連載小説
[TOP][目次]
楽しかったあの頃と。苦しいだけの現在。
「兄貴!あっちで遊ぼうよ」

「わかったから少し待ってよ」

「はやくはやく!」

「まったく…」

懐かしい、昔の夢を見た。
まだ無邪気に妹と遊んでいた頃の夢を

あの時から妹は強かった。

身体的にも精神的にも弱みを見せない。

誰が相手でもお構いなし。

もちろん、オレも敵わないくらいに

そんな強い彼女が泣いた事があった

いじめっ子達に僕がやられた時だ
あの時は彼女を止めるのに必死だった

その場の子全員殺しかねなかったからだ

妹は謝っていた
ずっと、ずっと。

だからその日は一緒に寝てあげた。

妹が怖がらないよう

妹が明日からも笑えるように

そうして次の日、一番に笑顔を見せてくれたのだ

その後、妹が泣いたことは
一度もない、本当に強くなった。

そんな妹はいつまで呼び続けるのだろう

オレの事を『兄貴』と

兄貴なのだから当然なのだが

オレは嫌気が刺していた

オレは兄貴だ、でも。。。

いつも良い評価を受けるのは妹だけ

「お前の方が年上のくせに」

そんな言葉が胃に突き刺さる毎日。

それでも、妹が頑張ってる以上に
俺も頑張らなきゃいけないとおもっていた。

俺の中で、何かが音を立てて

崩れていったんだ。

オレって一体、なんなんだ。

兄貴なんて、もう疲れた。

どうしろって、言うんだよ…

誰か教えて呉れよ。

もう限界だ、自由にさせてくれ。


ーー俺は家を出た。ーー


懐かしい夢を見た。

小さい頃よく兄貴と遊んだ夢だ。

あの頃は兄貴がいるのが当たり前だった。
兄貴とずっと一緒にいられるって思ってた。

だから私は頑張れた。

兄貴がいてくれたから

誰が相手でも、何人だろうとでも

私は決して負けなかった。

でも、あの時。

私は、やってしまった。。

いつものいじめっ子達が
私ではなく兄貴を傷付けた時だ。

私は真っ黒に染まった。

ああ、やってしまった。

怒りの咆哮を上げながら
私はその場で暴れまくった。

怒りと憎悪と殺しても構わない
というし衝動に駆り立てられてしまって。

そんなどうしようもない私を

兄貴は止めてくれた。

私は兄貴に泣きながら謝り続けた。

寝るまでずっと
その日兄貴は一緒に居てくれた

「大丈夫、大丈夫だから」

笑顔でずっと抱きしめてくれた

それが嬉しくて私は次の日

朝一番に兄貴に笑顔を返した

私はそれから何事も頑張るようにした。

みんなに認めて欲しくて
兄貴に褒めて欲しくて
でも、兄貴は笑うだけだった

「よく頑張ったね」と
泣いているような笑顔で。

そんな兄貴の様子とは違って

私はどんどん周りに認められていった

でも一番褒めてもらいたかった人は


兄貴は離れていってしまった。
15/11/14 09:41更新 / 紫酔染香*・ω・)ゞ
戻る 次へ

■作者メッセージ
前回は打ち間違いの指摘ありがとうございました(笑

なかなか難しいものですねぇ…。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33