連載小説
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【Big After】いつだって欲しいのは

 その日はグレゴリーとルフィアの、二百と数十年目の結婚記念日であった。

「ん〜……おはよ、あなた…」
「おはよう、ルフィア。
 いつも寝顔が可愛くて好きだよ」
「…あ! 先に言われちゃった…
 でも、約束はきっちり守ってくれるのが好き♪」

 魔物娘とその夫の愛情は、何歳になろうと飽きず、色褪せず、それどころか新婚当初から、際限なく強まり続ける一方である。読者の方々も覚えがある事だろう。
 ゆえに、どんな魔物娘の夫婦も、お互いの誕生日や結婚記念日、あるいは初デートに出かけた日など『特別な日』の数々は、もれなく心を込めて祝うのだ。

「それにしても、本当にこれでよかったのか?
 確かに面白いアイデアだし、その発想力は好きだけど…」
「いいの♪ べつに今さら、欲しいものって言っても思いつかないし。
 …あ、子供とかは別だけど。
 でも、いつも気にかけてくれるのは大好きだよ♪」

 人魚とその夫の人生は、長い。
 ふつうの魔物娘夫婦とは、とうてい比べ物にならないほどに。
 無論ふつうの魔物娘夫婦も、そのほとんどは人魚の血を口にしていることだろうが…
兎も角、長い時を生きた魔物娘夫婦は、どうしても物欲は薄くなりがちだ。
 なにしろ最も欲しいものは、とうの昔に手に入っているのだから。
 そのため、こうした記念日を祝う時は、モノではなく、思い出に残るような出来事をもってお祝いとするのが一般的である。

「もうお互い、見たり聞いたりしてない所なんて無いけど…やっぱり面と向かって言うと、どうしても恥ずかしいな。
 たまにやり返される事も、それはそれで好きだけど」
「うふふ…私だって、さんざん恥ずかしい事してきたんだから、いいでしょ?
 私の恥ずかしがってる所を見るたび興奮してくれるのが好きだから、私もこうなっちゃったんだよ?」

 ここまでのやや不自然なやり取りで、同じような過ごし方をしている多くの読者様方は察することができただろう。
 二人は、今年の結婚記念日のお祝いとして、しばらく『お互いの好きな所を交互に言い合いながら過ごす』というルールを設けたのだった。

「そうだよな。
 なにせ…こんなエロい、オレの大好きな体になってくれたんだから♪」

 グレゴリーはルフィアの背後に回り、ホルスタウロスに匹敵するほどの巨大な乳房に指を埋めながら、掲げるように持ち上げる。
 二百年以上にわたってグレゴリーの愛情と性欲を一身に受け続け、幾人もの子供を産み育てたルフィアの身体は、いまや魔物娘として円熟の域に達していた。
 むろん、老いたというわけではない。
 愛する者をより欲情させ、より多くの精を搾り取るように、魔物娘は肉体が変化していく…すなわち現在のルフィアは、グレゴリーの理想そのものの身体として、ほとんど『完成』されているのだ。
 そしてそれは、グレゴリーも同じ。 二人にとってもはや、心情だけでなく美的感覚としても、この世に伴侶より魅力的な異性などは存在しない。

「あンっ♪ …んもう、そうだよ。
 朝からこんなに元気で、えっちで…大好きッ♪」

 首を回し、グレゴリーと舌を絡める。
 このままセックスを始めてしまいたい所だったが…惜しくも今日は平日。日々の務めを果たさねばならない。

「さ、今日はどうする? 胸?口?それとも手?」
「じゃあ、口で。 ゆうべは1回しかできなかったしな。
 お前の舌も大好きなんだけど、つい胸とかに行っちゃうんだよな…」
「はーい。…ふふ、昨夜の事、全部覚えてくれてるんだよね…好き♪」

