連載小説
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アリスな国からまた明日●
彼は夢を見た、愛猫のミーコの夢。



彼女はいつも彼と一緒にいた、小さい頃から一緒にいたせいもあっていつでもそばにいた。



親に怒られて泣いた時、独り不安に駆られて震えた時、機嫌が悪くて膨れていた時。



彼女はそっとこぼれる涙を舐めてくれた、これからもずっと居てくれると信じていた。


彼女は彼から背を向けて、歩く。


追いかけても遠ざかる、足は砂に取られ、叫ぶも車が近づく・・・



「・・・」


目を開けると、不安そうな紫色の瞳が目に入る。




そうだ、彼は異世界に居る事を自覚する。


再び涙がこぼれる、そっと彼女が抱きしめ背中を叩いてくれる。


・・・


朝食を作る、彼は喜んで食べてくれるだろうか。


この場所での採れる食べ物は乏しい、もってあと2回だろう。


ここを離れれば幾らでもあるが、そこへ行けば少なからず自分を狙う魔物娘に会うだろう。


今の魔力ではどんな相手でも太刀打ち出来ない、そう思い今の暗い森へひっそりと過ごしていた。


消え入りそうな彼をほっとけなかった、何故かは判らなかったが少なくとも前の自分なら見捨てていただろう。


この世界で出会うのは全て運命だと女王は言う、彼もそうなのだろうか・・・答えは煙の様に立ち消えていく・・・



彼は良く食べた、そこまで得意ではない料理だったが嬉しく思う。


彼が笑顔になる度、嬉しくもある反面、嘘が心に突き刺さる。


自分はその思っているミーコでは無いのだ。




嘘は誰よりも付いた本人を襲う、彼女自身がそれを自覚する。



そしてそれ以外にも短絡的な問題も露呈する、食料が無い。

それは外へ行けばいい、それよりもだ、彼はまだここにいるという事は

まだ生きている、元の世界へ帰る事も出来るはずだ、・・・女王だ、女王に頼めば戻してくれる筈だ。

代償が何であろうとも、たとえこの目であろうが腕であろうが命であろうが

今の彼女に恐ろしいものは何もない、ただ彼の為。

最後の最後で、嘘だったと言えばいい。

彼はきっと救われるのだ、そう。

出来れば早い方がいい・・・・・・




「あのね、もう直ぐ食べる物が無くなるの」


そう切り出す、それは嘘ではない。


「あと君をね、元の世界に戻せるかもしれない。この世界の女王にお願いするの」


これもきっと嘘ではない。


「そこで私もね、戻れたらいいなって。でもちょっと問題があるんだ」


少しずつ嘘を盛っていく。



彼は素直に聞いてくれている、戻れる事、外へ出る事、私も元の所へ行く事。


どれも目を輝かせて聞いている。



「道案内を私がするでしょ、でも私は他の魔物娘と会う訳には行かない。狙われているからね」


少し盛る。


「君も見つかるとどんな目に逢わされるか判らないし、出来れば他の魔物娘に見せたく無いの」


さらに盛る。


「私だけなら会っても回避するのは容易だわ、だからこれを用意したわ」


自分でも苦しい言い訳、彼は素直に聞き入れてくれている。ミーコを信じると。


「姿を隠す頭巾、これを付ければ自分からも、または他の相手からも見えないわ。でも一度着て脱ぐと半日は使えなくなる」


昔、いたずらで盗った道具が役に立ちそうだ。


「でも音も存在すらも見えなくなる、でも手を握っていれば握っているお互いだけは認識出来るの」


私は彼の手を握ってから頭巾を被らせる、姿が消える、彼の呼吸音も消える。


・・・


ミーコを信じるとは言ったもののこんな頭巾で本当に全てを消せるのか。


手を握ってから頭巾を被る・・・ミーコの姿が見えなくなる、声も聞こえない。


びっくりして手を放してしまった!


