キサラギの神託
教室と廊下につなぐ出入口で、テツヤ様とレンディスという竜鱗の女性が話している光景を見て、私は少し危機感を覚えた。
その危機感は焦りに似て、私の心臓の鼓動を速めた。
「このままではレンディスに私の友人を取られてしまうかも知れない」
漠然とした、そのような思いが心を乱した。
べつに私とテツヤ様が、特別な関係というわけでもないのだから、そんな思いを抱くのはお門違いだ、といわれればそれまでだった。でも、それでも、私が初めて言葉を交わした殿方がテツヤ様であるとしたらどうだろうか。
それ以前に、初めて対等に会話をした人間が彼だけだとしたら、この友を失おうとする悲しみに誰か同情してくれるだろうか。
私の一族はジパングの地方では神と崇められ、畏怖される存在であった。しかし、そうであったがために、人とは隔離され、大きな社の奥底でひっそりと暮らしていた。
私に仕える巫女は人間の女性たちであったが、彼女たちでさえも、キサラギ様、様、様、と常に私の顔色を窺い、自由な笑顔さえも見せてはくれなかった。
このように私の一族には出会いが全くと言っていいほど存在しなかった。だから、神が代替わりする際の跡取りを決めることは困難だったし、代替わりしたとしても、その稲荷に夫がいなければ次の代を担う子が生まれなくなってしまう。だから、私たちは代替わりをする際に村の捧げる供物としての男性を迎え入れ、その日に交わり、夫としての男を決める必要があった。
そんなことを繰り返して、私の家は何代も栄えてきた。
しかし、その繁栄もついには途切れた。
私たちの住む村は異国の軍勢に襲撃され、村の全てが焼け落ちたのだ。
私がまだ十にもならない時の事だ。
異国の軍勢には「勇者」を名乗るものが居て、ジパングの邪教を滅ぼしに来たと言っていた。
そんな敵に対して無力な村人は次々と傷ついた。
小さな子供の泣き叫ぶ声や女の甲高い叫びに、男たちの怒号。
栄えていた村は炎に包まれた。
そんな地獄の中、私と母はわずかに残った村人を守りながら逃げ延び、隣国、アシハラ一族の治めるナカツクニに向かうか、まだ見ぬ海を越えた先の異国へ向かうかの選択を迫られたのである。
そして私は後者を選び、この地に降り立った。
私の母はナカツクニへ向かい、村人を守り続けた。
私がこの国に来たのは、母の遺言によるものだ。母を裏切ったわけではない。
母は隣国ナカツクニとつながる関所を守る際、社の近くに住んでいた妖狐や鬼を集めて即席の軍を作り、異国の軍隊に必死に抵抗した。
幼かった私は巫女に抱えられ、ナカツクニへ逃げ延び、その巫女は母の最期の神託を私に託したのである。
「この家の血を絶やすな。異国へ渡り、子を成せ。そしてまたこの国へ帰って来い」
私の母は、今ではもう生きているのか、死んでいるのかさえ分からない。
それでも、私の母のような大妖怪であれば、きっと生きているはずだ。
絶望に塗れた母の神託も、きっと外れているに違いない。
そう思いながらも、私は交易船の積み荷に化け、時にはじっと動かないまま何日も過ごした。
そしてこの国にやってきて、紆余曲折があり、テツヤ様と出会った。
一目惚れだった。
そして私はこの男性を伴侶として迎えようと決めたのである。
――これが、私の今までの話。
しかし、テツヤ様をどうにかして落とそうとしても、レンディスに限ったことじゃないが、魔物たちは皆美少女だらけだ。
ルメリ様もメリーア様も、彼の姉と言われているエルメリア義姉さまも、類に漏れず皆美しく淑やかだ。
あの方たちの美しさは天稟の美しさであり、魔物として生を受けた時から、その美貌を保持してきているのだろう。
その美しさや魅力に、私は勝てるのだろうか。
そう思いつつ、私は早まる鼓動を抑える為に、左胸を圧迫した。
そして、早まる鼓動が収まると、私は一世一代の賭けに出た。
「テツヤ様っっ♥」
そう言って、私は彼の胸の中に飛び込んだ。
ちょうどレンディスさんが話し終えた時だ。
いきなりの出来事に目を白黒させながら、彼は私を抱きとめた。
そしてその瞬間に私の体から流れ出す魔力を、一気に彼に流し込む。
ふわふわのしっぽを彼の体に這わせ、その柔らかさを伝えるように、丁寧に、優しく、それでいて豪快に。
こうすれば、彼は私に欲情してくれる。
そしていずれ、彼の股間にある剛直で猛々しい分身で、私の子宮口を何度も何度も貫いてくれるはずだ。
ルメリさんやメリーアさんには悪いけれど、私が彼をいただきます。
彼に犯される私自身を妄想し、ほくそ笑む。
そして、邪な妄想によって濡れ始めた陰部を慰めるように、服の上から、彼の腿に擦りつける。
「……っ♥」
全身を快楽の電流が流れ、脳の奥ではじけた。
彼は身震いをする私を視姦して、真っ赤になっていた。
……それでいいのです、テツヤ様。淫らになった私をもっと見たくないですか? そう語りかけるように、私は彼を見つめた。
彼は何も言わなかったが、確実に私に心は揺れ動いている。
こんなことをしても、私に罪悪感は芽生えない。
これもすべて、母の神託を守るためであるからだ。
