4月27日 僕と姉ちゃんと映画館
黄金週間二日目。流石に連日婿探しという骨折り確定行事に付き合う気にはなれず、僕はリビングで自由時間を過ごしている。
釣られるように姉ちゃんも来てソファに寝そべり、僕を観察し始めたのだが……
「暇ー……」
姉ちゃんがソファでゴロゴロと暇そうに転がっている。そんなに暇なのであれば外へ行って婿探しでもしてくればいいのに。見つからないだろうけど。
「ねー、ようくーん。ひまだよぅ」
「ごめん、僕は忙しい」
リビングの大型テレビでは僕がエスコンをやっている。大画面でやるドッグファイト……胸が熱くなるね。
「ひーまーだーよーひーまーだーよー!」
暇に耐えかねたのか姉ちゃんが後ろから抱きついてぐらぐらとゆすってくる。
胸が当たる、視界がブレる、手元が揺れるでまともに集中できたものではない。
「うわっと!姉ちゃん邪魔しないでって……あー!」
─ドーン……─
『ブレイズ!応答して!ブレイズ!』
テレビからは女性パイロットが悲痛な声で叫んでいる。
あぁ……ここ難しいから集中したかったのに……
「どれだけかまって欲しいのさ……」
「一日中暇にならないくらい!」
「勉強でもやっていれば?もしくは何か遊び見つけるとかさ」
「問題集も全部終わらせちゃったしゲームはお姉ちゃんできないし」
姉ちゃんはコインゲームは得意なくせにテレビゲームとなると一気に下手になる。
上半身はぐわんぐわん揺れるし反応はワンテンポ遅いし自分の揺れで酔うしで大変だ。
「んじゃテレビでも見ようか……。何かやってたっけ?」
ゲームの電源を落としてテレビへと切り替える。
番組はどれも主婦向けの番組しかやっていない。趣味があわなさ過ぎてポチポチとチャンネルを変えていると……
「あれ、これは?」
「映画のCMだね。割と人気らしいよ」
観客動員数1000万人突破という謳い文句の恋愛映画のCMがやっていた。
僕は映画にはさして明るくもないのでそれが凄いのか大したことないのかよくわからない。
が、姉ちゃんはそれを食い入るように見つめている。
「ねねねね!よう君よう君!」
「……何を言い出すか大体予想は付いたけど……何?」
「これ見に行こうよ!映画ってやつ!」
これだよ。
姉ちゃんは好奇心が強いのか、何か目新しい物を見つけるとなんでも興味を持つ。
ラブホテルを見つけた時入ってみようと言われた時は流石に焦った……入らなかったよ?流石に。
「ゴールデンウィークで割引キャンペーンやってたっけな……たまにはいいかもね」
「やた♪それじゃ用意してくるね!」
そう言うと姉ちゃんは部屋を出て二階へと駆け上がっていった。
僕も外出用に着替えようかな……
「姉ちゃん遅いな……」
玄関から出て待つこと15分……姉ちゃんが一向に出てこない。
別に急ぐ必要も無いのだけれど。
「おまたせ!」
「あぁ、やっとき……」
玄関が開いて姉ちゃんが出てきた。そして、その容姿をみて絶句する。
何と言うかまぁ……見ていてドキドキする。
別にきわどいファッションという訳じゃない。清潔なワイシャツに膝上あたりのチェックのスカート。
白いニーソックスを履いて茶色の革靴。すごく、お姉ちゃんっぽいです。
「あ、見とれてた?」
「……姉ちゃん」
しかし、僕にはこう返す事ぐらいしかできない。
「素材で台無し」
「酷!?」
本当はすっごく似合っててすっごく可愛いって言いたいんだよ?でもそんな事言ったらモロバレ確定じゃないか。
「空回りする姉ちゃんは置いといて……早く行かないと映画始まっちゃうね。急ご」
「ねぇ、私ってそんなに酷いかな?ねぇ!?」
「馬子にも衣装が通じない程度には」
「もっと酷い!?絶望した!」
やれやれ……本音がぶちまけられたら楽なのにね。
────────────────────────────────────────
姉ちゃんが公園でいちゃついているカップルを見ると。
「いいなぁ……」
ぎゅっと手をつないでくる。
「姉ちゃん、手」
「あ、ごめ……」
「流石に姉ちゃん相手は無理」
「がーん……」
そして滅茶苦茶落ち込む。
……落ち込んでいる姉ちゃんを見るのも割と楽しかったりする。
────────────────────────────────────────