 そのため、グッとこらえて、朝勃ち処理は手早く済ませなければならないのだ。
 言うまでもないが、しないという選択肢は存在しない。

「ん〜、あもっ…んぐ、ぢゅぅっ…」
「っ、その舌使い…最高だよ、ルフィア…」
「んっんんっ、えっく、ぉ、えくえく、ひへ、ふひぃ…♪」
「何言ってるのかわか……いや、なんとなく分かるな…
 そういう分かりやすい所も好きだよ、昔から…ぅ、出る…!」
「んむっ……んふぅ〜♪……ごくっ。
 …はぁ、濃くて甘くてたっぷりの、あなたの朝精…大好きだよ♪」
「そりゃどうも…」
『パパ、ママ、ごはん出来たよー!』
「はーい♪ ちょうど朝処理終わったから、今行くねー!」

 結婚記念日を祝ってくれるのは、お互いだけではない。二人の子供達もだ。
 すでに何人もの巣立ちを見送り、孫や曾孫もいるが、まだまだ老いの気配さえ見えない二人の愛の結晶は、いまもなお新しく産まれ続けている。
 そして皆、二人の記念日には贈り物をしたり、家事を代わりにやるなどして祝福してくれる。 それらの思い出も、もれなく全て、二人の心に刻まれていた。

「ど、どうだった?朝ごはん…」
「うん、美味い! しっかり出来てるじゃないか」
「見栄えもいい感じ!がんばったね♪」
「えへへ…ずっとママの見て覚えてたから。
 お弁当もあるよ!食べてね!」

「いやー、いい子に育てたな、ルフィア。流石の教育力だ」
「あなたの背中を見てたからだよぉ。
 あなたほどカッコよくて憧れちゃう人、ほかにいないんだから♪」

 子を愛さない魔物娘夫婦は、誇張なく本当に、ただの一人も存在しないという。
 ルフィアとグレゴリーも当然ながら、これまで産んだ子供すべてに分け隔てなく愛情を注ぎ続け、子供達もまた、二人を心から愛していた。

「いいなぁ…あたしも早くおムコさん欲しい…」
「きっと見つかるよ。そのためにも、今日も頑張っていこうね♪」
「はーい…じゃ、行ってきます。パパ♪」
「おう、いってらっしゃい。オレも仕事頑張るよ」
「あ、そうそう。 毎日見送ってくれるの、大好きだよ♪」
「オレも、仕事に行く時のルフィアは好きだよ。ちょっとキリッとしててさ」

 今日もまた、ルフィアと娘は教師と生徒として学園に、グレゴリーは自警団長として街の事務所に出かける。
 夫婦の交わりはすべてに優先する魔物娘の社会においては、急に休んでも全く問題のない社会制度が整えられているのだが…それにもかかわらず、長い時を生きても、ほとんど休まず仕事に出かけるこの夫婦の勤勉さは、彼らに近しいあらゆる人々から尊敬され、信頼され、愛される美徳であった。
 そして、金銭などほとんど意味をなさない魔物娘の社会で、今後一生働かなくとも困らないほどの貯えを築いたはずの二人がいまだに仕事を続けているのも、まさにそうして社会の一員として受け入れてもらい、世界を間近で楽しむためなのだ。



「グレゴリー団長、この書類お願いしまーす」
「ああ。どれどれ……うん、大丈夫だな。承認っと」

「先生!ここの計算はどうすればいいの?」
「この公式はね、覚え方のコツがあって…」

 ジパングかどこかの昔話と異なり、二百年以上の時が流れても、いまだ彼らの親兄弟も、師も、友も健在だ。
 だが、ヒトの営みがある以上、あらゆるものは時とともに移ろい続ける。
 グレゴリーが守る街並みも、ルフィアが教鞭をとる学園も、少年少女であった頃からは随分変わってしまっていた。
 新たな住民、新たな技術、新たな法、新たな社会…
 覚える事は日々増えてゆき、絶え間なく変化を続ける世界を必死に追いかける毎日。
年経た多くの魔物娘夫婦が、適当なところで引退し、静かな場所でひたすら愛し合うだけの隠居生活を決め込むのも無理はない。
 それこそが本来、魔物娘にとっての理想なのだろうが…それでもグレゴリーとルフィアが、それも離ればなれで働く生活を続けていられるのには、“離れていても一緒にいられるように感じられる”あるものの存在があった。


