連載小説
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契約の対価
 城の周囲は結界が張り巡らされている。近寄る者を遠ざけ、万がいち踏みいる者がいても、散々迷わせた挙げ句、いつの間にやら森の外に出る仕組みだ。
 ぐるりと囲む植物は極彩色で、毒を帯びた美しさは、魔界の様相を思わせる。
 荘厳なる城内は静けさに満ち、耳の良いミリシュフィーンでも、自分達以外の音を拾えない。

 だが、彼にはそれで良かった。
 おかげで、寝台で眠る、幼なじみの少女が立てる寝息が、よく聞こえる。穏やかで、規則正しい。
 握った手は温かで、女の子にしては硬い掌だが、一生懸命に剣を振った、努力の手だ。
 清潔そうな寝具の匂い。微かに香るカモミールに似た匂いが、緊張をほぐす。
 安らかな眠りが、そこにはあった。
 視覚以外でそれらを感じ取り、少年はホッと息をつく。
「しばらく寝かせておくといい。そのうち目が覚める」
 ミリシュフィーンを見守っていた女城主は、彼の背へ声をかけた。
「はい」
「では、私の部屋に移ろうか?」
 アストライアに手を引かれ、少年は部屋をあとにした。



 そこは、本に埋め尽くされた部屋だった。ちょっとした図書館だ。
「さて。では、対価を払ってもらおうかな」
「いかようにも」
 毛足の長い絨毯に両膝をつき、頭を垂れようとした少年を、アストライアは押しとどめる。手を引いて立たせ、広々としたベッドへと誘い――華奢な体を押し倒した。
「っ?」
 緊張に身を硬くする王子だったが、抵抗はしない。
 その小さな体に覆い被さりながら、魔性は告げる。
「君は言った、『何でもする』と。『全てを捧げる』と。魔物に、それも〈リリム〉であるこの私にだ」
「はい」
「愚かな。もしも私が『死ね』と命じたならば、君は死ぬのかい?」
「は、い」
 震える声が返される。
「本当に、何て愚かなんだろうね」
 アストライアが顔を寄せると、長く豊かな髪が背から流れ落ち、白銀のカーテンとなって少年の顔を囲む。得も言われぬ甘やかな芳香が、あたりを包み込む。
 白い顔と、より白い顔とが至近で向かい合う。
「……ごめんなさい」
「あの忠義の騎士は、君を救うために体を張って、あんな大怪我を負ったんだよ? それはつまり、君に価値を見いだしてるってことではないかな? それなのに君は、我が身を軽んじ、彼女の意思を軽んじている。違うかい?」
「ごめ――んぅっ?」
 紅をさす必要のない、扇情的な朱に染まる唇が、ミリシュフィーンの謝罪をキスで遮ったのだった。
「『気安く謝れば罰を与える』、そう言ったはずだ」
 静かな声音に陶然とした色が乗る。
「見逃してあげようかとも思ったけど、やっぱりやめた。君はもう、ここから出してあげない。君みたいな悪い子は、私が躾なおしてあげる。もうお家には帰れないし、家族にも会えないよ。君の居場所は未来永劫、私の側だ。覚悟しなさい」
 その言葉を聞いて――それまでこらえてきたものが決壊し、男の子の頬を涙が伝った。
 どうせもう帰る場所などないのだと解ってはいても、心では受け容れ切れていなかったのだろう。その危うさを魔物の言葉が突き崩したのだ。
 声を殺して泣く少年の頭をふわりと撫で、
 頬を伝う雫を、リリムはそっと、優しく啄む。
 唇は止まらず、王子の顔や首筋にキスの雨が降り注ぐ。
「何をしているのです!?」
 突然の事態に硬直していたミリシュフィーンは、混乱のなか叫んだ。
「ん? キス」
「いけません! キスは愛する者同士が行う、神聖なものなんです!」
「教会の教えかい? 残念、私は魔物だからね、関係ないのさ」
「でもっ、でも僕は……呪われてるから。あなたに累が及びでもしたら」
 継母が言っていたのだ、『目が見えないのは、呪われているからだ』と。『王家の面汚し』とも『親不孝者』とも言われた。
 一人でいる時、耳に甦る。夢の中で、何度も何度も繰り返される。記憶に刻まれ、頭に焼き付いて消えない、それこそ『呪い』の言葉。
「呪い? 神の呪いなど、魔物の我が身には祝福と同義。ワインのように飲み干してやろう!」
 高らかな宣言は楽しげでさえあり、呪いという名の言葉の城壁を乗り越えて、胸の奥まで突き抜けた。
 ミリシュフィーンは混乱していた。否、焦っていた。危機感をかき立てられているのに、どうしてだか胸が熱くなる。だが、己の混乱は差し置いて、とにかく恩人であるアストライアを思い止まらせなければと、抗弁する。
「で、でも!」
「うるさい口だ」
 王子の唇が、同じ物で塞がれる。
 啄むようなキスから、一転、貪るような深いものへと。
 差し込まれた舌に驚き、思わず歯を立ててしまいそうになるのをとどまり。結果、蹂躙者の侵入を許すはめになった。
 熱い。淫らな熱のかたまりが、口内を我が物顔で這い回る。
 ざらつく舌の表側で口蓋をひと舐めされれば、耐えがたいくすぐったさが頭蓋まで届くようで、ゾワリゾワリと頭を犯す。
 舌と舌が触れあい、ミリシュフィーンが反射的に逃げれば、アストライアが猟犬のしつこさで追いかけ回し、捕らえた獲物を蛇の執念でねちねちと嘗め回し、絡め取る。
 人生で初めての、そしてあまりに強烈な快感に、首を振って逃れようとするが、魔物の両手は頬を挟み、決して逃しはしない。
 組み敷かれた少年はとっさに手を突き出し――その双丘は服越しだというのにあまりにも柔らかく、大きく。触れた側である少年が、掌を襲った弾力の罠に迎え撃たれ、思わず腰を跳ねさせてしまう。

