連載小説
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第五章:それでも隣に居たいから!
 翌朝、僕達は魔法が解けたかのように、いつも通りの朝を迎えていた。
 結局つながり続けて、一睡もしていなかった。にも関わらず心も体もすっきりしていて、これ以上ないほどに体調も良かった。
 いつも通りに学校にも行って、授業も受けた。
 けれど、いつも通りにいかないこともあった。
 隣の、犬飼だ。分かっていた事ではあったが、まともに口をきいてもらえなかった。それどころか、僕が彼女の方を見ようとしただけで彼女はそっぽを向いてしまって、目も合わせてくれなかった。
 授業も退屈極まりなく、僕の楽しみは帰ってからのエンナとのひと時だけだった。
 そのエンナから、昼休みにこっそりみんなに隠れて告げられた。
「放課後、学校に残ってて。しばらくしたら旧校舎の音楽室に来て」
 そんなところで何をするのかは、あえて聞かなかった。僕達が一緒にすることと言えば、大体もう決まっているようなものだからだ。


 楽しみな事が一つでもあると、意外と他のことも楽しめるようになったりする。
 それからの授業は異様に頭の中に入った気がした。最近ぼんやりしてしまう事が多かったが、これで勉強の方も少しは巻き返せそうだった。
 しかし、そんな風に成績の事を気にしていたのも終業のチャイムが鳴るまでだった。
 何はともあれ、一番大事なのはエンナとの約束だ。
 放課後のチャイムが鳴るなり、エンナは僕を置いて教室を出て行ってしまった。
 しばらくしたら来てほしいと言っていたし、たぶん何か準備があるのだろう。
 僕はぼんやり、窓の外を眺める。
 少し赤みが差し始めた澄み渡った空に、ゆっくりと雲が流れてゆく。穏やかな景色の中を、半人半鳥のハーピーが男を掴んで横切っていった。
「……何だありゃあ」
 ハーピーはそのまま、隣の校舎の屋上に着地した。陰で見えはしないが、やっていることは何となく想像がついた。
 立ち上がって校庭を見下ろすと、以前勧誘を受けていたケンタウロスとリザードマンが短距離走で勝負をしていた。
「魔物娘も増えたよなぁ。……あれ?」
 陸上部の顧問。確か人間の女の先生だったはずなのだが、今指導に当たっているのはどう見ても魔物娘だった。
 目を凝らしてみるが、顔立ちは見覚えのある先生に間違いない。
「人の真似をする魔物娘とかか。でも、そんなのすぐ周りにばれるだろうし」
 少し気にはなったが、しかしその先生には授業も教わっていないし、陸上部の知り合いもいない。自分には全く関係のない事でもあった。
 であればそんなことで悩むよりは、待ち合わせの場所に行く方が重要だ。
 時計を見上げると、時間もそれなりだった。僕は意気揚々と、旧校舎の音楽室へと向かった。


「エンナ、おまた、せ?」
 足取り軽く向かった音楽室には、しかしエンナ以外にも予想外の人物が居た。
 眼鏡をかけた、長い黒髪の小柄な女の子。後ろ姿しか見えなかったが、こんな子は一人しか知らない。
「待ってたよぉマサル。さぁ、始めよっか」
「始めよっかって、ちょっと待ってよ。そこにいるの、犬飼さんだよね」
 彼女はびくんと肩をすくませる。
 エンナは彼女の肩に手を回すと、僕の方へと振り向かせる。
「そう、犬飼ちゃんだよ。今日は三人でするの」
 犬飼は俯いたまま、僕の方を見ようとはしなかった。スカートをぎゅっと握りしめて、小さく震えているようだった。
「昨日の事があったからか? 一緒にすれば共犯になるからとか、そういう事か?」
「そんなつまんない事のためにわざわざ犬飼ちゃんを連れてこないよ。それに、それじゃ犬飼ちゃんを無理やりレイプしようとしてるみたいじゃない」
「そうだよ。嫌がってる相手を力づくでなんて、そんなのただの暴力じゃないか」
「だから、そうじゃないんだって。犬飼ちゃんもマサルとしたいって言ったから、ここに連れてきたんだって」
 犬飼が、僕と?