慌ててて手をあちこちにペタペタと伸ばす・・・ふにっと柔らかいものに触れて彼女がまだ前に居る事を認識する。


・・・ああ、頭巾を取ればいいんだ。

片手で脱ぐともう片手は彼女の胸を触っていた。


・・・彼女は一ミリもその場から動いておらず勝手に混乱して胸を触れてしまったようだ。


彼女は困った顔をしていたが胸に触ったことは怒ってない様だ・・・


慌てて放すも手に残った柔らかさは消えない、謝るも大丈夫と微笑んでくれた。




彼は、彼女は相手が異性だという事を認識してしまった時間でもあった。






頭巾の効果が再使用できる半日後に此処を出る事にする。


此処での最後の食事だ。


「さぁどうぞ」


彼は良く食べてくれた、正直自分もよく食べた。


あの日以来食が細くなっていた、食べない日もあった。


食べる笑顔の彼につられて自分も食べた、もっと見ていたいと思う反面使命を果たさなければ・・・と




彼と手を繋ぎ、住処から出る。

頭巾をもう被せている、存在を証明するのは繋いでいる手の感覚のみ。



王国までは3,4日あれば徒歩でもつけるだろう、魔力があれば瞬きする間につけるはずなのに・・・


しばらくは誰とも会わなかった、幸運だ。


彼も素直に手を繋いで歩いてくれている、人の体力がどれぐらいかはわからないが早目に休んだ方が良いだろう。


そう思ってる矢先に二人、近くに寄ってくる、悪意は・・・・感じられない。


・・・どうやら魔力を落とされた自分を心配して見に来てくれたらしい。


いくつかのお土産をくれた、正直ありがたい。


あれだけ悪戯をしたにも関わらず、だ。


お礼を言うと彼女たちは去っていた、もうしばらくしたら誰の目に触れないところで休もう・・・




彼の頭巾を取る、彼の笑顔が見れた、良かった・・・元気そうだ、大丈夫か尋ねる。


「大丈夫さ!俺はこれぐらいじゃ平気だぜ!」


しかし少し無理してるのは判る、貰った土産をその日の食事にする。




2日目・・・

砂に足を取られるエリア、此処を抜ければ王国までもう少し・・・


彼が心配になる、歩く速度が落ちている、早めに休もう・・・


また二人ほどいる・・・今度は悪意に満ちているのが判る・・・!!!


