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第2章 ドラゴンさんvsアメリカ海兵隊員 パート2
「ッメッソーrローンチ!!!!」

俺は巻き舌混ざりでそう叫ぶと、スティンガーの発射ボタンを押した。


パンッ!!バシュゥゥゥウウウウウ!!!!


上半身に強い衝撃が走った直後、轟音と共に白煙が上り、視界を遮る。
発射されたスティンガーは奴に向かって見事に飛んでいった……。
しかし今の爆音で恐らく奴はこちらに気づいただろう。
スティンガーが先に奴へ命中するか、それとも奴が先にこちらに向けて攻撃するか…。
正直、一か八かだ。
……当たってくれよぉ!!


「……ッ!?…私に当てるには遠すぎますよっ!!」


クソッ!!
奴はスティンガーが出す爆音に気づくとすぐにこちらへ向き、大きく右にずれてスティンガーの進行方向上から外れた。
普通ならスティンガーは目標が回避行動をとっても追尾を続けるのだが、…やはり直接命中させるのは駄目だったっぽいな…。
追尾する為の反応が弱すぎるんだ……。
…なら、もう1つの可能性に賭けよう…。


「さっきはよくもっ!!死になさいっ!!」


奴はそう叫ぶと俺に再び炎の玉を発射する為にまた口を大きく開けて、チャージを開始する。
……きたぞっ!!
奴が炎の玉を発射する為のチャージがっ!!
これこそ俺が予想して、望んでいた展開だ!!
距離が離れている俺を攻撃する為には、どう考えても遠距離攻撃しかない。
当然奴は炎の玉を発射する訳だ。
……ハハハッ!!
こいつぁ賭けに勝ったぞ!!
その証拠に、追尾しなくなったスティンガーが…グンッ!!っと急な方向転換をして、奴に向かっていく!!
そう、チャージ中の奴の熱に反応したのだ!!
反応源がなければ作ってやれば良いだけの話!!
合衆国海兵隊員の俺様を舐めるなよぉ!!
こぉんのクソトカゲがぁ!!


「…ッ!?えっ!?」


奴は回避したと思ったスティンガーがいきなり自分の方向へと飛来してきたものだから、かなり動揺していた。
しかしスティンガーが命中する瞬間、とっさに受け身をとった…。


シュゥゥゥウウウウウ……、ドガァァァアアアアアン!!!!


スティンガーは奴に直接命中しなかったものの、奴の背中、翼付近で爆発した!!
奴はそのまま爆発の衝撃でクルクル回転しながら垂直に墜落していく…。
…ざまぁみやがれ……。
俺は胸に装備されている無線機のスイッチを入れると、繋がる事のない司令部へ向けて…

「こちらハンター2-1よりオーバーロードへ、敵ドラゴン……、いや、トカゲを撃墜した。…こいつぁ勲章ものだぜぇ?…アウト」

そう言った…。
……ふぅ、…ヤレヤレ……。
でもまだ完全に物事が終わった訳じゃぁないんだよなぁ……。
今度は墜落した奴がどうなってるかをきちんと確認しなくてはならない…。
おっと、その前に自分のステータスを再確認しておくか…。
…えっと?
ガチ銃撃戦仕様だから…。
PERK1:スカベンジャープロ
PERK2:ストッピングパワープロ
PERK3:照準安定プロ
…こんなものか。
んじゃ、行きますかねぇ…。
正直疲れるぜぇ……。

「…頼むからそのまま大人しく寝ていてくれよぉ…?」

俺はそう愚痴ると空になったスティンガーランチャーを再び背負い、奴が墜落した方向へボチボチ歩いて行った……。




「オィオィ、マジかよぉ…?」

奴が墜落したと思われる地点に着いた瞬間、俺は目を疑った…。
奴が立っている…。
……俺の記憶が間違っていなければ、奴はスティンガーの爆風ををもろに浴びて墜落し、そのまま地面に激突したはずだ…。
流石にこれはドラゴンだろうが航空機だろうが、絶対にタダじゃ済まないのは確実だ!!
なのに奴は翼と全身の鱗がボロボロになってるくらいで、しっかりと立っている。
…この世界のドラゴンは化け物か!?


「……オイ、人間…。…あまり調子に乗るなよ?」


…こいつキレてるよ。
やっぱり戦いはそうこなくっちゃな。

「ハッ、上等だよ、このメストカゲが。トカゲらしく地べたでも這い蹲ってれば良いんだよ…っ!!…ペッ!!」

俺も若干キレ気味に言うと、奴に向かって痰を飛ばす。


ペチャッ…


奴の右頬、銃創ができている所に付着する。


ブチブチブチッ!!!!


