アリスな国からさようなら○
「いやー、素晴らしい朝焼けだ!まるで曇ってるようにしか見えないよ!」
貴方は突っ込みを入れる、夕方から朝方まで寝ずにシてればフラフラになると、あと窓を開けるならシャツぐらい着なさい、と。
マッドハッターのハッターが悪態を付く
「なんだとー、まるで私が乳出し露出狂みたいじゃないかー!!」
・・・実際、周りに人がいない環境での2階とはいえ家の窓を開けて全裸で腰かけてるうちのパートナーがこちらです。
「全く、心配性なんだか・・?ん?」
すーっと、封筒が飛んでくる。
貴方はそれを拾うと、何故かは文字が読める。
【ハッター様へ】
君宛ての様だよ、貴方は渡す。
「ふーん、女王から?なになに・・・「本日夕暮れに王国に来られたし」だって?」
彼女は首を傾げる。
「クンクン、確かに王国が良く使うミントの香りがするね。へー・・・女王いてなかったしね。前に行かなかったし」
・・・!
貴方は言う、いてなかったし、確かに。と
彼女は言う。
「仕方ない、じゃあ夕方前に行くしか無いかー」
間延びした綺麗な声で言う。
貴方は、夕方前まで寝・・・「抱いてもらうしかないな!」
うん、寝ろ!貴方は大人の対応である。
「だってー、夜は営みが出来ないって事だろう?じゃあこのままヤるしかないじゃないかー!」
目の下にクマを作りながら何を・・・流石に貴方は突っ込みを入れてから尋ねる。
指を立てる、これは何本に見える?と
彼女は言う。
「3本でもニンジン!」
2本だ・・・、君の負けだから寝ようね。
そう言いながら貴方は窓を閉めて文句を言うパートナーと眠りに落ちるのだった・・・
・・・
・・
・
夕方・・・
「じゃあー、行ってくるよ!」
緑色のタキシード、すらっとしたスタイルに合わせた帽子と靴、綺麗な声と間延びした声。
貴方は、惚れ直すね。
と慣れないお世辞を吐く。
「当然じゃないか、いつだって貴方の為の私だから」
そう言って、軽く口づけすると彼女は走っていった。
・・・さてと、と貴方は夜更けに備えて眠るのだった・・・・・
・
・・
・・・
出ていくのを確認した、今度は実力行使だ・・・!
「ふっふふノふー、ニセの手紙がああまで通用するトは・・・!」
チェシャキャットことミーコが夜のとばりに紛れて姿を現す。
彼女はだらしない顔で
「これでおにいさんに夜這いをして「アア、モウミーコノカラダジャナイトイケナイヨ」なんて言わせるほど天国地獄を見せてやるんだニャ・・・」
整った顔はだらしなく、下半身からも期待と妄想で液が垂れる。
「さぁさぁ、大胆かつ慎重に中へ入るニャよ・・・!」
チェシャキャットは姿を隠すのも忍び込むのも得意だ、なんの変哲も無いキノコの家なぞ侵入してくださいと言わんばかりだ。
暗闇でも見える瞳、呼吸で上下する布団、匂いから判るオスの香り・・・
もうヤるしかない、チェシャキャットは夜戦突撃を行う。
「おにいさん、いただきまああああああああ
・・・
「あああああああああああんんんん????」
貴方は布団から這い出る、上手くいったと。
「いやー、まさかこんなにあっさり行くものとは」
マッドハッターのハッターも部屋の扉から顔を出す。
「いあー、ご協力ありがとうございまーす!」
そう言うのはトランパート、ハートの4と書かれたカードが何もない空間から現れ、そこから女性が出てくる。
貴方もハッターもニセの手紙には気が付いていた。
即座に打ち合わせした様に、開けた窓からわざと聞こえる様に会話をしていたのだ。
更に王国に行くは行ったが厄介者のチェシャキャットに狙われているので力を貸して欲しい、と頼みに行ったのだ。
捕獲するために餌の前に捕獲ネット(の様なもの)を張ったのだ。
電流の様なものが定期的にチェシャキャットを襲う。
「にゃあああん、にゃあああん」
貴方は流石にやりすぎでは・・・・?と心配の声を上げる。
クローバーの5が眼鏡を動かしながら言う。
