第二話 帰る宛なし
「ごちそうさまでした」
四つあった魚のうち二つを軽く平らげた娘は、そう言ってまた私に向かって頭を下げる。
私も自分の分の魚を食べ終えると、ため息を一つつく。
その場の感情にまかせて助けてしまったが、この娘は紛れもなく魔物だ。魔物を憎む人間ばかりのこの島では助からなかった方がまだましかもしれないし、これで私は裏切り者確定だ。
とりあえず、現在の状況を把握するところから始めると決め、不安げにこちらを伺う娘に向かって
「私はメルフィダ、メルで良い。お前の名前は?」
「イヴの名前はイヴです、イヴ よろしくお願いします。」
私の自己紹介に警戒をやや弱めたのかイヴと名乗った娘はまた私に頭を下げ、ふわりとほほえんでくる。
その美しさに一瞬だけ見とれたものの思い直り、質問を続ける。
「突然だが、どうして海辺に流れ着いたのだ?」
私のこの質問にイヴは少しだけ考えると、彼女の事情を語り出した。
「イヴの部族は決まった居住地を持たず世界各地を定期的に飛び回ります、イヴ達は昨晩は海を渡って北に向かう途中だったんですけど、突然海が荒れ出したので近くの島で休むことに決まりました。
お母さんとお父さん、お姉ちゃん、それに親戚の皆はすぐに島に着いたんですけれど一番子供のイヴは少し遅れて、そのせいで風に流されちゃったんです。
必死で皆の所に行こうとしたんですけどできなくて、気がついたら自分がどこに居るのかもわからなくなって、海に落ちて、」
「そのままこの島に流れ着いたのか。」
恐らく昨日の嵐だろう、魔物がまさか遭難するとは思っていなかったが、この幼さなら仕方がないのかもしれない。
「メルはどうしてこの島に?」
「………私は、私は…罪を犯したのだ。それがやってはならないことだとわかっていながら、他人の罪に荷担した。その咎で、この島に流された。」
償えるものではない大きな罪、多くの人を犠牲にしたし、そんなことをしておきながら最後には自分や親しい仲間の保身のためにそれまで従っていた者達も売り渡した。
結局、軍人としても貴族としても中途半端な愚か者。
他の貴族達がわたしを忌み嫌うのも当然のことだろう、だがそれでよかったのかもしれないとも思ってしまう自分が居る。
「イヴは、メルはそんなに悪い人じゃないと思いますよ。だって、メルはイヴを助けてくれました。」
私の思いを見透かしたかのように、イヴは私の顔を見上げてそう言った。
「……そんなものは思い込みだ。」
純粋なその目を見つめ返すことができず、私はそう言い棄てるとふてくされるように眠りについた。
イヴを拾った次の朝、私はイヴに家から出るなと言っておいたのだが、彼女はそれを完全に無視して私の後を付いてきた。
普通に歩けるほど回復したことを喜んでやるより前に、新しい疑問が湧いてきた。
「イヴ、歩けるのは見て分かるがもう飛ぶこともできるのか?」
「はい、イヴは怪我をしたわけではないから飛ぶのもできます。ほら。」
返事とともに軽く地を蹴り、暗い藍色をした翼を羽ばたかせてその場に滞空する。
「止せ、他の者に見られるのはまずい。」
慌てて止めてから、彼女を隠すように抱き寄せつつ周囲を伺う。
誰も見ていないのを確認して、すぐに彼女から離れる、少々イヴは顔を赤らめているが、恐らく機嫌を損ねてしまったのだろう。
「すまん。だが……この辺りにいる私以外の人間は魔物を酷く嫌っている。危害を加えられる恐れもあるから、見つかるような行動は慎んでくれ。」
「分かりました。」
「それより……飛ぶことが出来るのなら家族の元に戻ったらどうだ? 家族もお前のことを探しているだろう。」
私のその言葉に対して、イヴはなぜか意味が分かっていないような表情を見せて首をかしげる。
