連載小説
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20品目 『タヌタヌ合戦(後編)』
「っすー。シロさん元気っすかー?」
「あ、店長! 本選進出おめでとうございます!」
「どもっすーノ」

決勝戦前。
待機ブースで準備運動をしていたところ、試合を終えた店長が様子を見に来てくれた。

「いよいよ決勝っすねー」
「はい。少し、緊張してきました」
「力が入るのもわかるっすけどー、まー気楽にやるっすよー」

床に座り前屈していると、店長が後ろから背中を押してくれた。

「でも、相手はロザリーさんですよ? もうどうしたら良いか……」
「そんなシロさんにーうちが新技を授けるっすー」
「へ?」

その直後、

「っす!」
「かはっ!?」

店長の手が離れたかと思うと、背中からもの凄い衝撃を受けた。

「う…うぅ……」
「シロさんの秘孔を突いたっすー。これでーアレが使えるっすー」

ファルシロンは『内丹』を習得した!

「こ、これは?」
「回復技っすよー。ここぞという場面で使うとイイっすー」
「回復、ですか」
「まー1戦闘1回が限度ってとこっすけどねー」
「いえ、とても心強いです! ありがとうございます!」
「っすー。頑張ってお嬢様を亡き者にするっすよー」
「いや、それはさすがにダメですって……」












試合会場。

「ファルシロン、良くここまで勝ち抜いてこられましたわね?」
「はい。絶対に負けないと、約束しましたから」
「ふふっ♪ それでこそ、わたくしのフィアンセですわ♪」

『それでは〜! 両者構え〜!』

「ですが勝負は勝負……手加減はできませんわよ?」
「はい! 望むところです!」

『レディ〜…………ファイト!!!』



〜Bブロック予選・決勝戦〜
(イメージ戦闘曲→http://www.youtube.com/watch?v=60M5p6m549M)

『ファルシロン(柔術) VS ロザリンティア(魔法剣士)』



・・・・・・・・・・・・

ファルシロンの鬼首落とし!
体を回転させ威力の高い上段蹴りを繰り出す!
ロザリンティアは45のダメージ!(HP205)

ロザリンティアはレイピアによる三連突き!
ファルシロンは36のダメージ!(HP164)

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは引き手の構え

ロザリンティアのブラッドファング!
踏み込みなしの高速突きをはなつ!
しかしファルシロンはひらりとみかわした
ファルシロンは引き手発動!
ロザリンティアの手を掴み体勢を崩す!
さらにファルシロンの合気投げ!
ロザリンティアの胸倉を掴み遠心力を利用して地面へと叩きつける!
ロザリンティアは47のダメージ!(HP152)

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは暗幻楼の構え

ロザリンティアの高速詠唱
ロザリンティアはイビルスフィアを唱えた!
空間から出現した無数の刃がファルシロンを襲う!
ファルシロンは56のダメージ!(HP108)

ファルシロンは反撃することができない!

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは真空刈脚を繰り出した!
しかしロザリンティアはひらりとみかわした
ロザリンティアはパーティカルアクシズで反撃!
ファルシロンの肩に飛び乗り顔面に強烈な蹴りをいれる!
ファルシロンは42のダメージ!(HP66)

ロザリンティアの高速詠唱
ロザリンティアはゴッドハンドを唱えた!
天空から神の鉄槌が下る!
ファルシロンは61のダメージ!(HP5)

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは内丹の構え
ファルシロンのキズが内側から治癒していく!(HP155)

「狸の入れ知恵ですわね? ふふ…なかなか面白いですわ!」
「っ……どうすれば……!」

ロザリンティアの瞳が怪しく光る
ロザリンティアの攻撃にHP吸収効果が付与された

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは翡翠掌打を繰り出した!
しかしロザリンティアは攻撃を受け流した
ロザリンティアはコントル・カウンターで反撃!
ファルシロンの頭上で手をつき逆立ち、そのまま体重をかけ地面に叩きつける!
ファルシロンは受け身でダメージを軽減!
ファルシロンは26のダメージ!(HP129)

ロザリンティアのインフェルノディバイド!
レイピアでファルシロンを下から上へとかち上げる!
ファルシロンは39のダメージ!(HP90)
ロザリンティアはダメージの一部を吸収!(HP160)

・・・・・・・・・・・・

「シロさーん」
「て、店長?」
「とにかく攻めるっすー。とりあえず掴めばー勝機はあるっすよーノ」
「は、はい!」
「タヌタヌ! また余計なことを!」

ファルシロンはロザリンティアの腕を掴んだ!