「ああ、大丈夫ですよ心配無用です。あれはですね、強制快楽ネットと言って触れた者を魔力が交互に震える度にエクスタシーを感じる様になるというetcetc
貴方は彼女が何を言ってるのか判らないがとりあえず命の危険は無いらしい事は判った。
スペードの3がステップしながら言う。
「とにかくです、こいつはこのまま王国にひっ捕らえるです!」
ハートの6が胸を揺らしながら答える。
「大丈夫ですよ〜少しお灸をすえるだけですから〜」
ハッターは青い顔をする。
「・・・・お灸ね・・・」
貴方は言い知れぬ何かを感じたが、とりあえずの平和が訪れた方に胸を撫で下ろす。
・・・
・・
・
それから少ししたある日。
いつものお茶会、貴方たちはいつも少し早くに着く。
「今日も元気だー、精液がうみゃひ」
貴方は問答無用で頬を抓る。
「こらこら・・・昨日咥えてくれと言ったのは君のふぉふふぁ」
何度こんなことがあっても流石に貴方は恥ずかしいものは恥ずかしいと思った。
そうこうしている内にいつもの連中が集まってくる、一人を除いて。
貴方は言う、ジャフが来ないね?と
「あ〜ん?君はあの娘が気になるのかい?そうなのかい?」
酔っ払い親父か君は。
ドーマウスのマーチャンが目を閉じながら答える。
「あの娘ならなんでも自分だけの止まり木を見つけたとか、そんな事を言ってたようzzz」
そのままテーブルに落ちて眠りにつく。
貴方は、良かった良かったと答える。
ハッターも
「良かった良かった」
何が良かったのかと突っ込むのは野暮なので貴方はスルーをする。
・・・
・・・こそこそと後からやって来る姿が貴方の目に映る。
長めのスカート、飾り気の無いメイド服、特徴の有る猫耳・・・
空気が変わる、ハッターの目つきが変わる。
「・・・何をしに来たのかな?ミーコ殿?」
酷く冷たい声で言う、目の前に彼女は紛れもなくチェシャキャットのミーコである。
・・・しかし貴方の目からも様子が違う様に見える。
身体の特徴を隠す様な服、余裕は無くオドオドとした表情、何となく力の無い雰囲気・・・・
周りの殺気に耐えるように彼女は言う。
「あ、あの。今日は皆さんに謝りに来ました・・・・・・」
ハッターは警戒を解かない。
マーチャンが目を覚ます。
「ハッター、彼女を良く見てみな。魔力がほとんど無い」
ハッターは眼をぱちくりとさせる「確かに・・!?」と
「僕は魔力が高いけど魔力量は余り無い、ハッターは逆だね魔力は低いけど量は多い」
どうやら説明をしてくれているようだ。
「とくこうが高いかとくぼうが高いかの違いだね」
貴方は、懐かしいなオイ、と目を細めて思う。
「今の彼女は魔力も魔力量も無い、最低限あるぐらいだね。恐ろしいね、王国の罰ってのは・・・」
そう言う彼女の額に汗が流れる。
「あ、あの・・・その・・・・」
力なくミーコが言うが他の魔物娘たちはたじろぎながらもここはさんざんされた悪行の復讐の時とにじり寄っていく。
貴方は・・・
ミーコをテーブルに座らせてマーチャンの紅茶を勧める。
ハッターが何か言いたそうだったが、寸出で止まる。
マーチャンは紅茶の追加を入れる。
周りの魔物娘たちもなし崩し的に席に戻っていく。
貴方は特に何も言わなかった。
ハッターは終始、機嫌が悪そうだったが貴方は後で諫めておこうと思った。
マーチャンに尋ねる。
この罰はいつ終わるのかと。
「さあね、流石に僕も判らないよ。それ相応の事が起こったなら解けるかもしれないけどね」
ハッターは不機嫌そうに言う。
「私にとって大事な人を狙ったんだよ?それでもその大事な貴方は!貴方は許すと言うの?!」
貴方は、それでも。と答える。
ますますプンプンと不機嫌になるハッター。
これは3日3晩はかかるな・・・と覚悟する。
しかしあちこちでペコペコと謝る彼女に近々何か悪い事じゃない何かがある事を貴方は直感した・・・・
