連載小説
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16.一線破壊
その言葉は想定していた。
だが、絶対に有り得ないとまではいかなくとも、多分無いと思っていた。

「野暮な事聞きますけど、その・・・本番って・・・」
「多分、想像してるので合ってる」

知らんぷりをするには、経験があり過ぎる。
その意味が分からない程、シロは子供では無い。

「あの、本気ですか!? 僕にかけられた呪文が・・・」
「それなんだけどさ」

焦るシロの声を遮り、エトナは続ける。

「タリアナで手コキして、ロコでフェラして、ここでパイズリしただろ?
 何だかんだで3回してるけど、どれもこれも呪文の効果出てないんだよ」
「・・・あれ、そういえば」
「アタシなりに、何でか考えてみた。そしたらさ、一個共通してるなって」
「・・・?」

それは、比較的分かりやすい事だったが、それ故に盲点になっていたのか、
シロは気付いていなかった。

「シロがヤられたがってる時は、普通に出来てた」

「・・・あっ」
「な? それと逆で、シロが恐がってる時はきっちり発動してたし。
 もしかしてさ、この呪文ってシロの気持ち次第で効果変わるんじゃないか?」

辻褄は合う。
教会に破魔蜜として使われていた頃は、襲われる事は恐怖だった。
また、呪文はほぼ常時発動していた。

しかし、エトナと出会ってからは、むしろ恐怖を感じる事の方が少ない。
加えて、ここ最近は自分から求める方が多かった。
そして、その時呪文はまともに機能していない。

推測が当たっている可能性は高そうだった。
が、それでもシロは不安が拭えない。

「でも、保証はどこにも無いですよ? それに、その・・・本番、となると
 僕も経験が一切無いんで、何が起こるか・・・」
「なぁシロ」
「はい・・・!?」

頭を抱き寄せる。
息が苦しくならないように力を緩め、両手を後頭部に添えながら、エトナは耳元で囁いた。



「そんな心配なんてどうでもよくなるくらい、気持ちよくしてやる」



―――『蠱惑的』。
直情的なエトナからは最も遠い位置にあるものだと、シロは思っていた。

人間味があり過ぎて、忘れていた。
エトナの種族はオーガ。つまり、魔物娘である事。

「ぬるぬるのマンコに勃起したチンコを突っ込んで、猿みたいにに腰振りまくってイけ。
 根元から先っちょまでしっかり締めて、襞で扱いてやる」

脳髄が焼けるような、甘い声。
襲う事が基本のオーガだが、こういったやり方が出来ない訳ではない。

「シロが満足するまで、アタシをオナホみたいに使え。前から覆いかぶさってもいいし、
 後ろから獣みたいに突きまくってもいい。勿論、それ以外のプレイでもいいぞ?」

神経に、猛毒が擦りこまれていく。
この誘惑を拒む術を持つ人間は、この世に存在するはずが無かった。

当然、シロも例外ではない。

「・・・・・・んっ」

生唾を飲み込む。
理性はドロドロに融かされ、幼き体に眠る雄の本能が目覚め始める。

「ほら・・・来い。最ッ高に気持ちよくしてやる」

全身を弛緩させ、シロはエトナにしなだれかかった。



「ふふっ・・・可愛い」
「あぅぅ・・・」

パンツ越しにシロの陰茎に触れるエトナの手が蠢く。
微かに漏れた先走りが、薄く染みた。

「大きくなってる」
「はぁ・・・はぁ・・・」

使っているのは、右手の指三本だけ。
しかし、その全てが寸分の狂いも無くシロの弱点を責める。
一瞬でも気を抜けば、これだけでも達してしまいそうな程の快楽。

シロも回数が少ないだけで、一人でした事はある。
勿論、それなりの満足感は得られた。
刺激の仕方は手で扱くという点において一緒ではある。

だが、それとは気持ち良さの量も質も違う。
まるで自分の思考を見透かしたかのように、エトナの指は動く。
緩い動きなのに、腰に力を入れる事が出来ない。甘い疼きが止まらない。