(あなた、さっき部下の人のこと、さりげなく気遣ってたでしょ?
 とっても団長っぽくてカッコよかった…大好き♪)
(ルフィアもさっき、つまづいてる子をうまく助けてやったろ。
 あの優しさと機転、ずっと昔から大好きだよ)
(………)
(………)
(…なんか、別に意識してやった事じゃないから、褒められるとくすぐったいね)
(…だよな)


 仕事に出かける際、二人は忘れずに、とあるアクセサリーを身に付けている。
 ルフィアの方は、赤い糸が巻きついたような指輪。グレゴリーは釣り針のような形の首飾り。どちらにも、同じ色の宝石がはめ込まれている。
 その一対となるアクセサリーは、かつては離れていても相手へ意思を伝える事が出来る力を持った魔法道具であった。
 では今はと言うと…技術の進歩によって改良されたそれは、意思どころか、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚と、五感すべてを愛する者と共有可能な代物となっていた。
 離れていても、同じものを見て、聞いて、味わって。常に一緒にいるかのように、同じ体験ができるのだ。
 …だがそれでも、本当に一緒にいるわけではない。

(…はぁ。早く来ないかなぁ、お昼休み…)
(いつもの事だし、我慢我慢…オレもしてるんだから)

 互いの肌を触れ合わせること、こればかりはどうにもならない。
 この二人くらい長い時を過ごした魔物娘夫婦ならば、そもそも数刻離れることさえ耐えがたいはずなのだ。アクセサリーの五感共有は一時しのぎの誤魔化しでしかない。
 二人の性格上、仕事を途中で抜け出すこともできない。
 ならば、終業まで耐えるしかないのか?といえば、無論、そうではなかった。


((3……2……1…………休憩ッ!!))


 互いに昼休みとなったその瞬間、ルフィアは指輪に取り付けられた小さなハンドルを回した後、水中の学園から、猛然と外へ向かって泳ぎ出した。
 1分もかからず、学園周辺の街を抜け、釣り堀のような建物へ。そして…

レッくぅぅぅぅぅぅぅん!!!

 指輪の力で、その釣り堀へと“釣り上げられた”グレゴリーに、ルフィアは魔具炉(マグロ)のごとき勢いで突撃した。
 それをグレゴリーは、いつもの事といった自然な様子で受け止め──
 ──そのままルフィアの勢いは止まらず、しっかり抱き合いながら、二人は釣り堀を抜けてどこかへ消えていった。
 まったくよくある事であった。
 むしろ、釣った伴侶をその場で食べるのが多数なので、二人は慎み深いと言えよう。



「んっあっあっ、あんンっ、大好き…大好きっ…
 そのとろけた目…決まった髪型、締まった腕…ずっと、触りたかったの…!」
「オレ、も…その昔から綺麗な髪も、手も、声も、ヒレも…
 大好きだ、もっと、触らせてくれ…!!」

 二人きりになれる手近な場所(魔物娘の街に、そうした場所はいくらでもある)に飛び込み、なおもそのままの勢いで、二人は貪るように求め合った。
 同じ感覚を味わえると言っても、相手の顔は見えないし、相手の身体の感触は味わえない。当然、相手と舌を絡める感触も、相手の性器を自分の性器で擦り上げる至上の快楽も味わえないのだ。
 そこへ今日は、さらにお互い、愛の言葉をひっきりなしにかけ続けるのである。
 とうの昔に人間の域を超えている精神力で、なんとか周囲に対しては平静を装っていたものの、互いに触れあえない苦しみは普段よりもはるかに強く、気が狂いそうな拷問じみた時間であったことだろう。
 だがしかし、そんな状況にあっては砂漠のオアシスよりもありがたい休憩時間も、あまり長いとは言えない。
 短い間により強く、より濃厚な、密度の高い交わりを求めて、二人はいつになく余裕のない表情で肉棒を突き入れ、膣壁を締め上げた。

