連載小説
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みっかめ 初デート
 アリスとの生活も短いながらも色々ありすぎて、もう多少のことでは驚かなくなった。それでもハプニング(ラッキースケベ的な)は多々あり、そしてアリス本人が全くエッチなことを意識していない分、なおさらたちが悪かった。
 いちいち突っ込みをいれていた俺も悪いには悪いのだが……。

 会社には行かなくても良くなったものの、俺はコンビニで買ってきた就職やバイトの雑誌を読んでいる。ハ〇ワ等のエントリーシートや保険等の手続きはあのサキュバスさんの知り合いがやってくれているらしい。本当にありがたい。
 そのかわりアリスちゃんのお世話をしっかりね。といつの間にか投函されていた手紙に書いてあった。キスマークがあちこちにあったのはキニシナイでおこう。アリスに見つかるとなんかやばい気がするし……。

 さて、どんな仕事があるだろうか。

〇笑顔が絶えない職場です。
 製造業のラインに一日中立ちっぱなしの仕事で笑顔が絶えないっておかしくね? 逆に怖いぞ。

〇みんなでわいわい楽しくやってます。 経験者、未経験者問いません。ネットカフェの会計及び雑務。
 あそこって基本的に1人か2人くらいしか見かけないのに、わいわい楽しくっておかしい……。

〇元気な男の人募集中、未経験者大歓迎!! 女性ばかりの職場なので切実に募集してます。お願いします。新人には専属のスタッフ(女性)が親切丁寧に教えます。ホルミル牧場で牛の乳搾り、かわいい牛さん達のお世話です。
 いい感じだが、ちょっと遠いなー残念。

 とりあえず、求人雑誌は閉じた。まだ焦る時間ではない。
 アリスはすっかり俺の膝の上が定位置になってしまった。一緒に寝たり。お風呂に入ったり。相変わらずご飯の食べさせ合いをしたり……、なんだこのノロケ報告は……。
 相手は魔物娘といっても子どもなんだし、アリスのご両親は色々と言っていたが、親戚の子どもを預かっていると思えば大丈夫だよな! 切り替えていこう。


 ただ、問題なのは俺がさっきコンビニに出かけたり夕方、スーパーに食料品を買いに出かける時だった。

「おにいちゃん、アリスをひとりにしないで……」
 短い間とはいえ、ずっと俺とくっついていたせいか、アリスは一人になるのをすごく怖がるようになってしまった。
 なんとか説明をして、用事をすばやく終わらせて戻ってきてみれば、泣きながらアリスが抱き着いてくる始末。時間にしてもほんの数十分、それでもアリスは俺に抱き着いて顔をこすりつけながら、
さびしかった。
ひとりは嫌。
という。

 俺はアリスの頭に手を乗せてから、泣き止むまで抱きしめてあげた。アリスも小さな手を精一杯に伸ばしてぎゅっと抱き着いてくる。

「もう大丈夫か?」
「うん……ぐす…ありがとう。おにいちゃん」
 目を真っ赤にして、鼻をすすりながらアリスが言う。そんなことがあったのが少し前、今は落ち着いたのか俺の膝の上ですぅすぅと眠っている。こんな様子ならバイトなんて行けないな……。

 改めてアリスの寝顔を見る。幸せそうだ……。留守番をさせて一人にしてしまった。

 ひとりはいや……。

 胸が痛かった。こんな小さな子を泣かせるなんて、もうできないな……。
 アリスをそっと抱きしめる。
「くぅ……ん、ふふ…おにいちゃん…」
 やれやれどんな夢を見ているのやら……。
「好き……」
 ドキッとした。単なる寝言だ。
「だいすき」
 再び小さな口からこぼれる寝言……。


「俺もだ……」
 言ってから、ばっと自分の口を塞ぐ……。俺は今何を言った? 違う違う。そうじゃない。そうだ、親が子どものことを見るような感情だ。
 決して男女の好きではない。
 だって年が離れすぎている。それに相手は人間じゃない。人の精を吸って生きる俺とは別の世界の存在。
 今だって角があるじゃないか。
 しっぽがゆらゆら揺れているじゃないか。羽だって……。
 

 それがどうした?

 別の声が聞こえた。

「ん?……ふぁ…どうしたの、おにいちゃん」
「な、なんでもない」
 俺が動いたせいだろうか、アリスが起きてしまった。
 アリスの顔を見ることができない。
「ねえ、おにいちゃん変だよ」
「ごめん…」
 俺はアリスから逃げるように立ち上がろうとした。
「だめ」
「……」
 小さな手が俺の手に添えられる。
 それは震えていた。

「アリスね……。わかんないの、でもおにいちゃん……なんで泣いてるの?」
「へ?…」
 言われて初めて気が付いた。俺が泣いている? なんで?

