第四十二記 -ユニコーン-
…障子窓を開くと、涼しい風が舞い込んだ。
「良いお湯でしたね」
火照った身体が落ち着いていく心地良さを感じながら、ユニちゃんの言葉に同意する。
前はゆっくり浸かることが出来なかったけれど、今回は存分に温泉を楽しめた。
身体もぽかぽか、心もぽかぽか。旅の疲れなんてどこへやら。
「二人のお薦めなだけはあるね。気持ち良かった」
おねえちゃんも満足みたい。よかった。
「ふぅ…」
溜息をひとつ、座布団に腰を下ろすおねえちゃん。
…隣の部屋の皆は、もう温泉に入ったのかな?
あーちゃんと、メディちゃん、うーちゃん、サキュさんに、リムさん。
こっちの部屋は、今入れ違いでももちゃんとドラちゃんが入りに行ってる。
…ここの温泉、結構温度高めだけど…メディちゃん、大丈夫かな…。
熱いの、全般的に苦手みたいだけれど…。
「………」
……おねえちゃんの横に、ちょこんっ。
「ん…。……ふふっ…」
………あっ…。撫でてくれた…。やったっ。
「ミーファ様、一人占めは駄目ですよ」
ユニちゃんも、隣に座って…なでなで。
私もお返しに、おねえちゃんをなでなで。ユニちゃんもなでなで。
「…ソラ様…♥」
ユニちゃん、とっても気持ち良さそう。
見ている方も幸せを感じちゃうような笑顔。
私も思わず、笑顔になる。
幸せな時間…。
「……よいしょ」
空いた手を伸ばし…机の上のお酒と盃を、自身に寄せるおねえちゃん。
温泉に入る前に、おねえちゃんが宿の人に注文していたもの。
「じゃあ、ごめん。一人でいただきます」
「あ、お酌を…」
「いいよ。ありがと」
ユニちゃんの申し出にお礼を言いつつ…手酌でお酒を注ぐ。
「…んっ……」
くいっ、と…一飲み。
「…っふぅ」
そして、一息。
…すごく新鮮。
おねえちゃんがお酒を飲んでる姿、はじめて見た。
年齢的に、飲んでいてもおかしくはないけれど…意外。
……でも、かっこいい…。
なんていうか……大人、って感じがする。お酒が分かる、大人の女性。
微笑んだ表情ではあるけれど、どこか憂いを感じる様な…どう言えばいいかな…。
………どき、ってする…雰囲気を漂わせていて……。
「………」
「……あのさ」
誰とも目を会わせず、前を見たまま話すおねえちゃん。
「私、今酔ってるから…変なこと言ったら、ごめんね」
…え? もう? 一口で?
「…飲み過ぎないでくださいね、ミーファ様」
「うん…」
うん、飲み過ぎは駄目。明日も早いし。
おねえちゃんなら、そういう心配はいらないとは思うけれど…。
「………」
「………」
「………ソラちゃんってさ」
私? なんだろう?
「誰が一番好きなの?」
……………え。
「ユニさん?」
…ほんの少し、振り向く。
……目が合って、にこっ…と微笑みを返してくれる、ユニちゃん。
「それとも…ももさん、だっけ。あと、ドラちゃん?」
手に持った盃を、僅かに揺らしながら…おねえちゃんは言葉を続ける。
「…ソラちゃん」
「理由は何でもいいから、さ…」
「料理が美味しいとか…、美人だとか…、性格が優しいとか…」
「…床上手だから、でもいいんだから…」
「誰か一人に、決めてあげなよ」
……えっ、と……。
なんだろう、これ。いきなり、なんだろう。
おねえちゃん、本当に酔っちゃったのかな…?
