やっと…………見つけた。

　１０年以上前に街からいなくなって、必死に捜してようやっと。

　その唇が。
　その髪が。
　その体が。
　その精が。

　どれほど切なかったか。
　どれほど恋しかったか。
　どれほど――欲しかったか。

　私の心を射止めた主様。

　本能をこれほど猛々しく唸らせた殿方はいない。

　ああ……欲しい。

　誰にだって優しかった貴方に、私は声を掛けられなかった。すんでの
ところで弱気になる自分が恨めしかった。恥ずかしがりな私に声を掛け
てくれた貴方は、太陽よりも神々しかった。

　その光に手を伸ばす勇気は無かった。

　触れれば私が消えてしまいそうで。
　直視すれば死んでしまいそうで。

　だけどそれも――もう終わる。

　貴方を見つけ、その寝込みに付け入られる時をどれほど望んだことで
しょう。

　安らかに、静かに眠る貴方。

　堪らない精の香りと貴方の匂いが私の身体を熱くする。

　私のすべてを捧げたい殿方がそこにいるただそれだけで幸せなのに、
欲深い私は止まらない。

　欲しい。
　欲しい。
　貴方のすべてを手にしたい。
　そして空っぽになった貴方に、今度は私のすべてを受け止めてほしい。

　さあ、おやすみなさい。
　唇を重ねれば、貴方は私の夢を見る。
　甘く美しく果てしない、夢の向こうで愛しましょう。

　※　　　※

「……………………」


　強烈な疲労を感じる。

　睡眠時間は８時間弱のはず。それなのに目覚めた瞬間どっと疲れが出る
とはどういうことだ？


「………………おっと」


　いかんいかん。料理に集中しなくては。


「おにぃさまー!!」


　しのが青ざめてこちらに走ってくる。

　なにかあったのだろうか。


「大変なのです！おふとんが血の海なのです!!」

「え……？って、しのの服まで血まみれになってるぞ!?」


　火を消し、急いで寝床に向かう。


「うわぁ……」


　凄惨な殺人事件現場を見ている気分だった。


「どどどどうしましょう！しのは死んでしまうのでしょうか!?しのは
病気なんでしょうか!?」

「うーん……」


　しのの言うとおり、しのの布団は半分以上赤黒くなっていた。えらく
濃い血の臭いが部屋に漂っている。

　もしや……始まったのか。


「何なんでしょう……」

「生理……初潮？」


　真ん中少し下から広がっているシミ、しのの下半身が真っ赤に染まって
いるのを考えるに、まず間違いないだろう。

　女の９割以上が経験する、生理。

　しかし生理血ってこんなに大量に出るもんなのか……？


「生理ですか？」

「人間の女性や魔物が大人に成長するとき、だいたい一ヶ月くらいのサイ
クルで起きるんだよ。赤ちゃんが出来る身体になってきたって成長の証」

「ホラーな成長の証です……」


　分からなくもない。

　確かに一ヶ月おきに出血するというのは、なかなか怖いものがある。
女性ってすごいな。


「……はっ！ということは、もしや!!」

「もしや？」

「もしや、もしや……はぅ……///」


　顔が真っ赤になり、頭から煙を出すしの。

　年とるごとに、だんだんよく分からなくなってきた。


「とりあえず洗濯しなきゃな……よし！」


　パチンと一拍。


「しの、街行くか」

「街……ですか？」

「こんだけの血だからな、まず俺たちじゃ落とせない。だから街に行って
しのの寝間着と一緒にクリーニングに出す」

「おにぃさま、クリーニング屋さんに証拠隠滅で持ってきたんじゃないか
と疑われてしまうのではないでしょうか」

「あー……」


　いや、そんな疑心暗鬼なクリーニング屋があってたまるか。

　しかし……うーむ。


「そうです！『トマトジュースをこぼしてしまった』と言えばいいの
です！」

「ベタベタな嘘だけど、まあそれしかないし……やってみるか」


　血が外から見えないように丸め、しのの寝間着と別々に袋に入れる。
朝ごはんをしっかり食べ、ゆっくりと山を下りる。


「はわぁ……！」


　しのが目を輝かせる。


「これが街なのですね！」

「根川町。この街出てから10年くらい経つけど、ほとんど変わってない