一番近場にある映画館と言えば駅前にあるのが1つ程度。
大音量サラウンドが売りの割と大きい規模のやつだ。
ここで映画を見るのなんてどれぐらい振りだろうか。一番最後に見に来たのは確か……小学生の時に某懐怪獣の映画を見に来た時だったかなぁ。童心ながらにあれは泣けた。
「おっきいねぇ……実家ほどじゃないけど」
「いやいや、ウチここよりはるかに小さいじゃないか。何言ってんのさ」
姉ちゃんは時々あちら側の世界の事をポロリと漏らすから反応に困ったりする。
というか姉ちゃん、実家どんだけ広いのさ。
「むぅ……お姉ちゃんはおひ……」
「はいはい、脳内設定乙」
「全然信じてなーい……」
あくまで姉ちゃんは野暮ったくて芋っぽい姉ちゃんなのだ。
彼女の向こうの世界での事は全て妄想……そうしなきゃならない。
すごく良心が痛いけど、そうしなければ僕は姉ちゃんに別の世界に連れていかれてしまう。
いつか……本当の事を話せたらいいな。少なくとも僕は姉ちゃんのことを憎からず思っている訳だし。
「映画と言えばポップコーンだよね」
「あ、スーパーで売ってるの見たよ。でもこれ……袋入りのじゃないね」
塩味、キャラメル味の二種類がある。ここは……塩にしようか。恋愛映画見ている時にさらに甘い物食べたら口の中虫歯になりそうだし。あ、そうだ。
「姉ちゃん、ポップコーンってどういうものだか知ってる?」
「えと……コーンって言うからとうもろこしを使ってるんだよね?」
「そうそう、とうもろこしを爆破して残った灰がポップコーンって言うんだ」
「えぇ!?あれって灰だったの!?」
よし、食いついた。姉ちゃん弄り(からかい的な意味で)開始。
「塩をかけるのが普通なんだけどアメリカじゃバターソースをかけるのが普通なんだって」
「へぇ……おいし「豚の餌だから」向こうでは豚さんの餌なの!?」
大笑いをこらえながら説明を続ける。あぁ、何も知らない人をからかうのって楽しいなぁ!
「しかもバターソースはセルフサービスなんだって。自分でかけられるからその分運動にもなって健康にいいよね」
「う、うーん?いい、のかなぁ?」
いい訳がない。
「しかも向こうじゃバケツ一杯のポップコーンを持っていないと映画館に入れてもらえないんだ」
「え、アメリカだとポップコーンが映画のチケット替わりなの?」
「チケットにもなってしかも食べられるなんて画期的だよね。流石は先進国」
そんな話聞いたこともない。
「なんだか不思議な国だねぇ……アメリカって」
「まぁ嘘なんだけどね。」
「嘘なの!?」
やっぱりこの人はかわいい。こんな簡単な嘘を間に受けてしまうのだから。
────────────────────────────────────────
姉ちゃんはイチゴ味のお菓子が好きだ。
「ポアロチョコおいしぃ〜♪」
「ほらほら、あまり食べ過ぎると体に毒だよ」
だから僕が適度な所で取り上げてセーブしてあげるのだが……
「う、もう終わり……?」
「ぅ……」
涙浮かべながらの上目遣いには勝てない。
────────────────────────────────────────
「いてて……」
「ふーんだ……」
先程の冗談にご立腹だったのか両頬を思いっきりつねられた。
見た目以上に力があるのであまり怒らせると後がこわいんだよね、姉ちゃん。
「ほらほら、始まっちゃうから席着いて」
「は〜い……」
むくれながらも薄暗くなった館内の席に着く。映画を見て機嫌を直してくれるといいんだけどね。
周囲が静まり返ったためか、姉ちゃんもある程度落ち着いてくれた。
僕は……どうしよう。恋愛映画なんてまともに見る気が無いから寝てしまいそうな気がする。
「(精々姉ちゃんが変な事をしないか監視しなきゃね……)」
とは言え興味のない映画の上に周囲も暗くなっているために瞼がだんだんと重くなっていく。
気がつけば僕は夢の中へと落ちていた。
なんだか下半身がむずむずする。それだけでなく少し涼しくも感じる。
そんな奇妙な感覚に徐々にだけど意識が覚醒していく。
目の前では映画が佳境に入った所だろうか。
左右を見回しても姉ちゃんがいない。飽きてどこかへ行ってしまったのだろうか……
それにしても……なんだろう。股間が妙に気持ちがいい……気持ちがいい?