「あっ、す、すきっ、あ、イっ、ィぅぅぅ…ぅぁあああああああッ!!!」
「ぁぐっ………〜〜〜………!!!」

 涎をまき散らしながら唸りを上げ、ぶるぶると身を震わせながら子宮へ精液が叩き込まれ、互いの身体にもたれかかって脱力する。
 まるで獣の交尾だ。普段の穏やかな夫婦の面影は微塵も感じられない。
 互いの獣欲を剥き出しにし、すべてをぶつけ合う原初の交尾…しかしそれでも、一度や二度では、高まりきった欲求を満たすに到底足りないのだ。
 荒い呼吸を必死で整えながら、ルフィアは呟く。

「はぁっ…はぁっ……
 …もう、上がっちゃおっか?」

 こうした時に、何度も繰り返されてきた問いかけ。
 実際、ここで二人がいきなり仕事を切り上げて帰ったところで、誰も困らないし文句も出まい。魔物娘の社会は、そのようにできている。
 だが──

「…まだまだ大丈夫。そうだろ?ルフィア」
「うんっ♪」

 グレゴリーの答えは決まっていたし、ルフィアもまた、そのことを知っていた。
 一番愛しているのは当然相手の事、その次が家族だが、故郷の街の面々も、教え子たちの事も同じほどに愛しており、自分達の仕事を投げ出すという選択肢はないのだ。さらに未来がどうかは分からないが…少なくとも、今のところは。

「私、そんなあなたの事、大好きだよ♪」
「オレも、そんなルフィアが大好きだよ」



 近くの公園で、夫婦肩を並べて、愛娘が作った弁当を味わう。幸福という言葉は、まさに今の二人のような姿を指すのだろう。

「すごいな…中身のバランスもいいし、オレ達の好きなやつもしっかり入ってる。
 教えたっけ?作り方」
「ううん、教えてないよ。
 …でも私、知ってるんだよね。あの子が図書館にある料理の本とか、こっそり何度も読んでたの…」
「オレ達を驚かせるために、そんなしっかり準備を…すごいじゃないか。
 本当にいい子を持ったな、ルフィア!」
「うふふ。それ、子供たちみんなに言ってるよね、あなた。
 …でも、いい子に育ってくれたのは本当だけどね。
 これも真面目でカッコいいパパのおかげね。大好き♪」
「そして同じくらい、優しくてしっかり者のママのおかげでもある。大好きだよ」

 交わる時はよく恥ずかしがる二人だが、二人にとって恥じらいは、演技でこそないものの、あくまで夫婦の営みに添える華に過ぎない。
 子供の成長を喜び、伴侶への愛を語るのに、なにを恥じらう事があろうかと考えており、ゆえに、他人が聞けば恥ずかしくなるような…悪く言えば歯の浮くような言葉も、こうして平然と口に出してのけるのだ。
 バカップルと揶揄する者もいようが、共に歳を重ねた魔物娘夫婦は、往々にしてこうした“境地”へと至ることが知られている。
 他人の事ほどよく見える…と言ってしまえばそれまでだが、彼らからすればむしろ、いつまでたっても周囲の目や、意地などといった下らないもののために愛を我慢し続けることの方が、考えがたいほどもどかしく感じるものだ。

「…よっし! 弁当も食べたし、残り半分乗り切るぞ!」
「きゃー!あなた素敵!抱いて!!」
「はいはい。ルフィアも素敵だし、抱くのは終わってからな」





 ──結果として、今日の仕事も、二人はつつがなく終えることができた。
 ただ、少しだけ問題もあるにはあったが…

「それで今度のシフトですけど、劇場の人入りが予想以上らしく、ウチに警備の要請が来ていまして…団長?」
「ああ、聞いてるよ。ルフ…」
「ルフ?」
「…いや、なんでもない。
 劇場なら、近いココとココの地区から二人ずつまわそう」
(落ち着け…もうすぐ終わりなんだ。
 ルフィアの事ばかり考えてないで、集中、集中…)


カラン、カラン♪
「ん…ふっ…!
 ……はい、それじゃあ先生の授業はおしまい。休み明けもよろしくね♪」
「先生、どうしたの?」
「ううん、なんでもないの。みんな、気をつけて帰ってね…」
(うう…終わりのベルが聞こえただけで、ちょっぴりイっちゃった…
 興奮しすぎだよ私。恥ずかしい…)