こんな幼い少女が親からはぐれて迷子になっているのだ、親が心配しないわけがないと思っていたのだが、彼女にはなぜかそれが分からないようだ。
しかしおぼろげに意味を理解したらしいイヴの口から帰ってきた言葉は、そちらの方が当たり前というものだった。
「自分がどこに居るのかもわからないのに、嵐の中ではぐれた家族をどう探すんですか?」
その言葉でようやく、帰らないのではなく帰れないことを理解出来たのとともに、なぜそこまで平然としていられるのかという疑問も浮かんでいた。
親元から離された子供というものをそこまで多く見聞きしてきたわけではないが、私の知る範囲ではどれも不安と困惑が表情からうかがえた。
しかしイヴにはそれがない、私は魔物に詳しくないのだが、彼女らにとってはそれが普通なのだろうか。
「それにイヴにはメルがいますから。どんなことになっても、メルが一緒なら平気です。」
少し顔を赤らめながらしかし迷いのない笑顔でイヴはそう言いきった。
それは信頼なのだろうか、それとも他の何かなのだろうか、私にはよく分からないが、とても暖かいものだとは感じた。
「ところでメルは何をするのですか?」
「食事の用意だ、魚を捕って、それと森の中の果物だな、味はさほど良いものではないが食べられる果物の生る木は以前に見つけている。」
イヴにそう答えつつ森に分け入っていく、集落からは外れたところにあるのであまり人間は来ないが、見られると困るので彼女を背中に隠すようにして進んでいく。
進んでいく途中で、私たちの他にも何かが移動している音に気付く。
相手も私たちに気付いたようで、こちらに向かって近づいてくる。
即座にイヴをまた抱きかかえ、茂みの中に身を隠すと接近してきていた足音とは別の足音も近づいてくる。
「どうした?」
「いや、何か足音が二つ聞こえた気がして……」
「…片方があの裏切り者だろう。もう片方がクルツの連中のどれかなら、脱出のチャンスか。」
「そういうことだ。船を奪ってしまえば……」
姿を見せたのは私も顔見知りの貴族の子弟。ソクト家の三男と、ボーヴェ家の四男だっただろうか。
すぐそばに隠れた私たちには気付かず、まだ諦める気もないらしい無謀な脱出計画を公然と話している。
クルツとは、現在この島を私を介して監視している元王国領土内の自治領のことだ、二年前の戦争で活躍が評され正式な自治権の獲得といくつかの島々が割譲され、その中にこの島も含まれている。
私に色々よこした男もそこの住人で、比較的重要な役職に就く人間だったはずだ。
私以外の連中は何度かあの男から船を奪おうとしていたが、全く歯が立たなかった。相当な魔術師だ。
無駄話をしながら男達は私の住処のある方に向かっていく、張り込まれてしまうとイヴを連れて帰ることに危険が生じることになる。
「行ったか 何度もすまないな。」
「だいじょうぶです。」
帰る前に帰宅時のことを心配しても仕方が無いので前に進み、目当ての木を見つけるとよじ登ろうとして、その隣を黒い影が、いやイヴが通過して生っていた果実をもぎ取って着地した。
「イヴ、メルの役に立ちましたか?」
「……ああ。」
役に立ったには立ったのだが、誰かに見られたら拙いと言ったことさえ忘れていなければもっと良かった。
少なくともあの男が来て、クルツにイヴを預けるまでの間。しばらくはこの娘に振り回されそうだ。
そう考えると頭が痛い一方で、なぜか不思議と胸躍るものがあった。
帰宅した頃にはもう誰もおらず、監視されている気配もなかったので二人ですぐに室内に入り、食事をした。
畑仕事を終えて戻ってきた私を、イヴはぼんやりとした明かりの灯る室内でじっと見つめてきた。
