ふつうの冒険者の旅
| 魔物。それは危険な存在。 魔物。それは人類の天敵。 魔物。それは魔王の尖兵。 今日も教会の訓戒が響く。 昔からずっと聞いてきた正しい事。 いつかはああなるんだと、目を輝かせていた。 でもずっと不思議だったことが一つあった。 だから旅に出る事にした。 手には短剣。肩には荷袋。 剣技の心得もあるし、計算も読み書きも出来る。 でもそれを鼻で笑う人が居た。 酒瓶片手に変なポーズをしていた爺さんだった。 爺さんは何でも知っていた。 毛皮のなめし方とか、ナイフの使い方とか、色々知っていた。 爺さんの真似をすると驚くので、それが嬉しくて真似をしていた。 気の合う友達みたいに、二人して沢山笑った。 ある時、じいさんを脅かしてみようと思った。 そっと息を殺して、静かに静かに後ろに立った。 後ろに居てもじいさんは気づいていない。 それが面白くて、「わっ!」と脅かしてみた。 あの「事件」以来、俺は本格的に弟子入りすることになった。 お前には才能がある。そういったじいさんは嬉しそうで、悲しそうだった。 ある日、じいさんがいなくなった。 「影無し」の名を返上しに行ったんだとすぐに気づいた。 昔一度だけ聞いたことがある。 じいさんは普通の農夫を殺したことがあったんだそうだ。 そしたらホルスタインって魔物に見つかってさ、襲い掛かられたんだと。 泣きながら何度も襲ってくるそいつを、ついじいさんは殺しちまった。 仕事以外で誰かを殺したのはそん時が初めてなんだと。 どうしようかと悩んでいると、じいさんは気づいたんだ。 その家には産まれたばかりの赤ん坊がいた。 そしてその日がじいさんの最後の仕事になった。 風の噂で聞いたことがある、という件で商人は語った。 身寄りの無い魔物の子供を育て続けた偏屈な男がある村に住んでいて。 今度その魔物が人間の男との結婚式を挙げるんだと。 伝説の暗殺者は、もういなくなったんだと知った。 |
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