恐る恐る視線を下の方へ落としてみると……銀幕に映る光を反射して姉ちゃんの銀髪が僕の股あたりでゆらゆらと揺れていた。冷や汗が流れると共に顔から血の気が引いていく。
「な、なにしてるのさ」
「よう君のおちんちんしゃぶってます♪」
なんと姉ちゃんが僕の股間辺りに顔をうずめて……アレをしゃぶっていた。
以前は未遂だったけど、これは明らかに致してしまっている。
しかも結構長い時間しゃぶっていたのか既に出そうになっていた。
ぬめり気と暖かさを帯びた舌がねっとりと陰茎に絡みつき、時折裏筋をくすぐるように舐め上げる。
回転するかのように亀頭を舐めまわしたかと思うと鈴口へ舌を割りこませ、グリグリとほじくる。そのたびに腰が浮きそうな程の快感が全身に走る。
「ねぇ、ちゃん……!まずいって……!ここ、公共の場所!」
「バレなければ問題なーし。お姉ちゃんのお口の中にたっぷり出しちゃいなさい♪」
水音は殆どしていない。それなりに気を効かせてくれているのだろうけど、そんな気の使い方をするのであれば最初からやらないでいただきたい。割と切実に。
バレたらもう二度とここに来れないじゃないか。
「ねぇちゃ……もうやめ、出ちゃうから……!」
「んふ……♪ちゅぅぅぅ……」
強く陰茎に吸い付かれて腰がガクガクと痙攣する。
先走りが次から次へと漏れ出し、それを姉ちゃんが片っ端から吸い上げては唾液と混ぜ合わせて垂下する。体液を飲まれている。それを実感する度に得体の知れない快感がゾクゾクと背筋を駆け巡っていく。
しかし大きな音を立てるわけにもいかず、肘掛けをしっかりと掴んで体の震えを抑えつけるしか無い。
我慢の限界に達し、精液がほとばしる……かと思いきや、絶頂感だけがやってきて何故か射精が起きない。
姉ちゃんが陰茎から口を離すと、その根元に白い光で出来た輪っかのようなものが付いていた。
「本当は貞操帯みたいな使い方をする奴なんだけど……よう君はまだお姉ちゃんに謝っていない事があるので外してあげません♪」
どうやらこれが付けられていると射精ができなくなるらしい。なんという生殺し。
「謝って、いない事って……なにさ……」
「よう君、お姉ちゃんに嘘を吐いたでしょ」
心臓が一際強く跳ね上がる。体中から嫌な汗が吹き出し、体温が一気に上がって頬が熱くなる。あくまで、表面上は平静を保ったままだが。
まさか、バレた?