気にするべきかどうか迷ったが気にしないことにして、眠るために敷物を敷いた床に寝そべると、ひたひたと足音を立てて私のすぐそばにイヴが寄ってきた。
ぱさぱさと何かが床に落ちる音がして、そして体の上に誰かの気配を感じる。
誰かと言っても一人しかいない、目を開くと唇が触れあいそうなほどの距離に、一糸まとわぬ姿のイヴがいた。
「なっ!?」
私が何かするよりも早く唇を奪われ、強引に舌が私の口の中にねじ込まれる。誘うように舌先を軽く舐められ、抵抗しようにも頭が両翼に押さえ込まれる。
そちらに気を取られている隙に被っていた毛布は彼女の足によって器用に剥ぎ取られ、衣服も破られていく。
性経験はさほどない私だが、彼女が何をしようとしているのかは分かる。
何を思ったのかイヴは私の唇を解放し、始まりと同様に終わりも唐突なキスの名残が怪しく光る。
「何のつもりだ……?」
努めて平静に振る舞い、潤んだ瞳で私を見る少女に訊ねる。
「イヴは、メルと家族作りたいです。」
迷いなくそう告げるイヴに、私は静かに首を横に振った。
「できないですか? どうしてですか?」
その問いにどう答えるべきかわからない私に苛立ったのか、イヴは私に体重をかけ覆い被さり、それに加えて私の陰茎に陰唇を押しつけてきた。
「本当にできないなら、試してあげます。」
「っ! やめ、ろ」
溢れんばかりに濡れそぼった陰唇を無防備な肉茎に擦りつけられるだけでも、禁欲生活の長さとそんな行為への耐性のなさから血が集まっていくのを止められない。
ただ腰を上下させて体の一部を擦りつけているだけでは無い、細かな動きにつられるように小さな膨らみが揺れ、吐き出す荒い息が私にかかる度に劣情を煽る。
意識を他に散らそうにもそう出来るような何かがここにあるはずも無く、彼女の全てに今までに無い劣情をかき立てられる。
ぬちゃちゃっぐにぐにぐにぐにっぬるん
一つ一つの動きごとに、先走り汁と彼女の愛液の混合物が淫らな音を立て、卑猥な臭いが鼻腔をくすぐると、もう勃起を抑えることなど出来るはずもない。
「く……おあ……」
出来ないなどと言う言い訳が不可能なほどに堅く陰茎を怒張させた私をイヴは勝ち誇ったような顔で見下ろす。
「もうこんなになってます。じゃあ、入れますね?」
もはや抵抗しようなどという意思すらも浮かんでこない、イヴの思うまま、彼女の陰唇が私の棒の先端を咥え、飲み込んでいく。
みちっにちゅ
「ぁああ!!」
「へっ? あ、あれ?」
どぷっどぷどぷびゅるるるる
まだ先端が入っただけ、だと言うのにあまりの快感に私はあっけなく射精してしまった。当のイヴすら困惑するほど一瞬だ。
屈辱と情けなさから何も言えないで居ると、イヴはまた腰を落としてくる。
「射精しちゃったんだから、出来なくないですよね?」
「やめ…待っ!?」
にちゅみちみちみちっぷつん みちみちこつん
抵抗する間もなく最奥まで飲み込まれ子宮口と鈴口がふれあうと、精液どころか魂まで搾り取られそうな凄まじい締め付けとうねりが襲いかかってくる。
「くあっ! ああぁああ!!」
どぷどぷっどくどくどくん
余りに簡単な二度目の射精、しかしそれを意に介すことなくイヴは腰を上下させる。
ぬちゅぬちゅっぐちゅちゅ こぽん
精液が押し込まれてイヴの奥まで入っていくのが感じられるような感覚が、まるで自分の中で起きていることのように。敏感に感じられる。
「あ、また出てます♥」
自分でも気づけないほどあっさりと三度目の射精、しかしそれでも射精の勢いは止まるところを知らず、無意識に更なる快感を求めて腰が跳ねる。
ぬぱっぱんぱんぱんっ! ずぢゅずちゅっ
自分の体を別の誰かが操っているのではないか、イヴに体を操作されているのではないかと思うほど、その動きは激しい。
「沢山出ますね、メルもしたいみたいですし、これなら今日一日で妊娠できるかも。」
