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第2章 ドラゴンさんvsアメリカ海兵隊員 パート1
「…ふぅ、やはり貴方は愚かな人間ですね。良いでしょう、その手に持っている物が何だかは知りませんが、貴方からこれを奪い取ってみせます」


奴はそう言った瞬間自分の右手を振り上げ、俺に向けて思いっきり振り下ろしてきた……。

「うぉっ!?」

いきなり攻撃されたが、俺はとっさにバックステップをした事により寸前のところで回避できた。


「なるほど、簡単な攻撃は避けられるのですね。…なら次はちょっと本気を出しますよ?」


そう言った彼女は、直ぐに左手を下から上へ振る。


ブンッ!!


思いっきり降った為、空気が切り裂かれる音がする。
今度の攻撃は重装備の俺にとっては流石に避けきれなかった。
彼女の左手の指先が俺の重装甲ギアに当たる。


ガキィィィン!!


重装甲ギアの防弾板と彼女の指先の何かが接触した瞬間、激しい金属音がして、火花が散る。
俺は今までに経験のした事のない攻撃にビビった。
……とりあえず重装甲ギアを装着した過去の俺に激感謝だ。
もし装着していなかったら、今頃俺は大ダメージを負っていただろう…。

「…!?おいっ!!危ねぇじゃねぇかっ!!そんでもってお前!!指先に何を仕込んでやがる!!」

「……?危ないも何も、私は警告したはずですよ?素直に寄越さないと痛い目に合わせる…と。…因みに指先には何も仕込んでいません。あるのはドラゴン特有の硬い爪だけです。…しかし貴方が胸に仕込んでいる甲冑はもの凄く硬いのですね。我々ドラゴンの爪は鉄をも簡単に引き裂けるのですが…」

「…甲冑…?あぁ、防弾板の事か。こいつぁ鉄なんかじゃねぇよ。マルエージング鋼って言う鉄合金だ。航空宇宙用構造材なんかにも使用されている、クソ硬ぇ合金だよ」

「…マルエージング鋼…と言うのですか…。きっと優秀なサイクロプスにでも作ってもらったのでしょうね。だけど次はそうはいきませんよ?」


シーウスは特に興味なさそうに言うと、一旦攻撃を止めて俺の様子を伺った。
きっと俺がビビって音を上げると思っているのだろう…。
俺は、奴がさっきしてきた攻撃について考えていた。
奴の攻撃は一体何だったんだ!?
普通の人間にはあんな攻撃は絶対にできはしない!!
胸の防弾チョッキは、防弾板の部分は無事だったものの、表面の布は3つの爪痕状に大きく破れ、防弾板の表面に大きな傷を残した…。
確かに奴はへんてこな手をしていたが、手そのものに何かを仕込んでいるようには見えなかった。
…奴は本当に人間じゃないのか…?
今まで起こった事を整理して繋げると、そう考えられてもおかしくはない…。
だがそんな事は後だ!!
今は奴をどうにかしないと!!
…まず先に奴の機動力を奪って制圧しなければっ!!

「オマエッ!!俺はお前がこちらの指示に従わなかったとして発砲する!!悪く思うな!!正当性はこちらにある!!」

俺はそう言い放つとスカーをセミオートモードにし、奴の右脚の鱗みたいなのが覆っている部分に3回射撃した。


ダンッ!!ダンッ!!ダァァァアアアン!!!!


スカーから発射された弾は全弾奴の右脚に命中した。


ドスッ!!ドスッ!!ドスッ!!


奴の右脚から鈍い着弾音がする。
これで奴は脚部に大ダメージを負っただろう。
これで後は縛り上げ、大人しくさせておけば…。
すると奴は…。


「…ッ!?……ちょっと右脚に衝撃が走りましたが、大した事ありませんね。貴方の攻撃はその程度のものですか?」


……ハァッ!?
嘘だろっ!?
スカーの弾が効いていない!?
弾は確かに奴の右脚の鱗みたいなのが覆っている部分に命中したが、表面に着弾した後に貫通せず地面へ落ちていった!!
……バカ言えっ!!7.62oのライフル弾だぞっ!?
俺が装着している防弾チョッキですら、こんな近距離では防げるかどうか怪しいくらいの高威力弾なのにっ!!
なら今度はっ!!
全弾を叩き込んだら効くかもしれない!!
そう思った俺はすぐに思考を切り替え、スカーをセミオートモードかフルオートモードに切り替えて再度射撃を開始する。


ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダァァァアアアン!!!!


スカーに残っている残弾36発中、16発を奴に撃ち込む。
…どうだ、流石に効いただろう。
さっきも言ったが、口径は7.62oだ。
こんな至近距離で発砲されたらどんな奴だって普通はタダじゃ済まない。
それは絶対に、だ。
当然奴も例外なくダメージを負っているはずだ!!