言っている事は分かるけれど、突然過ぎて、よく分からない。
どんな思いがあって、おねえちゃんはこのお話をしているんだろう。
それも、ふたりきりじゃなくて…ユニちゃんの前で。
「…ユニさんの料理は、美味しい?」
…頷く。
「ユニさんのこと、綺麗だって思う?」
頷く。
「ユニさん、優しいな…って感じる?」
頷く。
「ユニさんは…夜、ソラちゃんのこと、気持ち良くしてくれる?」
……………頷く。
「なら、ユニさんと結婚するのは?」
……………。
「………」
「…ソラちゃん。ここ、おいで」
おねえちゃんが、胡坐にした足を叩いて…私を呼ぶ。
…招かれるままに……膝の上へ、ちょこん。
「…うん。相変わらず、良い顎乗せ場」
顎を私の頭の上に乗せるおねえちゃん。村でもよくされていた。
「………ソラちゃん」
「今回の旅…、リムさんの身体を治すのが目的であって…」
「ソラちゃんの身体は…治さないんだよね」
…頷く…と顎が擦ってしまうので、声でお返事。
「…考えてたんだ。ずっと。なんでかな、って」
「……んっ…」
一口飲んで……わずかな沈黙の後……続きの言葉。
「……治す、っていう考えが、そもそも間違いで…」
「ソラちゃんは、自分の身体を否定していない」
「…否定しなくなった、の方かな…。そこは分からないや」
「その身体でも、皆が認めてくれる…って思っているから」
「偉いと思う。そうやって、自分の疑問を一人で解決すること…」
「…村であったことも含めて、そういう考えができること…」
「大人だって、そうそう出来ない」
……………。
「………」
「…もうひとつ」
「もうひとつだけ、大人になってみない? ソラちゃん」
大人になる…。
よく聞く言葉。私が望むもの。
でも、それは具体的に何なのかと訊かれると…答えられない。
簡単なようで、その実ものすごく難しい言葉。
「大人はね…」
「辛いことを乗り越えて、本当の幸せを掴む人」
「ソラちゃんは、それで言えば、もうだいぶ大人に近付いてる」
「私より、大人だと思う」
そんなこと…。
「…きっと、これが最後」
「最後の辛いことだよ、ソラちゃん」
……………。
「…ユニさんを見てごらん」
…促されるまま…ユニちゃんの方を見る。
………目に飛び込んでくるのは……いつもと変わらない…ユニちゃんの笑顔…。
「………あの人が、大人」
「ももさんも。ドラちゃんも」
…大人……。
「………」
……………。
「…ソラちゃん」
「私の勘違いだったら、笑って」
勘違い…?
「……………私のこと、さ」
「好き?」
っ…!?
「………」
……………。
「………」
……………。
「………」
…………………小さく……答えを返した…。
「…そっか」
……………。
………全部……見通されてたんだ…。
おねえちゃんは、私のことを何でも分かってくれる。
それがすごく嬉しくて、それにいつも甘えていた。
でも…。今のこの気持ちが、嬉しさかと問われたら…。
「…ユニさん」
「はい」
「ソラちゃん、私のことも、好きだって」
「その様ですね」
「うん」
……………。
「………」
「……おねえちゃんは、さ」
「ソラちゃんの、一番がいい」
えっ…。
「ソラちゃん、エッチなこと、大好きでしょ」
…ぇ…?
「…してあげるからさ。一番にして。私のこと」
お、おねえちゃん…?
「………ほら」
あっ。
「これでしょ? この膨らんでるところ。ソラちゃんのオチンチン」
やっ…。
「…これで、しようよ。私と」
やだっ…。やめて…。おねえちゃん、やめてっ…!
「ほら…」
嫌っ! やだ…! おねえちゃん…っ!!
「私と……セックス」
いやだっ…!!!!
「………」
……………。
「……誰かが、いずれこうなるかもしれない」
「その前に、答えを出してあげようよ」
「決めることで、誰かを悲しませてしまうんじゃない…」
「決めることで、誰かを幸せにしてあげられるの」
……………。
「ソラちゃん」
「ソラちゃんは……誰かを幸せにできるの…」
「その誰かの幸せが…ソラちゃんの幸せなの…」
「そして…」
「ソラちゃんの幸せが………ソラちゃんを好きな人達の…幸せなの…」
………幸せ…。
私の…。皆の……幸せ…。
「………」
……………。
「………」
……………。
「………」
……………。
「………ソラちゃん、ちょっとごめんね」
…脇から持ち上げられ……元居た場所に私を戻し、立ち上がるおねえちゃん。
そして、廊下へ出る襖の前まで歩み………手を掛け、立ち止まる。
「…ソラちゃん」
「意地悪して、ごめんね」
……………。
「……ソラちゃんの気持ち…さ」
「この旅が終わったら、ちゃんと聞かせて」
「私も、真剣に考えるから」
「…だから、ごめん」
「偉そうなこと言ったけれど…」
「その時までは……答えを出すの、待っていてもらえないかな」
………それ…って……。
「………」
「……ちょっと、散歩してくる」
そう言って、襖をわずかに開いたところで…。
「ミーファ様」
…ユニちゃんの呼び掛けに……おねえちゃんが振り返る。
「……ありがとうございます…」
「…ううん。ソラちゃんのこと、お願い」
ぽつりと呟き…部屋を出ようとするおねえちゃん。
…不意に。
「いいえ。それはミーファ様も一緒でないといけません」
「えっ?」
その手を掴む、ユニちゃん。
「ユニさん…?」
「ソラ様、こちらに身体を向けていただけますか?」
…言われた通りに…廊下へ出る襖側へ、身体を向ける。
ユニちゃんは、狼狽するおねえちゃんの手を引きながら……私の前で、膝を下ろした。
「ちょっと、ユニさんっ…」
「ミーファ様」
微笑みを崩さないまま…語り掛ける。
「最後まで、慰めてあげてください」
「慰め……って…」
「先程のようではなく…、普段の、ソラ様に対する感情で…」
「ちゃんと伝えてあげてください。今のミーファ様の気持ちを…ソラ様に」
「………」
……おねえちゃんが、一瞬、私の方に目をやる。
思わず、どきっ…と身が竦む。
「…ユニさん」
「はい」
「どんな考え…?」
「ソラ様の幸せを、自分の幸せと感じる方を…もう一人増やしたいと思いまして」
「………」
「…私は、ミーファ様を親友として…」
「そして、ライバルとしてお付き合いしたいんです」
「…勝つ気、満々なんだね」
「はい。私はソラ様の許嫁ですから」
………? どういうこと…?