 僕は犬飼を見るが、犬飼は相変わらずの様子だった。怒っているような、怖がっているような、不安がっているような。縮こまったまま動こうとしなかった。
 エンナは見かねた様子で、犬飼の肩に手を回した。
「犬飼ちゃん。素直になりなよ。好きな人が目の前に居るんだよ?」
 エンナの手が、犬飼の胸元をまさぐる。小ぶりながらも、確かにそこにある膨らみを強調するように、円を描くように撫で回す。もう片方の手がブラウスのボタンを外し始め、尻尾がスカートの中に潜り込む。
「あ、ぅ。だ、だめよエンナさん」
 犬飼はエンナの手を掴み、卑猥な悪戯を止めさせる。
 いったい何が起こっているのか、僕には見当がつかない。昨日まで犬飼はエンナの事を目の敵にしているようだったのに、それが今ではじゃれついてもそこまで嫌がっている様子もない。
「じゃあ、犬飼ちゃんもちゃんと自分の気持ち伝えてよ。好きってちゃんと言いなよ」
 犬飼はようやく顔を上げて、僕の方を見た。
 その顔は羞恥のためか真っ赤に染まっていて、今にも泣いてしまいそうなくらいに涙ぐんでいた。
「犬飼?」
「わ、私は別に……」
 消えそうなくらいに小さな声だった。僕はなんだか、いたたまれない気持ちになってしまう。
「あのさ、エンナに変なこと吹き込まれたのかもしれないけど、嫌なら嫌って、ちゃんと言ったほうがいいよ。自分の気持ちを、ちゃんとさ」
 犬飼は涙ぐんだまま、また僕から目をそらした。
 僕は途方に暮れてしまう。目の前の状況もよく分からないし、自分が何を求められているのかも分からなかった。
「……ずるいよ」
「え?」
「猿渡君はずるい。私はずっと真面目に頑張ってきたのに」
 犬飼がぽつりぽつりと話し始める。言葉は少しずつ量を増して、やがて決壊したみたいに溢れ出した。
「周りが恋愛とかバイトとか浮ついた事を始めても頑張ってきたのに。猿渡君だけは、私と同じだと思っていたのに」
「犬飼さん。僕は別に」
「分かってる。分かってるわ。私が勝手に仲間意識を持っていただけだって事くらい。勝手に裏切られたって思って、怒って、落ち込んで……」
 犬飼の眼鏡の向こうが、きらりと光る。滴が頬を伝って落ちる。
「私も、自分のやりたいようにすればいいって分かってる。みんなみたいに遊んで、恋して、思うままに振舞えばいいって。でも分かっていてもダメなの。私は真面目にしか出来ない。勉強して、大人の言う事を聞いて、ちゃんとしていないと落ち着かないの。
 みんなには頼りにされてるけど、裏ではつまんない奴だって思われてるって分かってる。でも私はこういう風にしか出来ないの。自分でもどうしようもないの」
 こんなにあけすけに自分の事を話す犬飼を見るのは初めてだった。
 言葉を挟むのは無粋だった。僕は何も言わず、ただ犬飼が吐露する言葉を受け止め続けた。
「私だって、本当はみんなみたいに色んなこと楽しみたい。でもしっかりやっていないと、不安で不安で仕方ないの。みんなみたいになりたかった。不安なんて一つも無さそうな魔物娘の子達が羨ましくてしょうがなかった。でも私はみんなみたいにはなれなんだもん。
 昨日二人を見た時も、凄く幸せそうで羨ましかった。自分でも間違っているって分かっていたけど、腹が立って仕方が無かった。
 私はこんなに苦しんでいるのに、猿渡君ばっかり楽しんで、気持ち良くなって、ずるいって」
 犬飼は、上目づかいで僕を見る。
「い、犬飼さんの気持ちは分かったけど、けどそれでどうしてこういう話になるんだ。そういう事なら、僕じゃなくて好きな人の所へ行くべきなんじゃ」
「……にぶちん」
「え、いや」
「マサルは優しいからねぇ」
 犬飼は僕を睨み付け、エンナは僕を見て笑う。いったいどういう事なんだ。
「私は、これまでずっと猿渡君と同じところに居ると思ってた。……もちろん、私の勝手な思い込みだけど。
 だからこれからも猿渡君と同じところに居たい。隣に居たいの。猿渡君がそっち側に行くなら、私もそっち側に行く。今度は私の思い込みじゃなくて、本当に一緒に。
 こ、恋とかしてこなかったからよくわからないんだけど、こういうの、好きっていうのかな」
 犬飼が、僕を? 
