連載小説
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第1話 開店3周年記念
今は緑は枯れて雪景色になっているが、この森「ジョウソウの森」は夏には緑豊かな、それこそ目の保養にはもってこいな程に豊かなのだ。そんな寒空の下で一人の少女が屋台の開店準備を行っていた。

「ハクちゃん。買ってきたよ?ほら!」
空から舞い降りてやってきたのは、屋台に居るハクと呼ばれた少女とは違って対照的な黒い羽根を持つ「ブラックハ―ピー」と呼ばれる種族の女の子だ。

「あっ!クロウちゃん!お帰りなさぁ・・ふにゃ!」
ハクが、クロウの帰りを喜んで、彼女に抱き付こうとした。しかし、足元に転がっている石を蹴って躓くと、まるで何処かのマンガの様に顔面から地面に激突した。その直後に慌てた様子で「大丈夫?」とクロウが手を差し伸べた。

「うぅ・・もう・・私も14才だもん・・痛くなんか・・・(ウルッ)・うわあぁん」
差し伸べられたクロウの手を握って立ち上がろうとしたハクは、明らかに涙を堪えていた。それでも我慢しようとしたハクは、クロウの手を握ったまま泣き出してしまった。いつものことながら、ハクは少々子供じみている。年齢がクロウと同じ14歳なのに身長はクロウよりも頭3つ分くらい小さいし、体重だって普通のハーピーよりもずっと軽い。それに精神年齢も幼く、考える事にいちいち悪戯の観念が入っている。

「とりあえず・・・開店しよう?ねっ?」
手を繋いだままになっていたクロウは、ハクを慰めようとして頭を撫でて話題を逸らせた。するとあっという間に表情を明るくしたハクは、「うん!」と元気よく返事して屋台の設営に移ってくれた。

「やぁ!まだ開店前だったかな?」
「フフッ・・お父さんもせっかちね♪」
「おとぉさん、せっかちだってさ!」
「・・あっ!リーフさん♪」
設営が大体終わったその頃、いつも此処に来てくれている常連客がやって来た。彼らはリーフ家の皆さん。植物学者をやっているらしく、たまに焼き鳥の隠し味にと香味料を分けてくれている。

「あぁ、リーフさん。もう少し待ってて下さいね?」
「クロウちゃんも居たのか。今日は何かある日だっけ?」
「あっ!はい。今日は開店3周年記念で・・あちゃちゃちゃ!」
クロウが、屋台の裏側で色々な荷物を降ろしているとやっとリーフ達の事に気が付いて声を掛けた。だが、それも其処まででそこからはまた荷物の整理に戻っている。リーフが話をハクに振ると、ハクは焼き鳥を焼くのを止めてまでリーフの質問に答えていた。しかし、ここで問題が発生してしまった。ハクは、リーフに話し掛けられるまでずっと焼き鳥を弄っていたのだ。そして彼女の腕は燃えやすい羽根で出来ている。それを炎の上に放置して入れば、結果は火を見るよりも明らかだった。彼女の羽には炎が燃え移って彼女の羽を燃やしていた。

「あちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!」
「ネル!水掛けてあげて!チコ!おとぉさんの本から「メブキ草」って草、引っ張ってきて!」
「あわわわ!は、はい!(バシャァ・・)」
「ハクっ!大丈夫?!・・・(パクッ)・ピチャッ・・・」
「はいおとぉさん!」
燃えている腕を熱そうに振っているハク。しかし、その程度では炎は消えたりはしない。そこでネルが蓮を使って水を溜め、ハクの腕にぶっ掛けた。お陰で炎は消えたが、焼き鳥になる寸での所までやけどが進行していた。それを見たクロウは、心配のあまりにハクの腕にしゃぶりついてやけどを治そうとした。しかし、あまりの熱さに直ぐに口を放してしまった。そこでチコがやっと本から言われた草を見つけてリーフに手渡した。

「これを此処に塗って・・・はい、終わり。これで多少は楽になるよ?」
「・・・ホントだ!ありがとう!リーフさん!(ダキッ!)」
「あぁ!ハクちゃんだけずるいっ!(ダキッ!)」
「おとぉさん・・・チコも・・(ダキッ!)」
ハクのやけどを、葉っぱを巻いて応急処置したリーフは、そのまま三人に抱きしめられて苦しくなってしまった。だが、みんな直ぐにその行動が見られていたら恥ずかしいと思ってなのか放してくれた。そして、いつもどおりに焼鳥屋は開店を果たして客を迎え入れる。ちなみにハクが腕を燃やした時に焼いていた焼き鳥は消し炭になっていたので処分された。
10/11/01 08:55更新 / 兎と兎
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■作者メッセージ
今回、旧作のキャラクターも登場させました。と言うより、私の書くお話は何処かで繋がっています。それだけは確かなことへとして行くつもりなので!
次回はこれが面白い展開を迎える事でしょう!

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