「ん♥ んふふ♪」
 アストライアもまた、初めての快楽を楽しんでいた。
 彼女はリリムでありサキュバスなのだが、未だ男と交わったことがなかった。それどころか、肉体的接触それ自体が生まれて初めての経験だった。
 つまり、ファーストキスを捧げた相手が、ミリシュフィーンということになる。
 この純粋で、無垢で、心優しい男の子を、白雪を汚すが如く今から蹂躙できるのかと思うと、彼女の下腹部が熱くなる。
 お互いの初めて同士を捧げ合うのだと想像すると、胸が弾む。
 これは運命だ。
(そう、運命なのだ。私の物語は動きだした。この子にとっては運の尽きだが。――地獄に堕としてやろう……、快楽という名の、ね)

 ピチャピチャという、あまりにも背徳的な水音が部屋に響き、その音に紛れながら、二人の息づかいが伴奏を務める。
 いっぽうは追い詰められる側。悲鳴じみた嬌声をくぐもらせ、一方的に快楽を送り込まれる。
 もういっぽうは略奪者。唾液の甘さ、立ち上る体香、封じ込められた哀願の声、それらの全てを貪り。身をよじりながら快楽に耐えようと、彼女の下で健気にこらえている少年の、その手が知らずに探し当て、すがるように掴んだのはアストライアの衣服で。
 それだから、ますますリリムを悦ばせ、昂らせてしまう。

 しかし、どこかおかしい。

 かなり手加減して責めているとは言え、少年に堕ちる気配がない。下位の魔物ならまだしも、リリム相手にありえない。
 その時、アストライアは奇妙なものを見付けた。
 少年の服の下、胸元にあるペンダントを。
 両手はミリシュフィーンの頬を挟むのに使っている。なので、鞭のような尾を器用に使い、ペンダントを引き出す。
 横目で見てみれば、それは魔除けのお守りだった。高位の司祭が力を込めたものらしく、魔に抗する力が秘められている。しかも、隠蔽の術も施されており、そのせいで今まで気付かなかったようだ。……一番の理由は、興味の対象に夢中で、色々と疎かになっていただけなのだが。
 だがこれならば、少年が呆気なく気を遣る心配はないだろうし、もう少し激しくしても構うまい。
 細められた目は肉食獣のそれに似て。赤い眼に情欲の炎が燃える。