 休憩時間の逢瀬が貴重なのは確かだが、はっきり言って焼け石に水だ。なまじ、少ししか一緒に居られなかったせいで、会いたい気持ちは余計に強くなってしまう。
 しかし、休憩時間に会わないというのもまた耐えられない。ジレンマである。
 …だが、耐えて、耐えて、耐えた分、解放された時の勢いもまた強くなるものだ。

「ルフィア、迎えに来たぞー…うおっと!」

 休憩時間と同じく、勢いよく飛び込んできたルフィアを受け止める。

「レッくん、レッくん…好き…大好き…
 あなたの匂いも、こうすると安心するのも…」
「ルフィアの、今の可愛い所も好きだよ…」

 胸板に顔をうずめてグレゴリーの匂いを吸い込み、魚の尾をぴちぴち振りながら身体をこすりつける犬めいた仕草に、思わずこの場で始めてしまいたくなる愛らしさを覚えるものの、そこは残された理性をグッと振り絞り家路につく。
 幸い、故郷の街に繋がる転移魔法陣があるので、さほど時間はかからない。



「あ、おかえりー。二人とも、ご飯できてるよ!」
「ただいまー!そしてありがとー!」
「ただいまー。うん、いい匂いだな。
 きっと素敵なお嫁さんになれるぞ!」
「ふふ、ありがと。
 これから“パーティー”でしょ?精のつくもの、たくさん作っといたよ♪」
「わぁ、すごいッ!ママ感激…!!」
「学校帰りなのにここまでしてくれて…本当ありがとうな。お前も大好きだよ。
 …それだけに、毎回“パーティー”の時は寂しい思いさせちゃってごめんな」
「平気平気、友達の家にお泊まりしてくるから。
 二人の仲が良いと、あたしも嬉しいしね」
「ありがとう。今度、みんなでどこか行こうね♪」

 家族三人、なごやかに話をしながら夕食をとる。
 “パーティー”…すなわち、余計なことは何も考えずに、盛大に愛し合いながら過ごす、魔物娘夫婦にとっては最高の時間。
 しかも翌朝までの数時間程度ではない。明日から数日間休暇を取っており、休み明けまではずっとセックスに費やすつもりなのである。
 互いの好きな所を言い合いながら過ごしたのも、いつも通りに出勤し、会えない苦しみに耐えたのも、すべては今夜から始まる“パーティー”を最大限に楽しむためであった。
 この夕食も、精を付けて性感を高める素材がふんだんに使われた、いわばパーティーの前菜料理であり、なにより大切な娘が用意してくれたものだ。すでに理性は限界も限界だが、これを味わわず放っておく魔物娘夫婦などいない。

「ごちそうさま。いやあ、朝昼晩とすごく美味かったよ。ママの血だな」
「あらあら。そうじゃなくて、この子のがんば…(ルフィア、しーっ!)…いや、そうよね。さすが私達の子供♪」
「ふふ、ありがと♪
 片付けもあたしがやっとくから、もう寝室行ったら?辛いでしょ」
「ああ…本当にありがとうな。お前は自慢の娘だよ」
「今度、さりげなく男子にPRしておくね♪」
「あ、それはホントにうれしいかも。期待してるからね?
 …それじゃ、“パーティー”楽しんできて!」

 お言葉に甘え、二人は待ちに待った寝室へと向かった。
 グレゴリー一家の家そのものは陸上だが、夫婦や娘の寝室は地下にあり、海水を引き込んで、人魚にとって住みよい『いけす』を作り上げている。
 陸上の種族にとっては結構な手間がかかっているように見えるだろうが、二人が生きる長い時の中で“水中建築学”も大きく発展しており、今では、水棲種族とその伴侶が暮らす住宅として、特に珍しいものではない。
 寝室にたどり着くと、もはや二人は恥じらうことさえもどかしいとばかりに、ためらいなく衣服を脱ぎ捨てた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…
 ようやく…ようやく、全部…終わったよね」
「ああ。…ずいぶん頑張ったよな、お互いに」