「んな!? は、離しなさい!」
「嫌です!!」
「!」

ロザリンティアの攻撃力が下がった

「い、一体、何を……」
「絶対に…絶対に離しませんから!!」
「!?」

ロザリンティアの防御力が下がった

「ファ、ファルシロン? こんな大勢の前で…だ、大胆ですわね……///」
「?」

ロザリンティアはモジモジしている

・・・・・・・・・・・・

ファルシロンはロザリンティアを背後から拘束した!

「これで動けないはず!」
「っ〜〜〜〜!?!?」

ロザリンティアは動揺している

・・・・・・・・・・・・

観客A「ロザリンティア様の自由を後ろから奪うとは!?」
観客B「あのファルシロンとかいう男の腕…完全に下乳に当たってやがる!」
観客C「こ、腰にまで手をまわしてやがる!?」
観客D「それだけじゃねえ! ロザリンティア様の穢れなき美髪をクンカックンカと!」
観客E「くっそ〜! なんて羨ま…い、いや…け、けしからん奴だ!」

一部の観客からブーイングが巻き起こる

「な、なにを、するつもりですの……?」
「へ?」

店長の『とりあえず掴め』が裏目に出てしまった。
あまりにも簡単に回り込むことができたので、この状況からどのように技を仕掛けようかなど一切考えていなかった。
ちなみに必死過ぎて腕が下乳に当たっていることにまったく気付いていない僕。

「えっと、ロザリーさんがとても…『隙』だらけでしたので……」
「すっ、すす、す……『好き』!?!?」
「え? あ、はい」

ロザリンティアは混乱した

「なんだか、凄く『隙』があって……」
「凄く、『好き』……ファルシロンが、わたくしを……///」
「ロザリーさんらしくないと言いますか……」
「え、えぇ…本当に、わたくしらしくありませんわ…たかだかプロポーズされた程度で取り乱してしまうなんて……ま、『参りました』わね……///」



『そこまで〜! 本選への出場権を獲得したのは〜……ファルシロン選手に決定しました〜!』

「「…………は?」」



リプレイ。



「(*`・ω・)離さない!」 ファルシロン
「(///∇//)テレテレ」 ロザリー
「( =_=)」 イチカ

『そこまで〜! 本選への出場権を獲得したのは〜……ファルシロン選手に決定しました〜!』

「( ゚Д゚)」 ファルシロン
「( ゚Д゚)」 ロザリー
「( ̄ー ̄)」 イチカ



こうして僕はBブロック予選を見事勝ち抜き、本選へ駒を進めることとなった。
果たしてこの結果は、気まぐれな神様のいたずらか。
それとも……。












〜本選・対戦カード〜

Aブロック代表 リン VS Bブロック代表 ファルシロン

Cブロック代表 イチカ VS Dブロック代表 ミセスX



「いやー見事な勝利だったっすねー。惚れ惚れしたっすよー」
「勝利と言えるんですかねぇ、あれ……」
「勝ちは勝ちっすよー。細かいことは気にしないっすー」
「は、はぁ」

あの場面で『参りました』という言葉がロザリーさんの口から零れるなんて夢にも思わなかった。
勝負の流れは完全にロザリーさんが支配していたはずなのになぁ……。
偶然の賜物とはこのことだろう。

「そういえば、ロザリーさんはどこに?」
「あー、あそこにいるっすよー」

店長の指差す方を見ると、

「(/д\*)ポッ」

ロザリーさんは両手で顔を覆っていた。
試合で負けた事が余程ショックだったようだ。
今はそっとしておこう。

「そんなことよりーシロさん」
「あ、はい」

店長に服の裾を引っ張られ向き直る。

「準決勝の相手はー…例の妹さんっすねー」
「なんの因果か…もう恐怖を通り越して、むしろ楽しみですよ」
「ヤケになるのはー良くないっすよー?」
「まぁそうなんですけど……。店長の相手だって、かなり手強いらしいじゃないですか」
「みたいっすねー。いやー鬼が出るかー蛇が出るかー」

