パンが無ければマンドラゴラの根っこを食べればいいじゃない %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d

デザート;日替わり娘の冷やし根っこ

「うっはぁ〜/// な、なにこれぇ〜!?」
「う、むう。これは何とも。原型が無いな。」
 久しぶりにゴルド邸を訪れたフランソワ・ローライラスとその妻アリシアは、変わり果てたゴルド邸を見て驚愕した。
 邸の窓という窓からはツタと根っこが飛び出し、邸の壁を伝って庭園の土へと突き刺さっていた。地面が露出していない場所では、石畳をめくり返してまで土を求めていた。ツタはと言うと、根っこの逆で、屋根へと伸び、妖光と魔風を受けてガサガサと気味の悪い音を立てていた。
 荒れ放題の邸。その半分内側から破られた大扉に、銀ひげを蓄えた執事長が立っていた。
「ローライラス卿、伯爵婦人。ようこそお越しくださいました。しかし、何分邸はこの有様でして、十分な御持て成しは致しかねます。」
「執事よ!これは一体どう言うことなのだ!?この荒れ具合、たったの数ヶ月でなるようなものではあるまい。」
 ローライラスの問いかけに、執事長は深い溜め息で答えた。
「はぁ〜、仰る通りでございます。まぁ、まずはこちらに。口で説明いたしますより、見ていただいた早ようございます。」
 執事長が促すまま、二人は邸へと足を踏み入れた。


「(あれ?でもこの感じ。何か知ってるような…?)」




 外側から見たとおり、案内される廊下にもびっしりとツタが生え、床は根っこが縦横無尽に走っていた。
 とてもではないが車椅子での移動は困難であったため、ローライラスはアリシアを抱きかかえて移動する破目になった。
 いつもならいそいそとメイドたちが手伝いに来るはずだが、今日は一人として見当たらない。それを不審に思ったローライラスが詰問する。
「執事。いつものメイドたちはどうした?お前の女達ではなかったのか?一人も見かけないが。」
「メイドたちはお嬢様方のお世話で忙しいのでございます。ご不便を強いて申し訳ありませんが。」
「シャルに子供ができたの!?すごい!おめでとうございます!」
「ありがとうございます、アリシア様。しかし、いささか問題がありまして、このような様になっている次第で。」
「問題とな?」
「はい。あぁ、丁度いいところに。あちらをご覧ください。」
 執事長が手で示す方向を見ると、メイド二人がなにやら大きな容器の横に立ち、談笑しているかのようであった。
 容器の大きさは1m程度、円柱の形をしており、上からは黄色い特徴的な花とツタが伸びていた。
 見覚えのある黄色い花。あれはもしや…。
「お察しの通り、あちらがコンデ公とシャルロット様の姫君でございます。」
「あの容器はなんなのだ?普通、マンドラゴラの子は産まれてから直に何処か別の場所に植えるのではないのか?」
 実際、アリシア達も先月産まれた種を反魔領に程近い街道に植えてきたばかりだ。よい旦那と巡り会う事を期待して。
「実は、シャルロット様は今動けない状況にありまして、御子を植えに行くことができないのでございます。そして、やっと授かった御子を簡単に手放すのは忍びないとのことでしたので。なので、東洋に伝わる水栽培なる技術を用いているのです。水栽培とは、土ではなく水に植物を植える栽培方法。あのように透明な容器に入れて育てれば、いつでもお顔を会わす事ができますし、お嬢様方も気に入った男性を見つけられるというもの。」
「う〜む、なるほど。さすがコンデ公。発想が我ら凡人とはかけ離れておる。」
「さっきからお嬢様「方」って言ってるけど、シャルは何人産んだんですか?」
「あの子で43人目になります。」
「えっ?」「えっ?」
「ささ、こちらでございます。」
 二人の驚きを無視し、大食堂へと案内する執事長の顔には、疲労、気苦労を通り越した達観の相がにじみ出ていた。