「お姉ちゃん言ったよね?よう君は私に酷い事しないって。嘘はついたりしないって」
「それは……」
正直に、言ったほうがいいのだろうか。でもそれはあまりにリスクが高すぎる。
姉ちゃんの世界へ強制連行されても文句は言えない。どうする……言うのか、本当の事を。
……いや、一つの可能性に賭けてみよう。
「嘘、吐いたりして……ごめんなさい」
「……よろしい。それじゃ、これは外してあげるね」
姉ちゃんがその光の輪っかにそっと触れると粉々になって消え去った。
それと同時に根元の圧迫感も消え、押し留められた精液が再び溢れ出しそうになった。
「我慢させちゃってごめんね。今、楽にしてあげる♥」
再び姉ちゃんが僕の股の間に顔を埋め、陰茎を咥え込む。
ねっとりとした舌使いで僕のそれを絡めとり、裏筋をなぞり上げては鈴口へ下を割りこませ、溢れてきた汁をすすり取っていく。
元々お預けを食らっていたような状態でもあり、我慢の限界があっという間に来て彼女の口内へ濁々と精液が流し込まれていく。
「……っ……!ぅく……っ!」
「……♪」
それを姉ちゃんは嬉々として喉を鳴らして飲み込んでいく。その間も絶えず陰茎が刺激されているが故になかなか射精が止まらない。まるで無理やり搾り出されているかのようだ。
それでもなんとか刺激も収まり、後にはけだるい脱力感だけが残る。
シートに深く体を沈めてため息を吐き、下げられたままだったズボンのファスナーを上げる。
映画は丁度スタッフロールが流れ始めた頃で、回りからはバラバラと観客が席を立ち始めた。よくもまぁばれなかったものだ……
────────────────────────────────────────
姉ちゃんがポテチの袋を開けようとすると……
「んむむむむ……!」
中々開かない。
酷い時だと……
─パァーン─
「わぁ!?」
ポテチの袋が真っ二つに引き裂かれて中身が大爆発を起こす。
無論片付けるのは僕なのだが……
「ごめんね♪」
可愛いから許す。
────────────────────────────────────────
暗い映画館の中にいたせいか太陽の光が眩しい。
春半ばの涼しく、かつさわやかな風が中でかいた嫌な汗をすっと撫でていく。
「あ〜……しんどかった。なんで映画を見るだけでこんなに疲れているんだろ」
「そうかなぁ。お姉ちゃんはそれなりに楽しかったけど?」
「姉ちゃんは、ね。」
この人は基本いつもマイペースだ。僕の都合なんて知ったことじゃない。
「そ・れ・よ・り〜……よう君だったんだねぇ……ふふふ♪」
「……何が?」
さて、ここからが一仕事だ。
櫻井陽介、一世一代の大芝居……母親譲りの演技力で乗りきれるか?
「だって〜、よう君ってば知っていて知らないふりしてたんだもん。このいけず〜」
「……知らないふり?」
「だって見えているんでしょ?お姉ちゃんが美人に」
「何言ってんのさ。姉ちゃんは昔からさほど綺麗とは言い難かったじゃないか」
「……あれ?」
「僕はポップコーンの話で嘘をついてごめんって言ってたんだけど……何か違った?」
それを聞いた途端姉ちゃんが膝から崩れ落ちて地面に手を付く。
凄まじい落胆ぶりだ。少し気の毒になるぐらいに。
「しまったー……そっちかー……うん、そうだよねぇ……何一人で盛り上がってたんだろ……あはは……ばっかみたい……」
……あぁ、酷い罪悪感が。流石にこのままにしておくには良心が激痛で身悶えする。
何か姉ちゃんの機嫌が治りそうなものは……ん、あれがいいか。
好奇の目線に晒される姉ちゃんを一時的にその場に残し、近くの屋台でお目当てのものを買って戻ってくる。
「ほら、姉ちゃん元気出しなよ。アイス買ってきたから。」
力なく姉ちゃんが頭をもたげ、僕の手にあるそれを目にした途端飛び起きて目を輝かせ出す。
僕が買ってきたアイス……それは……
「いちごアイス!」
「せいかい。ポップコーンの時のお詫びね。」
姉ちゃんにイチゴのアイスを渡すと尻尾を振りちぎらんばかりの勢いで喜びながらアイスにかぶりつく。
うん、姉ちゃんはこうしている時が一番可愛いね。
先ほどの落ち込みようが嘘のようにご満悦の姉ちゃんの手を引きながら僕達は家路を辿るのであった。