そして何より・・・目の前に、エトナがいる。

「さてと、もう十分だな。それじゃ」

唯一残った衣服、シロのパンツに手をかけ、ずり下げる。
完全に勃起した肉棒は、子供らしく・・・



「・・・えっ?」



大きい、とまではいかない。
しかし、それはごく一般的な大人の基準で判断した場合。

エトナの指先から手首までに、ほんの僅かに届かない程度。
僅か9歳の少年が持ちうることの無いはずの一物が、そこにはあった。

「これちょっと予想外なんだけど」
「タリアナを出た頃から大きくなりつつはあったんです。それと・・・なんか、ここ二日で急速に」

平均より小さな体躯には、不釣り合いな屹立。
性別の判断を迷わせる容姿に似合わぬ、血管の浮き出た肉棒。

『雄々しい』。
シロにはまだその印象は無く、身につけるにはしばらくの年月が必要なはず。
にも拘らず、ただ一点において、その片鱗が現れつつあった。

「ひょっとして、魔力の影響・・・?」
「かもな。けどこの際原因はどうだっていい。驚いたには驚いたが、嬉しい誤算だ。
 デカい事はいい事だろ? シロは大きいおっぱい好きだし、アタシはデカいチンポが好きだ」
「・・・否定はしません」

わしゃわしゃと頭を撫でられながら、顔を赤らめる。
そのいじらしさに思わず襲い掛かりそうになったが、ギリギリでその感情を押し留めた。

「んじゃ、折角のモノなんだし、しっかり使ってもらわないとな。
 なぁシロ、どんな感じにヤるのが希望だ? アタシは上でも下でもいいから、任せる」

魅力的この上ない問いに対し、シロは少し考える。
そして、出した結論は。

「えっと、まず、仰向けに寝て下さい」
「分かった。・・・こうか?」
「はい。それと・・・キス、してもらえますか?」
「勿論。ほら、来い」
「ありがとうございます。・・・では」
「あぁ。・・・んっ」

柔らかく潤いのあるシロの唇と、程よい厚みと色気を併せ持つエトナの唇が重なる。
そのまま舌を絡め、ゆっくり、ゆっくりと、二人の身体の境界線が曖昧になってゆく。

優しい気持ちと、多幸感に包まれながら、二人は目を閉じた。

(エトナさん・・・)

唾液が混ざり合う音と、シーツと身体が擦れる音。
そして何より、これが紛れも無い現実であるという事を示す、鼓動の音。

(・・・幸せ、です)

思わず、涙腺が緩む。
想いはその小さな身体に収まりきらず、文字通り溢れ出した。

どうすれば、この気持ちを伝えきれるのだろう。
そんな事を思いながらも、今はただ、この瞬間の幸福に浸り続ける事にした。



数分か数十分、もしくは数時間か。
溶ける程に熱い貪り合いが漸く終わる。

ここに来て、シロは思い出した。
これは、まだ前戯に過ぎないという事。
この後には、今までの行為とは一線を画す、睦み合いが待っているという事を。

「・・・そろそろ、いいか?」

待ちきれない。
直接的な表現にしなかったという事すら、奇跡的だった。
これも、愛の為せる所か。

こくん、と小さく頷き、身体を密着させたまま、少しずつ動く。
そして、互いの性器が触れ合う位置まで辿り着くと。

「・・・エトナさん」
「・・・?」



「愛してます」



「・・・!!!」

この時ほど、エトナが震え上がった事は無いだろう。
目を潤ませながら、精一杯に気持ちを詰め込んだ言葉と共に、シロは腰を突き入れた。



「ぁあっ!」

にゅるりと入った一物が、肉襞の歓迎を受ける。
鈴口を、亀頭を、カリを、竿を、全てを包み込み、締め付け、擦れ合う。

とても、不思議な感触だった。
エトナの膣は、子種を力ずくで奪い取るかのように、凶悪なまでに強く肉棒を締め付ける。
弾力に溢れ、ぷりぷりとした襞の一つ一つが意思を持っているかのように、陰茎を責めたてる。
・・・なのに。

「ふぁぁ・・・ふぁああっ・・・!」

どこまでも、どこまでも、蕩けてしまう。
乱暴にもみくちゃにされているのに、力が抜けてしまう。
両立するはずの無い、ベクトルの異なる快楽を生み続ける底なし沼が、存在していた。

猿のように、腰を振り続ける。
脳は思考を放棄し、今何をしているのかさえ殆ど認識できない。
彼を動かしているのは、原始的な欲求と、雄としての本能。

そして何より、エトナへの愛。
混濁する意識の中、ただそれだけははっきりと認識していた。
肉体的な快楽と、精神的な充足感。
間違いなく、今までの何よりも、シロはそれを感じていた。