繊維のようなものが一気に切れるような音がする。


「…コロス。……コロスッ!!!!」


奴はそう怒鳴った瞬間、俺の目前に一瞬で迫ってきた。

「はe……ッ!?」


ゴスッ!!


「カッッッハァアッッッ!!!!」

俺は腹部に鈍い衝撃が走った瞬間、目を見開く。
そしてすぐに呼吸困難に陥る。
…ックソォ、コイツッ!!
横隔膜を狙ってきやがった!!
しかし腹には防弾板が入っていたはずなのに…!!
どんだけ力が強いんだよっ…!!
俺は衝撃に耐え切れなくなって前のめりになる。
奴の攻撃が更にくる。
今度は思いっきり右手を握り締めて…。


ブンッ!!


バキッ!!


「グァアッ!!!!」


奴のグーパンチが俺の右頬を殴る。
最初に食らった尾の倍以上の威力だ。
ヤバイ、今度こそ脳が揺れた…。
俺は後ろに仰け反る。


ドカッ!!


3発目は背中だ。
奴の尾が俺の背中に叩き付けられる。


「……ッ!!」


俺はあまりにも激しい衝撃と痛みで、声が出なかった…。
いや、出せなかったのだ。
俺は背中に食らった衝撃の勢いで、その場にひざまずく……。


「…オイニンゲン、モウラクニシナセテヤラン…。サイコウノイキジゴクヲアジワセテヤル……」

「……カハッ!!…ハァ、ハァ、ハァ、………ファック・ユー…」

ヤバイ、俺も完全にスイッチが入っちまったぜ…。
………逆にオメェを殺してやるよ…。
俺はそう思った次の瞬間、激痛が残る足腰に思いっきり力を入れて立ち上がる。
そしてそのまま奴の顎に頭突きをする。


ゴンッ!!


「…ッチィッ!!」


奴は若干怯む。
だがそれで十分だ。
俺は奴が怯んだ隙にスカーのマガジンを素早くリロードし、奴に向かって構え、フルオート射撃した。


ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダァァァアアアアアン!!!!


流石にボロボロになった鱗はライフル弾を防ぎきれない。
更にストッピングパワープロだ。
もう前回のようにはいかないさ。
奴の身体からはいくつもの硝煙が上がり、そこから鮮血を吹き出している。
……が。
奴は倒れない…。
でもかなりダメージを負っている感じだ。
…もう一押しかっ!?
そう思った俺は奴に向かって走り出し、顔面目掛けて銃のストックで殴りかかった。


バシッ!!


奴は大ダメージを負ってるはずなのに、俺の攻撃を左手で容易く受け止めた。
…マズイッ!!
これでは大きな隙が……っ!!


ガシッ!!


奴の右手が俺の首を掴み上げる。

「ぐぁぁぁ…」

俺は苦しくて呻き声をあげる。
奴の手を必死に解こうとするが、もの凄く強い握力のせいで全然緩まない。


「ニンゲンハカンタンニコワレル。オマエハドンナフウニコワレル?」


…ヤバイ、意識が…。
…く…そ……。
こんなところで…、終われるかよぉ…!!
俺は垂れ下がっている左手を左太股にあるポケットへ伸ばす。
そしてその中の物を引きずり出すと、それを奴の右腕に思いっきりぶっ刺す。


グサッ!!


「グァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」


奴は俺の首を放すと、悲鳴を上げながら右腕に刺さったソレを抜く。

「ッハァアッ、ッハァアッ、ッハァアッ………」

俺は奴から解放される。
奴は右腕に激痛を感じて、俺を放す羽目になったのだろう。
…さっき奴の右腕にぶっ刺したのはタクティカルナイフだ。
このタクティカルナイフの特徴は右手に拳銃、左手にナイフと言う形で構えられ、接近戦に対して優位な戦闘ができるようになるのである。
故に切れ味は抜群だ。
奴の鱗を簡単に貫通してしまった。
だがこれで緊急時の切り札を消費してしまった事になる。

「っどうせこんなんじゃまだ倒れねぇんだろ!?」

焦るなぁ……。
もうほとんどの手段を尽くした…。
後は地道に射撃していか、アンダーバレルに装着されているアレを発射するか…。
でもアレはこの距離から発射しても信管が作動せずに不発で終わってしまう…。
…なら、地道に射撃し続けるしかないな…。
俺はそう思うと、スカーのマガジンを交換する。
そして奴に再度射撃を開始しようと思った時…


ドカッ!!