ここは不思議の国、そしておとぎの国、バッドエンドなんかで終わらないハズ。
貴方はそう思うと紅茶を飲み干した。
・・・
・・
・
彼は事故に会った。
自分の大切な猫が車に引かれそうになっていたからだ。
その猫はいつも臆病で、彼の姿が無い時は寝ているばかりだった。
彼が帰ってくると真っ先に飛びついて行った。
彼もまた猫を愛おしく思っていた。
その日はたまたま帰りが遅く、外へ出る事が無いその猫が外へ飛び出して彼の元へ走っていた。
タイミングが悪かった、一台の車が走ってきていた。
彼は猫を救おうと飛び出したが・・・
覚えているのは車と接触した事ぐらいだった。
白い霧、視界は通らない。
彼は途方に暮れていた、進めばいいのか戻ればいいのか。
思うのは・・・・ただ後悔だけ。
自分がおそらくは、亡くなったことを。
ここは天国かそれとも地獄か、その道中か。
まだ高校生になったばかりの彼にそれを判断するのは難しい。
ただ涙だけがこぼれる、優しかった両親、頼れる兄、いつも心配してくれる妹・・・
そして助けようとした猫は助かったのか・・・
重い足取りが歩く気力と体力を奪うのは間もなくだった。
膝を付き、動けなくなるまでそう長い時間では無かった・・・
・・・
「大丈夫・・・?しっかりして・・・」
か細い声が聞こえる、差し出される大きな葉で作られた器で水。
彼は必至でそれを飲む、大半はこぼしたが甘い水は彼の意識を戻すのに十分だった。
・・・覗き込む紫色の瞳と髪、大きな耳。
彼は再び意識をはっきりすると彼女の姿を認識する。
「ここは・・・」
少なくとも現実では無い事は判る、彼は落胆するも目の前の女性に気が付く。
「ここは不思議の国・・・貴方はここで倒れていました」
彼は思い出す、家族の事、猫の事、自分の名前、自分に何があったか・・・
涙が再び流れる、男なのにだ。
目の前の女性がゆっくりと話す。
「・・・辛い事があったのでしょう、無理に思い出さ無くても大丈夫・・・」
そう言われると彼は幾ばくか落ち着く。
「ありがとう・・・俺は・・」
自分の名前を告げる、何があったかを軽く話す、しかし・・・
「思い出せない・・・!?」
家族の名前、友人の名前、そして何より猫の名前。
あの笑顔、あの遊んだ光景、あの穏やかな時間。
自分の名前以外は言葉として思い出せない。
彼は恐慌とも畏怖とも付かない世界へ震えていた。
・・・
自然と抱きしめていた、なぜこんなことをしているのか彼女自身も判らなかったが、次第に落ち着いていく彼に自分の行動は無駄ではなかった事を自覚する。
「・・・私は魔物娘、チェシャキャットと言われる種族。・・・ちょっと故有ってこの場所にいるの」
今いる場所は、不思議の国でも異質な場所。
明るくは無い森、澱んだ空気、変わらない景色・・・不思議の国にしては停滞した場所だった。
落ち着いた彼は言う。
「・・・森に羽の生えた魚が飛んでいる・・・」
彼女は答える。
「・・・?森で魚が飛ぶのは当たり前だと思うけど?」
彼は
「ええ、いやおかしいだろ!?」
彼は少し怯える彼女の姿を見る。
「あ、ああ。ごめん、俺が悪いなゴメン」
「・・・大丈夫、色々あっただだろうし。混乱しているでしょう?とりあえず今は私の安全な住処へ行きましょう・・・」
彼は・・・自分をどうすればいいのか判らず彼女に素直に付いていく。
道中彼女は簡単にこの世界を説明してくれた、自分が何かあったから此処へ来たことも。
暗くも明るい住処へ付くと彼のお腹が盛大に鳴る。
彼の顔が赤くなる、彼女は少し微笑み「今、ごはんの用意をするね」と
彼は此処に来て初めての食事だった、この飽食の時代、お腹が空けばコンビニでもなんでも行ってお金さえ出せば満たされる世界。
今はそれを可能にするものは無く、いかに前の世界が優しかった事に彼は気が付く。
・・・
差し出された食事に夢中になる、彼女は眼を丸くしてみている。