「…わかった。でも、私さ…」
「不安ですか?」
「それも少しあるけど…。……したこと、なくて」
「難しいことではありません。一緒にしましょう」
そう言って…ユニちゃんが、浴衣の中の…私の下着に手を掛ける。
突然のことに、びっくりして小さな叫び声が出る。
「ソラ様。明日も早いので、今夜は1回だけにしましょう」
「私と…ミーファ様で、ソラ様のを…手で御奉仕させて頂きます」
え? えっ?
ユニちゃんと……おねーちゃんの、手で…?
「…よろしいですか? ミーファ様」
「うん。…もう、覚悟決めた」
「では…失礼します」
するりと…膝元まで下着を下げるユニちゃん。
まだ状況が飲み込めていない私は、足を閉じて、わずかばかりの抵抗。
「…ソラ様♥ 足を開いて頂けませんか?♥」
ぁぅ…。
……………うぅ…。
「…♥ もうこんなになって…♥」
「うわ…」
…見られてる…。
ユニちゃんだけじゃなくて……おねえちゃんにも…。
「……剥けてないけど、これって、危ないんじゃなかったっけ…?」
「簡単に剥けますよ♥ ほら…♥」
ひゃんっ!?
「…ね♥」
「う、うん…。ほんとだ…」
はぅん…。…オチンチン……見られてる…。
おねえちゃんの目の前で…すごい勃起させちゃってる……。
気持ち悪いって、思われないかな…。変な臭い、しないかな…。
どうしよう…。ドキドキするよぉ…。
「さぁ、ミーファ様♥」
「……ソラちゃん…」
あっ…。きゃうっ…!
「…ぁ…。結構、あったかい…」
「そうなんです♥ 可愛いでしょう♥」
「……うん…♥」
おねえちゃんの…手……。
あの日以来……何度も夢に見た……おねえちゃんの手…。
私の…オチンチン、握って……っ。
「ミーファ様…、私の手と握手して、上下に擦りましょう♥」
「握手って…こう?」
「はい♥ そのまま、包み込むようにして上下に…♥」
うそ…。うそっ…。夢みたい…。
おねえちゃんが……私のを…きもちよくしてくれてる…。
夢の中のおねえちゃんは、舐めたり、おっぱいを押し付けたり、
おまたで擦ったり、ナカに入れたりしてくれたけれど…。
そのどれよりも…全然、今のこれのほうがきもちいい…っ。
あぁっ…。おねえちゃんっ…♥
「わ…。なにか、いっぱい出てきた…」
「愛液です♥ ソラ様が感じている証拠ですよ♥」
「愛液…っていうんだ…。…へぇ…」
おつゆが…おねえちゃんの手にまで、垂れて…。
私のおつゆで、どんどんおねえちゃんの手が汚れていく…。
私が…おねえちゃんを…エッチに染め上げていってる…。
私……おねえちゃんと……エッチなこと……。
「…ぁ」
「どうなさいました?」
「産毛…」
「え…? ……まぁ…♥」
胸がっ…。胸が破裂しそう…っ。
おねえちゃん。おねえちゃん。おねえちゃんっ。
ごめんなさいっ。エッチで、ごめんなさいっ。
おねえちゃんでオナニーして、ごめんなさいっ。
おねえちゃんにエッチなこと期待して、ごめんなさいっ。
でも……でもっ…。
今だけは……エッチでいさせて…っ♥
「……すごいニオイ…」
「えぇ…♥」
「香水…、ムスクを、濃くしたような…」
「男性の香り、ということですね♥ でも、ほのかに甘い香りも混ざっているんですよ♥」
「……あ、ほんとだ…。花系の…」
「これ、ソラ様の体臭なんです♥ 不思議なことですが…♥」
「え? じゃあ、これ…汗の匂いなの?」
くちゅ…くちゅ…って、オチンチンがおつゆで滑る音…。
だめ…。興奮しちゃう。もっとエッチなこと…したくなっちゃう。
身体と頭が一致してない。思ってもいないことを、身体がしちゃう。
勝手に……全部…。
「…え…。ぁ…」
「あ…♥ …ソラ様、我慢出来ませんか…?♥」
くりとりすっ…♥
きもちいい…。こりこりするの、すきっ…。
こうすると……すぐにいけるから…っ…。
すきっ……すきぃ…♥
「ゎ……」
「…ミーファ様♥」
「あっ。え? あ、ご、ごめん。何?」
「ソラ様の中……ここに、指…挿れてあげてください…♥」
「え…。で、でも…」
「さぁ…♥」
「………う…うん……」
こりこり、こりこり…♥ こりこ……ひゃああぁぁっ!?♥♥♥♥♥
「うわっ、キツイ…。さきっぽしか…」
「え? さすがにそんな筈は………あっ」
「ん…? わっ!?」
っっ…♥♥♥♥♥ ぁぁ…っ……♥♥♥
「ちょっ…。ソラちゃん、ストップ! ストップ!」
「構いません、ミーファ様。続けましょう♥」
「いや、でもこれ、旅館の人に怒られるんじゃ…」
「私が粗相したことにしておきます。ももさん達は気付くでしょうけれど…」
