連載小説
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第2話 「鳥が焼き鳥食ってるって、シュールだね」
森の向こう側から蛍が数匹飛んできて、屋台のテントに留まる。そんな幻想的で美しい光景の中、仕事に明け暮れる二人の女の子の姿が有った。

「クロウちゃんそっち持っ・・・ひゃあぁ!」
「ハク・・・大丈夫?」
ハクは屋台の設営の為に自分程も有る木の箱を持ち上げようとしたが、腕が重さに耐えてくれずに足を滑らせて荷物の下敷きになってしまった。その様子を見ていたクロウは、呆れつつも荷物を既定の場所に置くとハクを助けにいった。

「クロウちゃん・・・重い・・・うぁ・・」
「はいはい。それくらい持ってあげるわよ。そぉれ・・・きゃぁ!」
木の箱に押しつぶされそうになっていたハクは、足を可愛らしくジタバタさせながらクロウに助けを求めた。その途中、何度も息が出来なくなって喘いでいたが、それはどうでも良いお話。ため息を吐きながらもハクを押しつぶさんとしていた木箱を持ち上げてハクを救出したクロウだったが、その直後にバランスを崩して今度はクロウが倒れてしまった。

「イタタタタァ・・・・うぅ・・・何なのよ、こ・・れ・・」
「えっ?何って今日仕入れて来た分の鶏肉だよ?」
倒れたクロウは、落とした衝撃で開いた木箱の中身を見てゾッとした。中には、まだ串に刺されていない状態の鶏肉が山の様に入っていた。その光景を見たクロウは、少し気分が悪くなった。別にこれはハーピーの肉とかではない。一応ハーピーの無精卵は美味しい食材の一つとしてあげられているが、ハクによれば「気がつけば股が濡れてて卵が有った」など、謎な部分も多い。

「やっほぉ♪今日も元気に焼き鳥屋やってるみたいね♪」
「いやぁ、やっぱりレイカは分かってるなぁ♪僕の好物を分かってるなんて」
「にゃははっ♪ご主じぃん♪今日はここで晩御飯なのぉ?」
「・・・・・・・・」
ハクとクロウが開店の準備をしていると、向こうの方から4人組の客がやって来た。一人は小さなサキュバスの女の子で、もう一人は男の人だけど初めて来た時に自分はインキュバスだと言っていた。その隣のイグニスは、彼女、レイカに飼われているらしい。レイカは飼っているのではなく家族と言っていたが少なくともイグニスの彼女、スバルはそう言い張っている。最後に、一番後ろで付いて来ているレイカよりも少し年の幼い少女はカザリ。彼女は無口であまり喋ろうとしないのだが、決して友達嫌いと言う訳ではない。なのでハク達は彼女ともそれなりにコミュニケーションを執れている。

「あっ♪みなさん♪いらっしゃぁい♪」
「適当な所に座りましょ?」
開店準備も最終段階に入っていたハクは、クロウと協力して開店時間を少しでも早くしようと頑張っていた。そんな頑張りを余所に、レイカ達は置いてあるベンチに座って既に寛いでいた。

「・・・(パクッ)うんうん。ひょうほふぃしふのにふはほ(今日も良い質の肉だよ)♪」
「さぁて♪焼くよ〜っ!ハク、火点け・・」
「はいはぁい♪それ私がやるよぉ。それっ!」
味見をしていたハクは、その肉が良い質の肉だと分かると次から次へと串に刺して行った。荷物を運び終えたクロウは、そろそろだと思って網台の前に立って、並べられた串を載せて行った。後は火の問題だったのだが、それは直ぐに解決した。ハクが火打石を持って来るよりもずっと早く、スバルが手に出した火で着火させていた。それも火力が普通の物よりも強く、あっという間に焼き鳥が完成していた。

「はい♪お待ちどうさま♪」
「はやいわね。」
「食べよ食べよっ♪」
早速皿に載せて持って行ったクロウは、それをレイカ達の座っている場所のベンチまで持って行った。あまりの素早さにレイカは少し驚いていたようだが、スバルの上機嫌な声を聞いて直ぐにみんな焼き鳥を食べ始めた。そうして、いろんな客を招き入れて今日も彼女たちの商売は続く♪
10/12/09 20:55更新 / 兎と兎
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