「話してて楽しい男子って、猿渡君くらいだけだったし」
 実感が湧いてこない。確かに僕も犬飼は気になる存在ではあった。けれど、この僕が誰かに好かれていただなんて、考えたことも無かった。
「……ねぇ、聞いてる」
「え、あ、うん。ごめん突然の事で頭の中が整理出来なくて。
 つまり、そういう話で、ここに来てくれたって事、なんだよね。僕の、自惚れとかじゃなくて、その。
 えっと、でも、いきなりセックスなんて、いいの?」
「言ったでしょ。私も、猿渡君と同じところに居たいって。昨日、全部エンナさんから聞いたよ。猿渡君もいきなり最初のセックスしたんでしょ。しかも凄い激しかったって」
「あー、いや、それは」
「教えてよ、私にも」
 犬飼は、照れているような、ふて腐れているような顔で僕を見た。エンナも可愛いけれど、長年そばで見続けてきた犬飼もやっぱり可愛かった。
「話は丸く収まったってことでいいのかな? 私達は身体も心も準備できているし、あとはマサル次第だよ。みんなで気持ち良くなってハッピーになる? それとも……」
 エンナは悪戯っぽく笑う。多分もう僕の答えなど聞くまでもなく分かっているのだろう。
「けど、エンナはいいのか。浮気は嫌って言ってたろ」
「これは浮気じゃなくて、ハーレムだよ。まぁそれも相手に寄るんだけど、犬飼ちゃんならいいかなって。ちょっと横取りしちゃったようなところもあるし、それに犬飼ちゃんも魔物娘になりたいって話だったし」
 僕は驚いて犬飼を見る。
 犬飼は少し恥じらっていたようだったが、自分の願望を隠す気は無いようだった。
「もう、いろいろ頑張るの嫌になっちゃったの。猿渡君やエンナさんを見てて、私もこんな風に生きたいって、そう思ったの」
「昨日じっくり魔力を注入したから、あとは想い人と交わるだけで魔物娘になれるよ。マサルはもうインキュバスだし、やれば魔物化は間違いないねぇ」
 欲情にまみれた魔物娘と、恥じらいながらも内に濁った恋心を抱いた少女の二人が迫ってくる。
「どっちを選ぶかなんて聞かないから」
「二人とも抱いてよ、マサル」
 そんなことを言われたら、男として欲張らずにはいられないじゃないか。


 エンナは犬飼の後ろに回り込むと、脱げかけのブラウスに手をかけてするすると脱がせてゆく。
「犬飼ちゃんの肌って綺麗なんだよぉ。昨日触っててほれぼれしちゃった」
「昨日遅かったのは、犬飼さんと一緒だったからか」
「うん。いっぱい可愛がってあげたんだよ。身体中の色んな所に、気持ちいいっていうのはどういうことなのか教えてあげてたの」
「わ、私は止めてって言ったのよ?」
「でも犬飼ちゃん嫌がって無かったよねぇ。可愛い声出して、よがってたしぃ」
 エンナは恥じらう犬飼をさらに責め立てながら、今度はスカートに指をかけてあっという間の脱がせてしまう。
 犬飼の下着は、意外にもレースのついた可愛いピンクのブラとショーツだった。
 下着姿になった犬飼は、身体を隠そうとするように自分の身体を抱きしめる。
「でも、キスもあそこも初めては残しておきたいって言ってたから、あんまり過激なことは出来なかったんだよねぇ」
 エンナの目がギラリと光る。
「せっかく三人でするんだし、最初は二人で犬飼ちゃんを責めよっかなぁ。そうすれば早く魔物娘になれるし」
「え、きゃっ」
 エンナは犬飼の両手を掴むと、万歳をさせるように体の上に持ち上げてしまう。
 そして抵抗出来なくすると、ねっとりと首筋を舐め始める。
 犬飼の肌が赤らみ始め、聞いたことも無いほどの艶っぽい吐息を漏らし始める。
