連載小説
[TOP][目次]
ウルスとアルト。真面目な二人の清きお付き合い。 出会い編(2)
子供の頃?特に変わったことはなく、普通に子アヌビスだったと思うが。
ん?
ああ、確かに魔術書などよりも、戦記モノをよく読んでいたかな。なにせ、あの子はパパっ子だったからなあ。私としても、特に管理しようとは思わなかったな。
都会に住んでいる親アヌビスと、都会生まれの子アヌビスということだ。プラスこの父親だがな。   言っておくが、私達の馴れ初め謎は話さんぞ・・・
そうそう。特にあの娘が好きだった作品が今度再販することになってな!孫にも読ませたいので、持って帰ってくれ。
あとこれも。ん?これは、さっきのの一応続編だ。ある実在のカップルを題材にしたものだwwwこいつは先にあの娘に見せてほしい。たぶん面白いことになるぞ(苦笑)



なに? 耳をかせ???

(・・・暖簾の奥、三番目の棚の、上から二段目、灰色の背表紙だ・・・)小声

お買い上げありがとう。また来るといい。いつでも待っているよ。











〜〜〜???どこ???〜〜〜
パチパチ パチッ

まぶた越しに揺らめく明るさと、半身に当たる暖かさに、深く沈んでいた意識が浮かび上がって来ました・・・
「ん、んん。。。」モゾモゾ
パチパチ パチッ

くいくい
???「おや?起きましたか。」
パチ パチパチ

「んんん。へっへっへ、っハックション(´Д⊂」
???「もっと、薪を足したほうが良いですかね。少し探してきますので、もう少し寝ていなさい。」
ゴシゴシ  ふぁさあ

コツコツコツコツ
ぴょこぴょこぴょこ

柔らかい布に体が拭かれたかと思うと、次は少し固めの大きな布が体を覆ってくれました。ここは、お言葉に甘えて、もう少し眠ってしまいましょう・・・










パチパチ パチッ
グツグツグツグツ
さらなる、暖かさとともに、食欲をそそる匂いが漂って来ました。夕食前に基地を飛び出してきたので、空腹も限界です。今は何時なんでしょう・・・?

むくり ぐ〜〜〜〜〜〜
???「ん?なんとも質のいい、目覚まし時計ですねえ(苦笑)。丁度出来たところですよ。」

そうして渡されたお椀の中には、小魚と少しの野草が入ったシチューのようなものでした。彼等も食べているようなので、毒の心配などはいらないでしょう。
ふーふー ぱくっ
正直美味しいとはいえませんが、空きっ腹には丁度いい味の濃さでした。

???「マルクの好物ですか?まあ、魚介類全般でしょう。たぶん焼くより、煮るほうが好きだと思いますが。」
( ..)φメモメモ
手の動くままに任せていたら、三杯も食べていたようです。まあ、カロリーも低そうなので大丈夫でしょう・・・



「ところで、」
っひょい?
???「はい?」

「貴方方はどなたですか?」
???「今更ですねえ。何度か合ったことがあると思いますが。」
私の知り合いに、こんな夫婦?は居なかったはずですが・・・
???「まあ、貴方に比べたら私は戦場で目立つものでもありませんし。」
そもそも、彼の隣にいる魔物娘にも見覚えがありません。

振り返ってみましょう。
そもそも私が夕食をとろうとしていたところに、斥候班から「ヘルメスが陣から出ている」という一報。慌てて飛び出して、草むらに隠れていたら、急にヘルメスと護衛が揉めだして。護衛が投げられ、避けることもできずに川へ…
まったく、私は泳げないのにとんだ災難でした。運良くサハギンに救ってもらえたかったから良かったものの。
そう言えば、一緒に流された、男性はどうなったのでしょう?

