戻る / 目次 / 次へ |
廃屋の主 |
今日は久しぶりに町でノンビリ過ごす日。
お金の心配は要らないのに。 少年は自分の分は自分で何とかすると言っている。 だから今は足りない分だけ私に借りている形になっている。 でも、理想と現実は違う。 真面目に数えたら、少年は借金しかしていない。 ちょっと少年の将来が心配。 今日は眼鏡ラージマウスとラージマウスが何かしているみたい。 元魔法使いの使い魔と元冒険者。 特殊な条件で生まれたはぐれラージマウス同士、何か気が合うみたい。 難しい事を話していたので良くわからない。 金槌リザードマンとリザードマンの二人も何かしているみたい。 何でも豚を狩りにいくとか。 豚泥棒? よくわからないけど、楽しそうだった。 少年も今日はお仕事。 泊まっている宿屋のお手伝い。 お客さんが増えてくるからその時に手伝って欲しい。 だから今はその練習をしているみたい。 私は何もすることがなくて、町を歩いている。 少年と同じ位の年の子供が走り回っている。 なぜかインプも混じっていたけど、きっと気のせい。 人気のない場所へ歩いていくと、人の気配のない家があった。 人の気配はない。 でも何かいる。 私は中に入ってみた。 家の中には誰もいない。 床には埃が積もっていて、天井の隅にはクモの巣が張っている。 廃屋。 でも何かの気配がする。 天井から。 何かが落ちてきた。 「ふぎゃっ」 だから床にたたきつけた。 床の埃が舞い上がる。 手足がムシみたいな黒いやつ。 匂いは魔物。 「なにするんだー!」 踏む。 「いたいいたいいたい!」 話を聞くと、彼女は魔物みたい。 頭から生えた触角が邪魔なので引き抜こうとしたら、泣いて止められた。 「なぜ人を襲うのかって? 親分が言ったから!」 首をかしげる。 どうもこの廃屋、魔物だらけみたい。 ちょっと色々探してみよう。 「ふふ。いーのかい? 私はしてんのーのなかでももっともさいじゃく」 掴んで投げる。 「きゃ〜お」 背中の羽を動かしてどこかに飛んでいった。 ドアを開けると、血色の悪い誰かがベッドで寝ていた。 寝ているところを起こすのも悪いので放置。 別の部屋ではアラクネが巣を作っていた。 大きな白いハンモックのようでもあり、繭を作っているようでもあり。 「なに? ここは私の部屋よ。どこか行きなさい」 この家は魔物の家? 「別に。開いている場所があったから住んでいる。それだけよ」 別の部屋はまだ空っぽ。 タンスが置いてあるので覗いてみる。 「じゃじゃーん! つ〜かま〜えた〜!」 引きずり込まれた。 赤いカーペットと白い壁と白い天井の部屋。 ここはどこだろう。 「ありゃりゃ? 女の子〜?」 誰だろうこの子は。 「ま、いっかー。あそぼあそぼー」 何して遊ぶ? 「えっちごっこ!」 外はドコだろう。 「駄目だよー。ここは私の世界。私の居かなく出られないんだから」 壁があるなら。 「無駄無駄の」 壊して進む。 「むだーって、あれぇ!?」 壊した先はさっきの部屋。 振り向くとタンスの引き出しが壊れている。 「あぅー。壊されちゃった」 その引き出しからさきほどの女の子が顔を出している。 「直してー」 他に何かあるかな。 壷があった。 中身は何かかな。 「じゃじゃーん! つっかまえったっと!」 引きずり込まれた。 そして外に出た。 さっきと同じ様に、壊した壁の向こう側はさっきの部屋。 「なんで? どして?」 「あー、つぼっちゃんも駄目だったんだー」 「たんすも駄目だったの? というか、それなら教えてって」 「えー。壷の中にいたんじゃ無理でしょ」 「それもそうかっ」 よくわからないので、タンスの中に壷を放り込んでおいた。 この家は本当に魔物が多い。 家の中にたくさんの魔物の魔力があるからかな。 気分が悪くなるくらい、魔力が漂ってる。 見る場所全部見て回ったので、最後に寝ている誰かの部屋に入る。 この魔力だから、この誰かも魔物なのかな。 そう思って近付くと。 首に刃物が当てられた。 「悪いが、それ以上近付くな。首を落とすぞ」 剣の主を見る。 彼女は黒いぼろぼろの布を纏っている。 その目は赤くて。 死神の様だと思った。 |
13/01/24 23:37 るーじ
|