「………本気で?」
「はい♥」
ぅぁ……ぁぁっ…♥♥♥ だめっ…♥♥♥ でるっ…♥♥♥ せーえきも……でるぅ…っ♥♥♥
「…あ♥ ミーファ様、そろそろ出ますよ♥」
「っ…。……精液……だよね…?」
「そうです♥ こうやって…手をお椀形にして、受け止めてあげてください♥」
「…こう…?」
「はい…♥ 受け止める時は、掌でうまく…」
ゃぅっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥♥♥♥♥
「わっ!? あっ…。…ぅゎ……」
「…♥ ソラ様…♥」
「……すごい…。こんなに出るんだ…」
「ミーファ様、先端と…裏側の中心線、撫でてみてください♥」
「うん…」
ふぁぁっ…♥♥♥ ぁっ…♥♥♥
「そうすると、ソラ様はいっぱい出してくれるんです♥」
「……なんか………可愛い、かも…。これ…♥」
「わかります♥ 一生懸命出してる、という風に感じますよね♥」
「うん…♥ ソラちゃんそのものみたい…♥」
はっ……♥ ……はぁ……♥
「あっ…♥」
「そうやって、ぐりぐり押し当ててくる時が、出尽くしたサインなんです♥」
「エッチだなぁ…ソラちゃん♥」
「その時に、こねてあげると可愛い表情をしてくれますよ♥」
「本当? …こんな感じかな…」
ふにゃぁっ…♥
「…これ?♥」
「はい♥」
「すごい…♥ ソラちゃん、こんな顔するんだ…♥」
はぅぅ…♥
「あ。これ…どうするの?」
「私が飲みます♥ …失礼します♥」
「え…。わっ」
「んっ…♥ …ごくっ…♥ こくん……♥ こくっ…♥ ちゅるっ…♥ ……ちゅぅ…♥」
「ユニさ…ん…」
「…はふ…♥ ぺろっ…♥ ぺろ…ぺろ……♥ ちろちろ…♥ ちゅ…♥」
「ちょ…。く、くすぐったいっ…」
「あっ…ごめんなさい♥ ありがとうございます♥」
………♥
「さぁ、御二人が戻ってくる前に、後片付けをしてしまいましょう♥」
「う、うんっ」
「あ、私が全部やりますので、ミーファ様は終わるまでこねていてください♥」
「ぇ…。あ…、はい…」
「…♥ ソラ様…♥」
「……ソラちゃん…♥」
…おねえちゃん……♥
……………
………
…
「………」
「…ユニさん、まだ起きてる?」
「…はい」
「よかった」
「眠れないのですか?」
「うん」
「…ソラ様のこと、ですか?」
「……うん」
「ソラ様が、何故ミーファ様に恋をしたか…ですか?」
「顔に書いてある?」
「見えなくても、分かります」
「あははっ。確かに、見えないね」
「……全部までは、分かりませんが…」
「うん」
「勘付いている点は、いくつか…」
「確定している点は、ひとつあります」
「確定している方だけ、教えてもらってもいい?」
「御自分では、分かりませんか?」
「勘付きさえないよ」
「…先程の、です」
「ん?」
「ソラ様のことを叱った方…初めて見ました」
「え?」
「それも、嫌われることも厭わない叱り方…」
「…誰も叱ったこと、ないの?」
「ありません。短所すら、愛おしいと感じます」
「………」
「以前にも、叱ったことは?」
「…村にいた頃、ごく稀に…」
「ソラちゃん、良い子だからさ。滅多に無いけれど…」
「自分のおもちゃを、我慢してすぐ人に貸しちゃうことと…」
「あと、怪我しても教えてくれなかったことかな。叱ったの」
「…私には、『優しい子』としか…思えません」
「羨ましいです。ミーファ様にしか見えない…ソラ様の何か」
「きっと…一生、私には見えないものです」
「だから、ソラ様にとってミーファ様は、『特別』なんですね…」
「………」
「…ミーファ様」
「分かってる」
「…許嫁、でしょ? ソラちゃんの」
「はい」
「そして、私の親友」
「そうです」
「…もしかしたら、恋のライバル」
「その通りです」
「…ありがとう。知れて、良かった」
「私もです。ありがとうございます」
「………」
「………」
「…知らなかったなぁ」
「…知りませんでした」
「あの子の、そんな一面」
……………
………
…
「良いお湯でしたね」
火照った身体が落ち着いていく心地良さを感じながら、ユニちゃんの言葉に同意する。
前はゆっくり浸かることが出来なかったけれど、今回は存分に温泉を楽しめた。
身体もぽかぽか、心もぽかぽか。旅の疲れなんてどこへやら。
「二人のお薦めなだけはあるね。気持ち良かった」
おねえちゃんも満足みたい。よかった。
「ふぅ…」
溜息をひとつ、座布団に腰を下ろすおねえちゃん。
…隣の部屋の皆は、もう温泉に入ったのかな?