???「急に黙りこんでしまって…気分が悪いのですか?」
そうそう、こんな声で。
???「おーーい。起きてますかー?」
こんな顔で。
???「魔物娘って無口になるものなんですか?」
ふるふる

こんな服を着てたような。




「ああああああああああああああ!!!!!!」
???「意外と大声ですねえ(苦笑)」
キーーーーン ふらふら 
???「ああ、大丈夫ですか?」
「杖、つえ、TUEEEEEEEEEEEE?!」
???「あ〜〜、たぶん流れちゃってますねええ。   で、戦いますか・・・・」すくっ
「か、かくなる上は、犬闘術二級(通信教育)の実力で!!!」
???「やはり、貴方方は、そういう存在ですか。」ッシュ 

ッヒュ カーーーーーン カンッ
「あ痛!?」
???「おっと。 そうでしたね。貴方の住処で荒事は禁止と。失礼しました。」カチャリ
ふんす!ふんす!
「な、何をするんでsury)」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド(無言のプレッシャー)
「はい。すいません。」耳ペコリ





〜〜〜落ち着きました〜〜〜
???改め、アルト
「私がヘルメス殿と一緒に偵察に出ていたところを」
   改め、ウルス
「私が隠れて見ていたところ、貴方が急に投げられて、」
アルト「激突し、川に流されていたところを」
ウルス「こちらのサハギンに助けていただいたと。」

ドヤァ
ウルス「え〜〜と、貴方のお名前は?」
・・・・・・・・・ ドヤァア
ウルス「あのう、喋っていただかないと・・・」
アルト「名前はないそうですよ。未来の旦那さんにつけてもらうのが夢だとか。」

一応サハギン
「・・・・」ふんすふんす
ウルス「何故貴方は、このサハギン殿の言葉がわかるのですか?」
アルト「身内に似たような者が居まして。声に出さなくても意思疎通は取れるものですよ。」
サハギン「・・・・」ぺしぺし
ウルス「はあ。(にしては、訳せ過ぎでは?)」

アルト「そうでしょうか?ところで、貴方のお名前は?」
ウルス「魔王軍のウルスです・・・貴方は教国の人間なのに私達が怖くないの あたぁ?!」ぱこーーん
サハギン「(# ゚Д゚)(#・∀・)(#^ω^)」ヽ(`Д´)ノプンプン
アルト「自分を『達』に混ぜるなといってます。まあ、私もそう思いますね。」

ウルス「・・・どういうことでしょうか・・・?」
アルト「先ほどの質問の答にもなりますが、私は別に魔物自体は恐れていません。教国軍ではありますが、主神教徒ではありませんので。それに、命の恩人を恐れるのも失礼でしょう。しかし、“魔王軍”は別です。ですので、貴方が、戦うというのなら・・・」
ウルス「っく!」
アルト「と、言いたいところですが、家主が許可しない以上戦えません。」
サハギン「・・・・」コクコク
ウルス「・・・・(本当でしょうか)」ッス
アルト「ちなみに、従わないと問答無用で川に投げ込むそうです。」
ウルス「はい!わかりました!仲良くしましょう!!!!」尻尾アンド耳ピーーーン
サハギン「・・・・・」ふむふむ

アルト「あと、身体能力の差があるとはいえ、ここでは私の方が強いと思いますよ。」
ウルス「つ、杖がなくても魔法ぐらい使えます!!」
アルト「いえ、ここ魔法使えないので。」
サハギン「・・・・」ふんすふんす
ウルス「へ?!魔法が使えない・・・?というか、そうですよ!いったいここはどこなんですか!!!!」キーーーーーーーーーーーーン

アルト「っつ、いきなり大声ださないでください。」
サハギン「・・・・」ふらふら
ウルス「落ち着いていられないですよ(´;ω;`)ブワッ突然川に流されるわ、起きたら知らない場所だわ、魔王軍は嫌いとか言われるわ、あまつさえ魔法使えないとか(´Д⊂グスン」
アルト「それも説明しますから。」おろおろ
サハギン「:(;゙゚'ω゚'):」おろおろ



〜〜〜落ち着きました〜〜〜
ウルス「し、失礼しました。もう大丈夫です。」
アルト「は、はああ。(イチかバチかでやった、お座り!からの、ブラッシングが効果あるとは・・・)」
サハギン「zzzz」すうすう
アルト「(疲れて寝ちゃってるし。)」

アルト「まあ、私も全てを理解しているわけではありませんが、今私達が居るのは山の真下です。」
ウルス「は?」
アルト「この近辺の地図は頭に入っていますか?」
ウルス「そりゃ、もちろんです。ヽ(`Д´)ノプンプン」ふんす
アルト「今居るのは南部の端にあった山脈です。私達はここまで、戦場の中部にあった川を流れてきたわけです。」
ウルス「ちょっと、待ってください!あの川に支流はいくつかありますが、南へのものなんてなんて知りませんよ。」
アルト「本来は繋がっていませんが、鉄砲水(あの魔法は、わざとだと思いますが・・・)によって、押し流されると一時的につながるのですよ。まあ、つながるというより谷に落ちるのですが・・・」
ウルス「えええええ????もしかして、あの深すぎて底が見えない谷ですか。それにしたって、おかしくはありませんか。完全な地下水脈ならまだしも、谷底とはいえ一旦地上に出ていて、かつあれほど流れの早い川が山の下を通っているのならば、山自体が削れていくはずです。」
サハギン「zzzz!!」ぱちり