みたいだな」

「本当に人や魔物がいっぱいです！」


　軽い足取りで俺より一歩先を歩くしの。これほどはしゃぐ姿は久しぶり
だった。

　しばらくすると、


「あれ？近衛じゃない？」


　と、後ろから声を掛けられる。


「お前、宇木霜か？」

「久しぶりね！近衛！」

「ああ、久しぶり」

「ったくもぅ、相変わらず薄リアクションなんだから」


　幼馴染の宇木霜百合。相変わらず元気娘のようだ。


「あーっと……お前さ」

「なに？」

「お前、３年前ばったり会ったときから色々大きくなってないか？」


　俺の視線が胸に向いていることに気づいた百合は、「そりゃそうよ」
と言うと、頭から湾曲した角、腰のあたりから紫のツヤがかかった
黒い翼が現れる。


「私ね、実はサキュバスになったの。レッサー飛ばして」

「ははん、リリムにでも襲われたな？」

「正解！」


　以前まで地平線級だった胸が山級に爆発的ランクアップを遂げていて、
俺は少々驚きを隠せなかった。


「ねぇ」

「なんだよ」

「あの子は近衛の？」

「いや違う」

「さては連れ子!?」

「なお違う。あいつは奇稲田しのと言って、旧友から預かってんだ」

「可愛い狐っ子ね〜。絶対美人になるわよ」

「だな。んじゃそろそろ俺行くから」

「じゃあね！たまには会いに来なさいよ！」

「はいはい」


　俺はひらひらと手を振った。

　※　　　※

　街の北東にあるクリーニング店、レッツェ。ワーウルフとその主人
が夫婦で営んでいる店で、小さい頃からお世話になっている。

　とりあえず店主の前に布団を広げ、店主に見せる。そしてしのが提案
した通りに言い訳をしてみた。


「おいおい芳樹くん。久しぶりに来ていきなり冗談かい？」


　見事に見破られてしまった。

　やはりプロは違う。


「本当は、この子の生理血でして……」

「おや可愛らしいお嬢さんだ。よし、全部真っ白にしてあげよう。
４時間だけ時間をくれ」

「本当、すいませんね」

「いいんだいいんだ。その代わりなんだが……」

「はい？」

「うちの子どもの遊び相手になってほしいんだ」


　トテトテと、４歳くらいの女の子が出てくる。

　ワーウルフの子どもだった。


「おじちゃん？」


　首をかしげ、何かを観察するようにじーっとこちらを見てくる。

　かなり可愛い。


「名前はトーラ。同じ魔物の子どもがいないもんだから、いつも寂し
い思いをしてるんだ」

「トーラちゃん。遊ぶ？」


　手を差し伸べると、一瞬驚いたあとに


「わふぅ！」


　と、手を無視して抱きついてきた。


「な、なななんなな!?おにぃさまから離れてくださいー！」

「む〜！ふ〜！」


　しのが引き剥がそうとするが、トーラちゃんは必死にしがみついて
離れない。しがみつく力が強いのだ。


「トーラあそぶのーっ！」

「ですから離れてーっ！」

「痛い痛い痛い痛い！トーラちゃん肉つねってるーっ！」


　そんなこんなで、レッツェ２階。子供部屋もといトーラちゃんの部屋
で遊ぶことに。


「はい、ジュース！」


トーラちゃんが持ってきたジュースが俺としのの前に置かれた。

俺はメロンソーダ。しのはアンバサ。


「何して遊びますか？」

「おいしゃさんごっこ！」


そう言って、子供用の玩具の医療器具と液体が入った茶色い小ビンが置かれた。

ラベルを見るとサバト印の薬だった。名前は『ハロンナール』。


「まずおねえちゃん！」

「わ、私ですか？」

「もしもしするの！」


聴診器を耳に付けるトーラちゃん。その間にハロンナールのフタを開け、試しに匂いを嗅ぐ。


「――――っ!?」


すぐに鼻を遠ざける。嗅いだ瞬間、脳の機能――特に理性方面が刺激された。

何これ!?なんかヤバいぞこの薬！トーラちゃんに気付かれないようにどこかに……

「おじちゃん！」

「ふぁ!!?」


いきなり呼ばれ、驚きのあまりビンを上にぶん投げてしまった。ビンは宙を舞い、空中でくるくると縦に回転し、しのの口に入った。


「んんんんんんん!?」


　ゴキュッ、という音がした。

中の薬を飲んだ……？