僕の姉ちゃんは時々異様に鋭い……それ故に中々ヒヤヒヤする。
釣られるように姉ちゃんも来てソファに寝そべり、僕を観察し始めたのだが……
「暇ー……」
姉ちゃんがソファでゴロゴロと暇そうに転がっている。そんなに暇なのであれば外へ行って婿探しでもしてくればいいのに。見つからないだろうけど。
「ねー、ようくーん。ひまだよぅ」
「ごめん、僕は忙しい」
リビングの大型テレビでは僕がエスコンをやっている。大画面でやるドッグファイト……胸が熱くなるね。
「ひーまーだーよーひーまーだーよー!」
暇に耐えかねたのか姉ちゃんが後ろから抱きついてぐらぐらとゆすってくる。
胸が当たる、視界がブレる、手元が揺れるでまともに集中できたものではない。
「うわっと!姉ちゃん邪魔しないでって……あー!」
─ドーン……─
『ブレイズ!応答して!ブレイズ!』
テレビからは女性パイロットが悲痛な声で叫んでいる。
あぁ……ここ難しいから集中したかったのに……
「どれだけかまって欲しいのさ……」
「一日中暇にならないくらい!」
「勉強でもやっていれば?もしくは何か遊び見つけるとかさ」
「問題集も全部終わらせちゃったしゲームはお姉ちゃんできないし」
姉ちゃんはコインゲームは得意なくせにテレビゲームとなると一気に下手になる。
上半身はぐわんぐわん揺れるし反応はワンテンポ遅いし自分の揺れで酔うしで大変だ。
「んじゃテレビでも見ようか……。何かやってたっけ?」
ゲームの電源を落としてテレビへと切り替える。
番組はどれも主婦向けの番組しかやっていない。趣味があわなさ過ぎてポチポチとチャンネルを変えていると……
「あれ、これは?」
「映画のCMだね。割と人気らしいよ」
観客動員数1000万人突破という謳い文句の恋愛映画のCMがやっていた。
僕は映画にはさして明るくもないのでそれが凄いのか大したことないのかよくわからない。
が、姉ちゃんはそれを食い入るように見つめている。
「ねねねね!よう君よう君!」
「……何を言い出すか大体予想は付いたけど……何?」
「これ見に行こうよ!映画ってやつ!」
これだよ。
姉ちゃんは好奇心が強いのか、何か目新しい物を見つけるとなんでも興味を持つ。
ラブホテルを見つけた時入ってみようと言われた時は流石に焦った……入らなかったよ?流石に。
「ゴールデンウィークで割引キャンペーンやってたっけな……たまにはいいかもね」
「やた♪それじゃ用意してくるね!」
そう言うと姉ちゃんは部屋を出て二階へと駆け上がっていった。
僕も外出用に着替えようかな……
「姉ちゃん遅いな……」
玄関から出て待つこと15分……姉ちゃんが一向に出てこない。
別に急ぐ必要も無いのだけれど。
「おまたせ!」
「あぁ、やっとき……」
玄関が開いて姉ちゃんが出てきた。そして、その容姿をみて絶句する。
何と言うかまぁ……見ていてドキドキする。
別にきわどいファッションという訳じゃない。清潔なワイシャツに膝上あたりのチェックのスカート。
白いニーソックスを履いて茶色の革靴。すごく、お姉ちゃんっぽいです。
「あ、見とれてた?」
「……姉ちゃん」
しかし、僕にはこう返す事ぐらいしかできない。
「素材で台無し」
「酷!?」
本当はすっごく似合っててすっごく可愛いって言いたいんだよ?でもそんな事言ったらモロバレ確定じゃないか。
「空回りする姉ちゃんは置いといて……早く行かないと映画始まっちゃうね。急ご」
「ねぇ、私ってそんなに酷いかな?ねぇ!?」
「馬子にも衣装が通じない程度には」
「もっと酷い!?絶望した!」
やれやれ……本音がぶちまけられたら楽なのにね。
────────────────────────────────────────
姉ちゃんが公園でいちゃついているカップルを見ると。
「いいなぁ……」
ぎゅっと手をつないでくる。
「姉ちゃん、手」
「あ、ごめ……」
「流石に姉ちゃん相手は無理」
「がーん……」
そして滅茶苦茶落ち込む。
……落ち込んでいる姉ちゃんを見るのも割と楽しかったりする。
────────────────────────────────────────
一番近場にある映画館と言えば駅前にあるのが1つ程度。