「シロ・・・シロッ!!!」

エトナは突然の愛の告白に戸惑い、混乱していたが、何とか意識を取り戻した。
当然、彼女も比類なき悦楽と、嬉しさを覚えている。
どちらかが欠けていたら、シロの全身の骨が砕ける位に、腕に力が入ってしまっただろう。
理性が飛んでいる以上、それを止める手立てはこの状態の継続の他に無いという事を、
二人は知らない。

だが、最早そんな事は些細な問題にすらならない。
今ここにあるのは、互いを愛し合い、享楽に浸り続ける男と女、ただそれだけなのだから。

「はぁ・・・はぁっ・・・! あぁっ・・・」
「あぁっ! んぁっ、んんっ」

いくつかの偶然が重なり、シロの初めては最高の形で、エトナに捧げられた。
幼いとさえ形容できる少年と、凶暴かつ好戦的なオーガ。
この組み合わせで交わりがあるとすれば、それはトラウマにさえなりかねない蹂躙のみ。
にも関わらず、これは一方的な凌辱でも無ければ、自分の意に反した行為でも無い。
紛う事無き、対等な愛し合い。
好き合う恋人が行うそれと何ら変わりない行為を、シロは経験した。

肉筒に包まれ、全方位からの刺激を受けると同時に、シロの肉棒がそれを押し返す。
シロが気持ちよくなった分、エトナも感じ、膣内がうねる。
それがまたシロに伝わり・・・快楽は、循環する。
凶悪な締め付けはそのままに、ほぐれた肉襞が波打ち、蠢き、舐る。
これを止める手立てなどないし、止めようとなど思うはずが無い。

「ふぁ・・・エトナさん、僕・・・!」
「・・・んっ。うん。イけ」

もっと、幸せにしてやりたい。気持ちよくさせたい。
しかし、皮肉な事にそう思えば思う程、その終わりは早まる。
でも、それも仕方のない事。それに、その時に最高の瞬間が訪れるのだから。

何も、心配する事は無い。自分の欲望に素直になっていい。
なら、その全てを吐き出そう。

ぬるぬるの膣壁に自分のモノを擦りつけ、最後までその感触を味わう。
呼応するかのように震える襞に扱かれ、ついにその時を迎える。

シロの一物が脈動し・・・



―――その先端から、半固形になった白濁液が放出された。



「んあああああっ!!!!!」
「おっ・・・んぉっ・・・!?」

根元からめりめりと輪精管を押し広げるようにして、精液が噴出する。
それはまるで、雷に撃たれたかのような衝撃。
その波はペニスどころか腰回りを越え、上は肩口の辺り、下は膝まで広がった。

多くの場合、自らの手で擦った時か、睡眠中にいつの間にかといった形で迎え、
それが何なのかよく分からぬまま、不安に駆られる可能性さえある事。
ある意味最も分かりやすい、成長の証。

シロは、安心感と幸せの中で、エトナとの性交によって、大人の身体に一歩近づいた。
つまり・・・精通を迎えたのである。

経験年齢に個人差はあるが、シロくらいの年で経験する事も十分考えられる。
が、そのきっかけが魔物娘とのセックス、それもお互いの合意に基づいた和姦でとなると、
かなり特殊かつ、珍しいケースとなる。

(・・・アタシ、もうダメかもしれない)

完全なる不意打ちで、シロの精液に浸ったエトナの子宮。
その味を覚え込まされ、クラクラに・・・

(・・・童貞も)

なるはずが、ない。

(・・・精通も)

何故なら。

(・・・アタシが、奪った)



「・・・もう無理ッ! シロー! ヤらせろーーーっっっっっ!!!!!」

エトナは、魔物娘なのだから。



幸いな事に、エトナの暴走とシロの行動は完全に適合していた。
早い話、シロもこの行為を続ける気満々だったのである。
加えて。

「エトナさんっ! 僕、またっ!」
「あーもう! 連射利くとかどんだけアタシを虜にするつもりだ!
 好きなだけイけ!」

言うが早いが、2発目を放出する。
濃度も量も、1回目とさして変わらない。

魔力の影響を受けたシロの陰嚢は、常人の精液生産力を遥かに超えていた。
子供であるが故に染まり易かったのか、効果はかなり強く表れ、
その結果、大量の精液を連続で発射できるという、まさかの絶倫少年が誕生した。

