混乱の最中、バンドーはなにかに気付いたようだ。

「この炎…………はっ!? ぜ、全軍。この戦場を離脱するッ!来いッ!!」
「な!?ま、待てバンドーッ!!」

キャスリン将軍が咄嗟にバンドーを呼び止めるが、
どうも本人はかなり慌てた様子で戦場にいた全兵を引き連れ
平原の高台である丘へと向かっている。

「ザーン隊長!丘の上に………ッ!」
「気付いています将軍」

将軍が指差し、バンドーが向かっている丘の上には
夕焼けで照らされた大勢の人影があった。ざっと五十人はいるだろうか…。
全員が緑色のローブを羽織っている。


「どういうつもりですかミライド様ッ!?
あやうく我々まで炎の餌食になりかねませんでしたよっ!?」

バンドーの話し声が我々のところまで聞こえてくる。
話しかけている相手はその五十の人影の中央で立ち尽くす不気味な男。
…………まて、「ミライド」だと?

「まさか………ミライド・クランギトーかっ!?」

私の声に、その場にいた魔王軍や隊員たち全員が驚きの声をあげた。
マスカーと対立するものならこの名を知らないものはいない。
「ミライド・クランギトー」 マスカー創立より反魔物派を導いてきた軍師。
またの名を 「人魚喰らいのクランギトー」 である。


「浅はかな真似をしましたなぁバンドー隊長。
今このまま続けていても勝ち目はないのはわかっていたでしょぉ〜〜?」
「で、ですが!村人さえ取り押さえればこちらにも勝機が………」
「そちらの部隊は呆気なく罠にかかりましたよ、
さらにこれも、あの戦場での戦力を割るための敵の作戦………
君はまんまと敵の手の上で踊らされていたのだよ、情けなくねぇ〜〜…」
「な、そ……そんな!?………あ、ぐ、軍師様!お許しをッ!!
この失態、次の戦場にて取り返してみせます!ですからどうか……」
「くっはっは、許すも何も。私は君を咎めるつもりは不毛にないぞ?
むしろ面白いも戦いが見れたと君に感謝しているぐらいだ………
この戦いは……彼女たちの勝ちとしましょう。
少なくからず、村をひとつ焼き払っただけ攻めた価値もあろう……」

バンドーは心底助かったと言わんばかりの表情で頭を下げた。
一瞬、クランギトーの視線が私を見たような気がしたが
奴がすぐに後ろを向いたことによってそれもわからなくなってしまった。
そしてクランギトー含む五十の人影とバンドー率いる兵士たちは
そのまま夕暮れへと向かって消えていった。
あちらの方向はマスカー領だ。大人しく自軍の領土へと身を引いたのだろう。
黙々とそれを眺めていた私の横から、
キリアナ、サキサ、リゼッタ、シウカが現れる。

「隊長よぉ……、よかったのかい?奴らをあのまま見逃して…」
「それは恐らく違うだろうシウカ」
「ど、どういうことだよキリアナ?」
「我々は見逃された………そう言いたいのだろう隊長?」
「ああ、その通りだサキサ。
リゼッタ………お前はあの緑のローブを着た集団がなんだかわかるか?」
「はい………、あれは間違いなくマスカーの魔導師部隊です」
「しかもあのクランギトー直属のエリート部隊だ。
我々含む魔王軍全体は先の戦いでほとんどが疲労困憊だった、
もしあのエリート部隊が畳み掛けてきたら……正直危なかっただろう…」
『………………』

隊の全員が押し黙ってしまう。
だがこの防衛戦は村ひとつを犠牲にしてしまったが
我々は勝利することができた。
その事実と栄光を皆に伝える為にキャスリン将軍が
その場で大声で魔王軍全員に言い聞かせた。

「みんな!予想外の事態が起こりはしたが
皆が気を落とすことなどなにひとつないっ!!
だから気付いて欲しい!村ひとつが炎に飲まれてしまったが
私たちはこの戦いに勝利したのだっ!!焼かれた村はまた元に戻るっ!
そしてこれだけは覚えていて欲しい!
我々が手に入れるこの勝利ひとつひとつが偉大なる名誉を君らに与える!!
そしてその名誉は必ずしも我々にさらなる勝利と平和を齎すであろうッ!!」

『わあぁぁぁぁぁァァァァァッ!!』

咆哮のように響き渡る勝利への歓声。
ほかの隊員もみな、その勝利に歓声を上げるのだが
私は一人黙々と自分の手に持つ大量の血を浴びた剣を鞘に納めるのだった…。







12/12/21 02:57更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
う〜む、ある程度エロイ部分は入れていきたいと思うんですが、
今のところなかなかそういったうまい場面が思い浮かばないんですよねぇ〜、
そこらへんなにかみなさんのご提案があれば感想でよろしくお願いします。

今回現れたマスカーの将軍二人なのですが
もし彼らに対してなにか質問等あれば遠慮なくお願いします。

だが問題はえっちぃなシーンだ…ふーーむ、

……いっその事ザーン隊長にはサクラ大戦の大神隊長のように
風呂場に行って誰か入っていると「体が勝手に…」スキルでも
付けてしまおうか…………いや待て!いかん!
そんなことしちゃあザーン隊長のイメージが…………!!

あ、ついでに私のザーン隊長の剣のイメージは大体こんな感じです
↓(勝手に貼り付けていいものか…、)
http://image02.wiki.livedoor.jp/d/s/demons_souls/810eb7f9dcb7845e.jpg

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