ヴァルキリーだ。



「・・・あそこにチェシャキャットが居るぞ?」
「ああ、散々我らに煮え湯を喰らわしてくれた奴だな?お礼をしないといけないな?」


自分の悪行の罪を呪う、とにかく逃げるために走るしかない。

彼を引く力を強くして走る準備をする、彼も判ってくれたようだ。



奴らの動きが速い。


「そらっ、喰らうがいい!」


認識するより早く、剣で飛ばされる、まだ手を繋いでる。

少しでも逃げなければ・・・


「もう一撃!」


・・・今度は更に強い衝撃、彼との手も放されてしまう、少ない魔力が更に失われたか起き上がろうとする身体の動きが鈍い。



・・・


いきなり何かの衝撃が走る、それでも手を繋いでいる。恐らく敵に見つかったのか?とにかく走るが2回目で放されてしまう。


ミーコも、敵の姿も見えない。しかしこの頭巾は絶対外すなと言われているが・・・


・・・


「そらそらどうした?」


何度も剣で叩きのめされる、ダメージはそう無いが魔力が無くなるのが辛い。

自分の日頃の行いが、ここで足を引っ張るとは・・・彼は・・・どこだろう・・・


・・・


きっとミーコに何かあったに違いない、彼は頭巾を外すと羽が生えた二人の剣撃にミーコが斬られている。

事故の瞬間がフラッシュバックする、足を砂に取られるのも気にせず走り出す。もう、あんな事にはさせないと心が燃えた。


「やめろおおおおおおおおおおおお!!」


速度を乗せて1人に体当たりする。


「何っ?人間?」


不意を突かれたか、体当たりに成功する、もう一人も驚いてる隙に脇に蹴りを入れる。


「グッ」


仰け反った瞬間にミーコへ駆けつける、ぐったりしているのは判るが掛ける言葉よりも先に逃げる事を優先する。

「大丈夫だ、ミーコ、俺が守ってやるからな!」


思ったよりも軽い身体、彼女を抱いて走り逃げる。



・・・



「人が同行していたとは・・・事情を聴かねばなるまい・・・傷はつけずに足止めを!」


1人が捕獲のスキルを彼に投げる。


回避も虚しい、彼女たちの攻撃は必中、避けれる筈も無い。



・・・

痛みはない、痛みは無いが足の動きが鈍くなる・・・

しかしあの時に当たった衝撃に比べれば軽い。

彼は尚も止まらなかった。


・・・


「おい!」
「ああ!」


2つ目の魔法が彼に飛ぶ、再び当たる。

今度は確実に足は動きを止め、自分を地面に叩き付ける。

それでもミーコは放さなかった、離させなかった。

「・・・今度こそ、俺が・・・守るんだ・・・」

無様にも這って逃げようとする、亀よりも遅い動きだ。

意思とは裏腹に意識も拘束される。


・・・


落ちた衝撃で目を覚ます、目の前には頭巾を外れ、彼が抱きしめている。

恐らく自分を助けようと・・・


彼の足には鈍足と拘束のスキル、空にはこちらをどうするか吟味するヴァルキリー2体。

怒りが沸く、自分の悪行のせいで自分だけを捕らえるならまだしも彼まで巻き沿いになった。

自分の中で何かが弾ける。



・・・


「足は止めた、彼を保護し直ぐ様治療、猫は適当に始末する」
「はっ」

そう向かった瞬間・・・・二人の姿が消える。


「えっ、そんなどこへ「此処だヨおお」


・・・


魔力が戻った、神には叶わないが神の力も凌ぎ、騙し、欺く力が。

彼の姿をまずは鋭角に見えない状態にする、次に二人に全力でお礼を申し上げることにする。


・・・


「こっの、クソヴァルキリーがああああああああああああ」


空中に出来た影からかかと落としが相方に喰らわせられるのが見える。


「ぐェ・・はっ」

地面に叩き付けられる相方、きっとチェシャキャットの攻撃だ、直ぐに迎撃しなければ!


「こっちだよ、そっちかも、あっちだよ」


見渡すが見当たらない。

「どこだ!卑怯者!出てこい!」


悪意の渦が四方から来る。


「卑怯だと・・・っこの腐れ外道があああああああああ」

聞こえた瞬間、恐ろしい衝撃が脳天に来た。


・・・


2体の脳天にかかと落としを喰らわせた、たっぷりと魔力を込めた一撃だ、しばらくは起き上がれまい。


そんなのはどうでもいい、彼は!?



倒れた衝撃で切った額から血を流している・・・!

くそっ!解除だけなら兎も角回復させる技なんて真面目に覚えてないぞ!?


いつも自分だけの為の特技だけを覚えていた、まさかこんな時に・・・!


「時間は掛かるが、集中すれば・・・!」



どれだけかかっただろうか、苦手すぎるスキルは3分?5分?10分かもしれない。


彼の怪我は治っている、流した血もそのまま戻す事も出来た。



「ああ・・・良かった・・・」


しかし同時に魔力が戻ったのだ


・・・よく考えたらこんな奴は放置しても一向に構わない。

いち早くあのキノコと人間に復讐を・・・!



・・・


此処まで来たんだ、最後にネタばらしをして絶望する顔を見るのも良いだろう。

もう少し茶番を演じてやろう。

優しい優しい顔と姿に戻す、彼が起きる前に・・・


・・・


彼は目を覚ます、一先ず安堵する。


「やぁ、おはよう。なんとか助かったニャ・・ですわよ」

思わず素が出かけた、ややぎこちなく成ったが大丈夫だろう。


彼が抱き付いてくる、良かった良かったと、よく泣くやつだ。


少しときめきかける、思わず抱きしめ替えそうとしたが彼はすぐにに離れる。


彼は赤い顔をして、女性に対して失礼だね!ゴメン!と謝罪が来る。



少し残念なような・・・いやいやいや!私の好みはもっと大人な男性だ、こんなガキんちょ・・・ならこの鼓動は


助けてもらったのは事実だし…気が弱くなってたし吊り橋効果かナニかだろう、彼女は無理矢理納得する。

「と、ともかくニャ…頭巾の効果も切れてるしまニャ襲われるかもしれないから離れるニ、ですよ」


かみっかみだ、兎に角落ち着く場所に移動しないと・・・彼も疑う事なくついてきてくれる…





・・・


正直、料理に不安しかなかった。

以前ならもっと素直に作れていたが今は雑というか、人の為に何かするとはこんなに大変とは。


移動時は保存食ばかりなので問題はなかったが夜は次の日のために手料理を作っていた。


くそっ!どうやって作っていたか自分に問いたい。


・・・


少し焦がしたが大丈夫なはずだ、バレやしないさ。

現に彼は嬉しそうに食べているし、チョロいもんだ。

問題は明日、どうやって忍び込むか・・・むしろ閃いた。


・・・


打ち合わせを事前に彼としておく、頭巾は外さないでと。


正面突破するがそれは伏せておき、あのトランパートどもを盛大に混乱させてから、こっそり大胆に女王の所へ行くのだ・・・

数字のやつらなら兎も角、ジャックからエース級は厄介だがなんとかなるだろう、ククク楽しみだ。

後は、知らない。



・・・
・・




「敵襲!敵襲!」
「何をしている!相手は猫一匹だろうが!?」
「それが、まるで雲を掴むような隠れかたをして目的がさっぱりで」
「猫です、猫がここにいます」
「また宝物庫を荒らすつもりか?罰の腹いせに来たか、警戒を続けろ!多少可愛がっても構わん!」