そう言いながら私の上でイヴは更に激しく腰を振る、上下だけでなく左右に、さらに捻りも加えた容赦の無い攻め。
抵抗しようと思っても体は快感に流されてしまい、むしろ腰まで振っている始末。
しかしすぐに私は彼女がまだ本気ではなかったことを思い知ることになる。
「もっと、メルが欲しいです。メルが、全部。」
私の体の下に腕を潜り込ませ抱きつくような姿勢になると、そのまま唇を奪い、柔らかな羽毛で全身をねちっこくまさぐってくる。
胸板に押しつけられる成長途中の小さな胸の柔らかさが、絡められる唇の甘く蕩けるような粘りが、全身をくすぐる羽毛の感触が、膣内に入ったままの肉棒に伝わる快感を更に強調してくる。
それだけではない、膣の締め付けも更に強さを増し、精液全てを搾り取ろうとするかのようにうねり、少しの動作で猛烈な快感を伝えてくる。
「んじゅ、ちゅちゅ♥ ちゅっちゅっ」
ぱちゅん ぱんっぱぢゅん! ぱんぱんぱんぱん
二人の体の上下一点が交わり合う音だけが、深夜の暗い室内で何が起きているのかを如実に物語っているのだろう。
(これは、魂が抜けているのか?)
ふわふわと空を漂うような恍惚感に現実味を覚えず、妙に冴えた頭がそんな錯覚を覚える。
じっくりと全てがゆっくりに感じられる、舌が絡められる淫靡な音も、全身で感じる彼女の柔らかさと暖かさも、締め付けも。
しかし止まったような時間の中で、快感だけは全く遅れることなく濃厚に体を痺れさせてくる。
まぶたの裏で艶やかな色の火花が飛び、ほとんど音も聞こえなくなる。
ただ意識が飛びそうなほどの快感が休むことなく全身を震わせている。
どくっどくどくどくどくっ
何度目かわからない射精で本当に魂まで搾り尽くされたかのように、私の意識はそこで途切れた。
四つあった魚のうち二つを軽く平らげた娘は、そう言ってまた私に向かって頭を下げる。
私も自分の分の魚を食べ終えると、ため息を一つつく。
その場の感情にまかせて助けてしまったが、この娘は紛れもなく魔物だ。魔物を憎む人間ばかりのこの島では助からなかった方がまだましかもしれないし、これで私は裏切り者確定だ。
とりあえず、現在の状況を把握するところから始めると決め、不安げにこちらを伺う娘に向かって
「私はメルフィダ、メルで良い。お前の名前は?」
「イヴの名前はイヴです、イヴ よろしくお願いします。」
私の自己紹介に警戒をやや弱めたのかイヴと名乗った娘はまた私に頭を下げ、ふわりとほほえんでくる。
その美しさに一瞬だけ見とれたものの思い直り、質問を続ける。
「突然だが、どうして海辺に流れ着いたのだ?」
私のこの質問にイヴは少しだけ考えると、彼女の事情を語り出した。
「イヴの部族は決まった居住地を持たず世界各地を定期的に飛び回ります、イヴ達は昨晩は海を渡って北に向かう途中だったんですけど、突然海が荒れ出したので近くの島で休むことに決まりました。
お母さんとお父さん、お姉ちゃん、それに親戚の皆はすぐに島に着いたんですけれど一番子供のイヴは少し遅れて、そのせいで風に流されちゃったんです。
必死で皆の所に行こうとしたんですけどできなくて、気がついたら自分がどこに居るのかもわからなくなって、海に落ちて、」
「そのままこの島に流れ着いたのか。」
恐らく昨日の嵐だろう、魔物がまさか遭難するとは思っていなかったが、この幼さなら仕方がないのかもしれない。
「メルはどうしてこの島に?」
「………私は、私は…罪を犯したのだ。それがやってはならないことだとわかっていながら、他人の罪に荷担した。その咎で、この島に流された。」
償えるものではない大きな罪、多くの人を犠牲にしたし、そんなことをしておきながら最後には自分や親しい仲間の保身のためにそれまで従っていた者達も売り渡した。
