連載小説
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ユウルート2「私とあなたの告白」
俺にとって、ユウねーさんは母親のような存在だった


確かに新しい母さんもいたけど、親父と同じで仕事が忙しかったためにあまり子供に構えてなかった


そのため、小さかった俺の面倒を見てくれたのは姉たちだった


シロ姉は初めて自分より下が出来て、慣れないながらも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた


シルクねぇちゃんは無口だったけど、いつも近くで守ってくれていた


もうその時には大人だったシャクヤ姉さまとユウねーさんはそんな皆を見守ってくれていた


シャクヤ姉さまは、甘やかすのは為にならないからと言って必要以上に甘やかすことはなかったけど…ユウねーさんはその分俺たちを甘やかしてくれた


今まで母親がいなかった俺は、それはもう見事に甘やかされていた


初恋の相手はユウねーさんだったし、今でもそういう気持ちがないと言えば嘘になる…というよりねーさんは今も異性として好きだ


だから、ユウねーさんは俺にとって母親のような存在であり…特別な存在なのだ


そんなユウねーさんから、大事な話があると部屋に呼ばれた…一体何の話なのだろうか?


夜ご飯も食べ終え、そして風呂に入りあとに支える予定もないから早速向かおう


「ねーさん、俺や」


「あら、開いてるわよぉ」





部屋に行くと、ユウねーさんがお酒を飲んで寛いでいた


もう酒に酔っているのか、少し顔が紅潮している


「大事な話ってなんや?」


「まぁまぁ、たっくんも飲んで飲んでぇ」


ねーさんが、空いていたコップにお酒を注ぐ


「おおきに、話聞きながら飲ましてもらうわ」


「えぇ…それじゃ、まずは…どこから話しましょうか」


「何の話か分からんけど、最初からでええんやないの?」


「そう、ね…これはたっくんについても大事な話だから…ちゃんと聞いてね」


ねーさんが真剣な表情で、ゆっくりと話し始めた


「たっくんがこの家から連れ出されたのは、お父様とお母様がたっくんの身を案じて…と聞いてるのよね?」


「え?そうやな、確かまだ年端もいかない俺を姉さん達が襲わないように…ってなんや問答無用に連れ出されたけど」


あれは忘れもしない出来事だろう、あれ以上に衝撃な出来事は他にない


「…その話をお母様達にしたのは、私なのよぉ」


「え、どういうことや?」


「たっくんは知らないかもしれないけどね…たっくんがうちに来た時から私達姉妹はたっくんのことを狙っていたのよ、夫としてね」


「それは親父から何となく聞かされたけど…」


「魔物は本能に忠実な生き物なの、本来ならあらゆる手を使ってでも気に入った男性を手に入れるんだけど…」


そのことはよく知ってる、おれは今まで魔物に関する研究所にいたんだ


研究所で学んだ時には衝撃を受けたものだが


「その時のたっくんはまだ6歳でしょう?そんな小さい子を無理やり…だなんて、心に大きな傷を与えてしまうかも知れない…でも、すぐ近くに、手の届く距離に好きな男性がいて何年も我慢ができる程、魔物は本能を抑えることなんて出来ないのよぉ」


「確かに…本能を抑えきれずに魔物が男を襲うなんてニュースは日常茶飯事やしな」


「だから私はお父様とお母様に言って、たっくんを遠いところに置いてもらうように頼んだのよ。いや…違うわね、私自身が抑えが効かなくなって襲って…たっくんに嫌われることが怖かったのよ」


「ねーさん…」


「たっくんには嫌われたくなかった、でも他の姉妹達に先に襲われるのも見てられなかった…そんな自分勝手な理由でたっくんを家から離れさせたのよ、私は…」


ねーさんは泣いていた、あのいつも温和なねーさんが泣くところなんて初めて見た…俺との別れの時には見せたかった涙だ


「…でもそれって、俺のことも考えてくれたからなんじゃないんか?」


「違うわ…私は自分のことしか考えないで、たっくんだけじゃなく姉妹たちにも辛い想いをさせてるわ…」


「せやろか?だって本当に自分のことしか考えてなかったらわざわざこんなこと俺に言わなくて良かったやん、そのまま襲ってくれてたらころっと堕ちるで?性欲有り余った年頃の男子やもん、俺」


ねーさんは涙を流すほど…かつての俺との別れ以上に辛い想いでこの話をしてくれた、ということはねーさんはそのことに罪の意識を感じてくれている


「姉さん達に奪われたくないって気持ちはあったかも知れんで?俺に嫌われたくないって思いがあったのは、まぁ…俺自身も好きな人からは嫌われたくないから分かるわ。…でも、それの何が悪いんや?」


「…え?」


「だって、そんなん普通の感情やで?そんなんに悪いなんて言ってたら俺かて悪者になるやん…まぁそれで犯罪を犯すってんなら話は別やけど、ねーさんは別に犯罪を犯したわけやないし」


「で、でも私はたっくんを…たっくんだって離れるのは嫌だったでしょう?」


確かに嫌だった、しかしそれはあの時親父が何にも言わないで問答無用に連れ出したからだ


「あれは親父が何も言わずに俺を連れ出したからや、ちゃんとした理由を最初に聞いてれば俺かて納得して大人しくしてたわ」


「でもぉ…」


「つまり、ねーさんは他に奪われたくないほど…俺に嫌われたくないほど俺のことを好きになってくれてたってことやろ?なんや嬉しいわ、ねーさんが俺のことをそんな風に思っててくれてたなんて…それだけでこの10年が報われたで」