流石は男子高校生、あっという間に平らげる。
よほどお腹が減っていたのもあるが彼女の出す食事が美味だったのもあった。
「美味しかったー!!」彼は初めて微笑む。
「お粗末様、良かった口に合って」
流石に人間相手の食事など初めて作る、もともとそんなにまともに作ったことが無かったのもあったが・・・
彼は思い出す、そういえば名前を聞いてなかったことを
儚げに微笑む紫色の綺麗な顔、髪と瞳、テレビでしか見たことのないメイド服、猫を彷彿させる大きな耳の彼女を
「そうだったね、私は
「ミーコ」
彼の中でノイズが走る、忘れていたひとつを。
いつも臆病な姿を、自分の姿を見ると飛びついてきた姿を、あの事故の時の事を。
彼は思い出す。
「・・・ミーコ、ミーコ。そうだミーコだ!!俺の猫の名前!ミーコだ!!!」
彼女は困惑する。
彼は泣いて喜んでいる。
「・・・そうだミーコだ!生きていたんだ!」
彼女は困惑する、恐らく元居た世界の何かと勘違いしているのだと。
そのミーコとは違うのだと、そう訂正しようと口を開く。
「・・・・ち・・・」
彼女は再び、口を閉じる。もし彼に違うと言えば落胆し、今度こそ地の底へ落ちるように落ち込むだろう。
・・・彼女は嘘をつく事にした、おそらく優しい嘘。
「・・・そうよ!ミーコよ、貴方の・・・えっと近くにいたね!」
彼は涙を流しながらうん、うんと彼女の手を取る。
・・・しかしまずい、彼女はそのミーコの事は全く知らない。さらに嘘を重ねる。
「・・・ごめんね、私はその時の記憶は無いの」チクリと痛む。
彼はそれでも、と嬉しそうだ。その顔を見ると嬉しくなったがそれは嘘で表示したもの。
彼の身体が船を漕ぎ始める、疲れていたのだろう無理はない。
寝床へ誘導するとすぐさま眠りに落ちる。
彼の短い髪を触る。
これからどうしようと悩みながらまどろみに彼女も落ちていく・・・
貴方は突っ込みを入れる、夕方から朝方まで寝ずにシてればフラフラになると、あと窓を開けるならシャツぐらい着なさい、と。
マッドハッターのハッターが悪態を付く
「なんだとー、まるで私が乳出し露出狂みたいじゃないかー!!」
・・・実際、周りに人がいない環境での2階とはいえ家の窓を開けて全裸で腰かけてるうちのパートナーがこちらです。
「全く、心配性なんだか・・?ん?」
すーっと、封筒が飛んでくる。
貴方はそれを拾うと、何故かは文字が読める。
【ハッター様へ】
君宛ての様だよ、貴方は渡す。
「ふーん、女王から?なになに・・・「本日夕暮れに王国に来られたし」だって?」
彼女は首を傾げる。
「クンクン、確かに王国が良く使うミントの香りがするね。へー・・・女王いてなかったしね。前に行かなかったし」
・・・!
貴方は言う、いてなかったし、確かに。と
彼女は言う。
「仕方ない、じゃあ夕方前に行くしか無いかー」
間延びした綺麗な声で言う。
貴方は、夕方前まで寝・・・「抱いてもらうしかないな!」
うん、寝ろ!貴方は大人の対応である。
「だってー、夜は営みが出来ないって事だろう?じゃあこのままヤるしかないじゃないかー!」
目の下にクマを作りながら何を・・・流石に貴方は突っ込みを入れてから尋ねる。
指を立てる、これは何本に見える?と
彼女は言う。
「3本でもニンジン!」
2本だ・・・、君の負けだから寝ようね。
そう言いながら貴方は窓を閉めて文句を言うパートナーと眠りに落ちるのだった・・・
・・・
・・
・
夕方・・・
「じゃあー、行ってくるよ!」
緑色のタキシード、すらっとしたスタイルに合わせた帽子と靴、綺麗な声と間延びした声。
貴方は、惚れ直すね。
と慣れないお世辞を吐く。
「当然じゃないか、いつだって貴方の為の私だから」
そう言って、軽く口づけすると彼女は走っていった。
・・・さてと、と貴方は夜更けに備えて眠るのだった・・・・・
・
・・
・・・
出ていくのを確認した、今度は実力行使だ・・・!