結局、軍人としても貴族としても中途半端な愚か者。
他の貴族達がわたしを忌み嫌うのも当然のことだろう、だがそれでよかったのかもしれないとも思ってしまう自分が居る。
「イヴは、メルはそんなに悪い人じゃないと思いますよ。だって、メルはイヴを助けてくれました。」
私の思いを見透かしたかのように、イヴは私の顔を見上げてそう言った。
「……そんなものは思い込みだ。」
純粋なその目を見つめ返すことができず、私はそう言い棄てるとふてくされるように眠りについた。
イヴを拾った次の朝、私はイヴに家から出るなと言っておいたのだが、彼女はそれを完全に無視して私の後を付いてきた。
普通に歩けるほど回復したことを喜んでやるより前に、新しい疑問が湧いてきた。
「イヴ、歩けるのは見て分かるがもう飛ぶこともできるのか?」
「はい、イヴは怪我をしたわけではないから飛ぶのもできます。ほら。」
返事とともに軽く地を蹴り、暗い藍色をした翼を羽ばたかせてその場に滞空する。
「止せ、他の者に見られるのはまずい。」
慌てて止めてから、彼女を隠すように抱き寄せつつ周囲を伺う。
誰も見ていないのを確認して、すぐに彼女から離れる、少々イヴは顔を赤らめているが、恐らく機嫌を損ねてしまったのだろう。
「すまん。だが……この辺りにいる私以外の人間は魔物を酷く嫌っている。危害を加えられる恐れもあるから、見つかるような行動は慎んでくれ。」
「分かりました。」
「それより……飛ぶことが出来るのなら家族の元に戻ったらどうだ? 家族もお前のことを探しているだろう。」
私のその言葉に対して、イヴはなぜか意味が分かっていないような表情を見せて首をかしげる。
こんな幼い少女が親からはぐれて迷子になっているのだ、親が心配しないわけがないと思っていたのだが、彼女にはなぜかそれが分からないようだ。
しかしおぼろげに意味を理解したらしいイヴの口から帰ってきた言葉は、そちらの方が当たり前というものだった。
「自分がどこに居るのかもわからないのに、嵐の中ではぐれた家族をどう探すんですか?」
その言葉でようやく、帰らないのではなく帰れないことを理解出来たのとともに、なぜそこまで平然としていられるのかという疑問も浮かんでいた。
親元から離された子供というものをそこまで多く見聞きしてきたわけではないが、私の知る範囲ではどれも不安と困惑が表情からうかがえた。
しかしイヴにはそれがない、私は魔物に詳しくないのだが、彼女らにとってはそれが普通なのだろうか。
「それにイヴにはメルがいますから。どんなことになっても、メルが一緒なら平気です。」
少し顔を赤らめながらしかし迷いのない笑顔でイヴはそう言いきった。
それは信頼なのだろうか、それとも他の何かなのだろうか、私にはよく分からないが、とても暖かいものだとは感じた。
「ところでメルは何をするのですか?」
「食事の用意だ、魚を捕って、それと森の中の果物だな、味はさほど良いものではないが食べられる果物の生る木は以前に見つけている。」
イヴにそう答えつつ森に分け入っていく、集落からは外れたところにあるのであまり人間は来ないが、見られると困るので彼女を背中に隠すようにして進んでいく。
進んでいく途中で、私たちの他にも何かが移動している音に気付く。
相手も私たちに気付いたようで、こちらに向かって近づいてくる。
即座にイヴをまた抱きかかえ、茂みの中に身を隠すと接近してきていた足音とは別の足音も近づいてくる。
「どうした?」
「いや、何か足音が二つ聞こえた気がして……」
「…片方があの裏切り者だろう。もう片方がクルツの連中のどれかなら、脱出のチャンスか。」
「そういうことだ。船を奪ってしまえば……」
