連載小説
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べたな惚れ方。それでも恋しちゃいました。
暗く深い洞窟の中、そこには手足に銀色の鱗がついており、角、尻尾、翼が生えている。魔物娘の中でも最高位の存在であるドラゴン。彼女はドワーフに作ってもらった大きなベッドで休んでいた。ベッドの大きさはキングサイズであり、伴侶が居れば愛し合うにも十分な大きさと、強度もある。


しかし、このドラゴン、クレアは独身であるため広さを完全に持て余しており、空いている場所を埋めるように人間の少年みたいな抱き枕を置いていた。部屋の奥にはまた洞穴があり、その洞穴の中には入り口からでもわかるぐらいに宝石や貴金属、珍品がある。そのため、金銀財宝を求めて冒険者や盗賊が訪れることがあり、その中の男から伴侶を探すこともあったがクレアの眼鏡にかなう者はいなかった。


今日もクレアは抱き枕を抱きしめながらのんびりと過ごしていると鋭敏な聴覚が複数の足音を感知する。その足音からゆっくりとクレアは身体を起こすと戦闘用に作っておいた洞穴入口近くのスペースに移動する。


「人数は少ないが...足音からして、かなりの強者か?」


そんな風に思っていれば外に続く道から4人パーティが現れる。先頭を歩く者から発せられる威圧感と魔力にクレアは気を引き締める。後に続く者たちもかなりの使い手であるのがわかり、装備も魔法効果が付与されているであろう物ばかりを身に着けていた。


「我こそ、神より選ばれた勇者!!悪しき魔物よ、教団の名において、貴様を滅する!!」


「勝手なことを......私が何をしたという」


勇者と名乗る男が剣を構えてはクレアに向かって、襲い掛かってくる。他の3人も同じように杖などそれぞれの武器を構えていた。杖を持っている者は魔法を詠唱、大盾を持っている重装甲の者はクレアが放つブレスや攻撃を防ぐ。
クレアは顔を顰めながらも大盾を持っている者を尻尾で弾く。しかし、1人を相手にすれば他が攻撃を仕掛けてくるため防戦一方なクレア。戦いの決着はそんなに遅くはなかった。


「今だ‼やれ‼」


「ぐっ...!!こんな針な..ど...!?」


勇者の号令とともに吹き矢をいつのまにか持っていた者がクレアに向かって矢を放つ。前衛である勇者と大盾の相手に集中していたために回避できず刺さった針のように細い矢を抜くとドラゴン特有の超回復で傷が塞がり勇者たちに視線を向けた瞬間に体がぐらりと揺れて立っていられなくなり膝をつく。


「わ..た...しに....何を...」


「冥土の土産に教えてやろう。これは魔物対策に作られた。筋弛緩剤だ。まだ膝をついていられるとはさすがはドラゴン...まあいい、意識があっては教団に連れていくのも困難だ」


そう言うとドラゴンに向かって杖を構えている女性が魔法を動けないクレアに対して放とうとしている。すぐに放ってこず、詠唱しているためかなり高威力の魔法をクレアに対して放とうとしている。ドラゴンと言えど、近距離で避けることも受け止めることもできない体勢で魔法を受けれ無事ではないだろう。


(ここまでか......)


諦めるようにゆっくりとクレアは目を閉じれば詠唱が終わったようで勇者たちは巻き込まれないように距離を離す。そして、杖からは巨大な炎の塊が現れてはクレアに向かって放たれた。迫る熱量にクレアは顔を顰めた...


そして、数瞬後、熱量は消えて勇者からは狼狽するような声が聞こえてクレアは目を開ける。


(あの距離を外した...?いや、それほど連度が低いわけが...)


目を開けた先には小さな少年の背中が目に入り、クレアは予想外の情報に少しの間、驚いた表情をしている。そんなクレアの様子をよそに少年は口を開く。


「あぶないなー。悪いことしてるならまだしも、何もしていない魔物を襲うなんてひどいと思わないの?」


「誰だ貴様は‼どこから、いや、どうやってあの魔法を消し去った‼」


「秘密だよー。って言っても、すぐにわかると思うけどねー」

その少年は笑みを浮かべながら言うと手を前に出せばそこから7つの魔法陣が少年を中心に円になるように現れる。その魔法陣の中央にはT、U、V......と刻まれている。


「そ、その魔法陣...まさか死神か!?」


「第Z機構、フェイクデスサイス!!」


そう言い、Zが刻まれている魔法陣に少年は手を入れると何かの柄を掴んでは引き出す。すると銀色の大鎌が現れる。勇者たちは動揺しており大盾持ちの者は少年の前で盾を構える。


「避けろ❕受け止めるな❕」


勇者が焦った様子で言うがすでに遅かった。


「エンドレスワルツ‼」


そう言った瞬間に銀色の大鎌が大盾を切り裂き、持っていた者を吹き飛ばす。
そうすると吹き飛ばされた者は叫びながら洞穴の入口へと逃走していく。
その姿を見れば、杖を持った女性も恐怖で逃げ出していく。半分が逃げだせば勇者は顔をしかめながら吹き矢を放った男性と一緒に走り去っていった。


「もう来ないでくださいよ〜」


少年はそう言うと大鎌を魔法陣に戻せば背後に居るクレアに顔を見ては笑顔を向ける。クレアも放心状態からやっと覚めたようであるが困惑はしていた。


「お姉さん大丈夫...?動けないなら...さすがに背負うのは難しいから...えーと...」


少年はどうしたらいいんだろうと思いながら少し慌ててる姿は年相応の少年らしく、クレアは少し安心したように微笑めばゆっくりと立ち上がる。まだふらふらするが動ける状態である


「ありがとう...奥に部屋があるから...そこまで手を...引いてくれないか?」


「それならできそうです!」


そうお願いするクレアに少年は笑顔で言うと小さな手でクレアの手を握る。少年に連れられて行くクレアの表情は先ほどまでの死闘なんて忘れているほど嬉しそうである。


(なんだこの気持ちは...こんなに可愛いのに...あんなに強い...)


ドキドキとしながら小さな手の感触に夢中でいて


(可愛い手だ...それに柔らかい...はぁあ♡)


尻尾をブンブンと振りながらクレアは少年に情熱的な感情を抱きながら奥の部屋へと連れていってもらう。
完全に少年に惚れこんだクレアにこの少年を伴侶にする以外の選択肢は消えていた。
18/11/01 19:40更新 / かなでゆうき
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■作者メッセージ
ここまでお読みしていただき、ありがとうございます!!
まずは二人の出会いから書きました。次回からはこの少年とクレア、二人の関係がどのように進んでいくのか楽しみにしていただき、よければ読んでみてください‼

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