「アリスね……。おにいちゃんに声をかけてもらったとき、すごくうれしかったの」
 ぽつりぽつりと語りだすアリス、いつもと雰囲気が違うし、声が震えている。

「誰もアリスを見てくれない。勇気をだして声をかけても、みんなアリスをさけるようにいなくなっちゃう」

 アリスがぱっと俺の顔を正面から見つめる。
 花が咲いたような笑顔だった。
「でもね! おにいちゃんにあえたの!!!」
 そして、そのままキスをされた。
「ん」
 触れるだけのキス。いたずらでされたことはあったが、こんな不意打ちはないだろう。
 俺は無言でまたアリスを抱きしめた。

「本当に好き、好きなの!!」
「ああ、ごめんな、さっきは一人にして」
「ううん、大丈夫だよ!」
「そっか」
「うん♪」
 なんとなく頬が高揚するのを感じる。アリスも顔が真っ赤だ。でも、嫌じゃない。 

「わかんなくなってた。このままじゃ俺、アリスちゃんにひどいことをしちゃいそうで、だから逃げようとした」
「ううん、おこってない」
「だって、怖いだろ。まだ会ったばかりなんだぞ俺たち」
「かんけーないよ……、こうして一緒に居てくれるだけでいいの」

 今度はアリスの小さな胸に抱きしめられる。悪魔の羽が俺を包む……。

「おにいちゃんはアリスを見つけてくれた。ひとりぼっちで泣いていたアリスをこうやって抱きしめてくれた」
 もう一度アリスが俺にキスをする。
「ん」
「逆だろ…」
 アリスの唇が離れると同時に今度は俺から口を塞ぐ。
「ん♪」
「……」


 くー……
 ぐー

「あ」
「く、あははは」
「もうおにいちゃん」
 お腹が鳴った。俺もアリスも、なんだか可笑しくなり二人して笑う。
 いかんいかん、変な空気なっていたが、お腹が鳴ったおかげでごまかせた。

「あはは、やっといつものおにいちゃんだねっ」
「さっきのは、その忘れろ」
「ふふ、二人だけのひみつー♪」
 ペロっと舌を出してまた笑いだすアリス。

 夕食を一緒に食べて、また一緒に風呂に入る。さっきのことを忘れるようにはしゃぎまくってしまった。
 お互いの体を洗い合う。アリスの生まれたままの姿は、あまり見ないようにしながら、それでも何が楽しいのか俺たちは、お互いきゃっきゃっとお湯をかけあったり……。
 結果、ちょっとのぼせ気味。


「さん」
「二」
「いち」
「「ゼロ!!」」
 ちゃんと十数えてから湯船から上がるとか、何年ぶりだろう。

「ちょっと、ぼーっとしちゃった」
「俺もだ……」
 バスタオルでアリスの長い髪をくしゃっと拭いてやる。角がひっかかって苦戦した。
 俺が屈んでアリスの番。
「えっと、おきゃくさーんかゆいところはありませんかー♪」
「んー……」
「ありませんかー」
「(ビクッ!)」
 いきなり耳元で言われてびっくりする俺の様子を楽しむアリス。
「よっと」
「きゃ」
 アリスの揺れるしっぽをそっとつかんでみる。ちょっとした仕返しだ。
「もうーおにいちゃんたらっ」
「ははっ」 
 
 ベッドで横になるとアリスと抱き合う。暖かい体温……。甘い香り。
 アリスもぐりぐりと顔を胸にこすりつけてくる。
「ぎゅー」
「ぐあっ」
「おにいちゃんくるしかった?」
「な、なんでもないちょっと理性が」
「??」
「そうだ。明日は一緒に出掛けよう」
「え、いいの!?」
「さっきサキュバスさんからの手紙があった。アリスちゃんの羽とかしっぽを隠せる薬をもらったんだ」
「わ♪ やったーー! でーと」
 再び抱き着いてくるアリス。

 デート。

 まさか、といいつつも今日はいつもと違う雰囲気のアリスを見てしまった。逆に俺もアリスになさけない姿を見せてしまった。アリスを置いて逃げようなどと二度と考えない。
 明日はその埋め合わせもかねて二人で精一杯楽しむ予定だ。なんかサキュバスさん達にうまいこと誘導されている気がしないでもないが……。ま、いーや。