大音量サラウンドが売りの割と大きい規模のやつだ。
ここで映画を見るのなんてどれぐらい振りだろうか。一番最後に見に来たのは確か……小学生の時に某懐怪獣の映画を見に来た時だったかなぁ。童心ながらにあれは泣けた。
「おっきいねぇ……実家ほどじゃないけど」
「いやいや、ウチここよりはるかに小さいじゃないか。何言ってんのさ」
姉ちゃんは時々あちら側の世界の事をポロリと漏らすから反応に困ったりする。
というか姉ちゃん、実家どんだけ広いのさ。
「むぅ……お姉ちゃんはおひ……」
「はいはい、脳内設定乙」
「全然信じてなーい……」
あくまで姉ちゃんは野暮ったくて芋っぽい姉ちゃんなのだ。
彼女の向こうの世界での事は全て妄想……そうしなきゃならない。
すごく良心が痛いけど、そうしなければ僕は姉ちゃんに別の世界に連れていかれてしまう。
いつか……本当の事を話せたらいいな。少なくとも僕は姉ちゃんのことを憎からず思っている訳だし。
「映画と言えばポップコーンだよね」
「あ、スーパーで売ってるの見たよ。でもこれ……袋入りのじゃないね」
塩味、キャラメル味の二種類がある。ここは……塩にしようか。恋愛映画見ている時にさらに甘い物食べたら口の中虫歯になりそうだし。あ、そうだ。
「姉ちゃん、ポップコーンってどういうものだか知ってる?」
「えと……コーンって言うからとうもろこしを使ってるんだよね?」
「そうそう、とうもろこしを爆破して残った灰がポップコーンって言うんだ」
「えぇ!?あれって灰だったの!?」
よし、食いついた。姉ちゃん弄り(からかい的な意味で)開始。
「塩をかけるのが普通なんだけどアメリカじゃバターソースをかけるのが普通なんだって」
「へぇ……おいし「豚の餌だから」向こうでは豚さんの餌なの!?」
大笑いをこらえながら説明を続ける。あぁ、何も知らない人をからかうのって楽しいなぁ!
「しかもバターソースはセルフサービスなんだって。自分でかけられるからその分運動にもなって健康にいいよね」
「う、うーん?いい、のかなぁ?」
いい訳がない。
「しかも向こうじゃバケツ一杯のポップコーンを持っていないと映画館に入れてもらえないんだ」
「え、アメリカだとポップコーンが映画のチケット替わりなの?」
「チケットにもなってしかも食べられるなんて画期的だよね。流石は先進国」
そんな話聞いたこともない。
「なんだか不思議な国だねぇ……アメリカって」
「まぁ嘘なんだけどね。」
「嘘なの!?」
やっぱりこの人はかわいい。こんな簡単な嘘を間に受けてしまうのだから。
────────────────────────────────────────
姉ちゃんはイチゴ味のお菓子が好きだ。
「ポアロチョコおいしぃ〜♪」
「ほらほら、あまり食べ過ぎると体に毒だよ」
だから僕が適度な所で取り上げてセーブしてあげるのだが……
「う、もう終わり……?」
「ぅ……」
涙浮かべながらの上目遣いには勝てない。
────────────────────────────────────────
「いてて……」
「ふーんだ……」
先程の冗談にご立腹だったのか両頬を思いっきりつねられた。
見た目以上に力があるのであまり怒らせると後がこわいんだよね、姉ちゃん。
「ほらほら、始まっちゃうから席着いて」
「は〜い……」
むくれながらも薄暗くなった館内の席に着く。映画を見て機嫌を直してくれるといいんだけどね。
周囲が静まり返ったためか、姉ちゃんもある程度落ち着いてくれた。
僕は……どうしよう。恋愛映画なんてまともに見る気が無いから寝てしまいそうな気がする。
「(精々姉ちゃんが変な事をしないか監視しなきゃね……)」
とは言え興味のない映画の上に周囲も暗くなっているために瞼がだんだんと重くなっていく。
気がつけば僕は夢の中へと落ちていた。
なんだか下半身がむずむずする。それだけでなく少し涼しくも感じる。
そんな奇妙な感覚に徐々にだけど意識が覚醒していく。
目の前では映画が佳境に入った所だろうか。
左右を見回しても姉ちゃんがいない。飽きてどこかへ行ってしまったのだろうか……
それにしても……なんだろう。股間が妙に気持ちがいい……気持ちがいい?