「んんっ!?」
 ミリシュフィーンはたまらず悲鳴を上げた。
 口内で、舌の動きが活発化したのだ。縦横無尽にのたくり、執拗に口蓋を擦り上げ、舌を吸い、唾液を流し込んでくる。
 酒にも似た甘く芳醇な液体を嚥下すれば、体はカッと熱くなり、頭はボーッと霞がかかる。
 空気を求め、仔犬のようにふんふんと鼻を鳴らしてしまえば、それが陵辱者を興奮させるようで、ますます舌が荒れ狂う。
 まるで性交のように、魔物の舌が抜き差しを始める。
 あちこちを、突かれ、擦られ、蹂躙され。魔除けのペンダントが、儚い光を精一杯に灯し、暴力的な刺激に耐える力を、持ち主に与えようとする。
 が、そんなものは焼け石に水も同然だった。
「んっ、んっ、んっ、んぅーーーっ!」
 射精こそしなかったものの、ついに気を遣ってしまった少年は、ぐったりと体を弛緩させてしまった。

 ちゅぱぁっ♪

 最後にひと啜りし、舌が引き抜かれ、互いの唇が離れる。
 淫らな唾液が未練がましく糸を引き、途中でプツリと切れる。
 ハアハアと荒い息をつくミリシュフィーン。頬は紅潮し、汗ばむ額に髪が張り付いている。力なく投げ出された手足と、はだけた胸元。まるで、暴漢に汚された少女の様相だ。
「ねえ、それって私を誘ってるのかな? 本当に悪い子なんだねぇ♥」
 昂るリリムは歯止めが利かない。
 都合の良い解釈をすると、獲物の上で体位を逆さにし、枕元に尻を向け、顔は少年の下腹部へと向ける。
 少年が放心状態であるのを良い事に、手早くズボンと下着を下ろし、
「いただきまぁ〜す♥」
 パクリ♪
 王子の陰茎は、リリムの口内に呑み込まれてしまった。
「っくぅっ? わっ、うわわっ、ダメーーーっっっ!?」
 己の下半身で何が起こったのかを察した少年は、悲鳴と拒絶の入り交じった叫声を上げ、身をよじって逃げようとする。
 が、体に力が入らず、思うように動けない。
「んふふふっ♥」
 無力を嘲笑うように、ネットリと絡みつく舌の動きは止むことなく。むしろ、少年の懇願はムードを盛り上げるスパイスにしかならない。
 唇による緩やかなピストン運動が行われ、チュポ、チュポ、と音が鳴る。
 そして、
 ズルリっ。
「ふわわぁっ!?」
 ひときわ唇に力が込められ、深々と呑み込まれれば、皮かむりの包茎おちんちんは、文字通り一皮むけてしまい、初々しいピンクの亀頭をさらけ出してしまう。
 魔力が働き、痛みは感じなかった。しかも、絶世の美女による口淫奉仕で包茎を卒業したのだ。世の少年達が聞けば、嫉妬と羨望で憤死しかねない。……相手がリリムでなければ、最高の果報者と羨まれただろう。
 いったん口から陰茎を出し、今まさに自らの口で行った成果を、魔物はしげしげと見つめる。
「ああ……これが、私のミリシュフィーンのおちんちん……」
 感極まった声が漏れる。
 華奢な見た目の通り、こちらも大きいとはいえない。が、魔物の……それも、リリムである彼女からすれば、一物の大小など些細な問題だ。お互いの快楽を引き出す術は、一から十まで心得ているし、魔力があればどうとでもなる。
 それよりも、この初物が――精通すらまだの初々しいコレが、今から自分の中で精を漏らすのかと思うと……。

 コクリ。

 白いのどが鳴った。
 舌を伸ばし、鈴口をチロリと舐める。
「きゃうんっ!?」
 そんなことをされれば堪ったものではない。ただでさえ視覚以外の感覚が鋭いというのに、無防備を晒す最も敏感な部分を舐められたのだ。刺激が強すぎる。
「ダメダメダメっ、汚いからダメ! わわぁっ?」
 制止の声が、途中で悲鳴に変わる。
 耳をくすぐる少年の悲鳴は、アストライアの嗜虐心を煽るばかり。もっともっと聞かせなさいとばかりに、動きが大胆になる。
 舌先で鈴口をほじくるようにし、亀頭の周りをクルクルと舐め、陰茎を頬張りジュボジュボと口内を出し入れし、唇の輪っかでカリ首を引っかけ気味に扱き上げる。