ねーさんは俺の初恋の相手だった、勿論他の姉達も好きだが明確に異性として好きと思ったのはねーさんだけだ


そんなねーさんがこんなにも俺を想っててくれている、それだけで離れ離れの10年の苦労なんか吹き飛ぶ


「どうして…どうして…そんなことが言えるのよぉ」


「どうして…って、言われてもなぁ」


「私は自分勝手で、家族に迷惑を掛けて…罪深い魔物なのに…なんで…」


「俺がねーさんを好きだから、やな」


「…え?」


ねーさんが驚いたような顔をする、そんなに驚くことだろうか


「何驚いた顔してんねん、俺かて昔からねーさんのこと好きやったんやで?もちろん異性としてな、初恋の相手はねーさんなんやで?」


「な、なん…なんでっ…!?」


「んー…ほら、小さい頃から母さんみたいやったのはユウねーさんやったやん?シロ姉とシルク姉ちゃんは比較的歳が近かったし、シャクヤ姉さまはどちらかと言うと父親寄りだったから…」


統計学的に男性は母親に似た女性を好むらしい、というのをどこかで聞いたことがある気がする


「で、でも…私なんかより…」


「同じ事二度言わせるなや、恥ずかしいやろ」


「ひぁっ…?」


ユウねーさんの身体を抱きしめる、いつもは抱きしめられてばかりだから分からなかったがその身体は柔らかく注意深く扱わないと壊れてしまいそうだ


「ほら、泣き過ぎて目ぇ腫れてるで?」


今は抱きしめていて両手が離せないので、ユウねーさんの涙を舐めとる


「きゃっ…」


「んー、濃縮された乙女の秘密味…」


「ば、ばかぁ…」


「馬鹿でええよ、馬鹿でねーさんの涙を拭えるならな?」


「も、もぉ…そんなことされたら、今までずっと想いつめてた私が…馬鹿みたいじゃないのぉ…」


「ええやん、二人とも馬鹿でお揃いやん?」


好きな人とお揃い、なんて嬉しいことだろうか


「…本当に、いいの…私で…?その、私って…相当面倒くさい女よ?迷惑だってこれからも…」


「いくらでも掛けたらええで、俺はそれを全力で受け止めるし受け入れる。その迷惑を掛けるところも全部含めてユウねーさんなんやから、どんとこいや!」


「わ、私が耐えられないのよぉ…そんな、好きな人に迷惑を掛けるなんて…」


「ユウねーさんがその迷惑が掛けるのが耐えられないっていうなら、俺はそのねーさんを変えてみせるで?それには何が必要なのかはわからんけど、恋人として男として俺として…持てる全てをかけてユウねーさんの人生変えてやるくらいの気持ちはあるよ、俺は。俺にとっての好きっていうのはそういう事やからな」


これは、俺の全てを賭けた告白だ


「だから…俺の告白、受けてもらえませんか?」


「…ぁ、う…」


ユウねーさんの目があちこちと泳ぐが抱きしめて密着状態なので結局俺と目が合う


そして…


「…喜んで、お受けいたしますわ…♪」





告白の後、酒の影響か…それとも今まで堰き止めていたものが溢れ出したか俺とユウねーさんは激しく交じり合った


お互いに初めてではあったが、ねーさんは「お姉ちゃんだから」と終始主導権を握っていた


そしてそれは夜が明けて空が明るくなった頃に、ようやく収まったのだった


「あらぁ、もう朝ねぇ…」


「…ねーさん、激しすぎやで」


「たっくんだって私のこと言えないわよぉ、お腹がたっくんのでたぷたぷなんだからぁ」


「俺は終始ロールミーされてて搾り取られてただけだったような…」


着替えるのも億劫で裸のまま2人で布団に入る、もちろんユウねーさんは俺にロールミーしたままだ


「…私、ちゃんと皆にたっくんのこと話すわ」


「ん、それがええよ…ちゃんと謝れば皆許してくれるで」


まぁ皆のことだし、離れていた10年のことにはそんなに怒ってないとは思うが


「…俺は親父に謝らなくちゃな、なんだかんだ反抗してたし」


「それはいらないんじゃない?…確かにたっくんを離すように言ったのは私だけど…普通に離れて暮らさせてればいいのに、研究所に入れたのは酷いわよねえ」


「ははは、それもそうか」


まぁ、親父は親父で俺に同じ道を歩ませたかった…ってのもあるだろうしな


それに関しては結構いい息子なんじゃないか俺?


親父程ではないが功績は残しているわけだし…


「くぁ…」


「ふふ、とりあえず少し寝ましょうか…私も眠いわ」


「ん…ねーさん、頭撫でて…」


「はいはい、甘えん坊さん♪」


ねーさんが撫でてくれる、落ち着くなぁ…幸せだ


少し寝たら、家事をしないとなぁ…


「ふふ、可愛い寝顔ねぇ…さっきはあんなにカッコよかったのに♪」


「ん〜…」


「たっくん、あなたは優しすぎるわよ…だから悪い龍に捕まっちゃうんだからねぇ」


「…ねーさん、好きやで〜…」


「あらあら、夢にまで私がいるの?ちょっと恥ずかしいわねぇ…私も、大好きよ♪」
15/10/05 02:19更新 / ミドリマメ
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■作者メッセージ
ドーモ、ミドリマメです。大変遅れてしまい申し訳ありませんでした、新しく書き始めたメイドさんの方に浮気してしまって…(ダイマ)あと今回は大人の恋、みたいな感じにしようかと思い書いていて考えていたら大分時が過ぎていました…結局いちゃいちゃになってしまいましたが

今回はいつもより主人公の押しが強い…というか、支えられるように頼り甲斐を出してみましたがいかがでしょうか?お口に合えば良かったです

ちょっと重い話はここで終わりまして、次からはユウねーさんと甘々な感じに書いていきますのでよろしくお願いします

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