「うう〜苦いです〜」

「ごめん、しの……!?」


その瞬間、しのの目の色が変わり、もの凄い勢いで俺の胸に力を加え、押し倒した。


「ちょ、どうした!?しの！」

「何って……♥おにぃさまと愛し合う為に決まってるじゃないですかぁ♥♥」


全然話が通じない!?近くに落ちていたハロンナールのビンを取り、効能をすぐに確認する。

『この薬は相手に一本飲ませるだけで、どんなにプライドの高い魔物も恥ずかしがり屋な魔物も無垢な魔物も、たちまち交わり一直線のデレッデレになります♥』

完全脱帽。


「やめろよしの……ここにはほら、トーラちゃんという子供g」

「トーラちゃんも将来旦那様と交わるのです、いい人生の教材じゃないですか♥」

「とは言っても……！」


身動き出来ない俺は、簡単に服を剥がれてしまった。


「これがおにぃさまの……♥♥はぁ、愛おしいですぅ♥♥」

「ちょっと、だからやめろって！」

「はむっ♥♥」


生暖かい口に頬張るしの。慣れた舌遣いでアイスキャンデーのように根元から先端まで舐めしゃぶる。


「んむ……♥れるっ♥ちゅっ……んはっ♥」

「し……しの……！」

「ひもひひいへふは？(気持ちいいですか？)」


瞳が潤み、一心不乱に味わう姿はもはやいつものしのではなく。

見たことのない、女の部分のしの――


「しの……やめろ、出る！」


その言葉を無視し、どころか更に根元までくわえて激しく愛撫する。その快楽に耐えられず、俺はしのの腔内に呆気なく射精した。


「ぐ、うううっ……あぁ！」

「んむううぅっ!!♥♥♥」


ドクドクと脈を打ち、驚くほどの量の精液がしのの咥内を満たす。

　一方しのは、とろけるような表情で喉を鳴らし大量の精液を飲んでいく。


「んくっ、んくっ……ぷはっ♥♥おにぃさまぁ、早いですよぅ♥」


そう言いながら、しのはトーラちゃんの方に向く。

トーラちゃんは興味津々という顔で見ていた。


「トーラちゃんもやってみますか？♥」

「う……うん」


少し不安な表情で、トーラちゃんは肉棒をついついと指先でつつく。


「ぬるぬるする……」

「それを舐めてキレイにするんですよ？」

「トーラ、やってみるね」


トーラちゃんは先っぽを口にくわえ、口の中でコロコロと舐めまわす。


「ちょっとにがいけど……なんか……すきぃ♥」


　慣れてきたのか、舐めながら少しずつ吸うようになる。小さな狭い口で
愛撫される快楽と幼児にされてる背徳感が理性を蝕み、再び肉棒が硬さ
を取り戻す。


「おにぃさま、しのを忘れないでくださいよぉ……♥」

「むぐっ!?」


　いきなりしのが唇を重ね、舌が這うように口内に入ってきて俺の舌と
絡み、唾液を啜る。


「んちゅ♥は……んんっ♥♥ふぁ……♥」


　キスとフェラによる二重の気持ちよさが少しずつ絶頂へと誘う。僅かな
理性を保とうと必死になるが、それも虚しく空回りしていた。


「トーラちゃん、もうやめ…………」

「おじちゃんの……ペロペロ……おいひい……♥♥」


　一匹のメスに覚醒したトーラちゃんはもう止まる気配はない。そう
内心諦めた瞬間、ずっと抑えていた絶頂への欲求が間欠泉がごとく
激しくなる。


「トーラ、ちゃん……うあ、あああぁあっ!!」


　達する直前にトーラちゃんの口から肉棒を離す。

　そして限界を迎えた肉棒から迸る大量の精液が、びちゃびちゃとトーラ
ちゃんを白く汚していく。


「あぅ……あつい……♥♥」


顔も服も精液まみれになったトーラちゃんは、本能か興味か、それを
手で拭い取り舐める。


「おじちゃん、もっと……♥」

「ダメですよ。次は私です♥♥」


そう言って服をおもむろに脱ぎ出し、艶やかで美しい裸体が晒される。


「ほら……♥私のココ、おにぃさまが欲しくて疼いてるでしょう？♥♥汁が止まらない私のアソコに、おにぃさまので栓してください♥♥」


くぱぁと音を立てて、蜜が滴る秘部を指で開く。

それが引き金となり、俺は理性を完全に失った。俺はしのと唇を重ね、深く強く、絡みつくように抱き合う。お互いの熱が肌を通じてひしひしと感じ、より一層肉欲が増していく。