とか言いつつ、店長はいつも通りの平常心。

「うちのことはイイっすー。シロさんはー自分の心配をするっすよー」
「心配する暇もないですよ。負ける時はどうせ一撃ですし」
「あー、5回戦1発KOって話っすからねー」

雷を怖がっていた妹の姿は、もはや見る影もない。
というかどうしてあんなに強いんだろう?
そもそもあの強さは一体誰から遺伝したんだ?

「参考になるかはーわからないっすけどー、一応アドバイスあげるっすー」
「お、お願いします」

店長はコホンと咳払い。

「リンさんの攻撃はー1つ1つが非常に強力っすー。でもその代わりー全てが真っすぐな技っすー」
「真っすぐ?」
「そっす。なーんの捻りもない、ただのパンチ一択っすー」
「はぁ」
「まー威力は対戦車砲並っすけどねー」
「ナルホド、ボク死ヌンデスネ」

風穴アケラレチャウンデスネ。

「違うっすよー。シロさんはーリンさんの攻撃をー逆に利用するっすー」
「利用、ですか?」
「真っすぐな技一択と言ったっすよねー。ならその威力をーそのままリンさんに『返して』やればイイっすよー」
「………」
「返し技はーシロさんの十八番じゃないっすかー」

わかっています…わかっていますとも。
でも……

「店長」
「っすー?」
「怖いですっ」

店長の言い分はこうだ。
『生身の体で対戦車砲を跳ね返せ』。

「恐怖を通り越してー楽しみだったんじゃないんすかー?」
「それとこれとは話が別です!」
「まー何と言おうとー避けては通れないっすよー」
「……はぁ〜」

気が重い……。
とてつもなく気が重い……。












『さあさあ遂にやってまいりました〜!』
『予選を見事勝ち抜いた4人の猛者達が、今! ここに集結します!』

会場からは割れんばかりの大歓声。

『注目の準決勝第1戦は〜……Aブロック代表、リン選手 VS Bブロック代表、ファルシロン選手で〜す!』
『これぞ因縁の兄妹対決! くぅ〜わたし達も燃えてきました〜!』
『力と技のぶつかり合い! 勝利の魔王様は、一体どちらに微笑むのでしょうか〜!?』
『『『では! 代表者2名……出てこいや!!!』』』

西と東、それぞれの待機ブースから2つの人影が。
人影は徐々にその差を詰めていき、両者は10m程離れた位置で立ち止まる。

「ロザリーかと思ったら、まさかお兄ちゃんが来るなんてね。少し驚いたわ」
「僕もここにいるのが信じられないよ。それよりもリン、凄い快進撃だったらしいね」
「えぇ、全員一撃で仕留めたわ。あ、決勝の相手は少しだけ固かったけど」
「でも、一撃?」
「もちろん」

リンは手をポキポキと鳴らしながら、

「お兄ちゃんは…一撃じゃ終わらないわよね?」
「………」

……どこのボスキャラ?

『それでは! 両者構え!』

「手加減できるほど器用じゃないから、ちゃんと急所は守ってよね!」
「あぁ……来い!!」

『レディ…………ファイト!!!』



〜本選・準決勝〜
(イメージ戦闘曲→http://www.youtube.com/watch?v=FC1aeZKQ3dE)

『ファルシロン(柔術) VS リン(剛腕の極み)』



・・・・・・・・・・・・

ファルシロンは水鏡の構え

「力でねじ伏せる!」

リンはバルカンパンチを繰り出した!
強烈な一撃が体中に拡散する!
しかしファルシロンは攻撃を受け流した
ファルシロンは技の衝撃で48のダメージ!(HP152)

「お、重い……!」

ファルシロンは水鏡を発動できない!