「ふっふふノふー、ニセの手紙がああまで通用するトは・・・!」
チェシャキャットことミーコが夜のとばりに紛れて姿を現す。
彼女はだらしない顔で
「これでおにいさんに夜這いをして「アア、モウミーコノカラダジャナイトイケナイヨ」なんて言わせるほど天国地獄を見せてやるんだニャ・・・」
整った顔はだらしなく、下半身からも期待と妄想で液が垂れる。
「さぁさぁ、大胆かつ慎重に中へ入るニャよ・・・!」
チェシャキャットは姿を隠すのも忍び込むのも得意だ、なんの変哲も無いキノコの家なぞ侵入してくださいと言わんばかりだ。
暗闇でも見える瞳、呼吸で上下する布団、匂いから判るオスの香り・・・
もうヤるしかない、チェシャキャットは夜戦突撃を行う。
「おにいさん、いただきまああああああああ
・・・
「あああああああああああんんんん????」
貴方は布団から這い出る、上手くいったと。
「いやー、まさかこんなにあっさり行くものとは」
マッドハッターのハッターも部屋の扉から顔を出す。
「いあー、ご協力ありがとうございまーす!」
そう言うのはトランパート、ハートの4と書かれたカードが何もない空間から現れ、そこから女性が出てくる。
貴方もハッターもニセの手紙には気が付いていた。
即座に打ち合わせした様に、開けた窓からわざと聞こえる様に会話をしていたのだ。
更に王国に行くは行ったが厄介者のチェシャキャットに狙われているので力を貸して欲しい、と頼みに行ったのだ。
捕獲するために餌の前に捕獲ネット(の様なもの)を張ったのだ。
電流の様なものが定期的にチェシャキャットを襲う。
「にゃあああん、にゃあああん」
貴方は流石にやりすぎでは・・・・?と心配の声を上げる。
クローバーの5が眼鏡を動かしながら言う。
「ああ、大丈夫ですよ心配無用です。あれはですね、強制快楽ネットと言って触れた者を魔力が交互に震える度にエクスタシーを感じる様になるというetcetc
貴方は彼女が何を言ってるのか判らないがとりあえず命の危険は無いらしい事は判った。
スペードの3がステップしながら言う。
「とにかくです、こいつはこのまま王国にひっ捕らえるです!」
ハートの6が胸を揺らしながら答える。
「大丈夫ですよ〜少しお灸をすえるだけですから〜」
ハッターは青い顔をする。
「・・・・お灸ね・・・」
貴方は言い知れぬ何かを感じたが、とりあえずの平和が訪れた方に胸を撫で下ろす。
・・・
・・
・
それから少ししたある日。
いつものお茶会、貴方たちはいつも少し早くに着く。
「今日も元気だー、精液がうみゃひ」
貴方は問答無用で頬を抓る。
「こらこら・・・昨日咥えてくれと言ったのは君のふぉふふぁ」
何度こんなことがあっても流石に貴方は恥ずかしいものは恥ずかしいと思った。
そうこうしている内にいつもの連中が集まってくる、一人を除いて。
貴方は言う、ジャフが来ないね?と
「あ〜ん?君はあの娘が気になるのかい?そうなのかい?」
酔っ払い親父か君は。
ドーマウスのマーチャンが目を閉じながら答える。
「あの娘ならなんでも自分だけの止まり木を見つけたとか、そんな事を言ってたようzzz」
そのままテーブルに落ちて眠りにつく。
貴方は、良かった良かったと答える。
ハッターも
「良かった良かった」
何が良かったのかと突っ込むのは野暮なので貴方はスルーをする。
・・・
・・・こそこそと後からやって来る姿が貴方の目に映る。
長めのスカート、飾り気の無いメイド服、特徴の有る猫耳・・・
空気が変わる、ハッターの目つきが変わる。
「・・・何をしに来たのかな?ミーコ殿?」
酷く冷たい声で言う、目の前に彼女は紛れもなくチェシャキャットのミーコである。
・・・しかし貴方の目からも様子が違う様に見える。
身体の特徴を隠す様な服、余裕は無くオドオドとした表情、何となく力の無い雰囲気・・・・
