連載小説
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情の火炎
「水流、前へ!」
 メリーアが叫び、短剣の切っ先をレンディスに向ける。すると、地下水脈から湧き続ける水流は大蛇のようにうねり、レンディスを飲み込むべく移動を始めた。
「遅いっ!」
 しかし、湧き上がる水の質量のためか、水流はゆっくりと流れ出すばかりでレンディスをとらえることはできない。
 さらに、空中での高速移動を得意とするワイバーンのメイに対しては、狙いをつけている間に移動され、狙うことすらできない。故にメリーアはレンディスに狙いを定めていたが、それでも当たる気配すらなかった。
「軍師の秘策がこの程度って笑えちゃうね」
 メイがにこにこと笑い、白い歯を見せつける。余裕綽々といった様子だが、攻撃は仕掛けてこない。ごく一般の魔物であればこの時点で僕に狙いを定めて攻撃を仕掛けてくるのだろうが、彼女たちはいまだに警戒を続けている。オリアナが僕に撃破された時のように、カウンターを警戒しているのだろう。
「そう言うわりには攻撃を仕掛けてこられないのは何故なんでしょうか??」
 メイの挑発にメリーアは挑発し返した。
「特にレンディス様、でしたか。陸の強者たるドラゴンが、私のような死人にてこずり、さらには精を搾取し、蹂躙し、上に跨り弄ぶ、いわばオモチャのような存在にすぎないヒトに対してお時間をかけすぎでは?」
 メリーアはにっこりと微笑みながら、胸元からもう一つの武器、鉄扇を取り出して口元を覆う。だが、その笑みは鉄扇では隠し切れていない。

「そうか……オモチャか」
 レンディスは静かに言う。その口元からは火の粉が漏れていた。
「では、お前の隣にオモチャなんか必要ないよなァッッ!!!」
 レンディスが叫んだ瞬間、火球がメリーアに向かって放たれる。
「私が欲した至宝への侮辱は絶対に許さん!!行くぞ!」
 レンディスの声に合わせてメイが先陣を切る。上空からの急降下に合わせてカタナの切っ先を突き出し、さらに攻撃が当たらないように横へ薙ぐ。
 しかし、その一撃は外れ、メイの腕が眼前に迫る。
 対処できない、と思った時には時すでに遅く。
 僕はメイによって組み伏せられ、地に顔をこすり付けるかのように、情けなく倒れた。
「姐さん!今!」
 そして僕が倒れると、メイの声に合わせてレンディスが攻勢に出た。
 僕は撃破されるでもなく、ただ地面に這いつくばっていることしかできない。
 地を蹴り、羽を広げてレンディスはメリーアに襲い掛かる。
「ッ……防陣展開!水壁前へ!」
 それに対処すべく、メリーアは防御壁を展開した。
 しかし、メリーアが防御壁を展開しても、レンディスの攻撃は止まらない。
「烈焦拳ッ!!」
 繰り出される連打に、水壁が音を立てて蒸発していく。
「水壁、もっと!もっと厚く!」
 メリーアが水壁を厚くする間、彼女は胸元で開いた鉄扇をを構え、レンディスに狙いを定めている。
「オラオラオラオラァッ」
 叫び声をあげ、レンディスは決壊を破らんと拳をふるい続ける。そんな彼女の髪を振り乱す姿にはもうすでに地の覇者であるドラゴンとしての威厳はない。レンディスは、自身の全力をもってメリーアを倒そうとしていた。
「死人風情に……この男は渡さないッッ!」
 そう言ったレンディスの拳が、水流によって強化された防御壁を貫いた。
 そしてそれを反撃の契機とし、メリーアは叫ぶ。
「投扇興!若紫!」
 メリーアは構えていた鉄扇に魔力を乗せ、一撃を放つ。
 あの一撃は暗器術の中でも最も難しいといわれる扇を用いた遠距離暗殺術である。本来は超近距離での使用が主とされる扇に強力な魔力を乗せ、必殺の一撃を放つ。それが投扇興と呼ばれる暗器術である。この一撃が終われば、あとに残るのは扇子のみであり、扇子に乗せられた魔力は霧散する。
 暗殺した証拠の残らない暗器術。この一撃が当たれば勝機は見える。
 輝く扇の羽は勝機を乗せ、メリーアの指先から放たれる。
 しかし、その一撃は空しく空を切り、ひらひらと地面に落ちた。
 レンディスはその一撃を見切り、古の魔力を帯びた短剣を叩き割ったのだった。
「これで終わりだな」
 うずくまるメリーアに、それを見下ろすレンディス。
 雌雄は決した。これ以上の戦闘は必要ない。
 ……しかし、レンディスはメリーアの首元をつかみ、彼女を片手で持ち上げた。
「な、なにを……」