腹に今まで経験したこ事のない衝撃が走り、思いっきり後方へ飛ばされた。
そして地面に背中を打ち付ける。

「…う……ぁ………」

俺は腹に衝撃が走った瞬間あまりにも苦しかった為、声を出す…、呼吸をする事ができなかった。
……奴がヤクザ蹴りをしてきたのだ…。
しかも今の蹴りで重装甲ギアが壊れた。
俺はしばらく意識が朦朧としたが気合いでなんとか立ち上がり、壊れて役に立たなくなった重装甲ギアを脱いで破棄する。
…でもサンキュー、ドラゴンさん。
これでアンタとの距離が開いたよ。
おかげさまでコレを遠慮無く発射できるっ!!
俺はスカーのトリガーの下にある別のトリガーに指をかけ、奴を狙う。
…幸いにも奴は先程の銃撃のダメージで俊敏に動けなくなっている。
……そらっ、食らいな!!


ボンッ!!………………………ドガァァァアアアアアン!!!!


アンダーバレルに装着されたFN40GLグレネードランチャーが火を噴き、そして奴の胴体に命中する。
…ナイス・ショット!!
コイツはかなり効いたみたいだ!!
その証拠に奴はもうダウン寸前だっ!!
…後はとどめをさすだけっ!!
俺は更に奴に向かってグレネードを投げつけ、思いっきり後退する。


「コンナモノッ!!!!」


奴は俺が投げつけたグレネードを左手で切り裂いた。
…7.62o全弾とグレネードランチャーの爆発を食らってもまだ反撃できるのか……。
ここまでくると流石に気持ち悪いぜ……。
だがよ、ドラゴンさん、グレネードを切り裂いたのは間違いだったな…。
この勝負、俺の勝ちだ。
グレネードは引き裂かれた瞬間、大量の煙を噴出する。
……催涙ガスだ。
どんな生物でも生きている以上、共通の弱点が絶対に存在する。
そして俺はそれの弱点を利用させてもらった。


「グァァァァァァァァァァ!!!!イキガァァァ!!!!」


そうだろう、苦しいだろう。
そのガスは脳に酸素不足を誤認識させる、テロリスト制圧用の非殺傷系ガスグレネードだ。
まぁ、思う存分苦しんでくれや…。
流石に今までのダメージ等で戦闘不能に陥るだろう…。
…俺は勝利を確信した。
……やっと長い戦いが終わった…。
疲れたぁ…。
身体も痛ぇし…。
とんだクソッタレなトカゲちゃんだよ、コイツはぁ…。
…さて、奴はそろそろ失神したかな…?
俺は晴れてきたガスの方を覗く。
このぐらいの濃度なら吸入しても大した事ないな。
…どれどれ……。
ハハッ、見事にぶっ倒れてらぁw
…っお?
……まだ意識が若干あるみたいだな…。


「………うぅ…、貴方は一体…、何者です…か……?」


奴は虫の息の状態で俺に問いかける。
どうやら正気に戻ったようだ。

「…俺は誇り高きアメリカ合衆国海兵隊、第ハチヨンキュウニー特務戦闘隊『ブラック・ホール』所属の『サトシ・マクラーレン』だ。部隊内番号は013で階級は大佐。…コードネームは『ハンター2-1』だ、以後お見知りおきを」

「…サトシ…マクラーレン……」


奴は最後にそう言うと、ガクッと地面に顔を突っ伏した。
…どうやら気絶したらしい。
可愛い寝息を立てちゃってさぁ……w
……勝ったんだな…、彼女に…。
俺は胸の繋がるはずのない無線機をまた手に取ると、司令部に向かって戦果報告をする。

「こちらハンター2-1よりオーバーロード、障害を排除した。…繰り返す、障害を排除した…。……ミッションオーバー、アールティービー」

俺は通信を終えると、再びうつぶせになって倒れている彼女へ視線を向けた。
…こいつはムリーヤに縛り付けておくか……。
聞きたい事もいっぱいあるしな。
そう思った俺は彼女の尾を両手で掴み、ズルズルと引きずっていったのだった……。




「…………重てぇなコイツ」




※↓はスカーを装備した米兵達の画像です。イメージし易くする為にどうぞ。
11/05/26 03:06更新 / GT_SIGNUM
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■作者メッセージ
やっとバトルシーンが終わりました…。

次回は皆さんお待ちかねの慣れ初めを書くつもりですw

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