恐る恐る視線を下の方へ落としてみると……銀幕に映る光を反射して姉ちゃんの銀髪が僕の股あたりでゆらゆらと揺れていた。冷や汗が流れると共に顔から血の気が引いていく。
「な、なにしてるのさ」
「よう君のおちんちんしゃぶってます♪」
なんと姉ちゃんが僕の股間辺りに顔をうずめて……アレをしゃぶっていた。
以前は未遂だったけど、これは明らかに致してしまっている。
しかも結構長い時間しゃぶっていたのか既に出そうになっていた。
ぬめり気と暖かさを帯びた舌がねっとりと陰茎に絡みつき、時折裏筋をくすぐるように舐め上げる。
回転するかのように亀頭を舐めまわしたかと思うと鈴口へ舌を割りこませ、グリグリとほじくる。そのたびに腰が浮きそうな程の快感が全身に走る。
「ねぇ、ちゃん……!まずいって……!ここ、公共の場所!」
「バレなければ問題なーし。お姉ちゃんのお口の中にたっぷり出しちゃいなさい♪」
水音は殆どしていない。それなりに気を効かせてくれているのだろうけど、そんな気の使い方をするのであれば最初からやらないでいただきたい。割と切実に。
バレたらもう二度とここに来れないじゃないか。
「ねぇちゃ……もうやめ、出ちゃうから……!」
「んふ……♪ちゅぅぅぅ……」
強く陰茎に吸い付かれて腰がガクガクと痙攣する。
先走りが次から次へと漏れ出し、それを姉ちゃんが片っ端から吸い上げては唾液と混ぜ合わせて垂下する。体液を飲まれている。それを実感する度に得体の知れない快感がゾクゾクと背筋を駆け巡っていく。
しかし大きな音を立てるわけにもいかず、肘掛けをしっかりと掴んで体の震えを抑えつけるしか無い。
我慢の限界に達し、精液がほとばしる……かと思いきや、絶頂感だけがやってきて何故か射精が起きない。
姉ちゃんが陰茎から口を離すと、その根元に白い光で出来た輪っかのようなものが付いていた。
「本当は貞操帯みたいな使い方をする奴なんだけど……よう君はまだお姉ちゃんに謝っていない事があるので外してあげません♪」
どうやらこれが付けられていると射精ができなくなるらしい。なんという生殺し。
「謝って、いない事って……なにさ……」
「よう君、お姉ちゃんに嘘を吐いたでしょ」
心臓が一際強く跳ね上がる。体中から嫌な汗が吹き出し、体温が一気に上がって頬が熱くなる。あくまで、表面上は平静を保ったままだが。
まさか、バレた?