「はぁぁ、だめぇ」
 僕も見ているだけでは耐えられなくなり、犬飼の肌に手を伸ばした。
 白くて柔らかくて、張りのある滑らかな肌だった。自分を抑えられなくなりそうだった。このまま、犬飼を……。
「待って、待って猿渡君」
 はっとして顔を上げる。犬飼が、潤んだ目をこちらに向けていた。
「ごめん、ね。でも、一つだけお願いがあるの。面倒くさいって思うかもしれないけど、順番に、してほしいの」
「順番?」
「手、繋いだり、キスしたり。こんな状態でこんなこと言っても、煩わしいだけって思うかもしれないけど、好きな人とそういう事してみたかったから」
 それは至極まっとうな、女の子のお願いだった。順番は既に取り返しがつかないほどに滅茶苦茶に進んでしまってはいたけれど、僕にだってそういう願望が無いわけでは無かった。
「エンナ、犬飼さんを離してあげて」
 エンナは好色そうな笑みを浮かべてはいたものの、犬飼の腕を離してくれた。
 自由になった犬飼の手に、僕は指を絡めるようにして手を重ねる。
 すべすべしていて、柔らかくてしっとりとしていた。照れて逃げようとする指を、僕の指が追いかけてしっかりと掴み取る。
 犬飼は身を竦めながらも、熱っぽい視線を僕に向ける。そして、顎をわずかに上げた。
 彼女は、目を閉じなかった。僕も彼女の瞳を覗き込み続けた。
 桜色のぷっくりとした唇に、唇を重ねる。
 優しく、唇で唇を愛撫する。ちゅ、ちゅ、と小さな音を立てながら、何度も何度も口づけを繰り返す。
 お互いを見つめ合いながらする口づけは、それだけでドキドキした。口づけするごとに、瞳の奥の感情が濃く、深くなってゆくようだった。だんだんと虚ろに濁り、欲望が強まっていっているのが伝わってきた。
 唇を離すと、間に糸が引いた。
「……次は、どうする?」
「ぎゅってして」
 エンナが意図を察して、犬飼の身体から離れる。
 僕は犬飼の背中に腕を回して優しく抱きしめた。制服越しに、犬飼の体温が、鼓動が伝わってくる。
 熱を帯びた満足げな吐息が僕の耳元をくすぐる。
「あとは、いいよ。猿渡君の好きにして?」
 その一言だけで、下半身がたぎった。どうやら僕はこのフレーズが大好きらしい。
 抱きしめたままブラのホックを外した。指をすべり込ませて、彼女の小ぶりな乳房を手のひらに収める。
 犬飼のそれは、控えめながらも柔らかく、心地良い弾力で僕の手を押し返してくる。
 手のひら全体で刺激してやると、犬飼は可愛い悲鳴を上げた。
「マサル。私も放っておかないでよぉ」
 離れていたエンナが近づいてくる。犬飼の身体ごと僕を抱きしめて、唇を重ねてくる。
 エンナの瞳の奥に見えるのは、昏く燃える獣欲の炎だけだった。恥じらいも躊躇いも無く、ただ僕だけを映して、僕だけを求める。純粋な欲望。エンナの瞳は犬飼のそれと違って、覗き込んでいるこっちが飲み込まれそうになるようだった。
 ぴちゃぴちゃと唇と舌が音を立てる。犬飼は、音が奏でられるごとに恥じらうように身体を小さく震わせていた。
「いや、だめ、エンナさんっ」
 犬飼が声を上げる。
 エンナの手が犬飼のショーツに伸びていた。太もものあたりまでずり下ろすと、尻尾で一気に脱がせてしまう。
 そして纏う物の無くなった少女のそこに、淫らな猿の指がすべり込む。
「あ、ダメ、ダ、めぇ。あ。あぁぁ……」
 耳元で囁かれる甘い喘ぎが全身の細胞を性的に覚醒させる。ズボンが窮屈になり始め、そして唐突に下半身が解放される。