「もうじれったい! アタシが上になる!」
「ふぇっ!? って、うわぁぁっ!?」

欲望を抑えきれず、遂にエトナが主導権を奪った。
体勢を入れ替え、騎乗位に移り、好き勝手に腰を振る。呪文の事など既に頭に無い。
最早これは性交ではなく、『交尾』と言った方が近い。いや、交尾そのものかもしれない。

ただ、滅茶苦茶に乱暴ではあるが、その動き方は完全に男殺し。
とりわけ、上下に激しく動くピストン運動に混ざっての『捻り』が象徴的だった。

体重をかけないようにしながら動く一方で、腰を左右に捩り、肉棒を扱く。
不規則な動きが膣内に伝わり、様々な方向・角度から陰茎を嬲る。
どこから気持ち良さが飛び込んでくるか全く予測不能であり、決して感覚を麻痺させない。
これを本能でやっているというのだから、恐ろしい話である。

加えて、騎乗位という体位の特性は、エトナの身体と非常に相性が良い。
何故なら、この体勢でエトナが動けば動くほど、胸が艶めかしく揺れる。
視覚的な刺激がどれほど強いかは、想像に難くない。

「ふあぁっ、ああんっ!」

擦れ合う性器が触覚を、淫らな水音が聴覚を、
フェロモンに溢れる汗が嗅覚を、扇情的に揺れるエトナの巨乳が視覚を刺激してゆく。
人間の持つ五感の内の4つに性的刺激を受け、シロは壊れかけた。
これでもかとばかりに襲い掛かる快楽の暴力を受け止めるには、彼はあまりにも若すぎる。

それでもギリギリ正気を保っていられるのは、愛の為せる業か。
勿論、大部分は魔力の影響なのだろうが、最後の防壁を務めるのは愛なのだろう。

ほぼ一方的に責められているシロは、辛うじて腰を突き上げるのがやっと。
それも反撃には至らず、それどころかその健気さがエトナの興奮をさらに増幅させるだけだった。

(・・・幸せ♥)

加速度的に激しさを増す行為に思考回路の殆どを蹂躙され、
何度目か分からない射精をしながら、シロは心の底から、手放しでの幸福を感じた・・・






翌朝。

「・・・腰が・・・腰が痛ぇ・・・」
「エトナさん、無茶しすぎですって・・・」

結局、原因こそ分からないままではあったが、一度たりとも呪文は発動しなかった。
しかし、それとは異なる要因で、エトナは魘される事となった。

序盤を除き殆ど動く事の無かったシロは、体力の消耗こそあったが、特に変調はきたしていない。
が、終始無茶苦茶に腰を動かし続けたエトナは大変な事になっていた。
上下運動だけならともかく、捻りに加えてシロに体重をかけない為の配慮を本能的にした結果、
とんでもない負荷が長時間に渡って腰にかかることとなった。
いくら強いオーガといえども、この様な結果になるのは仕方ない。

「まさか呪文じゃなくて、こういう事でキツい事になるなんてな・・・
 アタシもヤキが回ったもんだ・・・」
「ものすごく気持ちよかったし幸せでしたけど、もうこんな無理しないで下さいよ」
「童貞どころか精通まで貰って興奮するなって方が無理だって痛ッ!」
「分かりましたから安静にして下さい! 確か湿布がこの箱の中に・・・」

エトナをうつ伏せに寝かせたまま、シロは木箱を漁る。
その背中に向けて、エトナは一つの問いを投げかけた。

「なぁシロ、ちょっと」
「はい、何でしょうか?」
「・・・アレ、本当か?」
「アレ・・・? 何の事ですか?」
「・・・ん、んじゃいいや」
「いや教えて下さいよ。気になります」
「これ、シロ自身が気付かないと意味ないんだよ。
 それに、多分近い内にどういう事か分かると思う」
「むー・・・分かりました。それなら深くは聞かない事にします」
「ん、そうしてくれ」

目を閉じ、昨夜の行為の始まりを思い出す。

(・・・どういう気持ちから、出たんだろうな)

鮮明に、その声は残っている。



『愛してます』



(・・・おませさん、ってヤツだな。まだシロは子供だ。少なくともアタシから見れば)

その意味はあまり深い方向には取らないことにし、エトナは目を閉じた。
14/09/07 23:11更新 / 星空木陰
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■作者メッセージ
相変わらずの遅筆、申し訳ございません。
ようやくの更新です。

ついに一線を越え、同時に身体的にも大人になったシロ。
彼の成長はどこまで行くのか。

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