あーちゃんと、メディちゃん、うーちゃん、サキュさんに、リムさん。
こっちの部屋は、今入れ違いでももちゃんとドラちゃんが入りに行ってる。
…ここの温泉、結構温度高めだけど…メディちゃん、大丈夫かな…。
熱いの、全般的に苦手みたいだけれど…。
「………」
……おねえちゃんの横に、ちょこんっ。
「ん…。……ふふっ…」
………あっ…。撫でてくれた…。やったっ。
「ミーファ様、一人占めは駄目ですよ」
ユニちゃんも、隣に座って…なでなで。
私もお返しに、おねえちゃんをなでなで。ユニちゃんもなでなで。
「…ソラ様…♥」
ユニちゃん、とっても気持ち良さそう。
見ている方も幸せを感じちゃうような笑顔。
私も思わず、笑顔になる。
幸せな時間…。
「……よいしょ」
空いた手を伸ばし…机の上のお酒と盃を、自身に寄せるおねえちゃん。
温泉に入る前に、おねえちゃんが宿の人に注文していたもの。
「じゃあ、ごめん。一人でいただきます」
「あ、お酌を…」
「いいよ。ありがと」
ユニちゃんの申し出にお礼を言いつつ…手酌でお酒を注ぐ。
「…んっ……」
くいっ、と…一飲み。
「…っふぅ」
そして、一息。
…すごく新鮮。
おねえちゃんがお酒を飲んでる姿、はじめて見た。
年齢的に、飲んでいてもおかしくはないけれど…意外。
……でも、かっこいい…。
なんていうか……大人、って感じがする。お酒が分かる、大人の女性。
微笑んだ表情ではあるけれど、どこか憂いを感じる様な…どう言えばいいかな…。
………どき、ってする…雰囲気を漂わせていて……。
「………」
「……あのさ」
誰とも目を会わせず、前を見たまま話すおねえちゃん。
「私、今酔ってるから…変なこと言ったら、ごめんね」
…え? もう? 一口で?
「…飲み過ぎないでくださいね、ミーファ様」
「うん…」
うん、飲み過ぎは駄目。明日も早いし。
おねえちゃんなら、そういう心配はいらないとは思うけれど…。
「………」
「………」
「………ソラちゃんってさ」
私? なんだろう?
「誰が一番好きなの?」
……………え。
「ユニさん?」
…ほんの少し、振り向く。
……目が合って、にこっ…と微笑みを返してくれる、ユニちゃん。
「それとも…ももさん、だっけ。あと、ドラちゃん?」
手に持った盃を、僅かに揺らしながら…おねえちゃんは言葉を続ける。
「…ソラちゃん」
「理由は何でもいいから、さ…」
「料理が美味しいとか…、美人だとか…、性格が優しいとか…」
「…床上手だから、でもいいんだから…」
「誰か一人に、決めてあげなよ」
……えっ、と……。
なんだろう、これ。いきなり、なんだろう。
おねえちゃん、本当に酔っちゃったのかな…?
言っている事は分かるけれど、突然過ぎて、よく分からない。
どんな思いがあって、おねえちゃんはこのお話をしているんだろう。
それも、ふたりきりじゃなくて…ユニちゃんの前で。
「…ユニさんの料理は、美味しい?」
…頷く。
「ユニさんのこと、綺麗だって思う?」
頷く。
「ユニさん、優しいな…って感じる?」
頷く。
「ユニさんは…夜、ソラちゃんのこと、気持ち良くしてくれる?」
……………頷く。
「なら、ユニさんと結婚するのは?」
……………。
「………」
「…ソラちゃん。ここ、おいで」
おねえちゃんが、胡坐にした足を叩いて…私を呼ぶ。
…招かれるままに……膝の上へ、ちょこん。
「…うん。相変わらず、良い顎乗せ場」
顎を私の頭の上に乗せるおねえちゃん。村でもよくされていた。
「………ソラちゃん」
「今回の旅…、リムさんの身体を治すのが目的であって…」
「ソラちゃんの身体は…治さないんだよね」
…頷く…と顎が擦ってしまうので、声でお返事。
「…考えてたんだ。ずっと。なんでかな、って」
「……んっ…」
一口飲んで……わずかな沈黙の後……続きの言葉。
「……治す、っていう考えが、そもそも間違いで…」
「ソラちゃんは、自分の身体を否定していない」
「…否定しなくなった、の方かな…。そこは分からないや」
「その身体でも、皆が認めてくれる…って思っているから」
「偉いと思う。そうやって、自分の疑問を一人で解決すること…」
「…村であったことも含めて、そういう考えができること…」
「大人だって、そうそう出来ない」
……………。
「………」
「…もうひとつ」
「もうひとつだけ、大人になってみない? ソラちゃん」
大人になる…。
よく聞く言葉。私が望むもの。
でも、それは具体的に何なのかと訊かれると…答えられない。
簡単なようで、その実ものすごく難しい言葉。
「大人はね…」
「辛いことを乗り越えて、本当の幸せを掴む人」
「ソラちゃんは、それで言えば、もうだいぶ大人に近付いてる」
「私より、大人だと思う」
そんなこと…。
「…きっと、これが最後」
「最後の辛いことだよ、ソラちゃん」
……………。
「…ユニさんを見てごらん」
…促されるまま…ユニちゃんの方を見る。
………目に飛び込んでくるのは……いつもと変わらない…ユニちゃんの笑顔…。
「………あの人が、大人」
「ももさんも。ドラちゃんも」
…大人……。
「………」
……………。
「…ソラちゃん」
「私の勘違いだったら、笑って」
勘違い…?