周りの殺気に耐えるように彼女は言う。
「あ、あの。今日は皆さんに謝りに来ました・・・・・・」
ハッターは警戒を解かない。
マーチャンが目を覚ます。
「ハッター、彼女を良く見てみな。魔力がほとんど無い」
ハッターは眼をぱちくりとさせる「確かに・・!?」と
「僕は魔力が高いけど魔力量は余り無い、ハッターは逆だね魔力は低いけど量は多い」
どうやら説明をしてくれているようだ。
「とくこうが高いかとくぼうが高いかの違いだね」
貴方は、懐かしいなオイ、と目を細めて思う。
「今の彼女は魔力も魔力量も無い、最低限あるぐらいだね。恐ろしいね、王国の罰ってのは・・・」
そう言う彼女の額に汗が流れる。
「あ、あの・・・その・・・・」
力なくミーコが言うが他の魔物娘たちはたじろぎながらもここはさんざんされた悪行の復讐の時とにじり寄っていく。
貴方は・・・
ミーコをテーブルに座らせてマーチャンの紅茶を勧める。
ハッターが何か言いたそうだったが、寸出で止まる。
マーチャンは紅茶の追加を入れる。
周りの魔物娘たちもなし崩し的に席に戻っていく。
貴方は特に何も言わなかった。
ハッターは終始、機嫌が悪そうだったが貴方は後で諫めておこうと思った。
マーチャンに尋ねる。
この罰はいつ終わるのかと。
「さあね、流石に僕も判らないよ。それ相応の事が起こったなら解けるかもしれないけどね」
ハッターは不機嫌そうに言う。
「私にとって大事な人を狙ったんだよ?それでもその大事な貴方は!貴方は許すと言うの?!」
貴方は、それでも。と答える。
ますますプンプンと不機嫌になるハッター。
これは3日3晩はかかるな・・・と覚悟する。
しかしあちこちでペコペコと謝る彼女に近々何か悪い事じゃない何かがある事を貴方は直感した・・・・
ここは不思議の国、そしておとぎの国、バッドエンドなんかで終わらないハズ。
貴方はそう思うと紅茶を飲み干した。
・・・
・・
・
彼は事故に会った。
自分の大切な猫が車に引かれそうになっていたからだ。
その猫はいつも臆病で、彼の姿が無い時は寝ているばかりだった。
彼が帰ってくると真っ先に飛びついて行った。
彼もまた猫を愛おしく思っていた。
その日はたまたま帰りが遅く、外へ出る事が無いその猫が外へ飛び出して彼の元へ走っていた。
タイミングが悪かった、一台の車が走ってきていた。
彼は猫を救おうと飛び出したが・・・
覚えているのは車と接触した事ぐらいだった。
白い霧、視界は通らない。
彼は途方に暮れていた、進めばいいのか戻ればいいのか。
思うのは・・・・ただ後悔だけ。
自分がおそらくは、亡くなったことを。
ここは天国かそれとも地獄か、その道中か。
まだ高校生になったばかりの彼にそれを判断するのは難しい。
ただ涙だけがこぼれる、優しかった両親、頼れる兄、いつも心配してくれる妹・・・
そして助けようとした猫は助かったのか・・・
重い足取りが歩く気力と体力を奪うのは間もなくだった。
膝を付き、動けなくなるまでそう長い時間では無かった・・・
・・・
「大丈夫・・・?しっかりして・・・」
か細い声が聞こえる、差し出される大きな葉で作られた器で水。
彼は必至でそれを飲む、大半はこぼしたが甘い水は彼の意識を戻すのに十分だった。
・・・覗き込む紫色の瞳と髪、大きな耳。
彼は再び意識をはっきりすると彼女の姿を認識する。
「ここは・・・」
少なくとも現実では無い事は判る、彼は落胆するも目の前の女性に気が付く。
「ここは不思議の国・・・貴方はここで倒れていました」
彼は思い出す、家族の事、猫の事、自分の名前、自分に何があったか・・・
涙が再び流れる、男なのにだ。
目の前の女性がゆっくりと話す。
「・・・辛い事があったのでしょう、無理に思い出さ無くても大丈夫・・・」
そう言われると彼は幾ばくか落ち着く。
「ありがとう・・・俺は・・」
自分の名前を告げる、何があったかを軽く話す、しかし・・・