「お前は私の宝を『オモチャ』と侮辱したその償いはしてもらう」
 驚くメリーアの顔には恐怖があった。その恐怖はきっと刑の執行を待つ囚人のような恐怖だろう。
「や、やめ……て」
 泣きそうになるメリーアをよそに、レンディスはその手にゆっくりと力を込め、火の魔力を貯めていった。レンディスの指の間から火の粉が舞い、メリーアの服を焦がしていく。
「うぐっ……あがっ…!」
 メリーアは素手ででレンディスの手から逃れようと暴れるが、厚い竜の鱗はその攻撃を通さず、堅くレンディスを守り続ける。
 その間もレンディスは手に魔力を貯め続け、ついにはメリーアの服に火が付いた。
「私の宝を侮辱した罪だ。夫でもない男の前でその痴態を晒すといい」
 魔物の炎は人やほかの魔物を焼き殺すことはできない。しかし、物体を燃やすことはできる。故に、レンディスが手に火の魔力を集めればメリーアの服は燃え、そこに残るのは生まれた時と同じままの姿のメリーアだった。
「あうっ!あっ!やめっ……」
 メリーアが暴れるたびに胸が揺れ、その白い肌から汗が飛ぶ。
 苦しそうにもがき、足をバタバタと動かして暴れる。
 そしてあらわになった股や胸を抑えようとするたびに、レンディスが腕に力を込め、それを抑止する。
 裸になったメリーアは、恐怖で失禁し、漏らしたまま泣いていた。
「いい様ね。さっきまでの威勢が削がれてかわいらしくなったじゃない」
 不敵な笑みを浮かべ、レンディスはさらに腕に力を込める。
 そして、レンディスの炎がメリーアを包むと、メリーアの体にある変化が訪れた。
「……発情したのね。でもこれからよ」
 メリーアは抵抗をやめ、うつろな目で僕を見つめ、その手を陰部にあてていた。しかしその指先は陰部を隠すためではなく、専ら自慰のために動いている。
「うんっ……あんっ……♥あぁ……♥」
 これも魔物の炎によるものだろうか。彼女の股はくちゅくちゅとみだらな音を立て、愛液を垂れ流している。苦しそうだったうめき声もなぜか今では艶を帯び、よがるような声をだしている。
「メイ、代われ」
「はーい」
 レンディスは抵抗する意思を失ったメリーアを離すと、僕に歩み寄り、腰の上に跨った。そしていつかのように僕の顔を覗き込み言う。
「やはり……面白い男だ」
 そして彼女はメリーアの正気を奪ったその手で僕の鎧を切り裂いて捨て、肌着にまで剥いた僕の体を抱きしめた。
「お前は私のものだ。オモチャなんかじゃない……。私の夫になる男だ」
 レンディスはかたく僕を抱きしめ、耳元で囁く。
 彼女を守るかたい鱗はぽろぽろと剥がれ、柔らかな胸が僕に押し付けられる。その先端にあるまだ誰にも触られたことのないであろう小さな桃色の突起が肌着越しに押し付けられ、存在を主張している。
 そしてレンディスに跨られた腰は、彼女の愛液で濡れ、糸を引いている。
 そして、僕への愛を紡いだみずみずしくハリのある唇は僕の唇に押し付けられ、彼女の舌が僕の口の中を蹂躙していく。
 不思議と不快感はなく、ただただ僕は快楽に身をゆだねていた。
 レンディスの甘い唾液を口に移され、嚥下した。
 僕は今この状況がどういう状況なのか理解しているはずだった。
 でも、拒むことはできなかった。
 僕はこの国の王子として、婚外での性交渉は持ってはいけない、ということは理解していた。でも、ミュリナさんとのこともあって、一人も二人も変わらないと思ってしまったのだろうか。
 僕は自分から、求めるように、レンディスの唇にもう一度唇を重ねた。
 
 
 
 

 

 
 
18/09/07 09:56更新 / (処女廚)
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■作者メッセージ
お久しぶりです
ちょっと魔界に旅行していたので更新がずいぶん遅れてしまいました。
パスワードを忘れると大変なことになるんですね。思い出してよかったです。

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