「……………私のこと、さ」
「好き?」
っ…!?
「………」
……………。
「………」
……………。
「………」
…………………小さく……答えを返した…。
「…そっか」
……………。
………全部……見通されてたんだ…。
おねえちゃんは、私のことを何でも分かってくれる。
それがすごく嬉しくて、それにいつも甘えていた。
でも…。今のこの気持ちが、嬉しさかと問われたら…。
「…ユニさん」
「はい」
「ソラちゃん、私のことも、好きだって」
「その様ですね」
「うん」
……………。
「………」
「……おねえちゃんは、さ」
「ソラちゃんの、一番がいい」
えっ…。
「ソラちゃん、エッチなこと、大好きでしょ」
…ぇ…?
「…してあげるからさ。一番にして。私のこと」
お、おねえちゃん…?
「………ほら」
あっ。
「これでしょ? この膨らんでるところ。ソラちゃんのオチンチン」
やっ…。
「…これで、しようよ。私と」
やだっ…。やめて…。おねえちゃん、やめてっ…!
「ほら…」
嫌っ! やだ…! おねえちゃん…っ!!
「私と……セックス」
いやだっ…!!!!
「………」
……………。
「……誰かが、いずれこうなるかもしれない」
「その前に、答えを出してあげようよ」
「決めることで、誰かを悲しませてしまうんじゃない…」
「決めることで、誰かを幸せにしてあげられるの」
……………。
「ソラちゃん」
「ソラちゃんは……誰かを幸せにできるの…」
「その誰かの幸せが…ソラちゃんの幸せなの…」
「そして…」
「ソラちゃんの幸せが………ソラちゃんを好きな人達の…幸せなの…」
………幸せ…。
私の…。皆の……幸せ…。
「………」
……………。
「………」
……………。
「………」
……………。
「………ソラちゃん、ちょっとごめんね」
…脇から持ち上げられ……元居た場所に私を戻し、立ち上がるおねえちゃん。
そして、廊下へ出る襖の前まで歩み………手を掛け、立ち止まる。
「…ソラちゃん」
「意地悪して、ごめんね」
……………。
「……ソラちゃんの気持ち…さ」
「この旅が終わったら、ちゃんと聞かせて」
「私も、真剣に考えるから」
「…だから、ごめん」
「偉そうなこと言ったけれど…」
「その時までは……答えを出すの、待っていてもらえないかな」
………それ…って……。
「………」
「……ちょっと、散歩してくる」
そう言って、襖をわずかに開いたところで…。
「ミーファ様」
…ユニちゃんの呼び掛けに……おねえちゃんが振り返る。
「……ありがとうございます…」
「…ううん。ソラちゃんのこと、お願い」
ぽつりと呟き…部屋を出ようとするおねえちゃん。
…不意に。
「いいえ。それはミーファ様も一緒でないといけません」
「えっ?」
その手を掴む、ユニちゃん。
「ユニさん…?」
「ソラ様、こちらに身体を向けていただけますか?」
…言われた通りに…廊下へ出る襖側へ、身体を向ける。
ユニちゃんは、狼狽するおねえちゃんの手を引きながら……私の前で、膝を下ろした。
「ちょっと、ユニさんっ…」
「ミーファ様」
微笑みを崩さないまま…語り掛ける。
「最後まで、慰めてあげてください」
「慰め……って…」
「先程のようではなく…、普段の、ソラ様に対する感情で…」
「ちゃんと伝えてあげてください。今のミーファ様の気持ちを…ソラ様に」
「………」
……おねえちゃんが、一瞬、私の方に目をやる。
思わず、どきっ…と身が竦む。
「…ユニさん」
「はい」
「どんな考え…?」
「ソラ様の幸せを、自分の幸せと感じる方を…もう一人増やしたいと思いまして」
「………」
「…私は、ミーファ様を親友として…」
「そして、ライバルとしてお付き合いしたいんです」
「…勝つ気、満々なんだね」
「はい。私はソラ様の許嫁ですから」
………? どういうこと…?