「お姉ちゃん言ったよね?よう君は私に酷い事しないって。嘘はついたりしないって」
「それは……」
正直に、言ったほうがいいのだろうか。でもそれはあまりにリスクが高すぎる。
姉ちゃんの世界へ強制連行されても文句は言えない。どうする……言うのか、本当の事を。
……いや、一つの可能性に賭けてみよう。
「嘘、吐いたりして……ごめんなさい」
「……よろしい。それじゃ、これは外してあげるね」
姉ちゃんがその光の輪っかにそっと触れると粉々になって消え去った。
それと同時に根元の圧迫感も消え、押し留められた精液が再び溢れ出しそうになった。
「我慢させちゃってごめんね。今、楽にしてあげる♥」
再び姉ちゃんが僕の股の間に顔を埋め、陰茎を咥え込む。
ねっとりとした舌使いで僕のそれを絡めとり、裏筋をなぞり上げては鈴口へ下を割りこませ、溢れてきた汁をすすり取っていく。
元々お預けを食らっていたような状態でもあり、我慢の限界があっという間に来て彼女の口内へ濁々と精液が流し込まれていく。
「……っ……!ぅく……っ!」
「……♪」
それを姉ちゃんは嬉々として喉を鳴らして飲み込んでいく。その間も絶えず陰茎が刺激されているが故になかなか射精が止まらない。まるで無理やり搾り出されているかのようだ。
それでもなんとか刺激も収まり、後にはけだるい脱力感だけが残る。
シートに深く体を沈めてため息を吐き、下げられたままだったズボンのファスナーを上げる。
映画は丁度スタッフロールが流れ始めた頃で、回りからはバラバラと観客が席を立ち始めた。よくもまぁばれなかったものだ……
────────────────────────────────────────
姉ちゃんがポテチの袋を開けようとすると……
「んむむむむ……!」
中々開かない。
酷い時だと……
─パァーン─
「わぁ!?」
ポテチの袋が真っ二つに引き裂かれて中身が大爆発を起こす。
無論片付けるのは僕なのだが……
「ごめんね♪」
可愛いから許す。
────────────────────────────────────────
暗い映画館の中にいたせいか太陽の光が眩しい。
春半ばの涼しく、かつさわやかな風が中でかいた嫌な汗をすっと撫でていく。
「あ〜……しんどかった。なんで映画を見るだけでこんなに疲れているんだろ」
「そうかなぁ。お姉ちゃんはそれなりに楽しかったけど?」
「姉ちゃんは、ね。」
この人は基本いつもマイペースだ。僕の都合なんて知ったことじゃない。
「そ・れ・よ・り〜……よう君だったんだねぇ……ふふふ♪」
「……何が?」
さて、ここからが一仕事だ。
櫻井陽介、一世一代の大芝居……母親譲りの演技力で乗りきれるか?
「だって〜、よう君ってば知っていて知らないふりしてたんだもん。このいけず〜」
「……知らないふり?」
「だって見えているんでしょ?お姉ちゃんが美人に」
「何言ってんのさ。姉ちゃんは昔からさほど綺麗とは言い難かったじゃないか」
「……あれ?」
「僕はポップコーンの話で嘘をついてごめんって言ってたんだけど……何か違った?」
それを聞いた途端姉ちゃんが膝から崩れ落ちて地面に手を付く。
凄まじい落胆ぶりだ。少し気の毒になるぐらいに。
「しまったー……そっちかー……うん、そうだよねぇ……何一人で盛り上がってたんだろ……あはは……ばっかみたい……」
……あぁ、酷い罪悪感が。流石にこのままにしておくには良心が激痛で身悶えする。
何か姉ちゃんの機嫌が治りそうなものは……ん、あれがいいか。
好奇の目線に晒される姉ちゃんを一時的にその場に残し、近くの屋台でお目当てのものを買って戻ってくる。
「ほら、姉ちゃん元気出しなよ。アイス買ってきたから。」
力なく姉ちゃんが頭をもたげ、僕の手にあるそれを目にした途端飛び起きて目を輝かせ出す。
僕が買ってきたアイス……それは……
「いちごアイス!」
「せいかい。ポップコーンの時のお詫びね。」
姉ちゃんにイチゴのアイスを渡すと尻尾を振りちぎらんばかりの勢いで喜びながらアイスにかぶりつく。
うん、姉ちゃんはこうしている時が一番可愛いね。
先ほどの落ち込みようが嘘のようにご満悦の姉ちゃんの手を引きながら僕達は家路を辿るのであった。
僕の姉ちゃんは時々異様に鋭い……それ故に中々ヒヤヒヤする。
14/03/05 15:27更新 / テラー
戻る
次へ