 またエンナだった。エンナが今度は僕のズボンを器用に脱がせたのだ。
 ズボンに注意を引かれているうちに、気付けば上半身も裸に剥かれていた。エンナは本当に手癖が悪い。いや、尻尾癖かな。
「んちゅっ。えへへ、二人とも準備完了って感じぃ?」
 エンナは僕達の身体から離れると、にたりと笑って濡れた指先を舐めた。犬飼を攻めていたその手、付いているのは、犬飼の愛液だ。
 犬飼の身体から離れようとすると、彼女は急に腰が砕けたように僕にしなだれかかってきた。
「大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。身体の、力が、抜けちゃって」
 僕は犬飼の身体を抱きかかえる。そして、近くにあった手ごろな机の上に彼女を移した。
 ぐっしょり濡れた犬飼のあそこがあらわになる。濡れた陰毛に縁どられ、秘肉の桃色が淫らに際立っていた。
 犬飼は恥じらい、脚を閉じようとする。僕はすかさず脚の間に自分の腰を捻じ込んで、彼女の脚を押し広げる。
 それでも手で隠そうとしたので、僕は彼女の細い手首を掴んだ。
「ぃやっ、恥ずかしぃよ」
「今更恥ずかしいも何も無いでしょ。全部見せあおうよ。僕だって何も隠していないんだから」
 犬飼は言葉に釣られたかのように、僕の下腹部に目線を移す。天井に向かってそそり立つ歪な一物を目の当たりにして、犬飼は怯えるような表情になった。
「大丈夫だよ。怖くない。だってマサルのおちんちんなんだよ」
 いつの間にか制服を脱いでいたエンナが、犬飼を後ろから抱きしめるような格好で机に座る。
 そして片手で犬飼の乳房を揉み上げながら、もう片方の手指で雌の花びらを広げる。
 蜜が滴り、机の上にぽたりと落ちる。
「犬飼さん、すごい濡れてるね」
「やめ、やめて……」
「ねぇ、触っていい? 触りっこしようよ」
 僕は犬飼の手を離した。
 犬飼は躊躇うような表情を浮かべていたが、僕自身には興味はあったようだった。おっかなびっくりながらも手を伸ばして、僕のものに指を絡めた。
 ひんやりとした犬飼の指が気持ちいい。
「凄く、熱いね」
 僕もまた、犬飼の大切な場所に触れた。
 割れ目に沿って指で丁寧に撫で、蜜を花びら全体に塗り付けるように手の平全体で優しく刺激する。
「猿渡、くんッ」
「犬飼さん、初めてなんだよね」
「う、うん」
「じゃあ、ここも念入りにほぐしておかないとね」
 指を侵入させて動かしてみると、犬飼は少し辛そうに呻いた。
 それならばと、僕は屈み込んで彼女のまたぐらに顔を近づける。
「え、猿渡君? ダメだよ、そんな汚いところ」
 犬飼の匂いがする。エンナと違う強い匂い。魅力的で、僕を引き付ける甘い匂い。
 僕は唇みたいに柔らかいそこに口を押し付けて、舌を這わせる。ぴちゃぴちゃと舐め上げて、じゅるじゅると愛液を啜った。
「あ、あ、あ、あっ!」
 犬飼の指が僕の髪をかき回す。ダメと言いながら、悲鳴のような声を上げながら、しかし犬飼は僕の頭を押しのけようとはしない。
 女の子の敏感なお豆がぷっくりし始める。舌で皮を剥いて、優しく丁寧に舐めしゃぶった。
 太ももが締まりちょっと苦しくなったが、犬飼の匂いの快楽の前ではそんな苦痛は些細なものでしかなかった。
「もう、もういいから。もう許して。おかしくなっちゃうよぉ」
 消え入りそうな震える声。僕は彼女の言うとおり、舐めるのを止めた。
 けれどそれは犬飼の為では無い。僕の方ももう限界でおかしくなりそうだったからだ。
「ふふ。マサルももう我慢の限界だね」
「うん。犬飼さん、いいよね」