・・・・・・・・・・・・

「やっとあたしにも2ターン目がきたわ。さすがはお兄ちゃんね♪」
「喜んでもらえて、嬉しいよ」
「だけど…まだまだこんなもんじゃないわよ?」
「お、お手柔らかに……」

ファルシロンは引き手の構え

リンはエレファントキラーを繰り出した!
巨体をも葬る必殺の拳!
ファルシロンは防御に転じた
ファルシロンは114のダメージ!(HP38)

「ぐっ!?」
「あら、良く耐えたわね?」
「返そうとしたら、オーバーキルだったよ……」
「でも、これでわかったでしょ? あたしに返し技なんて効かないのよ!」

……詰みじゃん。

・・・・・・・・・・・・

「あたしに3ターンも使わせたお礼に、とっておきの一撃でトドメを刺してあげる!」
「ちゃんと僕だってわかるように殺ってね……」

リンは力を溜めている

ファルシロンは内丹の構え
ファルシロンのキズが内側から治癒していく!(HP188)

・・・・・・・・・・・・

「さあ! 覚悟はできた!?」
「正直言うと……できてないっ!」

ファルシロンは身構えている

リンのギャラクティカファントム!
防御不能の一撃必殺がファルシロンを襲う!

「可能性は…0じゃない!」

しかしファルシロンは攻撃を受け流した
ファルシロンは技の衝撃で999のダメージ!
ファルシロンは力尽きた

「う、受け流した、はずなのに……」

『そこまで〜! 決勝への進出を決めたのは〜…………リン選手ううう!!!』












「っ!?」

目を覚ますと、そこは臨時医療ブースのベッドの上。
そっか、僕あの後気絶しちゃったのか。

「うっ…い、いててて」

体中が痛む。
あのギャラクティカなんとかが直撃していたらと思うと……考えたくもない。

「お、やっと目を覚ましたね」
「?」

隣のベッドから誰かが僕に語りかけてくる。

「君もアレか? あの女の子にヤられた口かい?」
「え?」
「ほら、あの子だよ。黒髪ツインの……」
「あ、あぁはい。そうですけど」
「あの子の攻撃力、反則だよな? 俺も防御力には自信があったんだけど」
「は、はぁ」
「他の仲間も予選で負けちゃったみたいだし、はぁ…まだまだ修行不足かなぁ」

語りかけてきたのは、僕と同い年くらいの青年。
学校では見かけたことないけど、学生さんかな?

「ダメージが残ってて見に行けなかったけど…君、あの子相手に3ターンも凌いだって?」
「1ダメージも報いることができなかったんですけどね……」
「いやいや、十二分に健闘したじゃないか。少なくとも俺よりはね」

若干自虐気味の笑みを見せる青年。

「そう言えば、あの子とは知り合い? 試合中になにか話してたらしいけど」
「知り合いも何も、僕達が戦った女の子はリンといって、僕の妹ですよ?」
「マ、マジで!?」
「マ、マジです」
「あ〜言われてみれば、確かに似てるかも……」

青年は僕の顔を凝視した後、体をボフッとベッドに投げだす。

「なるほどね〜。やっぱり兄としては、妹に負けて悔しかったりする?」
「いや、そんなことないですよ。元々勝てる気しませんでしたし」
「ははっ! 気持ち良いぐらい潔いんだな!」

そんな話をしていると、

「主様、お体の具合はいかがですか?」
「あ、コヨミさん。大丈夫、大分良くなってきたよ」
「そうですか…安心しました」

臨時医療ブースに入ってきたのは、腰に長刀を装備した龍の女性。

「もうすぐ決勝戦が始まりますけど、動けますか?」
「ちょっとキツイけど…なんとか」

女性の肩を借り、青年はベッドからゆっくりと腰を上げる。

「それじゃ。妹さんによろしく言っておいてくれノ」
「あ、はい。お気をつけて」

龍の女性も軽く会釈をし、おぼつかない足取りで医療ブースを後にする。

「……不思議な人だったなぁ」

ん?
それよりも……

「決勝戦? 店長の出る準決勝は……」
「負けたっすー」
「うわっ!?」

僕のいるベッドの上で堂々と寝そべっていた店長。

「い、いつの間に…というか、負けたんですか?」
「残念ながらー完敗だったっすー」
「それはまた……」

店長が完敗って…確か相手はミセスXだったかな?
話を聞いただけで見た事はないのだが、何故かこの人もリンと同じ匂いがする。

「それよりも店長、怪我は大丈夫なんですか?」
「シロさん程じゃないっすよー。随分とダメージが残ってるみたいっすねー?」
「痛みを感じられることが幸せですよ。下手したら、この程度じゃ済まなかったかもですし」
「ほむー、それもそっすねー」