「思い出せない・・・!?」
家族の名前、友人の名前、そして何より猫の名前。
あの笑顔、あの遊んだ光景、あの穏やかな時間。
自分の名前以外は言葉として思い出せない。
彼は恐慌とも畏怖とも付かない世界へ震えていた。
・・・
自然と抱きしめていた、なぜこんなことをしているのか彼女自身も判らなかったが、次第に落ち着いていく彼に自分の行動は無駄ではなかった事を自覚する。
「・・・私は魔物娘、チェシャキャットと言われる種族。・・・ちょっと故有ってこの場所にいるの」
今いる場所は、不思議の国でも異質な場所。
明るくは無い森、澱んだ空気、変わらない景色・・・不思議の国にしては停滞した場所だった。
落ち着いた彼は言う。
「・・・森に羽の生えた魚が飛んでいる・・・」
彼女は答える。
「・・・?森で魚が飛ぶのは当たり前だと思うけど?」
彼は
「ええ、いやおかしいだろ!?」
彼は少し怯える彼女の姿を見る。
「あ、ああ。ごめん、俺が悪いなゴメン」
「・・・大丈夫、色々あっただだろうし。混乱しているでしょう?とりあえず今は私の安全な住処へ行きましょう・・・」
彼は・・・自分をどうすればいいのか判らず彼女に素直に付いていく。
道中彼女は簡単にこの世界を説明してくれた、自分が何かあったから此処へ来たことも。
暗くも明るい住処へ付くと彼のお腹が盛大に鳴る。
彼の顔が赤くなる、彼女は少し微笑み「今、ごはんの用意をするね」と
彼は此処に来て初めての食事だった、この飽食の時代、お腹が空けばコンビニでもなんでも行ってお金さえ出せば満たされる世界。
今はそれを可能にするものは無く、いかに前の世界が優しかった事に彼は気が付く。
・・・
差し出された食事に夢中になる、彼女は眼を丸くしてみている。
流石は男子高校生、あっという間に平らげる。
よほどお腹が減っていたのもあるが彼女の出す食事が美味だったのもあった。
「美味しかったー!!」彼は初めて微笑む。
「お粗末様、良かった口に合って」
流石に人間相手の食事など初めて作る、もともとそんなにまともに作ったことが無かったのもあったが・・・
彼は思い出す、そういえば名前を聞いてなかったことを
儚げに微笑む紫色の綺麗な顔、髪と瞳、テレビでしか見たことのないメイド服、猫を彷彿させる大きな耳の彼女を
「そうだったね、私は
「ミーコ」
彼の中でノイズが走る、忘れていたひとつを。
いつも臆病な姿を、自分の姿を見ると飛びついてきた姿を、あの事故の時の事を。
彼は思い出す。
「・・・ミーコ、ミーコ。そうだミーコだ!!俺の猫の名前!ミーコだ!!!」
彼女は困惑する。
彼は泣いて喜んでいる。
「・・・そうだミーコだ!生きていたんだ!」
彼女は困惑する、恐らく元居た世界の何かと勘違いしているのだと。
そのミーコとは違うのだと、そう訂正しようと口を開く。
「・・・・ち・・・」
彼女は再び、口を閉じる。もし彼に違うと言えば落胆し、今度こそ地の底へ落ちるように落ち込むだろう。
・・・彼女は嘘をつく事にした、おそらく優しい嘘。
「・・・そうよ!ミーコよ、貴方の・・・えっと近くにいたね!」
彼は涙を流しながらうん、うんと彼女の手を取る。
・・・しかしまずい、彼女はそのミーコの事は全く知らない。さらに嘘を重ねる。
「・・・ごめんね、私はその時の記憶は無いの」チクリと痛む。
彼はそれでも、と嬉しそうだ。その顔を見ると嬉しくなったがそれは嘘で表示したもの。
彼の身体が船を漕ぎ始める、疲れていたのだろう無理はない。
寝床へ誘導するとすぐさま眠りに落ちる。
彼の短い髪を触る。
これからどうしようと悩みながらまどろみに彼女も落ちていく・・・
18/09/22 23:51更新 / ひいらぎさん@
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