「そろそろ寝るぞ」
「うん、おやすみおにいちゃん」
 頬に伝わるやわらかい感触。
「ん」
 お返しにアリスの前髪をよけてそこにキスしてやる。
「えへへ、おにいちゃん大胆だね」
「アリスにはかなわない……ん」
「ちゅ……」
「ん……」
「ん……おにい…ちゃ……」
「……ぷはっ…」
 それから、お互い小鳥のようにキスをし合った。まるで遊びの一つのように、笑顔のアリス。
 どちらからともなく抱きしめ合う。手もからめる……。
 それだけ、……たったそれだけのことだったが今までの行為とはなにもかもが違った。





「おはよーーー」
「はやいな」
 いつの間に眠っていたのか朝だった。
「だって、その…」
 もじもじしながらアリスが言う。顔が真っ赤だ。ちなみに俺もアリスの顔をまともに見れない。なんか俺も顔が熱くなってきた。
「はじめての、おにいちゃんとの…でーとだもん」
「う、お、おう」

 朝食を作って、食パンをいつものように食べさせ合って……。
 すでにこれに慣れている俺が怖い。しかし、アリスもめずらしく照れている。いつもだったら楽しそうに膝の上ではしゃいでいるので、かえって意識してしまう。

「なんかあついねー」
「そうだな、今日はあたたかくなりそうだ」
「うん……」
「おう…」
 最後の一口、あーん
「(ぱくっ♪)」
 たまらないという感じでアリスが口を動かしながら食べる。良かった。料理だけでも色々と覚えていて、アリスの笑顔を見ていて思った。

「食後に飲んでください。効果はぴったり夜の12時までです」
 シンデレラかよ!
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。これがサキュバスさんの薬だって」
「(ごくん)」



 ボンッ!!



「どう、おにいちゃん」
「ばっちり!」
 親指を立てて俺が言う。アリスはどこからどうみても、フツーの人間。ただ、金髪で青い瞳、きっと誰もが振り向く絵本から飛び出たような、超絶美少女。
 でも、どちらかというと、小悪魔スタイルのアリスのがいいな。見慣れてるし、そっちのが、そのかわいい。

「おにいちゃん?」
「うおっ」
「もしかして、見とれちゃった??」
 そのまま、ぽんっジャンプして俺に抱き着いてくるアリス。
「ま、まあ、かわいいなって」
「えへへへへーー」
 嬉しそうに顔を俺の胸にこすりつけてくる。いつも当たる角や体をまさぐるしっぽが無いのでなんか物足りないが、それでも顔が更に赤くなってくる。
「なでなでなで〜」
「うにゅぅ、もっとなでて〜」
 俺はごまかすようにたっぷりアリスの頭を撫でてあげた。
 さて、無事アリスも人間に化けることができたし……ん?

 はらり

 なんかメモ用紙が落ちてきたぞ。

 サキュバスおねーさんがお勧めする、らぶらぶでーとぷらん(はぁと)
 なんぞこれ…、二人で手を繋いでまず散歩しましょう。ウィンドーショッピングでアリスちゃんの服を買いましょう。それから景色の良い公園や遊園地に行くものおすすめです。夜は夜景の見える所でちょっと豪華なお食事をしてたっぷり精をつけましょう(←ここテストに出ます)
 ん? なんか雲行きが、てかテストってなんだよ!!

 あとは、この間渡したホテルでお互いの愛を確かめ合ってくださいね(はぁと)
※ちなみに私たちはあちこちのカメラでたのし(なんか消した後ある)……安全を確認してますのでご安心ください。おにーさんとアリスちゃんが職質になることはありませんので、たっぷりいちゃいちゃちゅっちゅ(わたしもいつか旦那をつかまえてぐへへ おい! 涎の跡があるぞ!!)しちゃってください。あとは勝手に爆発してね。あ、つまり精はアリスのちゃんの中でおにーさんの(ぐしゃ)

 俺はそのメモ用紙をゴミ箱に投げ入れた。
 途中からあのサキュバスさんの願望だろこれ!! なにが爆発だよ。

 てか、なんか完全に俺らの行動がつつぬけになっている。

 こわい。
 


「おにいちゃんとデート♪」
「ま、まあ買い物とか、ぶらぶらする程度だけど」
「んふふ、それでも一緒のおでかけ、うれしいっ」

 俺はこの時、気が付かなかった。アリスの元にもサキュバスさんからの手紙がこっそり届いていようとは……。

「れっつごー」
「なんか、すごく元気だね」
「うん」
 ぎゅっと腕が抱きしめられる。
 いつもの不思議の国のアリスの格好、でも改めて見ると一番アリスにそれが似合っていた。すれ違う人々も何か微笑ましい光景でも見るように通り過ぎていく。
 そんな目で見つめないでくれ。