アルト「おめざめですか。まあ、ウルスさん。貴方の言うこともごもっともです。そもそも、この山は自然科学的におかしいところだらけです。しかし、そのおかしさが、魔法が使えないことにも繋がっています。」
ウルス「???」
サハギン「・・・・」クシクシクシ スタ ぴょんぴょん
アルト「(自由だなあ)・・・」
ウルス「早く続きを。」

アルト「はい。わかりやすく言うとですねえ、この山自体が『結界』になってるんですよ。」
ウルス「・・・っへ?」
サハギン「・・・・」ッシュ ッシュ (銛を研いでいる)
アルト「えーとですねえ、この山自体が『結界』にry)」
ウルス「二度も言わなくて結構です。しかし、やはり人間は魔術に疎いですねえ( ・´ー・`) こんな山自体が結界として機能するなんてそんな前時代的なwww」
アルト「だから、前時代の物なのですが・・・」
ウルス「・・・はい?」
アルト「要は、前の魔王の時代に遺物ということです。聞いたことがありませんか?『非恋物語』もしくは『震える山』という名称を。」
ウルス「『悲哀物語』ってそりゃあ、私が子供の頃大好きだった作品ですけど・・・・え?!あれ、実話なんですか!?」
アルト「まあ、ほぼ神話に近くなっていますが・・・」



〜〜〜非恋物語〜〜〜

昔々。それはまだ、前魔王が世界征服(武力的な)を開始してまもなく、未だに人と人との争いが絶えなかった時代、激しい領土争いが行われていた。
今は無きスカン皇国に対するは教国。魔王軍の危機が迫る中、手を取り合うこともなく、お互いが自らを中心とし、相手を取り込もうとしていた。
そんな中、ある辺境を皇国軍により任されていたのはサハリン家。かつては、皇国軍の執政を担ったこともある名家であるが、当時は落ちぶれて左遷されていた。当主は再び中央に返り咲こうと怪しげな研究に没頭していたが、心優しい妹は領民を常に気遣い、中々の治世を行なっていた。しかし、教国軍の侵攻が迫り、兄は名誉のため、妹は領民のため戦場へと赴いた。
ある程度は善戦するものの、教国軍の圧倒的物量を前に、皇国軍は劣勢に追い込まれる。その時、兄は自らの研究を完成させ、教国軍を一掃しようとした。しかし、その手段は妹には到底許されるものではなかった。
兄の完成させた研究とは、魔術と薬学の応用により、土地そのものを毒とし、大地ごと敵を滅するものだった。一方で、教国軍もその情報と得、使われる前に奪えという勢いで、さらに侵攻を激化させた。

到底、土地と領民を愛する妹には兄、教国軍どちらも許せるものではなく、秘術を持って逃亡。両軍に追い詰められるも、谷から身を投げ、自らの命ごと危険を封印した。
その後、両軍は争いを続けようとしたが、魔王軍による侵攻が開始され、両軍とも自らを守ることを優先し、撤退。領民を愛し領民から愛された妹の命によって当地の平和は保たれたのである。

〜〜〜終わり〜〜〜

ウルス「確かに、主人公も真があって魅力的なのですが、なにより、その騎士様がかっこ良くて。主君を守るために、単騎で両軍に立ち向かい鬼神の如き戦い。あまりの凄さに『山が震えた』というので、その章の名前が『震える山』になったんですよね。」
アルト「女性なのに、よくご存知ですねえ。」
ウルス「なにせ、実家が本屋なので(`・∀・´)エッヘン!!しかし、この話はフィクションではないのですか?子供の頃あまりに好きだったので、図書館で色々調べましたが、サハリン家という名称はどこにもありませんでしたし、物語の舞台がどこかもわかりませんでした。」
アルト「それはそうでしょう。既にスカン皇国は滅びていますし、教国としてもあまり良い話ではありませんので。」
ウルス「???」
アルト「教国軍が他国に攻め入ったという事実はもちろん、敵の悪策を利用しようとしたこと。それに加え、教国軍から裏切り者が出ていますから・・・」
ウルス「裏切り者?」