 チロチロと、
 ピチャピチャと、
 ジュボジュボと、

 次第に奉仕は熱が入り、もっと時間をかけて楽しむつもりが、のめり込んで見境がなくなっていく。
「ん♥ ん♥ ん♥ ん♥」
 ジュボッ♪ ジュボッ♪ ジュボッ♪ ジュボッ♪

 少年は、尿意に似た感覚に気付き、焦って声を上げる。
「ダメっ、本当にダメ! 離してっ離してっはな、っくぅ!?」
 ビュビューーーッ!
「っ、んふ♥」
 放たれた精に一瞬だけ驚いたリリムだったが、魔物の順応性を発揮し、白く濃厚な甘露を、コクリ、コクリと飲み下す。
 ピュッ、ピュッ、と数度の射精が美姫の口内で繰り返され。
 口内を打ち付けられる度、アストライアは陶酔境へと誘われ、夢心地にのどを鳴らしながら股間を濡らしてしまうのだった――。



 出された分は全て飲み干したのち。
 振り返ったアストライアが見たものは、上気した頬を涙で濡らす、ミリシュフィーンの姿だった。
 これでは本当に、強姦された後だ。いや、実際は強姦そのものだったと言える。
「どうして泣くんだい?」
 顔を近付け、彼女が問えば、
「汚いのに……ごめんなさい……」
 陰部を舐めさせ、あまつさえ不浄を飲ませてしまった。その事実が、少年の良心を責め苛む。
 そして、それを聞いたリリムの方は。
「なんだ、そんなことか。とっても美味しかったよ♥」
 艶然と微笑んだのであった。
 表情こそ見えないが、言葉が帯びる色合いと雰囲気は伝わる。『美味しかった』と告げられて、少年の理解は追い付かず、ただただ戸惑うばかり。
 そんな様子には頓着せず、
「さて。それじゃあメインディッシュを頂くとするかな」
 今なおそそり立つ陰茎にまたがり、自らの秘部に宛がう。
「これ以上、何を」
「私の処女を、君にあげよう。その代わり、君の童貞は私のものだ」
「?」
 この言葉は、奥手の少年には伝わらなかったようだ。
「夫婦の契りを結ぶのさ。いわゆる子作りさ」
「……えっ?」
 言われた内容を、少年が理解した頃には手遅れだった。

 ズプゥ♪

「――っ、ほぅら♥ ふふ♪ 君のおちんちんが、私のおまんまんに入ったぞ?」
 あまりにもあからさまで、それ以上に下品な台詞だった。神聖か魔性の違いはさておき、幻想的かつ侵しがたい雰囲気の美女だというのに、台無しだ。
 そして、言葉をかけられた少年の方は、それどころではなかった。
「――――――ッッッ!?」
 強すぎる刺激に、声も出ない。
 陰茎は溶け落ち、腰は砕け、体の中心を稲妻が貫いた――本気でそう思うほど、狂暴なまでの快感。
 無意識に、震える手を突き出す。
 快楽の魔物を押しのけたかったのか。はたまた、助けを求めてすがろうとしたのか。
 その手が目指す先は、たまたまアストライアの太腿あたりだった。
「や、これは気付かずに済まないね。おっぱいといい、ふとももといい、男ならば思うさま揉みしだき撫で回したいものだ。私だって君相手ならそうしたい。いいぞ」

 ――アストライアの纏う黒衣が、風に散らされた雨雲のように、朧に消え。晴れた夜空に月が輝く如く、白い裸身が現れた。

 大きく形の良い胸と、その頂点にツンと実る、薄桃に色付くチェリー。『わたしを食べて』と男を誘う。
 驚くほどほっそりしたウエストは、腕を回し抱き寄せずにはおれない。
 くびれから、なだらかな曲線を描いて張り出した腰は、子を孕むための能力を高らかに謳い。
 上向きに膨らむ尻肉は、果汁に満ちた白桃のように、歯を立て味わって欲しいとねだる。
 そして、肉付きが良いにもかかわらず、長さと形の良さで見事な脚線美を描く下肢の、その最も熟れた部分へと――白い手が、震える手を取り、優しく誘う。