「あ、ん、……う、うん」
 僕は立ち上がり、自分の先っちょを犬飼の柔肉にあてがう。
 犬飼は顔を真っ赤にしながら震えている。僕は彼女の髪を撫でた。それで安心してくれるかは分からなかったけど、大事にはしたかったから。
 僕の気持ちが伝わったのか、犬飼の震えは少しずつ収まってゆく。
「大丈夫。入れていいよ」
 僕は頷き、少しずつ腰を動かしていった。
 犬飼のそこはきつく締まり、何者の侵入をも阻もうとするかのようだった。けれど、僕ももうこれ以上の我慢は出来なかった。
「あ、痛っ。い、いいよ、そのまま、入れてっ」
 犬飼の言葉のまま、僕は腰を突き入れ続ける。亀頭が包み込まれ、竿がずぶずぶと飲み込まれてゆく。
 犬飼の膣は熱くたぎり、きつく締め上げてくる。けれどもエンナの身体に慣れた僕には、その程度では物足りなかった。
 僕は腰を捻じ込み続ける。そしてすべてが飲み込まれてしまう前に、犬飼の一番奥にまでたどり着いてしまった。
「これ以上は、無理……」
「マサルの、ちょっと大きくなったかもね。私のあそこに慣れちゃってるし」
 犬飼は涙目で僕を見る。
「気持ち良くない?」
「そんなことないよ」
「嘘。いいよ、猿渡君の好きにしていい。だから、私で気持ち良くなって?」
 胸が詰まって、何も言えなくなる。初めてにもかかわらず、自分の身体よりも僕の気持ちを思いやってくれる犬飼が堪らなく可愛く思えた。
 こんな僕のために大切な初めてを捧げてくれたんだ。僕だって犬飼を大事にしてあげたい。
「ゆっくり動くね。痛かったら、痛いって言ってね」
「私の時は、マサルはそんなに紳士じゃ無かったのになぁ」
「それは、だってあの時は……。ごめん」
「まぁ、この後たっぷり優しくしてくれたら許してあげる。さぁて、私も犬飼ちゃんをもっと気持ち良くしてあげる準備をしようかなぁ」
 エンナの尻尾がにゅるりと動く。
「やだ、なに? おしりにふさふさしたのが」
「私のおまたの下を通して、犬飼ちゃんのおしりに尻尾を擦りつけてるんだよ。こうすれば私も気持ちよくなれるし、犬飼ちゃんももっと気持ちよくなれるし、一石二鳥でしょ」
「や、やめて、変な気持ちになっちゃう、集中できなくて、ああぁ」
 僕は黙って抽挿を始める。ペニスで犬飼の膣内の形を探るように、じっくりとした動きで。
 犬飼は小動物のような声を上げながら僕を見ては、おしりの感触も気持ちいいらしくエンナの方にも視線を送る。
 顔にも肌にも赤みが差し始めて、汗も滲み始めて、感じているのだけは明白だった。
「や、やめてよ二人とも、そんなに苛めないで。あ、あんっ」
 声が恥ずかしかったのか、犬飼は口を手で押さえようとする。
 しかしその手はエンナの手によって遮られてしまう。さらにエンナに首の汗を舐められて、犬飼はさらに可愛い声を上げた。
 僕は耐え切れず、犬飼の唇を奪う。舌を絡ませ、呻き声ごと飲み込む様に激しく彼女の口を啜る。
「犬飼ちゃんの汗、美味しいよ。ねぇマサル、私達のおっぱい触ってみてよ。大きさは違うけど、どっちもきっと気持ちいいよ」
 それはいい考えだと、僕は二人の胸に手を伸ばした。
 大きくて柔らかいエンナのおっぱいに、小ぶりで張りのある犬飼のおっぱい。これ以上ないほどの贅沢に、体中の血液が沸騰しそうなほどにたぎってしまう。
「ねぇマサル。私もキスしたいよ」
 僕は一度犬飼から口を離し、エンナに口づけする。すぐに舌が入ってきて、欲望のまま僕の唾液を舐め取ろうとしてくる。
「あ、猿渡君……」