・・
・・・

「おーおー、やっテるねぇ〜でも。猫はここにいませんよろしくお願いしますってなケケケ」


正面突破は上手くいった、勿論こちらは姿は隠すがややこしい猫の姿を模倣したものをあちこちに幻惑として出しているのだ。


今頃パニックだろうが所詮猫だましバレるのも時間の問題だ、さっさと女王の所へ向おう。


・・・・・・



頭巾を外される、彼はずっと導いてくれたミーコを見るがそれは。


妖しく笑う顔、身体を強調した露出の高い服、禍禍しい雰囲気・・・

・・・


彼は幻滅しただろう、さっさと終わらせたい。

「おい女王!こちらの殿がたは間違いで此処に来た迷い人だ!」

彼はこちらを見ている、こちらは彼を見たくない。

「とっとと、送り返してやれ!・・・っておい?聞いてんのか女王様よ!」

地団駄を踏む、女王は答えない。

視線をまだ感じる、彼からだろう少し脅かしてやろう。

「優しい優しい猫ちゃんは居マせん〜、君は騙されて居たんだよ〜」


妖しくわざとらしく顔を歪ませて言う、しかし彼の疑い様の無い表情はそのままだった。

「騙されてるオマエが悪いんだよ?楽しかったでしょう?ケケケ」

彼が口を開く。

「何と無く・・・途中から判っていたさ、でも嘘でも優しくしてくれた!俺はミーコを・・・「黙れ、喋るな」


苦しいクルシイくるしい、そう思ってる矢先


「猫が女王の間何しに来た?」


エース級、しかもスペードの。


「此処に女王は居ないぞ、しかも随分前からな」


「ナっ!?」

おかしい、自分は参加していないが度々集会があるは「形骸化した、ただの宴会だ」


「居ない!こっちか!?探せ!」


他のトランパートどももやって来そうだ・・・打つ手なし「ふっ」



扉をエース級トランパートがロックした、どういうことだ?


ガシャッ「ギヤッ」

リーン


「ミーコ!?(ガシャッ)グヘッ」

身体を壁にロックされた、声も出せねぇ、この展開多くねぇか!?


