出してはみるもんだ――ルミル=ワクシワンド BACK NEXT

この企画を考えたとき、ルミルは四・五人集まれば上々かな、と考えていた。サバトの運営等を考えれば、わざわざ訳の分からん一バフォメットの下に、歓談のために推参することもないだろうと、彼女は勝手な予測を立てていた。
手紙を出来るだけばらまき、数件返信が来れば御の字、そんな気楽なつもりで出した彼女だったが、……その予測は大きく裏切られることになる。

「……まさかダメ元で出した大祖がいらっしゃるとは思いませんでしたよ」

「ふむ、儂も呼ばれるとは思っていなかったぞ、ルミル」
大祖、と呼ばれるバフォメットがいる。全てのバフォメットの頂点に立つ実力と実権を持ち、文字通り魔王の側近(すぐ隣)で働くザ・バフォメットオブバフォメット。それが今、ルミルの眼前に姿を現していた。
図鑑において描かれるバフォメット像が彼女によって作られたものであるという、特徴的な出で立ちのまま異様な威圧感を放つ彼女に、ルミルはやや気圧されていた。呼んで良かったのだろうか、下手をしたら妾、消滅するのではないかと妙な危惧から来る冷や汗が、彼女の毛をしっとり湿らせる。
そんなルミルの様子を見やり、大祖はくっくっ、と意地の悪い笑みを浮かべた。
「クク……まぁ儂なんぞに手紙を出すのは、一族の変わり者しか居るまい、ルミル。
魔王や君主以外の者の下に付き、巨乳ロリの存在を認め、鎌を使わず徒手空拳で戦い、巨乳ロリの存在を認め、夫となる者をお兄様ではなくダーリンと呼び、あまつさえその暮らしぶりの一部をルポ小説にして出し、巨乳ロリの存在を認めるくらいの変わり者でなくてはのう……♪」
「わ、儂の作品を読まれていらっしゃったのか……みひゃうっ!」
まさか魔王の側近が拙作を読んで居るとは……と、赤面するルミルの頭に、大祖はぽふん、と肉球を置き――ぐりぐり。
「読まないわけが無かろう♪そもそも一の説法より教義が広まりうる出版物を用いて儂等の教義を広めておる風変わりなバフォメットの存在を耳にしないと思うたか♪
それをまさか恥じらうとは、愛いのう愛いのう♪書評を匿名で送った事もあるのじゃぞ♪」
女性でも延々もみ続けたくなる魔力を持つといわれる肉球は、彼女の痛くもなく弱くもない絶妙な力加減によってルミルの頭に押し付けられ、脳や脳髄に直接快楽の電気信号を送り込んでいく。
「み、みひゃあ!あ、ぇぅ、ぁあ、あ……♪」
ふにふに、うにうにと適度に固い柔軟な肉の持つ弾力性が与える魅力に、ルミルは全身をガクガク震わせていた。実力が違う。徒手空拳で行う『炉道有情肉球拳』の何倍もの快楽が与えられているのだ。魔女に与えられれば、まずサバト替えは免れられない程の……。
ガクガクと震えるのを抑えられないルミルから手を離し、大祖は転移方陣を見やる。そろそろ別のバフォメットが来るかもしれないと、期待に目を輝かせながら。
「――はぁぁ〜〜〜……。よし。ルミル復活なのじゃ」
なんとか呼吸を調え復活したルミルは、来場メンバー確認のためのメモを取り出した。そこには大陸はもとより、ジパングや異世界のバフォメットの名前がずらりと並んでいた。その中のチェックマークをされた面々の名前をちらちらと見ながら……溜め息を吐く。
「シュプトアは不参加か……折角『月刊炉道』のゲラ版を渡そうかと思ったのじゃが……」
どうやら『夏の陣』で約束していたものを渡すつもりでいたらしい。
来ない人を嘆いても仕方がないことから、ルミルは背後のテーブルに、宿の土産である『白いあははー』を置くことにしたのであった……。
11/05/08 22:48 up
ひつじ氏より、’バフォメット’をお借りいたしました。
初ヶ瀬マキナ
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