姿を見せたのは私も顔見知りの貴族の子弟。ソクト家の三男と、ボーヴェ家の四男だっただろうか。
すぐそばに隠れた私たちには気付かず、まだ諦める気もないらしい無謀な脱出計画を公然と話している。
クルツとは、現在この島を私を介して監視している元王国領土内の自治領のことだ、二年前の戦争で活躍が評され正式な自治権の獲得といくつかの島々が割譲され、その中にこの島も含まれている。
私に色々よこした男もそこの住人で、比較的重要な役職に就く人間だったはずだ。
私以外の連中は何度かあの男から船を奪おうとしていたが、全く歯が立たなかった。相当な魔術師だ。
無駄話をしながら男達は私の住処のある方に向かっていく、張り込まれてしまうとイヴを連れて帰ることに危険が生じることになる。
「行ったか 何度もすまないな。」
「だいじょうぶです。」
帰る前に帰宅時のことを心配しても仕方が無いので前に進み、目当ての木を見つけるとよじ登ろうとして、その隣を黒い影が、いやイヴが通過して生っていた果実をもぎ取って着地した。
「イヴ、メルの役に立ちましたか?」
「……ああ。」
役に立ったには立ったのだが、誰かに見られたら拙いと言ったことさえ忘れていなければもっと良かった。
少なくともあの男が来て、クルツにイヴを預けるまでの間。しばらくはこの娘に振り回されそうだ。
そう考えると頭が痛い一方で、なぜか不思議と胸躍るものがあった。
帰宅した頃にはもう誰もおらず、監視されている気配もなかったので二人ですぐに室内に入り、食事をした。
畑仕事を終えて戻ってきた私を、イヴはぼんやりとした明かりの灯る室内でじっと見つめてきた。
気にするべきかどうか迷ったが気にしないことにして、眠るために敷物を敷いた床に寝そべると、ひたひたと足音を立てて私のすぐそばにイヴが寄ってきた。
ぱさぱさと何かが床に落ちる音がして、そして体の上に誰かの気配を感じる。
誰かと言っても一人しかいない、目を開くと唇が触れあいそうなほどの距離に、一糸まとわぬ姿のイヴがいた。
「なっ!?」
私が何かするよりも早く唇を奪われ、強引に舌が私の口の中にねじ込まれる。誘うように舌先を軽く舐められ、抵抗しようにも頭が両翼に押さえ込まれる。
そちらに気を取られている隙に被っていた毛布は彼女の足によって器用に剥ぎ取られ、衣服も破られていく。
性経験はさほどない私だが、彼女が何をしようとしているのかは分かる。
何を思ったのかイヴは私の唇を解放し、始まりと同様に終わりも唐突なキスの名残が怪しく光る。
「何のつもりだ……?」
努めて平静に振る舞い、潤んだ瞳で私を見る少女に訊ねる。
「イヴは、メルと家族作りたいです。」
迷いなくそう告げるイヴに、私は静かに首を横に振った。
「できないですか? どうしてですか?」
その問いにどう答えるべきかわからない私に苛立ったのか、イヴは私に体重をかけ覆い被さり、それに加えて私の陰茎に陰唇を押しつけてきた。
「本当にできないなら、試してあげます。」
「っ! やめ、ろ」
溢れんばかりに濡れそぼった陰唇を無防備な肉茎に擦りつけられるだけでも、禁欲生活の長さとそんな行為への耐性のなさから血が集まっていくのを止められない。
ただ腰を上下させて体の一部を擦りつけているだけでは無い、細かな動きにつられるように小さな膨らみが揺れ、吐き出す荒い息が私にかかる度に劣情を煽る。
意識を他に散らそうにもそう出来るような何かがここにあるはずも無く、彼女の全てに今までに無い劣情をかき立てられる。
ぬちゃちゃっぐにぐにぐにぐにっぬるん
一つ一つの動きごとに、先走り汁と彼女の愛液の混合物が淫らな音を立て、卑猥な臭いが鼻腔をくすぐると、もう勃起を抑えることなど出来るはずもない。