 だが、それは明らかな罠だった。

 その太腿は、しっとりと潤い、掌が吸い付くようで。触れた部分から快楽を送り込み、毒のように犯す。
 それが、最後の一押しだった。
「あうぅぅぅーーーーーーッッッ!!?」
 ドピュルルルゥーーー♪
 先にも増して大量の精液が迸り、リリムの膣を満たす。
「んんっ♥ あはぁ♪ 出てる出てる! ごちそういっぱぁい♥」
 恍惚の魔物は熱い息をつき、胎で弾ける精の感覚を、粘膜にしみる味を、隙間なく広がる匂いを、まるで酒を味わうように楽しむ。

 ビュー、ビュー、ビュッ、ビュッ、ビュ……。

 お互い、射精が止むまで身動きできない。
 そして、最後の一滴まで出し終わってなお、二人に動きはなかった。
 少年は、ハァハァと荒い息をつき、忘我を彷徨う。
 魔物は、目を閉じてウットリと、余韻を楽しむ。

 しばらくして。
「精液、いーっぱい出したな、フフ。これは、赤ちゃんができるかもしれんな」
「……えっ?」
 その言葉に、ミリシュフィーンの頭が働き始める。
 ほとんど性教育といったものを受けていない王子は、そんな知識を教えてくれる友人もおらず。妊娠の詳しい仕組みは知らないまでも、『男女が交わって子を生す』ということは知っていた。
 これは、その『交わり』ではないのか? そう思い至り、顔から血の気が引く。
「赤ちゃんダメ! ぬいてっ、早くぬいてください!!」
 焦って叫ぶが、とうの魔物はなんのその。
「抜く? 何故だい?」
「なぜって……! ふ、夫婦の誓いを教会で行い、神に認めて頂かなければ、交わってはならないのです!」
 力説しながら身をよじるが。
「くぅんっ?」
 未だに魔物の胎内に収められた陰茎が、ほんの少し膣壁とこすれるたびに、火花が散るような快感が生まれ、身動きがとれない。
 身もだえする少年を見下ろしながら、赤い目が愉悦に細められる。
「あん♪ 出したばかりなのに、もう動きたいのかい? せっかちだなぁ。いいよ、私のまんまんで、いーっぱいピュッピュしなさい♥」
 アストライアの膣内が、複雑に蠕動運動を始める。少年の陰茎にねっとりと絡みつき、ヒダの一枚一枚で丁寧に擦り立てる。
「んんっ!? ふわっ、ふわわあぁーーーん!!」
 ビュルルゥーーー!♪
 ただそれだけで、またもや射精に導かれてしまう。
「うふふ♥ 気持ちが良いみたいだね? いっぱいいっぱいご奉仕してあげるからね? 楽しむと良い♪」
「ダメーーーーーーーーーッッッ!!」
 悲鳴を尻目に、ピストン運動が開始される。
 ズルズルと腰を上げれば、しっかりと食いしばった膣の入り口が陰茎を絞り上げ、ぬめぬめと絡みつくヒダと、ザラザラと擦り立てる膣壁とが、剥かれて間も無い亀頭とカリ首と竿を責め立てる。
「ひいぃぃぃんっ」
 ヌプヌプと腰を落とせば再び地獄で、愛液を滴らせながら待ち構える拷問器具達が、未成熟な陰茎へと一斉に襲いかかる。
 快楽に耐えかねて思わず力を入れた手は、淫魔の太腿を握り締めていた事実を、掌に伝わる快感で思い知らせてくる。
「でちゃうぅっ!」
 ビュビュビューーーッと、また射精。

 体が弱く、体力に恵まれない王子が、何故こうも連続射精が可能かと言えば、まさにリリムの魔力によるものだ。魔物は男の精を絞る代わりに、魔力を注ぐ。その魔力は体力へと変換され、幾度もの射精を可能とさせる。
 アストライアにとっては天国で、ミリシュフィーンからすれば地獄だ。