そう言うと店長はベッドの弾力を利用して身軽に立ち上がる。

「さーうちらも行くっすよー。決勝戦まで時間がないっすー」
「あ、そうでしたね…うっ」
「あー辛そっすねー? だったらー……せいっ!」
「ぐほっ!?」

胸の中央に強烈な一撃を叩きこまれた。

「げほ…けほ……」
「痛み止めの秘孔を突いたっすー。これでーしばらくは普通に歩けるっすよー」
「それは…どうも……うぅ〜」

たまに思う。
店長って、何者?












「あーちょうど始まるとこっすねー」
「妹の戦う姿を見るっていうのは、なんだか複雑な気分ですね」
「まーリンさんなら大丈夫っすよー。シロさんは心配性っすー」
「そう、なんですかねぇ……」

〜本選・決勝〜
(イメージ戦闘曲→http://www.youtube.com/watch?v=dnGlCSyoTOE&feature=relmfu)

『リン(剛腕の極み) VS ミセスX(極めし者)』



・・・・・・・・・・・・

リンは自らの拳を大地に叩きつけた!
会場一帯が激しい地震に見舞われる!
ミセスXは88のダメージ!(HP911)
ミセスXは体勢を崩した

ミセスXは立ち上がった

・・・・・・・・・・・・

リンはガトリングパンチを繰り出した!
コンマ1秒の内に10連撃を叩きこむ!
ミセスXは173のダメージ!(HP738)

ミセスXは様子を見ている

・・・・・・・・・・・・

リンのハートブレイクショット!
渾身の一撃がミセスXの胸部を破壊する!
ミセスXは209のダメージ!(HP529)

ミセスXは様子を見ている

・・・・・・・・・・・・

「随分と余裕かましてくれるわね?」
「………」
「っ! アッタマきた!!」

リンは力を溜めている

ミセスXは力を溜めている

・・・・・・・・・・・・

リンのギャラクティカファントム!
防御不能の一撃がミセスXを襲う!
ミセスXのギャラクティカファントム!
防御不能の一撃がリンを襲う!

拳と拳が激しくぶつかり合い、双方の威力を相殺した!

「な、なによそれ!?」
「………」
「くっ! た、たまたまに決まってるわ!」

・・・・・・・・・・・・

リンのスピットファイアコンビネーション!
留まることを知らない激しいジャブは布石、強烈な右ストレートが炸裂する!
しかしミセスXは攻撃を全て受け止めダメージを軽減した
ミセスXは40のダメージ!(HP489)

「なっ!?」

ミセスXのアルゼンチンバックブリーカー!
リンを側面から担ぎ上げ空高く放り投げる!
さらに落下してくるリンを肩で受け止めそのまま地面に叩きつける!
リンは165のダメージ!(HP335)

「うっ…はぁ……や、やってくれるじゃないの!」

・・・・・・・・・・・・

リンのクロスユニオン!
カウンターを恐れない全力ストレートの激しいラッシュ!
ミセスXは244のダメージ!(HP245)

ミセスXのマッスルバスター!
リンを正面から担ぎ上げ空高くジャンプ!
着地の衝撃でリンに強烈なダメージ!
リンは85のダメージ!(HP250)
さらにバックドロップで追撃!
リンは62のダメージ!(HP188)
さらにジャーマンスープレックスで追撃!
リンは61のダメージ!(HP127)
さらにパワーボムで追撃!
リンは59のダメージ!(HP68)
さらにジャイアントスイングで追撃!
リンは55のダメージ!(HP13)

「はぁ…はぁ…ま、まだ…やれるわよ!!」

・・・・・・・・・・・・

リンのショック・オブ・ザ・デス!
その一撃は無情、仇なす者を存在ごと消し去る!
しかしミセスXはダメージを受けない!