 ルフィアは待ちきれず、股間を隠す鱗を消し、白濁した愛液を垂れ流す性器を指で小さく擦りはじめた。
 グレゴリーもまた、これからの行為への抑えきれない興奮とルフィアの淫らな姿に、臍まで届くほど陰茎を怒張させ、その先端から涎を垂らしている。

「レッくん、大好き…」
「大好きだ、ルフィア…」

 水中にしつらえたベッドにルフィアを優しく横たえる。
 覆いかぶさるグレゴリーの背中に両腕を優しく回し、受け入れる体勢を作る。
 そこまでが、二人に残された今度こそ最後の理性であり…
 直後、グレゴリーは渾身の力で、ルフィアの最奥へと一気に肉槍を打ち込んだ。

はぉぉおおおおおおぉぉぉ〜〜〜……ッ!!!

 他人には決して聞かせられない、それどころか目の前の愛する夫にさえ聞かせたくないようなはしたない絶叫が、ルフィアの喉から飛び出す。
 待ち焦がれたペニスのたった一突きで、ルフィアは幾度も絶頂を迎え、脳内は白い閃光で埋め尽くされた。
 それは魔性の膣襞に擦り上げられたグレゴリーも同様であり、睾丸にはち切れんばかりに溜め込まれた精液、その第一群をびゅるびゅるとルフィアの膣内へ解き放つ。

「おっ、おちん…ちん、あなたのおちんちん…!
 いつも、太くて、あつくて、おなかの中、いっぱいで…だいすきぃ…!!」
「ルフィアの中、今でもキツキツで絡みついてきて…オレのチンポ搾り取ってくるの、いやらしすぎる…大好きだッ…!!」

 一度射精した程度では、インキュバスとなって久しいグレゴリーの人外のペニスは、いささかも硬度を失わない。
 そのままグレゴリーは、セックスに不慣れな頃に戻ったかのように、ペース配分など考えない全力のピストンを開始した。
 それはルフィアの望むところでもある。お互い、優しくムーディーな交わりを楽しむにはあまりに高まりすぎており、いくらか発散しなければとてもそんな余裕などないのだ。

「は、ぁ、ぁ、ぉ、ぁっ、レッくん、すきっ、ずぽずぽ、すきぃぃぃッ!!」
「ルフィアの…乳首、今でも、綺麗で、美味くて…たまらない…!」

 二人の身体の動きに合わせて、狂ったように跳ねまわり、振り回される巨大な乳房の頂点を、グレゴリーは力いっぱい吸い上げる。
 愛され続けた果てに、ルフィアの乳房はもはや妊娠中や授乳期でなくとも、少量だが常に母乳を分泌するようになっていた。
 あまりにもいやらしく変化してしまった肉体…だがそれでも、恥ずかしさや恐怖などといった感情より、夫と自分がより興奮する喜びが勝ってしまう。
 とうに自分は、心の奥底までも”ヒト”ではなくなってしまっているのだと、母乳を噴き出すたびにルフィアは自覚する。そして、その事にさえ嬉しさと快楽を覚えていることも。

「ああぁぁっ、ああっ、はっ、はぁぅ、ふぅ、いぃぃ…!!」
「はっ、はっ…はっ、はっ、はっ…」

 互いの好きな所を言い合うのも、さすがに今は無理だ。
 だがその代わり、互いの好きな所を指で触れ、唇で触れ、行動によって伝え合う。
 およそ頭など働かせようもない今の状況でも、相手に愛を伝え、また伝えられている事だけはよくわかり、二人は幸福感に包まれた。

「んっ……んふぅぅぅ〜〜〜〜〜〜ぅぅぅぅ……!!!」
「ふーっ、ふーっ、ふうぅぅ………っ!!!」

 舌を絡め合いながら、2度目の膣内射精と深い絶頂を味わう。
 最後の一滴まで子宮に搾り出すと、絶頂の余韻に浸る間もなく3回戦をはじめる。
 せき止められ続け、満を持して解放された人外の性欲は、さらに4回、5回としてもなお足りず、ひとまず落ち着く頃には、もうすっかり夜更けとなっていた。