「ああっ、なんて可愛らしいんだ♥ 君は本当に、私を誘惑するのが上手だな!」
 身の下であえぐ少年を見て、体で感じて、リリムは感極まる。
 背の翼がバサリと広げられ、獲物を狙う猛禽を思わせる。
「もっともっと、一つになろう!」
 魔力があふれ、王子の衣服を消し去る。
 華奢な裸身にガバッと抱きつき、素肌同士を密着させれば、
「っきゃあぁぁぁぁぁぁんっ!?」
 全身を襲う、すべすべとした、もちもちとした、麻薬に満たされた風呂にでも浸かったような快楽に、たまらず少女のような悲鳴が上がる。
 当然、
 ビュルビュルビュルゥーーーッ!
 気持ちの良い肉壺の中に、精を放ってしまう。
「あ、あかっ、赤ちゃんできちゃうからぬいてぇ!」
「どうして? 赤ちゃん作ればいいだろう? 君となら、何人でも作ってあげるさ」
「だめだめっ、神様におこられちゃうからだめぇ!」
「それなら大丈夫。神なら、母様達との戦争ごっこに大忙しで、いちいち見てないよ」
 上から少年に抱きつき、羽ごと覆い被さりながら、ゆるゆると腰を揺する。
「くぅぅっ、うごかないでぇ……」
「またピュッピュする? うふふ、ハメハメするの気持ちいいね♥?」
「くうぅっ」
「おや、一生懸命がまんして、可愛いなぁ。ほぅら、おっぱいだぞ〜♪」
「んぷ!?」
 大きく柔らかな双丘を押し付け、淫らな脂肪の弾力で少年の顔を挟む。
 顔を包み込む感触もさることながら、鼻孔をくすぐり肺腑を満たす甘い体香が、どうしようもなく思考を溶かし、下半身をみなぎらせる。
 同時に、鞭のようにしなやかな尻尾がうねり、ミリシュフィーンの足に巻き付き、愛撫する。
 ビュッ、ビュッ、ビューッ!
「また膣内射精しちゃったね? どうだい、気持ちいいだろう? 世界で最高品質の、君専用の精液便所の使い心地は、いかがかな?」
「んんぅっ」
 背徳的な質問をなげかけるが、問われた方は白い肉塊に埋もれて、返事もままならない。
「ああ、ごめんごめん」
 アストライアは、金の髪に口付けをし、少しだけ身を起こして乳房から解放してやる。
 少年の顔は蕩けきっており、潤んだ睫毛は怯える小鳥のように震えている。
「もう……もうゆるしてぇ……。もうぬいてください」
「どうして?」
 まるで動物の親がそうするように、涙の跡や額の汗を舐め取ってやりながら、魔物が尋ねる。
「だって、愛する者同士じゃないと、交わったらダメなんです」
 魔物は言った。
「――物語のように。一人の乙女が英雄や王子様に恋するように、魔物の私が人間を愛しては、いけないかい?」
「え……?」
 あまりにも予想外の言葉は、謎かけじみて理解が及ばない。
 少年の混乱をよそに、状況は推移する。
「『許して』と言ったね。ではゲームをしよう。このまま騎乗位で動くから、たった十往復。おちんちんがおまんまんの中で行ったり来たりを十回だ。その間、君の射精が二回以下なら君の勝ち。許してあげよう。けれど、三回以上の射精なら……そうだなぁ、君の大切な大切なあの女騎士に、とっても酷いことしちゃおうかな?」
「え? え?」
「では、開始」
 スルズルズルゥーーーーーー♪