「いいのか……？お前、初めてなんだろ？」

「私の初めてはおにぃさまに捧げると決めてるんです♥♥さぁ早く、お互いの初めてを……♥はっ、ぁあんっ!!♥♥」

「くうあっ!?」


挿入した瞬間、しのの身体がびくびくと震え、膣がぎゅうぅと肉棒を締め付け、絞り取るような膣内の動きに射精してしまいそうになる。

「おにぃさまの♥大きい……♥……入っただけでイっちゃった……♥」


涙を浮かべ、貪るように大きく腰を動かし始めた。甘い嬌声と水音が短い間隔で部屋に響く。


「ほら、おにぃさまも動いてください……♥♥」

「しのの中、締まりが強いっ……！」


奥に行けば行くほど締まりが強くなり、感じたことのない人外の快楽が身体を突き抜ける。


「はぅ、ん……♥」


トーラちゃんはその交わりを見ながら、くちゅくちゅと小さな音を立てて自分の秘部を弄る。


「どうですか？♥私のナカ、気持ちいいですか……？♥」


絶え間ない快楽に振り回され、喋れない俺はこくこくと頷く。するとしのは嬉しそうに笑み、更に激しく腰を打ちつける。

愛液と汗が混じったものを撒きちらしながら、体位を変え、ゆっくりと、時には速く激しく交わっていく。


「はぁっ！♥あん、ひゃうっ！♥♥もっと、おくにぃ!!♥♥♥」

「しの、しの……しの！」


本能のままに、３０分も交わっていた。が、そんなことを気にも止めず、２人は溶けてしまうほどぐちゃぐちゃに交わる。
お互いの絶頂はすぐそこまで来ていた。それを感じ、ラストスパートをかけるようにさらに速く腰をぶつけ合う。


「おにぃさま、おにぃさまぁっ!!♥♥♥」

「出る……もう、ヤバい！」


そして暴発したかのように、肉棒は大量の精液を放ち膣内に注ぎ込む。


「あああっ!!」

「出て……るぅ♥♥はふぁあああああんっ!!♥♥♥♥」


　ドプドプと注がれる感覚にしのも遅れて達し、一滴残さず搾り取ろうと言わんばかりに強く締め付ける。


「はぁっ♥はぁ……おなか……いっぱいですぅ♥」


くたりと、気絶したかのように眠るしの。トーラちゃんも頬を赤く染め、くだけた服装で眠る。

　そして俺も、心地よい疲れに目を閉じてしまう。

　繋がったまま――眠りについた。


　※　　　※


起きたのは既に日が沈みかけた夕暮れ。いつの間にか、しのと俺に毛布が掛けられていた。


「しの」

「はい……？」


目をこすり、あくびを１つ。


「……ごめんなさい、おにぃさま///」

「いや、いいんだ。ヤっちゃったもんは仕方ない。それに半ば不可抗力だったし」


気まずい空気が部屋を埋める。


「お目覚めかい？お２人さん」

「あの、えっと……」

「いや、言わんでいいよ。色恋に弁解はいらないから」


店を閉めた店主が、俺たちの前に座る。
　顔を少し和らげて。


「ところで、うちのトーラなんだが……」

「ああ……それはですね、いわゆる不可抗力というか……」

「お前さんが好きなんだとさ」

「は…………は？」


扉を見ると、こちらを覗くトーラちゃん。目が合った瞬間トーラちゃんは奥に隠れる。


「君からトーラになんか言ってあげてくれないか？私よりも芳樹君の方が、色々いいだろうから」


　俺は立ち上がり、トーラちゃんのところへ向かう。


「おじちゃん……あのね、トーラね……」

「ごめん」


トーラちゃんの頭を撫でる。


「俺には好きな人がいるんだ。俺は、あの狐のお姉ちゃんが好きなんだよ。だからあの子のお婿さんになるつもり。トーラちゃんの気持ちは嬉しいよ、本当に嬉しい。だけど、こればっかりは許してくれ」

「うう……えぐっ、うえあああん！あああ、うわああああん！」


抱きつき、大泣きする。魔物の気持ちの大きさと重さを痛感した。


「だから、ね」

「…………？」

「俺からの告白」


　トーラちゃんを抱き上げ、唇を重ねた。

　２秒ほどの、フレンチキス。


「俺の為に、好きでいてください」


トーラちゃんはしばらくきょとんとし、そして笑顔で、


「うん！」

■作者メッセージ
「今でもはっきり覚えてますよ、初体験♥」
「俺もだ。しかしお前、あれからスイッチ入ったみたいに盛りがついたよな」
「ダメでした？」
「ダメなわけ、ないだろう？」
「うふふ♪愛してますよ、あなた♥」

　すみません。ネタ集めに時間がかかってしまいました。