「判ったぞ、大方入れ込んだその小僧を元の世界に戻したいんだろうが・・・無理だ」


「見ろ、彼は」

光にかざす。


「死んでいる」


彼の目が見開く。


「厳密に言えば消えかかっている魂・・・血肉の有る人ではない。恐らく5日目ぐらいか」


そ、そんな馬鹿な・・・


「恐らく、未練の塊。それが弾け飛んで此処へ、想像だが元の身体は原型を留めていない・・・」


「ッッ・・・!!」


彼の瞳が曇る、あぁそんな顔が見たかったんじゃない・・・


「さて、少年。途方にくれるな」


彼のロックが外れる。


「答えろ、沈黙と抵抗は無駄だ」



しかし今までしていた涼しげな顔が和らぐ。

「君はどうしたい?ここは不思議の国、君が望めば此処でなら叶うハズだ」


やめろ


「このまま逝くなら、せめて天界に連れていこう。それ以外は決めてくれ」



やめてくれ


ミーコから落ちた物を拾う、瞳に力が戻り、IFは確信に成る。


私の願いを


「俺は・・・」


叶えないで


「ミーコと生きたい!」


笑みを浮かべ、彼に光を注ぐ


「君の魂、この地に留めよう!」


彼の姿がハッキリと色付き、彼の身体に力がみなぎる。


チェシャキャットのロックも外れる。


「一時的にはこれで大丈夫。さぁ、猫よ。後は君が頑張れ。私は二人なんか見ていないし、猫一匹見つけれない他の娘にお説教しないと」


ミーコは顔を赤らめ彼に悪態を付く。


「このスケベめ・・・」


彼は判らず目を白黒させる。



「さぁ、行った行った!若い二人の新しい門出に祝福を!」


走り去る二人を見送る。


「あー、三下役は辛いなぁー、私も可愛い年下な男の子が欲しいなぁー」



・・・
・・



走りながら彼は言う。

「こんな敵が、いっぱい居る中で、どうやって逃げるのさ!?」


出来るだけ笑顔で答える。


「そんなモンはねェ〜、正面突破で逃げるにきまってるんだよおおお!」


「見つけた!糞猫だ!!」
「今度こそお縄につきなさーい!」
「猫がいます、猫がここにいましたよろしくお願いします」
「おい、なんかこっちにもおかしいのがいるぞ?」

各種マークのトランパートが大量に飛び掛かってくる。


先にこっちだ。

「さぁさぁ、私の旦那様?すこーしだけまっててね?」

彼は驚いた顔をした後、鋭角に見えなくするスキルで隠す。


ニタニタと笑う、もう怖いものはまんじゅうだけである。


「さぁこれより取り出しまするは魔法のピコピコハンマー!なんと叩かれた相手は」

突撃するトランパート達をピコピコと丁寧丁寧に叩いていく。



「はっ!?って全く痛くも痒くも無いじゃねえワン!」
「何もなってない?でもなんかおかしいモゥ〜」
「いやああぁぁ、あたしにヤギ耳ヴェエエエ!?」
「それは羊耳だよ〜、キツネ耳可愛い〜コン!」


叩かれた彼女たちは全て何かの動物の耳とその安易な動物な鳴き声語尾になっていく。



「いやあぁぁぁ、ブタよりキツネの方がいいいブーーーー!」
「ヒョウってなんて鳴くの!?ねえ誰か教えてー!」
「ロバはね、発情期とかでしか鳴かないんだ・・・オキー!」
「このネズミは大きいかな?小さいかな?答えはね、チュー」