「…わかった。でも、私さ…」
「不安ですか?」
「それも少しあるけど…。……したこと、なくて」
「難しいことではありません。一緒にしましょう」
そう言って…ユニちゃんが、浴衣の中の…私の下着に手を掛ける。
突然のことに、びっくりして小さな叫び声が出る。
「ソラ様。明日も早いので、今夜は1回だけにしましょう」
「私と…ミーファ様で、ソラ様のを…手で御奉仕させて頂きます」
え? えっ?
ユニちゃんと……おねーちゃんの、手で…?
「…よろしいですか? ミーファ様」
「うん。…もう、覚悟決めた」
「では…失礼します」
するりと…膝元まで下着を下げるユニちゃん。
まだ状況が飲み込めていない私は、足を閉じて、わずかばかりの抵抗。
「…ソラ様♥ 足を開いて頂けませんか?♥」
ぁぅ…。
……………うぅ…。
「…♥ もうこんなになって…♥」
「うわ…」
…見られてる…。
ユニちゃんだけじゃなくて……おねえちゃんにも…。
「……剥けてないけど、これって、危ないんじゃなかったっけ…?」
「簡単に剥けますよ♥ ほら…♥」
ひゃんっ!?
「…ね♥」
「う、うん…。ほんとだ…」
はぅん…。…オチンチン……見られてる…。
おねえちゃんの目の前で…すごい勃起させちゃってる……。
気持ち悪いって、思われないかな…。変な臭い、しないかな…。
どうしよう…。ドキドキするよぉ…。
「さぁ、ミーファ様♥」
「……ソラちゃん…」
あっ…。きゃうっ…!
「…ぁ…。結構、あったかい…」
「そうなんです♥ 可愛いでしょう♥」
「……うん…♥」
おねえちゃんの…手……。
あの日以来……何度も夢に見た……おねえちゃんの手…。
私の…オチンチン、握って……っ。
「ミーファ様…、私の手と握手して、上下に擦りましょう♥」
「握手って…こう?」
「はい♥ そのまま、包み込むようにして上下に…♥」
うそ…。うそっ…。夢みたい…。
おねえちゃんが……私のを…きもちよくしてくれてる…。
夢の中のおねえちゃんは、舐めたり、おっぱいを押し付けたり、
おまたで擦ったり、ナカに入れたりしてくれたけれど…。
そのどれよりも…全然、今のこれのほうがきもちいい…っ。
あぁっ…。おねえちゃんっ…♥
「わ…。なにか、いっぱい出てきた…」
「愛液です♥ ソラ様が感じている証拠ですよ♥」
「愛液…っていうんだ…。…へぇ…」
おつゆが…おねえちゃんの手にまで、垂れて…。
私のおつゆで、どんどんおねえちゃんの手が汚れていく…。
私が…おねえちゃんを…エッチに染め上げていってる…。
私……おねえちゃんと……エッチなこと……。
「…ぁ」
「どうなさいました?」
「産毛…」
「え…? ……まぁ…♥」
胸がっ…。胸が破裂しそう…っ。
おねえちゃん。おねえちゃん。おねえちゃんっ。
ごめんなさいっ。エッチで、ごめんなさいっ。
おねえちゃんでオナニーして、ごめんなさいっ。
おねえちゃんにエッチなこと期待して、ごめんなさいっ。
でも……でもっ…。
今だけは……エッチでいさせて…っ♥
「……すごいニオイ…」
「えぇ…♥」
「香水…、ムスクを、濃くしたような…」
「男性の香り、ということですね♥ でも、ほのかに甘い香りも混ざっているんですよ♥」
「……あ、ほんとだ…。花系の…」
「これ、ソラ様の体臭なんです♥ 不思議なことですが…♥」
「え? じゃあ、これ…汗の匂いなの?」
くちゅ…くちゅ…って、オチンチンがおつゆで滑る音…。
だめ…。興奮しちゃう。もっとエッチなこと…したくなっちゃう。
身体と頭が一致してない。思ってもいないことを、身体がしちゃう。
勝手に……全部…。
「…え…。ぁ…」
「あ…♥ …ソラ様、我慢出来ませんか…?♥」
くりとりすっ…♥
きもちいい…。こりこりするの、すきっ…。
こうすると……すぐにいけるから…っ…。
すきっ……すきぃ…♥
「ゎ……」
「…ミーファ様♥」
「あっ。え? あ、ご、ごめん。何?」
「ソラ様の中……ここに、指…挿れてあげてください…♥」
「え…。で、でも…」
「さぁ…♥」
「………う…うん……」
こりこり、こりこり…♥ こりこ……ひゃああぁぁっ!?♥♥♥♥♥
「うわっ、キツイ…。さきっぽしか…」
「え? さすがにそんな筈は………あっ」
「ん…? わっ!?」
っっ…♥♥♥♥♥ ぁぁ…っ……♥♥♥
「ちょっ…。ソラちゃん、ストップ! ストップ!」