 間をおかず、また犬飼に戻って舌を絡ませる。
 二人とも違う匂いがして、違う味がした。
 僕の中の雄が、否応なく昂ぶってゆく。もう犬飼への気遣いも二の次へとなってしまうほど、ただただ獣欲が燃え上がってしまう。
 腰を突き入れ、ぐりぐりと奥を抉る。
 犬飼は悲鳴を上げたが、その悲鳴は官能的な甘い喘ぎだった。
 縋りついてくるその腕がいつの間にか獣毛に覆われていた。僕の腰に絡みつかせたその脚もエンナのように柔らかな毛で包まれていた。
 尻尾が巻き付く。エンナの尻尾は犬飼のおしりをくすぐっている。という事は、これは。
「猿渡君、猿渡君っ。猿渡君! 好き、大好きっ」
「マサル、マサルぅ。あぁ、私もいくぅっ」
 犬飼の膣が一層強くキュウっと締まる。
 それがとどめだった。理性のタガの全てが外れて、ひたすら雌を貪り孕ませたいだけの欲望が溢れ出す。
 どくん、どくん。と、下半身が心臓になったかのように、精液を送り出してゆく。
 清らかだった犬飼の一番奥に、僕の魔性に穢れ切った精液が叩きつけられてゆく。
 犬飼は体を震わせながらも、僕が放つものをすべて受け止めてくれた。本来魔物娘であるエンナに放つのと同じ量の射精を、初めてにもかかわらず受け入れてくれた。
 射精の波が収まってくると、犬飼は疲れ切った様子で僕に体を預けてきた。
 エンナの方は少し余裕があるようではあったが、それでも犬飼の激しい絶頂に充てられたのか、少し気だるげな様子だった。
「猿渡君、気持ち良かった? 私、あなたと同じところに辿り着けたかな」
「あぁ、凄く気持ち良かったよ。犬飼さんはもう、僕達の仲間だ」
「えへへ。やったぁ……。これからは私も、ずっと一緒だよ」
 犬飼は嬉しそうに笑う。その目じりから、光る滴が流れ落ちた。
 犬飼は疲れ切ってしまったのか、そのまま目を閉じて意識を失ってしまう。
「寝ちゃった」
 僕は彼女の身体を抱き上げると、並んだ机の上に彼女を横たえた。
 犬飼の姿はもう人間のそれでは無かった。エンナと同じ猿の特徴を持った、魔物娘のカク猿となっていた。
「犬飼ちゃん、本当にマサルの事好きだったんだと思う。昨日も心配して保健室に行って、そこに私達が居なかったから学校中探し回っていたらしいし」
「そうだったのか。それは、悪いことしちゃったな」
「それに、すごく"溜まって"たんだと思う。自分の"好き"にも気づけずに、周りに合わせてばかりだったみたいだし。
 でも、それも限界だったみたい。魔物娘になれば人間のしがらみを全部捨てられるって、それで私とマサルと一緒に、三人で恋人同士になろうって誘ったら、少し躊躇ってはいたけどすぐに話に乗ってくれたし」
「親、厳しい人だったらしいからね。色々と自分を抑えてたんだろうね」
 僕は犬飼の髪を撫でる。犬飼はいつも真面目で、クラスメイト達からも先生からも頼りにされていた。けれどその心の内を素直に吐き出せる友達が居たのかと言えば、そういう仲間は居なかったように見えた。犬飼は大抵いつも一人だった。
 きっと家でも、親の期待に応えようとしていたのだろう。
 誰にも心の内を曝せない孤独を思うと、なんだか胸が無性に痛んだ。
「……ねぇマサル。私正しいことをしたよね。犬飼ちゃんはもう自分に嘘をつかなくてもよくなったわけだし、マサルも犬飼ちゃんも好きな人とエッチ出来るようになったんだし」
 これだけの事をしておきながら、エンナは今更ちょっと不安そうに顔を曇らせる。
 彼女としては絶対正義を実行したつもりなのだろう。しかしそれがこの人間社会において本当に正しい事なのか自信が無い。多分そういう事なのだ。