 急展開に、王子は事態の把握が追い付かない。そこへ、陰茎を根元から扱き上げる感触が襲い、目の奥で火花が散り、腰がガクガクと震える。
「ま、待ってくださ――」
「待たない♪」
 ズブズブズブゥーーーーーー♪
 ぬるぬるのヒダがしつこく絡みつき、ザラザラとした部位が亀頭を擦りイジメ抜く。
 そして、今までは感じなかったコリコリとしたものが、奥まで辿り着いた亀頭にコツン♪ と当たり、チュッチュッ♥ と愛おしげに吸い付いてくる。
「わ、わ、わ、わわっ、んっくぅーーーんっ!」
 これまでで最高の刺激だった。勿論、耐えられるはずもなく。
 ビュビュビュビューーーッッッ♪
 呆気なく精を漏らしてしまう。
 だがその射精感も、これまでの快楽とは桁違いだ。何故なら、
 チュウ♥ チュウ♥ チュウ♥
 膣の奥で、すぼめた口のようなものが、甲斐甲斐しく鈴口を吸い上げ、精液を飲んでいるのだ。
「なにこれぇっ、わわわ、ダメダメダメ、吸っちゃダメーーーぇっ!」
 腰の奥から体の中身を全部吸い取られる錯覚に襲われる。
「ふふ、それは私の子宮だよ。わかるかい? 赤ちゃんを作り育てる部屋のことさ。『君との赤ちゃん欲しいよう♥』って、奥の方から降りてきたんだね。子宮に直接精液ピュッピュしちゃったから、きっと子作り成功だね♪」
「夫婦じゃないのに、赤ちゃんダメーーー!」
「さあ、動くよ? あと二回ピュッピュしたら……解ってるね?」
「くぅんっ」
 宣告に、少年は慌てて歯を食いしばり、耐える姿勢を見せる。握り締めたシーツに皺が寄り、絶望的な勝負へ悲壮な決意を固めて挑む。――そんな仕草が、いちいちアストライアを悦ばせるとも知らずに。
「二回目のハメハメピストンだよ〜。そぉれ、擦っちゃうぞー♪」
 扇情的な腰が持ち上げられれば、節操無しの淫靡なお肉が総動員で蠢き、陰茎めがけて襲いかかる。淫らな肉輪から露わになるのは、泣きはらしたように濡れそぼつ、純潔を奪われたばかりのおちんちん。
 肉の輪でカリ首を逆撫でされたあたりで、寒気に似た耐えがたい快感に襲われるが、健気な王子はなんとかこらえた。
「今度はおまんまんで、君の肉棒をモグモグしちゃうぞ〜♪」
 ゆるゆると腰が落ち、ヌプリヌプリと呑み込まれる陰茎。
 再び肉の牢獄に囚われ、無慈悲な拷問道具が責め立てる。そして最後に、
 チュッ♥ チュッ♥
 飢えたひな鳥がさっきのだけでは足らないとばかり、『もっともっと』と淫らなキスでエサをねだる。
「す、吸わないでぇっ」
 広いベッドと凶悪な淫魔とに挟まれ、逃げ場のない少年はイヤイヤと首を振り、大切な少女のために意思の力を振り絞って耐える。
「ふふ、一往復を頑張ってがまんしたね。とっても偉いから、ご褒美をあげよう」
「んんっ!?」
 突然のキス。
 唇を割って入り、チュルチュルと舌を吸い出し、はむはむと甘噛みする。
 ビュビューーーッ!
 吐き出された精液を、待ってましたとばかりに子宮口が吸い付き、
 上のお口でチュパチュパ♥ とキスが行われ、
 下のお口でもチュッ♥ チュッ♥ とキスの嵐。
 しばらく淫らな音楽が部屋に鳴り響き、