「……???貴方の攻撃はそれで終わりで良いのですか?」


なんとぉぉぉぉぉ!!
俺が撃った弾は全弾鱗みたいなのに防がれ、先程と同じく地面におちていた…。
俺は我慢ならなくなって奴に問いかける。


「お前は一体何なんだっ!?さっきから自分は人間じゃないとか言っているが!!まさか本当に…!?」

「…だからさっきから何度も言っているじゃないですか、私はドラゴンだと…。貴方はかなりの愚か者らしいですね。普通は私の姿を見てすぐにわかるはずですよ…?」


マジかぁ…。
司令官殿、自分は恐らく一生基地へ帰還できなさそうであります…。
今の奴の発言でここが本当に異世界だと言う確証が持てました…。
そしてここで奴にサツガイされると思います…。


「それより貴方、私の攻撃がこれで済んだと思ったら大間違いです……よっ!!」


奴は俺が若干ぼけーっとしている時に次の攻撃を宣言してきた。


ブンッ!!


今度は奴の尾が俺に向かって思いっきり振られてきた。
俺は思考中、重装備、狙われた位置等で避けれなかった…。


バキッ!!


奴の尾が高速で俺の右頬に当たり、鈍い衝撃が走る。

「グッハァッ!!」

俺は衝撃に耐えきれずに声を出しながら吹っ飛ばされて、地面に突っ伏してしまった。
……イッテェ…。
バットで殴られた感じ…、とまで言ったら大袈裟かもしれないが、でもそれに匹敵する程の痛みだ。
こんだけ強かったらもしかしたら脳が揺れてるかもしれん…。
しかも吹っ飛ばされた衝撃でスカーを手放してしまっている。
………ヤレヤレ…。
素でふざけている場合ではなくなったな…。
どうやら本気で戦わないとマズイらしい…。
何せ相手は未知の生物と確定したんだ。
もっと危険な攻撃が繰り出される可能性が十分にある。
そう結論づけた俺は、思いっきり手と足に力を入れて立ち上がった。


「…今の攻撃を食らっても立ち上がれるなんて、人間の分際としてはそこそこやりますね。結構力を入れたつもりなのですが…」

「…ペッ!!冗談言っちゃいけねぇよ。俺はそんな攻撃よりももっとヤバイのを戦場で何回も食らった事があるんだよ。例えば152o榴弾が足下に着弾した時とか…なぁっ!!」

俺はそう言い放つとスカーがある場所へ思いっきりダッシュし、スカーを手に取った。
そして一旦奴から遠ざかって、倒す戦略を森で考える為に、森がある方向へ更にダッシュする。


「…あぁっ!?待ちなさいっ!!」


俺は奴の制止なんてお構いなくフル疾走する。
ちょっと頑張って走れば、すぐ森へ着きそうだ。


バッサバッサバッサバッサ!!


ウン?
何かが後ろで羽ばたいている音がするぞ?
いやぁ…、まさかなぁ…?
俺はその音が気になって、恐る恐る振り向いた…。
…ッ!?
ヤベェ!!
奴が空を飛びながら追ってきやがった!!
オィオィ、嘘だろぉ!?
ついに飛んじゃってるよぉ!!
…奴はマジで人間じゃなかったのか……。
って事は、俺は本当の本当に異世界へ………。
そんな事を思っていた瞬間、飛行しながら俺の事を追っている奴が俺に向かって話しかけてきた。


「へぇ…、人間にしては大した速力ですね」


へへっ、当然だ。
伊達に30sの装備を担いで訓練していた訳じゃないからな。
…って俺は褒められて何いい気になっとんねん。


「…ですが…、その走って逃げると言う行動が更に愚かだった事を思い知らせてあげます!!」


奴はそう言うと、お口をパカッっと開き……。
…何か口の奥で光らせている……。


キュィィィィィン…


何かチャージ音がするよぉ!!
俺はひたすら全速力で森の方へ突っ走る。
とにかく森へ逃げ込まないと……うわぁっ!?


ドッゴォォォオオオオオン!!!!