「く……おあ……」
出来ないなどと言う言い訳が不可能なほどに堅く陰茎を怒張させた私をイヴは勝ち誇ったような顔で見下ろす。
「もうこんなになってます。じゃあ、入れますね?」
もはや抵抗しようなどという意思すらも浮かんでこない、イヴの思うまま、彼女の陰唇が私の棒の先端を咥え、飲み込んでいく。
みちっにちゅ
「ぁああ!!」
「へっ? あ、あれ?」
どぷっどぷどぷびゅるるるる
まだ先端が入っただけ、だと言うのにあまりの快感に私はあっけなく射精してしまった。当のイヴすら困惑するほど一瞬だ。
屈辱と情けなさから何も言えないで居ると、イヴはまた腰を落としてくる。
「射精しちゃったんだから、出来なくないですよね?」
「やめ…待っ!?」
にちゅみちみちみちっぷつん みちみちこつん
抵抗する間もなく最奥まで飲み込まれ子宮口と鈴口がふれあうと、精液どころか魂まで搾り取られそうな凄まじい締め付けとうねりが襲いかかってくる。
「くあっ! ああぁああ!!」
どぷどぷっどくどくどくん
余りに簡単な二度目の射精、しかしそれを意に介すことなくイヴは腰を上下させる。
ぬちゅぬちゅっぐちゅちゅ こぽん
精液が押し込まれてイヴの奥まで入っていくのが感じられるような感覚が、まるで自分の中で起きていることのように。敏感に感じられる。
「あ、また出てます♥」
自分でも気づけないほどあっさりと三度目の射精、しかしそれでも射精の勢いは止まるところを知らず、無意識に更なる快感を求めて腰が跳ねる。
ぬぱっぱんぱんぱんっ! ずぢゅずちゅっ
自分の体を別の誰かが操っているのではないか、イヴに体を操作されているのではないかと思うほど、その動きは激しい。
「沢山出ますね、メルもしたいみたいですし、これなら今日一日で妊娠できるかも。」
そう言いながら私の上でイヴは更に激しく腰を振る、上下だけでなく左右に、さらに捻りも加えた容赦の無い攻め。
抵抗しようと思っても体は快感に流されてしまい、むしろ腰まで振っている始末。
しかしすぐに私は彼女がまだ本気ではなかったことを思い知ることになる。
「もっと、メルが欲しいです。メルが、全部。」
私の体の下に腕を潜り込ませ抱きつくような姿勢になると、そのまま唇を奪い、柔らかな羽毛で全身をねちっこくまさぐってくる。
胸板に押しつけられる成長途中の小さな胸の柔らかさが、絡められる唇の甘く蕩けるような粘りが、全身をくすぐる羽毛の感触が、膣内に入ったままの肉棒に伝わる快感を更に強調してくる。
それだけではない、膣の締め付けも更に強さを増し、精液全てを搾り取ろうとするかのようにうねり、少しの動作で猛烈な快感を伝えてくる。
「んじゅ、ちゅちゅ♥ ちゅっちゅっ」
ぱちゅん ぱんっぱぢゅん! ぱんぱんぱんぱん
二人の体の上下一点が交わり合う音だけが、深夜の暗い室内で何が起きているのかを如実に物語っているのだろう。
(これは、魂が抜けているのか?)
ふわふわと空を漂うような恍惚感に現実味を覚えず、妙に冴えた頭がそんな錯覚を覚える。
じっくりと全てがゆっくりに感じられる、舌が絡められる淫靡な音も、全身で感じる彼女の柔らかさと暖かさも、締め付けも。
しかし止まったような時間の中で、快感だけは全く遅れることなく濃厚に体を痺れさせてくる。
まぶたの裏で艶やかな色の火花が飛び、ほとんど音も聞こえなくなる。
ただ意識が飛びそうなほどの快感が休むことなく全身を震わせている。
どくっどくどくどくどくっ
何度目かわからない射精で本当に魂まで搾り尽くされたかのように、私の意識はそこで途切れた。
16/04/14 16:11更新 / なるつき
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