「ゴルド様、ローライラス卿とアリシア婦人をご案内いたしました。」
「うむ、ご苦労。久方ぶりだな、フランソワ。」
「コ、コンデ公!?貴方なのか?」
 大食堂はかつての荘厳で豪華絢爛な佇まいをそのままに、上から緑のペンキで塗りつぶされていた。ペンキはすなわち部屋中に張り巡らされたツタと根っこであり、それらが集約された一点、上座の主が座るべき場所にゴルドとシャルロットは居た。
「座ったままで失礼する。なにせシャルが動けないものでな。うっ・・・♥」
「あー♥またでひゃー♪」
 根っことツタで構成された玉座に腰掛けた全裸のゴルドに腰掛けるシャルロット。小さな身体に異常に膨らんだ腹を垂らし、焦点の合わない目で虚空を眺めながら涎と愛液とあふれ出た精液を垂れ流す。伸びた足先の根っこは大樹のそれであり、床の上にさらに緑の床を形成していた。
 うねうね動く緑の床は、動けないゴルドとシャルロットのかわりに玉座を動かす、大掛かりなピストン運動装置なのだ。
「ちょっと!シャルに何したのよ!この変態ブタ!」
                       「アリシア!何て口の利き方をッ!」
「少々子作りを頑張っただけだ。特別何もしとらん。」
「ウソ!」
「それより、アリシア婦人はシャルの相談相手になっていてくれていたようだね?感謝しとるよ。あれからいろいろと話し合ったが、解決方法が見つかってな。執事長、持って来い。」
「はい。旦那様。」
 そう言うと、執事長は銀盆に載せた何かをゴルドの前に差し出す。
 緑の大根ほど大きさのもの、それはまごうことなきマンドラゴラの根っこ。
「それが何?マンドラゴラの根っこじゃない。」
「ただの根っこではない。私らの『娘』の根っこだ。」
「えっ?えぇーーーーー!?」
 ゴルドは無造作に盆の上の根っこを掴むとその先端にかぶり付いた。
「んぐ、もぎゅ、もきゅ、むぐ、むぐ。」
 根っこに歯を立て、ぐじゅぐじゅと噛み千切る度に根っこ汁が垂れ落ちる。
 すると、シャルロットにも変化が現れた。
 それまで泥酔者のようにだらしなく目と口を半開きにしていたのに、ゴルドが根っこを飲み込むとカッと目を見開いて、歯を食いしばって頭を振り乱すのだ。
「あ、ぎゅぅぅぅ〜♥♥こ、この娘すごいひぃぃぃ♥♥♥こんな♪こんにゃげんきで♪あひっ!らんぼう♥な、なぁ♥まりょくッ♥しきゅうぅぅ♥はじけりゅうううううッ♥♥♥」
「うむ!これはかなり上等な味だ。とにかく外で遊んでおるのだろうな。太陽の香しさに身体を包む甘さ。絶品だ。」
 わけが判らなくて絶句するアリシアとローライラス卿。
 たまらずなのか、執事長が溜め息交じりで説明しだした。
「奥様がお産みになったお嬢様方は、レスカティエ領内の貴族や、旦那様の領地内の魔界農家の方に嫁がれていきました。そこから根っこの一部を送らせているのです。食物の味とは、育った土壌や育てた人によって変わります。様々な精と魔力が入り混じった根っこを食すことで旦那様の精はより複雑怪奇な味となり、奥様をご満足させるのでございます。旦那様は旦那様で、心行くまでマンドラゴラの根っこを食す事が出来る。その代わり、提供していただいた家々には経済的政治的な援助を約束する。双方にとって利のある取引と言うことです。」
「そ、そんなのってアリなの?」
「子は鎹(かすがい)とはよく言ったものです。しかし、これで当家の台所は火の車どころか山火事に。碌なお持て成しも出来ないのはこの為なのです。」
 はぁーと、大きく溜め息をついて頭を抱える様を見るに相当に財政が疲弊しているのだろうな、とローライラス卿は同情の念を募らせていた。



「ねぇ、フラン。」
「なんだい?アリシア?」
「私達の娘の根っこってさ、美味しいのかな?」
「ぶっ!?な、何を言ってるんだッ!ま、まさか、感化されたんじゃ!?」
「貴方なら、あたしと娘の両方の相手が出来るでしょ?帰りに精力剤、たくさん買って帰りましょうね♥」

 その後、ローライラス家は数十人の娘と孫で構成された『近親相姦の館』としてレスカティエの観光名所の一つとなるが、それはまた別の話。

































 ローライラス卿達が帰り、夜の帳が落ちた大食堂で、ゴルドとシャルロットはまだ交わっていた。
 ツタと根っこを編みこむことで隙間をなくした天然自然素材の寝室は、植物の呼吸により熱を一定に保ち、集めた夜露をシャワーにも出来る、優れた性能を遺憾なく発揮していた。
 その中心で、昼間とは体位を変えて体面座位で抱き合う二人は舌と舌を絡めて、涎を全て吸い出してしまいたいかのような、濃厚な口付けを交わす。
「んちゅ♥ちゅる♥んく♥ちるぅ♥あのね、んぶ♥ちゅ♥ゴルドさま。」
「ん〜?じゅる♥じゅりゅる♥じゅぶ♥んぐ♥なんだい?じゅぞぞ♥」
「ごるどさまの純粋な味、一番好きだよ♥」
「私もだよ、シャル♥」








                                 fin

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長らくお付き合いありがとうございました。
連載か、2話程度で完結させておけば2年もの間にわたり休刊したり別のSS書いたりしてお待たせすることもなかったのに、と悔やむことがいっぱいですが、それでも一応の終わりを書けたことに満足しています。
また、あまりSSが書かれないマンドラゴラをより知ることが出来たと思います。
よければ、また、別の作品でお会いいたしましょう。
これにて終劇と相成ります。ご愛読ありがとうございました。



〜お料理解説コーナー〜

〇デザート;日替わり娘の冷やし根っこ
 そのなの通り、シャルロットの娘達から送られてくる根っこですが、品質を保つために雪の精霊グラキエスとゆきおんなの魔力によって冷凍されて送られてきます。
 それを解凍して食すのですが、雪の魔力による瞬間冷凍なので、食材を壊すことなく、また、凍った水分が小さな氷となりシャキシャキの食感と濃縮された甘さを味わうことが出来る優れものです。
 血を分けた娘の根っこなので、魔物娘特有の他の女や男に対する拒絶反応等もなく安心安全。娘の数だけ味も日替わりです。
 皆さんもマンドラゴラと結婚したあかつきにはぜひご自身の娘をご賞味あれ。

14/06/06 16:24 特車2課

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