Happy ever after stories 〜おっぱい人魚な幼馴染と紡ぐそれからの日々〜
<まえがき、および本作の読み方について> ヒトの世には、無数の悲劇が転がっている。 愛し合う心優しき男女が、明日を創るための努力が、心無き者達に蹂躙され、ありふれた不運のひとつとして世界の陰で消えてゆく…これほど理不尽なことはない。 主神は遍く世界を見守り、悪しき者に罰を、善き者には救いを与えると教団は言う。 だが実際は、悪事を巧妙に隠し、涼しげな顔で町を歩く悪党がいる一方で、その煽りを受けた善き人々は、涙を流し耐えることしかできない。その様は、まさしく悲劇だ。 しかしある時、そんな悲劇の仕組みを打ち破る存在が現れた。 ヒトを超えた強さと美しさを持ち、されどヒトの愛を知る、魔物娘である。 だからといって、勇者や英雄として扱うことを彼女達は望まないだろうが…彼女達に救われた者達の人生はみな、淫らに染まりながらも、強く、彼女達に感謝するかのごとく輝いているのだ。 ここに綴る男女の物語は、理不尽な悲劇が打ち破られた『その後』の物語。 魔物娘達が二人に降りかかった残酷な筋書きを終わらせ、彼らを本来辿り着くべきハッピーエンドに送り届けてくれたその後の、長い、永いエピローグだ。 主人公たる二人もまた、勇者や英雄のように歴史に刻まれる存在ではない。 だが、多くの経験を経て、魔物娘なら誰もが憧れるような理想の夫婦となった彼らの姿に私は感銘を受け、その幸福に爛れた日々の内いくつかを、本人達の許可を得て文章として残すことにした。 二人の笑顔が世界の誰かの笑顔の種になったなら、二人の営みが誰かの夜を燃え上がらせたのなら、それが、私がこの物語を二人から借りて届けた意味だ。 そういったわけで、歴史や文化、あるいは人生の教訓について語るのがこの物語の本分ではない。ひとつなぎの長大な物語ではなく、手軽に、どこから読んでも楽しめるような短編集として見てもらいたいと考えている。 よって、あえて時系列に沿って話を並べることはせず、過去へ未来へ気の向くままに書き連ねてゆくつもりだ。 だが当然、時が経てば、二人を取り巻く環境も移り変わってゆく。 各話ごとの状況の違いに読者の方々が混乱してしまわないように、また、いちいち説明を入れるのを省かせていただくために、以下の通り時代を大まかに分けて予め説明し、どの時代の内のエピソードかという事を各話の題名に付記しておくことにする。 【Little After】 二人がハッピーエンドを迎えて間もない恋人時代であり、学生時代。 【Middle After】 晴れて卒業し、正式に結婚した二人が、より見聞を広めるため、世界を旅して回っていた時代。やがて子供ができ、故郷に腰を落ち着けることとなる。 【Big After】 故郷に帰った二人が、かたや教師、かたや自警団員として働きながら、温かい家庭を築き上げ暮らす時代。家族はさらに増えていき、そして… 以上のことを踏まえていただければ、どの話から読んでも楽しめるはずだ。 ただし、最初のエピソードだけは初めに読んでいただきたい。二人と周りの人々がどのような人物で、どういう経緯を辿り結ばれたかといったことが分かるだろう。 非常に長く、また、彼らが経験した苦しみの片鱗も知ることになるが…前述の通りハッピーエンドで終わるのでご安心を。そしてそこからが、この物語の本番なのだ。 ずいぶんと前置きが長くなってしまったが…最後に、主人公となった二人、この物語を執筆するよう後押ししてくれた学長、皆の共通の友人兼私の上司兼ハッピーエンドの功労者でもある自由な王女様、この物語に目を留めてくれた読者の皆様方…そして何よりも、怠惰で粗忽者の私をいつも支えてくれ、二人の物語に出会うきっかけをもくれた愛する妻…私だけの人魚姫に、紙面を借りて心からの感謝を贈りたい。 それでは、いつ終わるとも知れないが、お楽しみいただければ幸いである。 魔王歴 某年 某月 著者K 海の中より愛を込めて |
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