凄まじい爆音と共に灼熱の熱風が背後から衝撃と一緒にくる。
俺はそれに耐えきれずにまた吹っ飛ばされてしまう。

「…………マジかよ…」

後ろを振り向いた瞬間に俺は目を見開き、同時に言葉を失った…。
さっき俺が転けた所はメラメラと真っ赤に燃えている…。
のどかな草原には到底似合わない光景だ。
そう、先程のチャージ音は炎の玉を撃つ為で、今さっきそれが奴の口から発射されたのだ。

「ヤベェ、クソ食らえヤベェぜ…」

むぅ…、こりゃもう駄目かな…?
死を覚悟した方が良さそうだ……。
…ん?
ちょっと待てよ?
そういやぁ、奴は、この世界に銃火器等と言う物は存在しないと言っていたな…。
と言う事は、だ。
もしかしたらアレが使えるかもしれん…。
…やってみる価値はありそうだな……。
そう思った俺は腰に装着しているとある物を手に取り、安全装置を外した。
そして決して飾りではない翼を羽ばたかせながら空中に留って、俺を見下している奴に向かって投げつけた。
しかし奴はソレをいとも容易く掴み取ってしまった。
だが、それで良いんだ。
俺は奴がソレをちゃんと掴んだのを確認した後、すぐに身体を反転させてうつ伏せの状態になった。
そして顔を地面に押しつけ、目を思いっきり瞑り、耳を両手で塞ぐ。


「何なんですか、これは?私にこんな石ころを投げつけてどうにかなるとでも思ったのですか?それこそ本当に舐められたものですね。…それでは覚悟して下さいね」


奴がそう言い終えた後に、またチャージ音がし始めた。
……頼むーっ!!
間に合ってくれぇぇぇ!!


パァァァアアアアアン!!!!


何かが弾けたような甲高い音がする。


「キャァァァッ!?」


奴が悲鳴を上げながらバランスを崩し、地面に落下する。

「今だっ!!」

俺はそう叫ぶと起き上がり、再び森の方へと全力で走り出す。
…さっき俺が奴に向かって投げつけたのは…、そう、フラッシュバンだ。
奴を倒すだけならフラググレネードでも良かったのだが、それでは真下にいる俺も爆風や破片でダメージを負ってしまう。
そこで考えたのがフラッシュバンである。
こいつなら相手だけにダメージを与える事ができ、俺は無傷で済む。
そして奴はこの世界に銃火器等と言う物は存在しないと言っていた。
と言う事は、だ。
フラッシュバンも当然経験した事がないはずだ。
その証拠に奴はフラッシュバンを掴み取ってしまい、そしてその効果をもろに食らっている。
…しばらく奴は行動不能に陥るだろう…。
その隙にこのまま一気に森へ逃げ込もう!!
俺はそう思いながら、森へ一直線に駆け込んだ……。




「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ………」

ここまでくれば奴もわかるまい…。
さて…、これからどうすっかなぁ……。
何て思いながら木にもたれかかって小休憩しながら、これからの行動を考えていると…。
空高くに何かが旋回している…。
……奴だ。
さっきよりももっと高い所…、大体50mくらいの所を飛行している。
確実に俺を捜し出す為だろう…。
しっかし、奴はもう動き回れるのか…。
何て言う回復力だ…。
普通の人間なら、結構な時間はかかるのに…。
マズイなぁ…、このままではいずれ奴に見つかってしまうなぁ……。
…ん?
空を飛んでいる?
って事は、奴は空中目標にって訳だ。
……まさかと思うが…、もしかしたら…?
俺はそう思うと早速、背負っていたアレを一旦地面に下ろした。

「ハハハ…」

俺は笑った。
そうだ、こいつがあったじゃないかw
そう、スティンガーだよスティンガー。
こいつなら飛んでいる奴に対して確実にダメージを与えられる!!
俺はスティンガーを構えて上空を飛行している奴に照準を合わせ、スイッチを押して本体を起動させる。

…先程の色々な衝撃で駄目になっていなければ良いが……。


チュイィィィン…、チチチチチチチ……。


OK!!
起動した!!
後はスティンガーのシーカーが奴を捉えられるかどうかだっ!!
炎の玉を発射できると言う事は、体温が結構高いはずだ!!
理論上はロックオンできるっ!!
頼むぜぇ……。


ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ……


反応キターーーーー!!!!www
しかし通常の目標を狙うのとは訳が違う為か、完全捕捉までかなりの時間がかかっている…。
早くしてくれぇ…、もたもたしてっと奴がこちらに気づいてしまう……。


ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピッ!! ピッ!! ピッ!! ピッ!! ピッ!! ピッ!! ピッ!!


よっしゃぁぁぁ!!
ロック完了ぉぉぉ!!

「ッメッソーrローンチ!!!!」

俺は巻き舌混ざりでそう叫ぶと、スティンガーの発射ボタンを押した。


パンッ!!バシュゥゥゥウウウウウ!!!!


上半身に強い衝撃が走った直後、轟音と共に白煙が上り、視界を遮る。
発射されたスティンガーは奴に向かって見事に飛んでいった……。
11/05/25 02:30更新 / GT_SIGNUM
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■作者メッセージ
バトルシーンは2つに分ける事にしました。
次回はドラゴンさんに対し(ネタバレ)をしますw

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