 それからアリスに引っ張られるように一軒のお店に入った。

「これこれ! 一緒に食べよっ」
「ちょっと恥ずかしいぞ」
 いかにも女の子が好きそうなお洒落で甘い香りのただようカフェ。
 注文したのは、恋人限定、フルーツたっぷりクリームチョコパフェDX
「だいじょうぶだよー。あーん」
「あ、あーん」
 注文する時、すげー恥ずかしかった。

ったくあの店員

「えへへ、小さな彼女さんですね。だってーーわーい!!」
「笑いごとじゃない。ふつーは兄妹とかだろ」
「だってあの店員さん、魔物娘だったよ?」
「マジか?」
「うん、まじ、魔力でわかったの」
 全然わからないぞ、魔物娘さん達、いつの間にか人間社会に溶け込んでいるんだな。ま、それなら大丈夫か。
「おにいちゃんクリーム付いてる」

 ぺろっ
「な!」
「えへへ、おいしい♪」
 アリスの顔が近づいたかと思えば顔を舐められてしまった。

「きゃっ、かわいい」
「あの子おませさんねー」
 ああああ、前言撤回、店員さんは魔物娘かもしれないけど、客は違う。
「おいしかったね!」
「そうだな、なんか変わった味のフルーツだったけど」
「あ、おにいちゃん次あっちー」
「っと」
 どうもアリスのペースでどんどんすすんでいく。ま、デートなんてしたこと無いし、正直、この方が楽だし。
 楽しそうにはしゃぐアリスを見る。
 なにより本人が楽しんでくれているならそれでいいだろ。
 どうやら次は服のお店らしい。子どもから大人まで、ずらーっと並ぶ女性服。圧巻だった。そりゃ、こんな店には来たことがないし、……それにしてもすごいな…。
 お行儀よく、走ったりしないでさっそく服を見て回るアリス。
「気に入った服はあるか」
「んー、全部?」
「アリスちゃん、俺の財布には限界があるんだよ」
「なんちゃって、これがいい」
 ぶっ!!
 それ服じゃなくて下着です。アリスさん、見ると店員さんがくすくす笑っている。
「それはまだ早いんじゃないかなー」
「えー、サキュバスのおねーさん、あ」
 しまった。という感じで口を塞ぐアリス、なんか怪しい。
「そうだね。アリスには早かったかも……えへへ」
 ま、いいか。
「んー、こっちのピンクのと青どっちがいいかな」
「アリスさん、それスクール水着です」

 そんなこんなでデート(?)は続いていった。昼間であきらかに◯学生がこの時間帯にうろうろしているのはおかしいが、例のサキュバスさんが手を回してくれているのだろう。
 しかし、一般の方の視線は痛いぞ。

 昼食も夕食も流れで、あたかも用意されてたかのようにいい場所があった。個室で食べさせあいをしても気がつかれない。
 まあ、普段、家でやっているので、……いやいや、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。

「く、まただまされたのか」
「あはは、だってさっきはおにいちゃんが……」


 楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。気が付けばもう夕方で薄暗くなってきていた。
「あれ、もしかして眠たい?」

「ふぁ…ん、だいじょうぶ……」
 隣を見るとアリスがふらふらしていた。
 そっか、久々の外出だったし、あんなにはしゃいでいたし、無理もな
「おにいちゃん……ごめんなさい。やっぱりねむたい…」
「どっかで休む?」
 うんって頷いたと思ったらそのまま寝てしまった。




「こんばんわー」
 ん、ってパトカーかと思えば、あのサキュバスさんだった。
「びっくりしましたよ!」
 俺とアリスは後部座席に乗っている。決してタイーホされた訳ではない。
「どうでしたか、デートは楽しかったですか?」
「はい、ありがとうございました」
 アリスは完全に寝てしまっている。というか安全の為とはいえチャイルドシートに押し込まれて、ちょっと寝苦しそうだ。というかサキュバスさんのパトカーになんで着いてるんだよ!
「あらあら、アリスちゃんの寝顔を見てにやにやしちゃって……ふふっ」
「ちょ、違いますよ。というかちゃんと前見て運転してください」
 なんかこの人(というか魔物だが)には色々敵わない。


「着きましたよー」
 その瞬間、煙のようなモノが車内に………。
 俺は意識を失った。






「多少強引ではありましたが、アリスちゃんの精が心配です。あとはまあ、なんとかなるでしょう」
 サキュバスは微笑みつつもどこか羨ましそうにその場を静かに去った。
18/08/24 07:17更新 / ロボット4頭身
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やっと、やっとアリスちゃん更新です!
お待たせしました。

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