しかも戦意が大いに削がれるというオマケ付き、我ながら酷いスキルだ。

彼の元へ戻る。


「さぁ〜旦那様、お待たせしました。とっとと帰りますですニャよ」

彼はえっ?だの、あの?だの言うので直ぐさま暗闇に紛れるあの場所に戻ろう・・・


・・・
・・



「さぁ到着ですよ、だ ん な さ ま」

かなり嫌味たっぷりに言う、まだ彼はキョトンとしている、多分これまだ事の重大さにわかってないな・・・


「ええと、俺はどうなるんだろう?あとその旦那さまって」


あ、判ってない。


「私の旦那様の貧相すぎる脳みそでもわかるよ〜に説明しますね、着席!」


ここは初めの暗闇の住処、あの時は鬱蒼とした気持ちだったが今は寧ろ居心地がいい。


「貴方は消えそうな魂の状態なのを純魔力を大量に注ぐ事で強制的にインキュバスになりました」

まだ彼はピンと来ない。

「もう貴方は人間ではありません、並びにあの答えは私と永遠に交わって生きていたいという意味になります」

まだか・・・

「アアア!もうお前と私はつがいになってえっちして生きていくしかないってことだよ言わせるなあああ恥ずかしい!!」


やっと、顔を赤面にしやがった、ざまあみろ。


「・・・私と生きたいなんて絶対後悔させてやるんだから・・・」


彼は少しだけ困った顔をしてる、ナンだよその顔は。


「やっぱり君は俺が知ってるミーコだ、時々素っ気なくて、辛いときはいつもそばにいてくれて「違うと言ってるだ「違わない!」


手の平を開く、それは・・・・

「ミーコがいつもつけていた紫色の鈴」


・・・私は泣きそうな、笑っていそうななんとも言えない顔する。


「元々野良で、悪戯ばかりしてて」


「近所の悪ガキにエアガンで撃たれて」


「俺が獣医に見せた時にはもう瀕死で」


「でも看病して奇跡的に生きかえ「うるさいうるさいうるさい!」


そう言いつつも私は泣いていた。


「ミーコ、只今。今戻ったよ」


いつも聞いていた、思い出したあの言葉を。


いつしか彼も、私も泣きながら抱きしめ合っていた・・・




・・・
・・




彼は赤面しながらバスタオルを巻きながら風呂から出てくる、乙女かお前は。

「あの、ミーコ。ほんとに「生きていく為のインキュバス化と性交だからね、必ず後悔させてやるって言ったからな!」


そんな経験なんかまだ無い彼に強く言う、散々私を辱めたんだから存分に味わってやる・・・


「よしっ・・!俺、頑張る!」


ニタァと笑う。

「精々頑張ってネ、旦那サマ」


と言っても私も経験自体は無いンだがな。


・・・・・


お互いバスタオルを取る、赤面する彼。

余裕の有る顔で口を重ねてやる、ベッドへ押し倒す。


胸を彼に触らせる、少しは足掻くといい。


必死で口内の舌を絡ませ、胸を揉んでくる。

どんどんと楽しむのだ、口を放す。

彼の胸や首を舐める、思いっきり首にキスマークを付けてやるのだ・・・

更に寝そべる彼の口元へ股間を当てる、舐めろと命令する。

ニヤニヤと笑う、どっちが上で下か存分に叩き込んでやる・・・

彼は太ももを掴みながら舐めてくる、舌で外側を、中を、まるで味わうように。

思った以上に迫る快楽から離れようとしても太ももを抑えれて動けない。

舐められれば舐められるほど力が抜ける、そのまま絶頂を迎える。


「にゃあぁぁ・・・」

潮を吹くとはこういった事か・・・情けない声を、私は。

彼の顔が愛液だらけなるが飲み干してしまったようだ・・・


腰が抜けた、彼の肉棒が予想よりも大きい・・・!

しかもうつぶせの私の後ろから挿入れるつもりか、「あ、あっ、まっ



彼の性器が私の性器に侵入する、自分でも聞いた事の無いような声が自分から出る。

「ミーコォ!ミーコォ!」

私の脇腹を持って腰を振る、抵抗しようにも動かれる度に走る快楽。

あのネットで味わったよりも更に強い。

「にゃあぁぁん、にゃあぁぁん」

何という声だ、まるでこれでは只のメスネコだ。



じゅっぽ、じゅっぽとお互いの性器が擦れ、液体がイヤらしい音を出す。

私は腰を振るメス、ビクビクと身体に何度目かのイク時の痙攣が走る。

締まる膣に彼の肉棒も絶えれず射精する。


どくどくと中に出される感覚が走る、しかも長い。

これで彼の肉欲も治まっただろう・・・ここは反撃のチャンス!


仰向けに反転する。


しかし彼の肉棒は反り返ったままだ。


!!

更に今度は前から挿入れられる。

「んひい!」

もうダメだ、完敗だ。強気がどこかへ飛んで行った・・・




「好きィ好きィ!!もっと!もっと!」

口を吸い、胸を吸われ、ひたすらお互いを入れ合う。

彼も自分の名前を叫ぶ、言われる度に愛おしくなる。


ずっと主導権を握られたまま、性交を続けた。

また後ろから、前から、交差して、ありとあらゆる方向から肉棒が私に刺し入れられる。

もはや何度目の絶頂か射精か、何度もなすすべなく蹂躙される。

彼の精液で濡れていない膣内は無い、すべてをそこへ注ぎ込まれる。

力は入らず、求められるままに性交し、喘ぎ声を出す。


お互いが満足、というか彼が満足したのは繋がってから2日目の夜だった・・・



・・・・・


「ヤリすぎ」

実は満足しているが、ジト目で彼を責める。


二人でかなり遅い食事を取りながら彼はこっちを向いて必死で謝っている、怒ってないけどザマーミロだ。


「ごめん!ごめんってばミーコ!ほら謝るからさ、昔みたいに頭とかしっぽの付け根とか撫でるからさ!許してよ〜」


自分の耳がピクッとなるのが判った、撫でて欲しい、欲しいがここで許せば主導権がががががが


\結局負けた!/


自分が恨めしい!


久々に撫でられる感触、顔が緩むのが判る、主導権が、主導権がー!


・・・・・


気が付けばまた繋がっていた、もはや負け試合連投だ。


「好き!好き!ずっと一緒に居てェ!」
「ずっと、ずっと一緒だミーコォ!」

彼の下になりながら繋がってる時しか言えない事を言う。


・・・・・


深夜、流石にお互い疲れて眠る。


不思議の国に迷い込む人間の願いを成就刺せるという女王の言葉だったが。

本当に願いを叶えたのは私の方だったかもしれない・・・

18/09/24 02:16更新 / ひいらぎさん@
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■作者メッセージ
さよならの反対語って無いらしいね、だから続く言葉はまた明日。

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