「もう二百年も毎晩毎晩してるのに、ここはキレイなまんまだよなぁ。好きだ」
「ひぅっ…!あなたの指づかい、すごく好きっ…あああ、そこ、ダメぇ!!」

 落ち着いたとはいえ、もちろんそれはセックスを止めたことを意味しない。好きな所の言い合いを再開したり、様々なプレイを行える余裕を取り戻したというだけだ。

「ふふふふ。じゃあ今度は、私が上で攻めてあげるね…♪」
「ぅあっ…!また動きが激しく、いやらしくなって…!」
「攻めてる時のあなたの顔、可愛くて好き…♪
 どうすればもっと可愛くなるかって、よく考えてるんだ♪」

 そうこうしている内に寝室でできる事もほとんどヤりつくし、一旦いけすを出る。
 娘は食器を洗うとすぐに友人の家に向かったようで、家は静まり返っている。
 しばらくの間、この家は二人だけの物…つまり、家全体が“パーティー”の場だ。


「『制服風服』着るのも、もう50年ぶりくらいだよね。
 今でもあなたの制服風服姿、カッコよくて大好き♪」
「お互い体型はちょっと変わってキツイけど、まだ学生って言っても通じるよな。
 ルフィアのも胸がパツパツだけど、それがまた好きだよ」

 人目を気にせずコスプレに興じたり。

「その放り出してるオッパイ、いただきっ♪無防備なルフィアは可愛いなぁ」
「きゃんッ♪もう、目ざといんだから…そこが好きなんだけど♪」

 暖炉の前で本を読みながら交わってみたり。

「はあああっ…!おしりと、乳首、ぶるぶるって…こ、これ、好きかも…!」
「すごいな…この『もだえ玉』。悶えてるルフィア、大好きだよ」

 買い集めた品々を使ってみたり。
 二人は文字通り一日中、いや、数日中、時間を忘れてセックスに興じた。
 魔物娘とのセックスは、一日中続けても、考えうる限りのプレイをやり尽くしても飽きる事がない。筆者を含めた魔物娘夫婦は、みな知っていることだろう。
 今の二人の場合はさらに、互いの好きな所を言い続けるという要素が加わっている。
 誰より大切な伴侶からの愛の言葉、自分を肯定してくれる言葉は、ときに並みの媚薬よりも欲望を刺激し、快楽を高めるのだ。

「ぱくぱく動くエラに、ヒレに、鱗に…全部、ぜんぶ、だいすきだ…!」
「あっ、あぅぅ…しゅきっ、しゅきぃ…っ♪」

 家からは一歩も出なかったが、彼らの目を見た者がいたならば、きっとパーティーにはしゃぐ子供のように、キラキラと輝いていたことだろう。
 親しい人々と盛大に騒ぐことよりも、高価なごちそうや贈り物よりも、魔物娘がいつだって欲しいお祝いは、伴侶との愛にあふれるセックスの時間なのだ。
 …だが、楽しいパーティーも永遠には続かない。少なくとも、まだ二人がこの世界で暮らそうと決めている内は。

(〜♪)

 セイレーンを模した機械時計が歌い、夢の終わりと目覚めを告げる。

「もう終わりかぁ…名残惜しいな…」
「また次の記念日があるさ。頑張ろうぜ」
「…うん」

 娘を迎えるため、汚れに汚れた家の大掃除をする。
 二人が培った、人間を超えた身体能力と魔法の力をもってすれば、作業自体は簡単に終わるが、自分達の愛の証を洗い落とさねばならないのは、やはり寂しいものだ。
 …だが、残ったものもある。





「ふふふふ…またできちゃった♪」
「おおっ!やったな。ルフィア!!」
「あたしもお姉ちゃんかぁ…♪」

 ルフィアのお腹の中に残った、最高の贈り物。
 二人の生活を忙しさと楽しさで彩ってくれる存在が、またひとり加わった。
22/06/30 10:10更新 / K助
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