「そ、そんな!? 直撃したはずなのに!?」

ミセスXは力を溜めている

・・・・・・・・・・・・

リンは身を守っている

ミセスXの攻撃!

「や、やられる……!」

ミセスXはリンの額に強烈なデコピンを放った!
リンは15のダメージ!

「きゃう!?」

リンは力尽きた



『そこまで〜! 第1回武闘大会を見事制したのは〜…………』

会場が静まり返る。

『ミセスX選手に決定いたしました〜〜〜!!!』

千を超える大歓声は、その後もおさまることはなかった。












表彰式。
僕とリン、そして店長とロザリーさんの4人は、会場から少し離れたところで寄り集まっていた。

「リン、お疲れ様」
「………」
「強かったね。決勝の相手」
「……頭、撫でないでよ…泣いちゃうじゃない……」
「泣いて良いよ。ほら、胸貸してあげるから」

そう言うとリンは、絆創膏の張られた額をコツンッと僕の胸に預ける。

「少し…油断しただけだから……」
「うん」
「本気出せば…勝てたんだから……」
「うん」
「最後の技…絶対に当たってたんだから……」
「うん」

そして、リンは静かに泣き始める。
背中に腕を回してくれるのは嬉しいのだが、この締め付けは尋常ではない。

「っすー。ちゃーんとお兄ちゃんやってるっすねー」
「こんな時くらいしか、役に立てないですけどね」
「不思議と母性的ですわね? ファルシロン、あなた本当に男ですの?」
「正真正銘、男ですっ」
「ふふ、わかっていますわ。その優しさにも、わたくしは惚れているのですから♪」
「あ、あはは……」
「っすー」

店長がロザリーさんの足に軽く蹴りを入れる。

「いたっ! な、なにをするんですの!?」
「あー申し訳ないっすー。木の棒かと思ったらーお嬢様の足だったっすー」
「だから何故わたくしの足を蹴ったのかと聞いていますの!」
「あー、ウザかったからっすかねー」
「んな!?」
「ま、まぁまぁ」

祖母によって企てられた武闘大会は大盛況のまま、静かに終わりを迎えるのであった。












一方、表彰式にて。

『続いて〜優勝賞品授与に移らせていただきま〜す』
『こちらが副賞の金一封……※※※※※※※※※(0が8つ)エルとなりま〜す!』

観客A「マジかよ……」
漢訳B「一生遊んで暮らせる額じゃねえか……」
観客C「副賞がこのレベルって一体……」

『これで驚くのはまだ早いですよ〜?』
『それでは、ミセスX選手!』
『ある程度なんでも願いを叶える権利を、是非! 今この場でご利用ください!』
「………」

観客A「もっと金が欲しいとか……?」
観客B「世界制服、とかじゃねえか……?」
観客C「いや、それはさすがにありえ…なくもないな……」

すると、ミセスXは魔女(ロリ)に耳打ちをする。

『ひゃん♪ くすぐったいです〜♪ わたし耳が性感帯なんですよ〜♪』

観客A「………」
観客B「………」
観客C「………」

『ふむふむ…なるほど…ほほう!!』

観客A「な、なんて言ってるんだ?」
観客B「ダメだ、聞こえん」
観客C「おい! 勿体ぶってないで早く教えてくれよ!」

『……了解しました〜! その願い、しかと承りました〜!』

魔女(ロリ)は観客の方へと向き直る。

『え〜ミセスX選手のご希望により〜……』

観客「「「「「ゴクリ……」」」」」



『重婚の許可……法律の改定を執行いたしま〜す!!!』



祖母と母の壮大な計画を、僕達は知る由もない―――――





〜店長のオススメ!〜

『完売御例』

12/10/29 13:12更新 / HERO
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■作者メッセージ
やっと終わりました戦闘回!
正直けっこう大変でしたが……これでフラグは立ちましたなっ

感想いただけると嬉しっす!

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