アルト「おかしいとは思いませんでしたか?いくら危険を封じるためとはいえ、目の前には底なしの谷があるのに、自らの命も捨てるなんて。」
ウルス「そ、それは両軍から追い立てられていたからでは?」
アルト「しかし、その後にも領地を守らねばならなかったはずです。領地・領民を愛した妹にしてはいささか、無責任に思えます。」
ウルス「そんな!自分の命まで捨てたのにヽ(`Д´)ノプンプン」
アルト「そう怒らないでください。要は、彼女が『死んだ』理由があるというわけです。」
ウルス「理由ですか(怒)」

アルト「落ち着いてください。簡潔に述べますと、『駆け落ち』です。」
ウルス「・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
アルト「彼女は、ある教国軍の兵士と恋に落ちていたのですよ。それも兄の研究成果を調査していた兵士とね。彼も教国軍兵士でありながら、研究の抹消でなく利用に走った自軍に嫌気が差し、彼女と協力したということです。しかし、互いに許される身ではありませんから、その身を投げたということです。」
ウルス「そ、そんなああ。結局救われてないじゃないですか(´;ω;`)ブワッ」
アルト「いやまあ。若干話がずれましたが、こういった事情もあり、現存する教国にとっても都合の悪い事実があるので、ところどころ伏せられてるのですよ。流石に領民の口をふさぐことはできなくて伝承となっていますが、この地方では有名な話です。」

ウルス「し、しかし、仮にあの物語の舞台がこのガナビアだったとしても、山自体が結界となってる理由にはなりませんよ。」
アルト「ええ。ですから、ここからがさらなるオフレコです。」
ウルス「もう、たいていの話では驚きませんよ・・・」
アルト「では、手短く。駆け落ちした二人死んでません。」
ウルス「わーーーいやったーーー♪って、へっ?」
アルト「ですから、二人は死んでいません。」
ウルス「またまた〜〜。谷底に落ちて生きてるはずがないじゃないですかあ。」
アルト「私達は?」
ウルス「・・・・・」
アルト「この場所は?」


ウルス「・・・・・えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええワワワワwッワwワンワンキャウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン????」
アルト「ええええ、犬になった!?」
サハギン「?」すたすたすた スコーーーーーーーーーーン
ウルス「っは!私は一体。」
アルト「あ、ありがとうございます。」
サハギン「( ・´ー・`)」どやあ

ウルス「って、さっきいの本当ですか?!」
アルト「ええ。生き延びた後、秘術を書き換えて、大地に加護のある内容にしたようです。その時、二人が逃げ延びた土地を隠す目的でこの山自体にも結界をかけたのですよ。そのため、山を越えることはできず、抜けるには地下を通らねばなりません。しかし、その地下には水が流れているため、ほぼ通れなく、一方で結界のおかげで水で山が崩れることもない。」
ウルス「そ、そんな大魔術・・・」
アルト「確かにいくら秘術があったとはいえ、その書き換えすらも人間の手では危険です。その点はどうやら協力者が居たということですが、意図的に伏せられています。」
ウルス「・・・・」
アルト「ところで、貴方はご存知なんですか?」
サハギン「・・・・」ふるふる

ウルス「・・・・まだ、謎が残っています?」
アルト「なんでしょう?」
ウルス「仮に、今まで話が全て事実だったとして、何故貴方がそのようなことを知っているのですか?」
アルト「そういえば、私の自己紹介がまだでしたね。申し遅れました。教国軍ガナビア方面守備隊隊長アルト。アルト=サハリンです。貴方が好きな物語に出てくる、サハリン家の末裔ということです。」


ウルス「・・・・」ばたん
ウルスは、考えるのをやめた・・・・・・・・
GAME OVER

















アルト「って、大丈夫ですか?あ、息してない!ちょっと、ちょっとおおお!!!!」ペシペシ

続け
13/01/31 02:12更新 / S.L.サンチェス
戻る 次へ

■作者メッセージ
遅くてすいません。
本当は今回で終わるはずだったのですが。
どうしても、話が長くなってしまって、構成し直しばっかりで。
最悪、このシリーズだけで別枠にするかも。
リアルが忙しくなって来ましたが、失踪だけはしないので頑張ります。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33