 けれどこの世界には、絶対的な正義なんてない。何が正しいかなんて、人それぞれだ。
「僕としては、エンナがそばに居てくれるだけでも十分幸せだったけどね。そこに犬飼さんが加わっても、エンナがそれでいいなら僕は何も文句は無い。
 犬飼さんの事も、僕なんかが相手でいいなら僕は頑張って彼女を幸せにしたいと思う。
 でもエンナ、大事なことが一つ抜けているよ」
 珍しく、エンナが身を竦ませる。
「それは、エンナが今回の事で幸せになれるかって事さ。
 何が正しいかなんて人それぞれだよ。だけどねエンナ、今回の事で誰がなんて言おうと、僕はエンナの味方をするよ」
 エンナはほっとしたように顔を綻ばせる。
「私も後悔は無いよ。マサルの事はこれからもずっと大好きだし、マサルの事を好きな犬飼ちゃんの事も好きだし。
 まぁ、マサルと二人きりでエッチ出来る時間は減っちゃうかもしれないけど、そこは代わりに三人一緒にすればいいだけの話だしね」
「ま、まぁ、頑張るよ」
「大丈夫だよ。犬飼ちゃんも魔物娘になったから、マサルにはこれから二人分の魔力が注ぎ込まれることになる。そうすれば単純計算で性欲も精力も倍増だよ」
「それはそれで怖いんだけどな」
 今でもエンナへの欲望を抑えるのが難しいっていうのに。このままじゃ授業中にセックスを始めてしまいそうだ。
「ねぇ、マサル。私もエッチしたいなぁ」
 エンナは机から飛び降りると、腰を振りながら歩み寄ってくる。
「私の子宮にも、マサルの精液いっぱい注いでよ」
 エンナは僕の首っ玉に腕を回して、口づけしてくる。
 あそこはまだ硬いままだった。エンナのあそこも湿っているという事は、見なくても匂いで十分に伝わってきていた。
 僕はエンナの雌穴に自分の欲棒を押し付ける。
 肉感的なおしりを撫で回し、鷲掴みにし、エンナを抱き寄せる。
 聞きなれた水音が響き、僕とエンナは一つにつながる。
 それからお互いに気の済むまで腰を振り合い、むざぼりあった。


 途中で犬飼も目覚めたが、彼女はもう驚いたり怒ったりはしなかった。ただちょっと焼きもちを妬いているかのような顔をしながら、僕らの交合に加わった。
 その日は日が暮れるまで、三人で愛し合い続けた。複数人で愛し合うのなんて初めてにも関わらず、僕達は何年も前からそうしていたかのように互いの身体をすんなりと受け入れ、求めあい続けた。
15/09/08 23:47更新 / 玉虫色
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■作者メッセージ
サブヒロイン(にしては登場シーンがいまいち少ない)犬飼さんの魔物化でした。
最初は仲が悪いけれど実はその本音は……。みたいなものを書きたいと思い、魔物化のシーンも欲張って入れてしまいました。
ただ、名前はちょっと誤解を生んでしまったかもしれませんね。犬系の魔物娘も多いですし。

(今思えば、魔物娘になり始めた犬飼が主人公に迫るという展開でも面白かったかもしれないですね。自分以上に過激な交わりを見たエンナが、更に盛り上がって……なんていうのも)

本五章までで、お話としてはほぼ終了となります。
次の章は短いエピローグのようなものとなります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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