「構いません、ミーファ様。続けましょう♥」
「いや、でもこれ、旅館の人に怒られるんじゃ…」
「私が粗相したことにしておきます。ももさん達は気付くでしょうけれど…」
「………本気で?」
「はい♥」
ぅぁ……ぁぁっ…♥♥♥ だめっ…♥♥♥ でるっ…♥♥♥ せーえきも……でるぅ…っ♥♥♥
「…あ♥ ミーファ様、そろそろ出ますよ♥」
「っ…。……精液……だよね…?」
「そうです♥ こうやって…手をお椀形にして、受け止めてあげてください♥」
「…こう…?」
「はい…♥ 受け止める時は、掌でうまく…」
ゃぅっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥♥♥♥♥
「わっ!? あっ…。…ぅゎ……」
「…♥ ソラ様…♥」
「……すごい…。こんなに出るんだ…」
「ミーファ様、先端と…裏側の中心線、撫でてみてください♥」
「うん…」
ふぁぁっ…♥♥♥ ぁっ…♥♥♥
「そうすると、ソラ様はいっぱい出してくれるんです♥」
「……なんか………可愛い、かも…。これ…♥」
「わかります♥ 一生懸命出してる、という風に感じますよね♥」
「うん…♥ ソラちゃんそのものみたい…♥」
はっ……♥ ……はぁ……♥
「あっ…♥」
「そうやって、ぐりぐり押し当ててくる時が、出尽くしたサインなんです♥」
「エッチだなぁ…ソラちゃん♥」
「その時に、こねてあげると可愛い表情をしてくれますよ♥」
「本当? …こんな感じかな…」
ふにゃぁっ…♥
「…これ?♥」
「はい♥」
「すごい…♥ ソラちゃん、こんな顔するんだ…♥」
はぅぅ…♥
「あ。これ…どうするの?」
「私が飲みます♥ …失礼します♥」
「え…。わっ」
「んっ…♥ …ごくっ…♥ こくん……♥ こくっ…♥ ちゅるっ…♥ ……ちゅぅ…♥」
「ユニさ…ん…」
「…はふ…♥ ぺろっ…♥ ぺろ…ぺろ……♥ ちろちろ…♥ ちゅ…♥」
「ちょ…。く、くすぐったいっ…」
「あっ…ごめんなさい♥ ありがとうございます♥」
………♥
「さぁ、御二人が戻ってくる前に、後片付けをしてしまいましょう♥」
「う、うんっ」
「あ、私が全部やりますので、ミーファ様は終わるまでこねていてください♥」
「ぇ…。あ…、はい…」
「…♥ ソラ様…♥」
「……ソラちゃん…♥」
…おねえちゃん……♥
……………
………
…
「………」
「…ユニさん、まだ起きてる?」
「…はい」
「よかった」
「眠れないのですか?」
「うん」
「…ソラ様のこと、ですか?」
「……うん」
「ソラ様が、何故ミーファ様に恋をしたか…ですか?」
「顔に書いてある?」
「見えなくても、分かります」
「あははっ。確かに、見えないね」
「……全部までは、分かりませんが…」
「うん」
「勘付いている点は、いくつか…」
「確定している点は、ひとつあります」
「確定している方だけ、教えてもらってもいい?」
「御自分では、分かりませんか?」
「勘付きさえないよ」
「…先程の、です」
「ん?」
「ソラ様のことを叱った方…初めて見ました」
「え?」
「それも、嫌われることも厭わない叱り方…」
「…誰も叱ったこと、ないの?」
「ありません。短所すら、愛おしいと感じます」
「………」
「以前にも、叱ったことは?」
「…村にいた頃、ごく稀に…」
「ソラちゃん、良い子だからさ。滅多に無いけれど…」
「自分のおもちゃを、我慢してすぐ人に貸しちゃうことと…」
「あと、怪我しても教えてくれなかったことかな。叱ったの」
「…私には、『優しい子』としか…思えません」
「羨ましいです。ミーファ様にしか見えない…ソラ様の何か」
「きっと…一生、私には見えないものです」
「だから、ソラ様にとってミーファ様は、『特別』なんですね…」
「………」
「…ミーファ様」
「分かってる」
「…許嫁、でしょ? ソラちゃんの」
「はい」
「そして、私の親友」
「そうです」
「…もしかしたら、恋のライバル」
「その通りです」
「…ありがとう。知れて、良かった」
「私もです。ありがとうございます」
「………」
「………」
「…知らなかったなぁ」
「…知りませんでした」
「あの子の、そんな一面」
……………
………
…
12/04/11 00:03更新 / コジコジ
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