その危機感は焦りに似て、私の心臓の鼓動を速めた。
「このままではレンディスに私の友人を取られてしまうかも知れない」
漠然とした、そのような思いが心を乱した。
べつに私とテツヤ様が、特別な関係というわけでもないのだから、そんな思いを抱くのはお門違いだ、といわれればそれまでだった。でも、それでも、私が初めて言葉を交わした殿方がテツヤ様であるとしたらどうだろうか。
それ以前に、初めて対等に会話をした人間が彼だけだとしたら、この友を失おうとする悲しみに誰か同情してくれるだろうか。
私の一族はジパングの地方では神と崇められ、畏怖される存在であった。しかし、そうであったがために、人とは隔離され、大きな社の奥底でひっそりと暮らしていた。
私に仕える巫女は人間の女性たちであったが、彼女たちでさえも、キサラギ様、様、様、と常に私の顔色を窺い、自由な笑顔さえも見せてはくれなかった。
このように私の一族には出会いが全くと言っていいほど存在しなかった。だから、神が代替わりする際の跡取りを決めることは困難だったし、代替わりしたとしても、その稲荷に夫がいなければ次の代を担う子が生まれなくなってしまう。だから、私たちは代替わりをする際に村の捧げる供物としての男性を迎え入れ、その日に交わり、夫としての男を決める必要があった。
そんなことを繰り返して、私の家は何代も栄えてきた。
しかし、その繁栄もついには途切れた。
私たちの住む村は異国の軍勢に襲撃され、村の全てが焼け落ちたのだ。
私がまだ十にもならない時の事だ。
異国の軍勢には「勇者」を名乗るものが居て、ジパングの邪教を滅ぼしに来たと言っていた。
そんな敵に対して無力な村人は次々と傷ついた。
小さな子供の泣き叫ぶ声や女の甲高い叫びに、男たちの怒号。
栄えていた村は炎に包まれた。
そんな地獄の中、私と母はわずかに残った村人を守りながら逃げ延び、隣国、アシハラ一族の治めるナカツクニに向かうか、まだ見ぬ海を越えた先の異国へ向かうかの選択を迫られたのである。
そして私は後者を選び、この地に降り立った。
私の母はナカツクニへ向かい、村人を守り続けた。
私がこの国に来たのは、母の遺言によるものだ。母を裏切ったわけではない。
母は隣国ナカツクニとつながる関所を守る際、社の近くに住んでいた妖狐や鬼を集めて即席の軍を作り、異国の軍隊に必死に抵抗した。
幼かった私は巫女に抱えられ、ナカツクニへ逃げ延び、その巫女は母の最期の神託を私に託したのである。
「この家の血を絶やすな。異国へ渡り、子を成せ。そしてまたこの国へ帰って来い」
私の母は、今ではもう生きているのか、死んでいるのかさえ分からない。
それでも、私の母のような大妖怪であれば、きっと生きているはずだ。
絶望に塗れた母の神託も、きっと外れているに違いない。
そう思いながらも、私は交易船の積み荷に化け、時にはじっと動かないまま何日も過ごした。
そしてこの国にやってきて、紆余曲折があり、テツヤ様と出会った。
一目惚れだった。
そして私はこの男性を伴侶として迎えようと決めたのである。
――これが、私の今までの話。
しかし、テツヤ様をどうにかして落とそうとしても、レンディスに限ったことじゃないが、魔物たちは皆美少女だらけだ。
ルメリ様もメリーア様も、彼の姉と言われているエルメリア義姉さまも、類に漏れず皆美しく淑やかだ。
あの方たちの美しさは天稟の美しさであり、魔物として生を受けた時から、その美貌を保持してきているのだろう。
その美しさや魅力に、私は勝てるのだろうか。
そう思いつつ、私は早まる鼓動を抑える為に、左胸を圧迫した。
そして、早まる鼓動が収まると、私は一世一代の賭けに出た。
「テツヤ様っっ♥」
そう言って、私は彼の胸の中に飛び込んだ。
ちょうどレンディスさんが話し終えた時だ。
いきなりの出来事に目を白黒させながら、彼は私を抱きとめた。
そしてその瞬間に私の体から流れ出す魔力を、一気に彼に流し込む。
ふわふわのしっぽを彼の体に這わせ、その柔らかさを伝えるように、丁寧に、優しく、それでいて豪快に。
こうすれば、彼は私に欲情してくれる。
そしていずれ、彼の股間にある剛直で猛々しい分身で、私の子宮口を何度も何度も貫いてくれるはずだ。
ルメリさんやメリーアさんには悪いけれど、私が彼をいただきます。
彼に犯される私自身を妄想し、ほくそ笑む。
そして、邪な妄想によって濡れ始めた陰部を慰めるように、服の上から、彼の腿に擦りつける。
「……っ♥」
全身を快楽の電流が流れ、脳の奥ではじけた。
彼は身震いをする私を視姦して、真っ赤になっていた。
……それでいいのです、テツヤ様。淫らになった私をもっと見たくないですか? そう語りかけるように、私は彼を見つめた。
彼は何も言わなかったが、確実に私に心は揺れ動いている。
こんなことをしても、私に罪悪感は芽生えない。
これもすべて、母の神託を守るためであるからだ。
17/05/14 01:24更新 / (処女廚)
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