 チュパァ♥

 と、破廉恥な音とともに、上の口だけは獲物を解放した。
 空気を求め、必死に息を整える少年の上で、淫魔は上機嫌に尻尾をユラユラ揺らしながら、金の髪を愛おしげに撫でる。
「ず、ずるい……卑怯です」
 開口一番、恨めしげな言葉が飛び出すが、
「さあ? 何のことだか判らないね」
 厚顔無恥の魔物は、しらばっくれる。
「それより、あと一回しか射精できないよ? それにくらべて、私はあと八回もハメハメできるが、耐えられるかな?」
 ミリシュフィーンは答えない。ただ、両掌で己の口を塞ぎ、キスの不意打ちから守る体勢だ。
 そのあまりに可愛らしい抵抗に、アストライアの加虐心は否応なくそそられる。
 さあ、最後はどうやって可愛がってあげようかと舌舐めずりしていると、

 ガリッ。

 リリムの鋭敏な五感が、不穏な音を察知する。直後、漂う微かな血の臭い。
 慌てて少年の掌を確かめれば、強く噛んだ親指から血が滲んでいた。
「なんてことをするのっ、この子は!?」
 その傷ついた指を口に含み、魔力を流す。するとたちまち傷は癒え、血を舐め取れば怪我の痕跡は消え去っていた。
「どうして、こんなことを?」
「……」
 尋ねても、少年は口を開かない。
 だが、答えがなくともアストライアには解る。あの女騎士を――ルーナサウラ・チェグィーという少女を守る為に、耐える力を欲したのだろう。
 胸の内に、もやもやと黒いものが生まれる。
 無性に許せない。眼前の少年を、滅茶苦茶にしてしまいたくなる。
「こんど自分の体を傷付けたら、すぐさまあの騎士の所に行くから」
「っ? サーラにひどいことしないで!」
「あの子の心配より、自分の心配をなさい」



 それからは、徹底的な陵辱劇だった。

 パンパンパンパン♪
 肉と肉がぶつかる、淫らな音。
 パンパンパンパン♪
 下腹部同士が奏でる、卑猥極まりないリズム。
「らめ、らめぇ。ゆりゅしてぇ……」
「だめ、許さない」

 あれから数時間。
 八回なんて、遙か彼方に過ぎ去った。
 射精も、いったい幾度繰り返しただろう。
 魔除けのペンダントは、とうの昔に輝きを失っている。
 部屋に漂う性臭はあまりに濃厚で、もし踏みいる者があれば、清廉の士や高潔な聖職者だろうと、ひと嗅ぎで精を漏らしてしまうだろう。

 少年の陰茎は、リリムの膣内から一度たりとて抜かれることはなく。
 魔力で操られた小さな手は、大きな胸を強制的に揉まされており、掌からあふれる肉塊をむにゅりむにゅりとこね回し、小粒の乳首をクリクリといじり、キュッとつまむ。
「うん♥」
 淫魔は悦び、お返しと耳たぶを甘噛みする。
「反省した?」
 耳をしゃぶり、穴へ舌をねじ込みながら問えば、組み敷かれた少年はガクガクと身を震わせながら、コクコクと頷く。
「そう。なら、許してあげよう。私のおっぱいを吸いなさい。赤ちゃんみたく、一生懸命に。満足できたら、終わりにしてあげる。わかった?」
「ふぁい」
 なけなしの体力を振り絞り、少年は胸へと吸い付く。
 口内に、ミルクのような甘い香りが広がる。母乳が出ている訳でもないのに。
 いじられて硬くしこったサクランボは、淫らな自己主張を唇や舌に伝えてくる。

 ちゅう♥ ちゅう♥ ちゅう♥

 赤ん坊のように、一心不乱に吸う少年を、淫魔は愛おしげに抱きしめ、髪を梳き、頬を撫でる。
 そして、片時もやまない腰の動き。今は激しさは鳴りを潜め、ゆるゆるとあやすように肉棒を擦り上げ撫で下ろす。
 尻尾がゆぅらゆぅらと穏やかに揺れ、少年の足をさわさわと撫で回す。
 ミリシュフィーンも、随分と快感になれたようだ。――感覚が麻痺したともいう。

「噛みなさい」
 はむはむと、言われた通りに唇で挟む。
「歯を立てなさい。魔物の体は丈夫だから、全力で噛んでも傷つかないから」
 少しの逡巡ののち、

 くにぃ♪

「んん♥」
 弾力の塊が、淫猥な歯ごたえを伝え、
 胸と直結する子宮は、受けた快感を膣の動きに変換する。
「んっ!?」
 みっちりと周囲を覆う膣壁が、キュウキュウと陰茎を締め上げ、射精感を抑えることなど叶わなかった。

 ビュービュービュビュビューーーッ!

 もう数え切れないほど行った膣内射精が開始され、

 ちゅう♥ ちゅう♥ ちゅう♥

 子宮口が嬉しげにキスをする。



 射精が終わり、ぐったりとベッドに身を沈めるミリシュフィーンを、アストライアは一度抱きしめ、身を起こす。
「おねがいだから、サーラに……サーラに酷いことしないで」
 起き上がることすら出来ない少年は、懇願の声を上げるが、
「ふふ、ダーメ。あの子がどんな姿に成り果てるのか、『君自身の目』で確かめなさい」
 無慈悲な言葉が告げられた瞬間、少年の意識は魔術の力で眠りに落ちた――。
16/04/22 20:23更新 / 赤いツバメと、緑の淑女。
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